第95話 テンプレギルド
太陽も無く、湿気もあるとどうにも執筆速度が落ちるな……
去年みたいに心の中で「太陽おおおおおおおお!」と叫びたい日々。
「王都とは違った趣だな」
「さすが、ダンジョンがあると言うだけあって大きいですね」
「爺さまの木の方がデカいぞ?」
「世界樹と比べるなや」
はい! というわけで、やって参りました帝国のギルド本部!
大きさだけなら王国のギルド本部よりもデカい。
事前に調べたから分かっているけど理由はある。
まず酒場が当たり前のように受け付け近くにあるという異世界テンプレを踏んでいるからだ。お酒を提供する場所や保管する場所だけではなく、ちょっとしたおつまみを作る厨房まであるから1階部分が広い。
さらにダンジョンなんて他の国に無い優位性があるので、そこで得られたモノを保管する倉庫・魔物を部位事に切り分ける解体場・ダンジョン自体の情報、そこに出没する魔物などを記した資料を保管する特別な資料庫などなど……とにかく、他国と比べても必要とする設備・人員が多いので全ギルドで一番の大きさを誇ってるわけだな。
ここテストに出るぞ~?ってぐらい重要だ。
王都のギルドで話を聞いた時、ワクワクしたからぐらいだし。
「ユキナ。なんでお肉よりこっち早く来た?」
「そりゃオメェ、素材を換金して金に換えるためよ。まだ余裕はあるけど、セーフティーラインを超えてからじゃ遅いし」
「かなり戦利品がありましたからね……」
「ここで手持ち金を増やさないと怖いんだよ……主にリルの食費代とか、食費代とか、食費代とか……」
「しょくひだい? いっぱい食うぞ!」
「それが怖いんだよ!」
カレー1年分がリルの胃袋に消えたのまだハッキリ覚えてるもん!
戦利品とは他でもない、例の魔王教団幹部、狩人の仮面御一行様が所持していたもので売れそうな品々をふんだく――ゴホンッ! 当然の対価として手に入れたんで、ギルドで買い取って貰おうってこと。
まぁ中には毒とかヤバいものもあったんで、そういう類いは私のアイテムボックスの肥やしになっております。
え? 処分しないのかって?
ただで手に入れたんだし、持ってて損はないっしょ?
手に入れたモノ1つは狩人の仮面が装備していたので……そっちは厳重に保管している。
未定だけど、帝国の次に行く予定の国――鍛冶の盛んなマタルギア、さらにその次に行く予定の魔法使いたちの国――エンディミオンでの取引次第で、私の欲する新しい力を手にできるかもしれないから。
金と人脈しだいではいけると思うんだよねー。
「換金もそうだけど、もう1つ用事があるんだよ」
「私の冒険者登録ですね」
「それそれ」
リルは野生児として聖獣の森で暮らしていたから言うに及ばず、身分を保障するものも何も無い。本当は冒険者登録できればいいんだけど、アレって確か13歳からなんだよな登録できんの。戦闘力は魔王教団幹部と戦えるだけあるけど、1番大事な貴族などの推薦が無いから11歳のリルは冒険者になれない。なので保留。
……幼い子供だからそこまで怪しまれないと思うけど、一緒に行動するに当たって冒険者登録はやっぱしたいなぁ。魔王教団にも目を付けられてるし、どっかに信用できる貴族はいないものか……
ステラも今までは“聖国所属の見習い聖女”という肩書きがあったけど、私と旅をすることになってそれを証明するためのものも無くなっている状態。なら、身分証明書の役割にもなる冒険者身分証(ギルド・パス)は必要になってくる。
……本当なら聖国を移動している時にどっかの街で作っておきたかったんだ。でもストーカー信者の件もあって、街や村に止まったらすぐ出発!を繰り返してたんで結局作ることができなかった。冒険者身分証(ギルド・パス)って作成に半日以上は掛かるから。
「それじゃ、さっさとすまそうか」
いつまでも入り口付近にいると迷惑だし。
――チリンチリン
扉を開けば聞き覚えのある鈴の音が。
こういうところは一緒だな。だけど……
「「「「「………………」」」」」
うっわ。
めっちゃ視線感じる。居心地悪ぃ~。
やっぱ王国とは少し違うな。
まず酒臭い。昼間っから酒飲んでいる奴がいるから、顔をしかめたくなる。
しかも、興味の視線の中に明らかに下品なものが数人分感じるし。
で、花が無い。女性が1人もいないんでむさ苦しさ倍増。
結論。マジさっさと用事済ませて帰ろう。
こんなん慣れてなきゃ依頼主も依頼を頼みにくいだろ。そんな空気がある。ラノベのギルドに来る日本人、何故に当たり前のように居座れるし?
受付に到着。仏頂面の男性だった。やっぱ花が以下略。
「ご用件は?」
「買い取りを。それと、この子の冒険者登録をお願いします」
「よ、よろしくお願いします!」
「分かりました。少々お待ちを」
ステラが可愛らしくお辞儀をするけど眉1つ動かさない男性。ステラの可愛さに無反応とか、表情筋死んでね?
「……おい」
いや、態度悪くてこっち見下すよりは良いか。
「おい」
従業員の対応ってすごく大事だと思う。日本でもそうだったけど、最近の若者の中には信じられない事しでかして店に迷惑を掛ける奴もいるからな。ニュースで見る度に店長さんがかわいそうで――
「おい! 聞いてんのかガキ! 返事ぐらいしねえか!!」
「ユ、ユキナ様! あの、無視はよろしくないかと……!」
「え? あ。う~ん……?」
さっきからうるさいなーと思っていたら、どうやら私たちに声を掛けてきたのがいた模様。「おい」だけじゃ誰のこと指してんのか分からんわ。
声を掛けてきた奴らを見る。
3人組の男で、30代ぐらいで――酒臭くて顔真っ赤。さては酔ってるな? もしかしなくても酔っ払いに絡まれてるの?
めんどくせ~~~。
「はぁ~……で? 何か用ですか?」
「あん!? んだその態度は!! ここは魔物やダンジョンに挑む“強者”が集まる場所なんだよ! なのにそこのナヨナヨしてるのが冒険者登録だぁ? すぐに死んじまいそうな奴が冒険者になろうとすんな! 鬱陶しい! さっさと帰りやがれ!!」
お? おぉ? これは、まさか……
「……こっちを心配してカマ掛けてるってオチは――」
「んなわけねーだろが! 出ていかないってんなら、首根っこ引っつかんで無理矢理放り出すぞゴラ!!」
「ひゅー! さっすが兄貴! カッキー!」
「逃げた方が身のためだぞ~? 兄貴を怒らせた奴がどうなったか教えてやろうか?」
まさか、まさか……!?
「これが伝説のテンプレが1つ、ギルドのチンピラ三兄弟か!!?」
「「「誰がチンピラ三兄弟だ!?」」」
おおおぉ……王国のギルドでは存在しなかったラノベにおけるTHE☆噛ませ犬! 主人公の踏み台の代名詞、チンピラ三兄弟が目の前に……
「ユキナ様、火に油を注ぐようなことは――って、どうしたんです?」
「ステラ……私は今、とても感動している」
「なにゆえ!?」
この感動は日本人の――それも、テンプレ俺TUEEEEEE!系小説&マンガを読んだ人にしか分からないだろう。
そういえば、日記じゃ剣二もチンピラ三兄弟に会ったんだったか。
1人は和解(?)して、残り2人がオネエの餌食となったんだっけ?
剣二さん、異世界って良いね……
「ユキナ様が今まで見たことないほど慈愛に満ちた顔に……!」
「どうしたユキナ? 気持ち悪いぞ?」
ステラはともかく、リルは今日のおやつ抜きにすんぞ? 仮にも美少女に対して気持ち悪いとは何事か。
「調子に乗りやがって! 良く見りゃ全身白くて気持ち悪ぃな、本当に人族か? 珍しい魔物って事で退治しちまうのもありだな~」
「「やっちまえ兄貴ぃ!!」」
むかっ! 仲間からならともかく、チンピラ三兄弟ごときが「気持ち悪ぃ」とは何様か!? お~っしいいぞ。そっちが手ぇ出してくるってんなら望むところだ。周りも面白がって見ているだけだし、存分に正当防衛(物理)で対応してやんよ。
三兄弟長男(仮)が手を伸ばしてくる。
無造作に伸ばされた腕をサッと避け、
――ここだ! 今こそ借りるぞ剣二の必殺技!!
「対チンピラ腹パn――」
「ユキナに何するオマエー!!」
「ぐぼばぁあああああああああああああっっっ!?」
長男(仮)が壁まで吹っ飛んだ。
犯人はリル。森にいた頃教えた肘打ちを長男(仮)のみぞおちに撃ち込んだ模様。綺麗に決まって綺麗に吹っ飛んだなー。
白目剥いてズルズルと崩れ落ちていく様子を見るに、死んではいないけど何本か骨が逝ってそうだなー。
ゴメンね剣二。
数百年の時を超えた腹パンを披露したかったけど、先を越されちゃった。
……いや、待て。
まだ次男()と三男()がいたはず。奴らに剣二の腹パン道を――
「テメェ! よくも兄貴を!?」
「ぶっ殺してやる!」
残りの2人がこれまたテンプレなセリフと共にリルに襲い掛かる。
さすがに幼女の身に何かあるのは良心が咎めたのか、静観を決め込んでいた数名の冒険者が武器を手に持ち立ち上がった――が、
「オマエら、おそい」
「く、ぺェ!?」
「ガフッッ?」
全然相手になりませんね。
次男()に懐に入り込んでのジャンピングアッパーカットをお見舞い。三男()には倒した次男()を踏み台にして顔面に蹴りを入れた。
出来上がったのは最初の男も含めたチンピラ三兄弟の屍(死んでません)。スキルを使った様子も無いし加減してるんだろうけど……
リルさん強すぎぃ!! 幼女の強さじゃねえ!!
「ウソ、だろ……?」
「なあ、さっきの動き、どこまで見えた?」
「ガキに可能な動きじゃねえぞ……!」
「アイツらは素行こそ悪いが長年Dランクとして活動していたよな?」
「酒が入っていたのを抜きにしても……どの道、あの獣人に負けただろ」
「あの年で、迷いの無いあの動き。一体何者だ?」
ザワザワと、周囲がうるさくなる。
他の冒険者が注目するのは当然リルだ。
それを見て――崩れ落ちた。
「ユキナ様!? 大丈夫ですか!?」
「ステラぁ、リルに俺TUEEEEEE!のテンプレシーン奪われた……」
「いつものですか。どうやら大丈夫そうですね」
……ステラ、最近、精神的に逞しくなったよね。
ちょっと設定で勘違いしちゃた箇所があったので、本来書く予定だった話がボツに。変わりに元々登場予定だったチンピラ三兄弟には出番を増やしてあげました。




