第93話 人間、どうしようもなくなると笑ってしまうというアレ
梅雨の時期による節々の痛みにも、突然の夏風邪にも、横浜中華街の塩対応な定員にも負けない。それが作者だ!! これ以上、予定を狂わされてたまるか!!
突然すぎる戦闘から数分後、先程とは別の裏路地にて。
私、ステラ、リルの3人は顔を合わせて考え込んでいた。
「どないしよ」
「どうしましょう」
「ユキナ、お昼はなに食うんだ? なあ?」
「リルはちょっと黙ろうか」
本気で悩んでいる時にメシの話をするんじゃありません!
私だって全て忘れてヤケ食いしたいわ! ビバ焼き肉!!
「……ご当地の肉をいっぱい食べようか」
「やった!」
「ユキナ様、現実逃避しないでください」
だってだって! しゃーねーじゃん!!
本当だったら何日も掛けて帝都に着いて、普通に3人の女子で観光やダンジョンで冒険したりで思い出作りしたかったんに、ま~~~たまたまた魔王教団の幹部様と関わることになったんだよ? 『聖獣の森』での件も含めたら、『王国』、『聖国』、『森』、『帝国』と私が訪れた4ヶ所全部で問題に巻き込まれて予定通りにいかないんだもん! いい加減現実逃避したってええやん!!
「……神様は私にだけやけに厳しい」
絶対、異世界転移頼む神様間違えたわ。
剣二さんの担当だった女神ならこんな波瀾万丈な1年弱を過ごさずに済んだかもしれんのに。実はあのメガネ神、疫病神の類いじゃねえの?
よくよく思い出すと、異世界に来てから思い通りに事が進んだことって何個だ? ……アレ? 片手で数える程度しか無くね?
ヤッベーわ。ガチで泣けてくるんですけど。
「し、信じ続ければ神はその者を救うと言いますよ」
「どうせ神なんて、高みの見物で優雅に紅茶とか飲みながらうんうん頷いているだけの仕事っしょ? 捧げた金や供物なんざアイツらには大した価値ないんだろうよ。信じ続けた奴を毎回神様が救ったなんて話、聞いたことねえなぁ」
「そ、それは、その、少々言い過ぎでは?」
「ハッ! だったらアイツ(某メガネ神)が紅茶飲む度、気管支に入ってむせるように祈ってやるよ。心を込めてぇっ!!」
「またあの怖い祈りですか!?」
「ついでに座ってるイスの脚が折れるように祈ってやる!!」
「祈る内容がみみっちすぎますユキナ様ぁ!」
こればかりはステラのお願いでも聞けんなぁ……
届かせるぜこの想い。1回でも成功すりゃ御の字なんだからよぉ!!
「とにかくです! 問題点を整理しましょう! よろしいですね!」
「「はーい」」
今回は珍しくステラが仕切ってくれることになりました。
「まず1つ目。私たちはリルさんのお爺さまの行いによって直接、帝国の首都へと転移してしまいました。本来であれば首都の入り口で身元確認などを行わなければならないところ、衛兵の知らぬ間に中へと入り込んだ私たちは言わば不法侵入者です。これがバレますと、良くて拘束からの事情聴取。最悪の場合、犯罪者として捕まってしまいます」
「“おなわのきき”ってやつだな!」
「……実際はそんな生優しいもんじゃないけどな」
だって私ったらほら? 仮にも聖女でしょ?
帝国の人たちからしたらさ、そんな聖国で超久々に生まれた新聖女御一行が首都に不法侵入したわけだ。“何かあるんじゃ?”って勘ぐられてもおかしくない。てか、普通に怪しまれる。事情聴取でも例の爺龍のことを話すわけにもいかんから、余計疑われる。
はい、いろんな意味で詰んでますね。
間違っても騒動を起こすわけにはいかない。
「2つ目。今でも信じられませんが、ユキナ様のぶつかった人物が魔王教団幹部、顔の仮面本人だった場合、ほぼ間違いなく、そう遠くない内に帝国で魔王教団との戦闘が発生します。幹部が滞在する帝国首都に留まることも危険ではありますが、不用意にここから離れると相手側が襲いやすくなるといった危険もあります」
「何で? アイツとその仲間、ここにいるんだろ? そっちの方が危険じゃないか? いつでも襲われるぞ?」
「後ろめたいことがある人たちからすると、自分たちが隠れて活動し、人が大勢いる場所で騒動を起こすのは、それはそれで難しいのですよ」
「? ? ? ……よく分かんない」
「リルさんはずっと森で暮らしていましたからね」
「ようは、堂々とした方が逆に襲いにくいんだよ」
いくら帝国に後ろ暗い事情が多くて魔王教団が活動しやすいっつっても、表向きは平和で外国とも貿易している国の首都で騒動を起こせばいくら魔王教団でも活動が難しくなる。
王国でのクラリス誘拐監禁事件の時だって、私は冒険者活動していたから蚊帳の外状態だったけど、外国から調査団とかめっちゃ来て調べられる限りで王都内にある魔王教団に関わる痕跡を調べていたらしい。
私、リリィそしてクラリスが監禁されていた場所なんてすぐに見つかって徹底的な調査――どころか、最終的には建物を解体してまで証拠を集めようと奮闘したとか。王様もノリノリでGoサイン出したって話だ。壁の中に秘密資料があったり床に隠し部屋があったりもするから、急ぎの時はある程度探した後にぶっ壊した方が早いそう。魔法や魔道具があるからこその力業やね。
――どんだけ魔王教団に煮え湯を飲まされてんの各国ぅ。
とまあそんな理由で、帝国の首都――帝都の中で私たちを襲うこと自体は可能だけど、それやると後々面倒事になるからできれば避けたい。むしろ帝都を出たところを襲いたい。なので、帝都に留まってる方が安全率も上がるというわけだ。
もちろんこれは理屈の上での予想に過ぎない。
相手が感情的な奴だったら、もしくは顔の仮面に関することがこちらが把握している以上に重要事項だったら、そういった理屈を全部無視して襲ってくるかもしれない。今頃、血眼になって私らを探しているかもしれない。
はい、いろんな意味で詰んでますね。
観光なんて気楽に出来ねえよバカヤロウ。
帝都の表通り歩くだけで襲撃に気を配んなきゃだよコンチクショウ。
「………………私ら、身動き取れなくね?」
「……主よ、我らに天の加護を」
ついにステラも諦めモードになったよ。
スキル使って祈ってるからか、ほんの僅かに光ってるし。
アッハッハ! もう本当にどうしようもねーなー!!
ここまで来ると笑うしかないっての!
もうどーにでもな~れ♪
『〈ヘルプよりお知らせ〉……称号:ヤケクソ聖女を取得しました』
何か聞こえたけど気のせいだな!
う~~~ん……よし!
「買い物しよう! ついでに腹一杯食おう!」
「この状況でですか!?」
「お肉か!?」
「もうさー? どうにもこうにもならんし、1つ1つ片付けてくしかないかなーって。で、最初の問題がリルなんだよ」
「え? リル、どうかしたか?」
「いやだってオメー、ボロ着のままやん」
「あ。そういえば……」
そう、忘れていたけどリルの現在の装備はボロ着一式とサラシだけ! 靴も靴下も履いてない! あとカミングアウトすればパンツも無い!
THE☆野生児ですね。帝都の表通りも歩けねえよ。
「つーわけでヘルプに最も近い服飾屋さんへのルート出してもらうから、そこで買い物したあとに焼き肉な」
「分かった!」
「はぁ、これでいいのでしょうか?」
絶望も一周回って普通になったから良いんだよ!
ため息ばかり吐いてると余計に幸せが逃げるぞ?
てなわけで、レッツショッピング!!
次回、久々にデフォキャライラスト登場。
~おまけ~
雪菜(´・ω・)「ヘルプ、ここから一番近い服を売ってるお店まで案内よろ」
ヘルプ『まずこの通り10メートル先を右折、そのまま進んでゴミ捨て場のある場所を左折し、25メートル歩きます』
雪菜(;゜Д゜)「カーナビか!?」
ヘルプ『近くに、衛兵の詰め所があります』
雪菜(#゜Д゜)「だからカーナビかよ!?」




