第92話 出会って数秒で絶叫バトル
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どうもー! 現場の雪菜でーっす!!
龍のジジイこと爺龍によって帝国の首都に飛ばされてしまった私、ステラ、リルの3人。
長距離転移で飛ばされた路地裏らしき場所でまさかの衝突事故――からの、被害者が魔王教団幹部『顔の仮面』だった!?
完全な不意打ちで一撃を与えてしまったんですけど!
どこに脈絡なく上から落ちてきた美少女(ここ大事)と頭同士をぶつけると予想できる!? しかも非公式ながら敵対関係の輩とだぞ!
どんな確率で起こる事故だよ!?
仕事しろや幸運(大)!!
――なお、ここまで思考加速により2秒以下。さらに継続。
改めて状況を確認する。
まずは場所。人気のない広めの路地裏らしき場所。
地球じゃ外国が舞台の作品とかで出てくるような、不良少年達が集まってスケボーしてそうな寂れ、忘れられたような場所。
次に人物の確認。
私と顔の仮面(?)との間は1メートル程度しか離れていない。私は必死に状況確認を。顔の仮面は相当痛かったのか、まだ頭を押えてうずくまっている。……私、そんなに石頭でしたかね?
ステラとリルは私の3メートルほど後ろで固まっている。未だに何が起きたか分からないんだろう。いや、大まかに起きたことは分かるけど次にどんな行動を取るべきか?というのが、思考加速系スキルを持っていないので判断に時間が掛かっているのかも。
そして、魔王教団幹部の象徴とも言える仮面。
顔の仮面ご本人の側に落ちているソレは、デフォルメされた喜怒哀楽を表した表情――嬉しそうな顔、怒りに満ちた顔、悲しそうな顔、楽しそうな顔――の4種類が描かれている。
仮面の形や絵のタッチ(?)も先日遭遇した狩人の仮面と同じだから、偽物って線もなさそう。ヘルプでも確認済みだしね。
(ということは、だ。この後に起こることは……!)
顔の仮面が、その仮面の無くなった顔を上げる。
深い緑色の髪に、薄紫の瞳を持った――女性。
全身をボロボロの黒いローブで包んだ姿。
見た目の年齢は20代後半か。
その瞳は、酷く淀んでいて……
「………………――!!」
驚愕の表情と共に、瞳孔が開く。
「リル! ステラ抱えて後方へ跳べ!!」
スキル:危機察知と直感が働いた。
こっちが何かする前に、あっちが何かすると!
「死んで」
大きく飛び上がった顔の仮面が懐からナイフを取り出して投げつける。
1本だけなら問題ないけど、
「『同品射出』」
1本だけだったナイフが一瞬で10本以上にぃいいいいいいいっ!!
「多いわぃアホオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
アイテムボックスから炎獄のハルバードを取り出し、魔力を注ぐ。
充填された魔力が炎の噴射となってハルバードを強化。私とステラ、リルを狙ったナイフに爆風を纏ったハルバードを高速で叩き込み破壊し、吹き飛ばす。
「!? 『霧隠――」
「JET!!」
片手に構えたハルバードの噴射口を下に向け、一気に炎を噴射。
一瞬で加速して顔の仮面のいる場所まで飛び上がる。
普通だったらすぐにバランスを崩す方法だけど、エンジェルオーク戦の後で手に入れていた『称号:天空を駆ける者』の効果で空中での行動に補正が掛かった今なら、数メートルに限ってこの方法でも目標まで飛ぶことができる。
ちなみに、検証したところ最大でも10メートルが限界です。
そこから先は思い出したくもないレベルで振り回されました。えぇ、三半規管が大ダメージを受けて胃の中のもの吐き出すかと思いましたよ。
「喰らえ! 『ボルテックス』!」
「――『アクア・スパイラル』」
空いた手で放った風系魔法と土系魔法の複合魔法である『ボルテックス』に対し、向こうは水系魔法で対抗してきた。
『ボルテックス』は雷が渦巻いた衝撃エネルギーを相手へ叩き込む技なんだけど……
(こいつ、強い!)
顔の仮面が出した『アクア・スパイラル』は渦潮のようなものを生み出す魔法だった。それが『ボルテックス』の雷が渦巻いてる方向と同じ方向に渦を作り出して、わざと規模を大きく、周りにも渦潮の水が掛かる程にした。
結果、
――ズガァアアアアアアアアアアアアンッッ!!
『ボルテックス』のエネルギーが『アクア・スパイラル』を伝って周囲に拡散した。すごい規模で破壊をもたらしております。
周囲の建物や地面? どんどん崩れていってるけど?
(あの一瞬で判断して、魔法を切り替えたのか!?)
私がジェット噴射で近づく直前まで顔の仮面は別の魔法かスキルを発動しようとしていたけど、私の魔法を見てから別の魔法に切り替えやがった。
しかも普通よりも魔力を込めた魔法だったおかげで、複合魔法である『ボルテックス』にも威力を分散させたからとはいえ耐えて見せた。
(思考加速系のスキル持ってる可能性もあるのか)
魔法発動が終了し、お互い距離を取りつつ地面に降りて睨みを利かせる。
突然のバトル開始から1分も経っていないのに、もう嫌になる。
狩人の仮面と戦い方が違うだけでバリバリ戦闘できますやんいやだぁ……
後ろの2人連れて逃げたいけど無理っぽかな?
だって顔の仮面って魔王教団の中でもトップシークレットっしょ? 今の顔が本当の顔かは分からないけど、情報提供だけで一財産になるかも知れないんだぞ? そしてユニークスキルで顔を変えていない状態――本当の顔だった場合、向こうは何が何でもこっちを口封じしたいはず。
お互い突然争いになったから頭の隅で混乱しているところがあるんだろうけど、どっちかが死なない限りどうしようもなくね?という結論は出てるはず。たぶん混乱から立ち直ったステラとリルがこのあと戦線に加わるとして……勝てるか?
狩人の仮面の時は覚悟ができた状態で戦いに臨んで、ギリギリのところで勝利したわけだけど……
(何も準備してないんすけど!!)
道具? 前回の戦闘でほとんど使い切ったよ!
作戦? いきなりボス戦なんて想定していないのにあるかボケが!
(あの爺龍、生き残ったら覚悟しろよ……)
私、この戦いに勝ったら聖獣の森でお爺さんを殴るんだ♪
いや、本当に殴られる覚悟してもらうわ。
感動の別れをしたリルを直送便で死地に向かわせたようなもんだし。
(うーん……膠着状態に入ったし、ちょっと話しかけて見るか?)
話してみた感じで分かった性格から作戦浮かぶかもしれん。
「……綺麗なお姉さんさぁ、いきなり殺しに来るとか酷くない?」
顔の仮面、目は心配になるぐらい淀んでいるけど顔は美人の部類だ。暗い表情のせいで台無しだけど。
「………………お姉さん……?」
あ、言葉返してくれた。キャッチボール成功。
いやでも、何? その変なものを見るような訝しげ目?
顔の仮面がこちらのことを警戒しながら一歩踏み出し――
「? ――~~~っっっ!!?」
驚愕に目を見開いた。
「な、何だ?」
さっきまでと違って「ウソでしょ!?」みたいな分かりやすい表情になってる。
視線を追うと――
(水たまり?)
ここに転移したばかりの時には無かったし、十中八九さっき顔の仮面が使用した『アクア・スパイラル』と私の『ボルテックス』の衝突で周りに被害を出した際にできた水たまりだ。良く見ればあちこちにあるし、裏路地とはいえ光が差している場所は水たまりが反射して綺麗に空を映し出している。
もう1度顔の仮面を――正確には彼女が見ている水たまりを見れば、鏡のように顔の仮面自身を映し出しているのが分かる。
(いやだから何だって話なんですけど……)
昔テレビで見た『ジャングルに巨大な鏡を置いてみた時の動物たちの反応は!?』って企画でもあるまいし、まさか水に映った自分の顔を見るのが初めてなんてこともありえないだろうし、ホント何に驚いているのこの人? 意味不明すぎて隙だらけなのに攻撃仕掛けられねえじゃん。
と、ここでようやく動きが。
「――!!」
懐から取り出した何かを地面に投げつけると大量の煙幕が!
「ゴホッ、何だよ急にもう!」
煙に紛れて奇襲でもするつもりなのかと探知を発動させれば、
「あれ? 遠ざかってる?」
すごい速度で私らと反対方向に逃げ出していた。
え? どういうこと? 今のどこに全力で逃げる要素が?
「ユキナ!」
「ユキナ様!」
ステラとリルが周囲を警戒しながら近づいてくる。
聞けば、どうやら短時間でのすごい攻防にどこで手を貸せば良いのか、下手すると邪魔になるのではないかと動けずにいたそうだ。リルはすぐに加勢しようとしてステラに止められていた模様。もう少し戦場の空気を読む力を磨いて欲しいなー。
「ユキナ様、あの方は一体?」
「説明はあと。すぐにここを離れるよ」
「“おなわのきき”だな!」
「正解」
こんだけ暴れまくったんだ。裏路地とはいえ、衛兵が駆けつけたっておかしくない。なるたけ目立たずに行動しようと思っていたのにぃ!!
3人で離れる直前、魔王教団幹部の証である仮面が転がっていた場所を見れば、そこには何も無かった。逃げる時に回収したんだろう。
さっきまで幹部と戦っていたなんて信じられないわ。
(そういえば……)
今になって思いだしたけど、顔の仮面にうっすら白い光が纏わり付いていたような……? あの光は一体?
前にも言いましたが、4章において『顔の仮面』は重要人物です。




