第91話 天文学的数値のゴッツンコからの~?
少し短いですが、プロローグ的なものです。
拝啓、リリィへ。
前回の手紙からそこそこ経ったけど、体調に変わりはない?
私の方は――波瀾万丈な人生すぎて正直つらいっす。
「ユキナ~、今日の晩飯は~?」
「取れたて野菜のポトフだよ。あと“さん”を付けろガキんちょ」
「ユキナ、これ、今日の」
「どれどれ……ジャガイモが多いな。ポトフに入れる分超えそうだしポテサラでも作るか。あとな? ちゃんと“さん”を付けなさい」
「ユッキーナ! 私は揚げたの食べたいでっす!」
「油の色が悪いから次回な。それと、“さん”を付けるかどうか以前に、イントネーションが独特のせいでギャル系芸能人みたいになるからソレやめて」
私は現在、欠食児童共のために大鍋の管理をしつつ野菜を程よい大きさに切る作業などを毎日のようにしています。
王国でも孤児院でしたよ?
でもアレは短期アルバイトみたいなものでして……それがほぼ毎日ってなると、さすがにしんどいんすわー。
「どうしてこうなったし?」
「ユキナ様がユキナ様であられるからですよ」
「答えになっていないぜステラ……!」
この子はステラ。
聖国の元・見習い聖女で今は旅の仲間&親友という立場の子。
1つ年下の金髪碧眼美少女で、私なんかよりよっぽど聖女らしい。
いや本当、何で私に『称号:真・聖女』とかあるのやら?
しかも、もう1つの称号が爆走聖女だぞ? こんなの他人に見せられるかボケって話でしてね、えぇ。ステラにも内緒ですよ。
そのステラが持ってるのは『称号:救世の聖女』ですよ奥さん?
爆走聖女と救世の聖女、どっちが聖女っぽいと思う? あきらかに後者っしょ。
世界よ、マジのガチで何で私が聖女だし?
「ユキナ! ご・は・ん! は・や・く!!」
「……リル、アンタもこの中じゃ年長なんだから手伝えよ」
テーブルでフォークとナイフを掴みながらルンルン気分でいるのは、聖獣の森で出会った2人目の仲間である狼ッ子こと獣人のリルだ。
年齢は11歳とステラよりもさらに年下なんだけど……ずっと森で暮らしていた野生児な上に、今じゃ食いしん坊キャラになっているせいか実年齢より子供っぽく見える。まぁ、その実年齢も云々も時空魔法がらみのアレやコレで大変めんどくさいことになってるけどね。
「夕飯できたぞー」
「「「「「やったあああああああああああ!!」」」」」
「ちゃんと落ち着いて食べるんですよー」
できたポトフをステラと一緒に食器によそれば、待っていたのは行儀良く座って待っていた幼い子供たち(+リル)の面々。
いや、だからリル。オマエは手伝えと。
「……元気になりましたね」
「ん? あ~そりゃ一月前に比べたら、ね?」
ステラが涙ぐみながら呟いた言葉に同意する。
――初めて会った時はガリガリだったから……
私たちがいるのは孤児院ではない。
余っていた土地――上の人間が余り見ようともしないようなスラムに近い場所――にスキルフル活用で建てたログハウスモドキだ。
ここに、この子供たちの親はいない。
全員死んだから。
ここに世話をしてくれる大人はいない。
そんな余裕が無いから。
国は手を貸さない。
「金も人材もないから」と言い訳しているから。
……本当は孤児にほとんど興味がないのが理由のクセに。
ここはレーヴァテイン王国ほど優しくない。
だってここは――帝国だから。
ガザルゾア帝国。
100年以上前までずっと名前を変えながらも他国と戦争を続けていた強欲の都市。平和になった後も昔の名残が完全には消えていない、たぶん、この大陸でもっとも命の価値が低い国。
ダンジョンと呼ばれる不可思議な存在によって発展し、一攫千金を目指した者が、魔物との戦いで強くなろうとした者が、成功して成り上がり、逆に失敗して命を落とし続けている実力主義の国。
魔王教団幹部『顔の仮面』である彼女との天文学的数値での出会いから様々な事があり、私たちは今日も子供たちの世話をする。
変換機能が誤変換ばかりして余計に時間が掛かるという……




