閑話 剣二の日記③
・2024/08/10
一部修正
【20XX年.〇月×日】
滅んだ国――1日目。
ここ最近、かなりの頻度で日記を書いてるなーと思うこの頃。
異世界に来て初めての他国――だけど、国自体が滅んだこの場所に着いたオレたちは安全性の高い宿を拠点に活動することになったので、拠点探しだけで随分と時間が掛かった。
国が滅んだから当たり前っちゃ当たり前なんだけど、他国から来る人が一気に減ったことで宿屋も需要低下で減ったようだ。
とりあえず商人から、しばらくこの宿を拠点にするから商売をしている間と移動の時に半数は護衛に、残りは自由にして良いことになった。
1日おきに交代で護衛することになり、クジ引きの結果、オレは明後日から護衛をすることになった。明日は休みだ。
アリスや変に怯えているオッサンもオレと同じ組だった。
もうこの時点で嫌な予感がするんだけど、何でだろうな?
【20XX年.〇月×日】
滅んだ国――2日目。
案の定、予感が当たったぞおい。
宿屋の中途半端な朝食を食べ終え、見るもの少ないけど観光だー!と出かけたら、外に出て一秒でアリスが仁王立ちからの「私も一緒に行くわ!」発言。
見えないふりして横を自然に通り過ぎようとしたオレは悪くないと思うんだ。直後に肩掴まれて逃亡に失敗したけど。
一応で聞くと1人でいてもすることないし、それだったら知り合いと見て回りながら時間を潰したいとのこと。
というわけで、2人で店がある場所を可能なかぎり回った。
微妙なモノが大半だったが、果物を扱ってる店は当たりが多い。グァバジュース(モドキ)は好みだったんで2回もおかわりした。アリスが隣で呆れていたけど、オマエだってオレが飲んでるの美味しそうに見えるって理由で結局買っただろうがと言いたい。
途中、土産物屋でアリスが安めだけど綺麗な貝殻のアクセサリーを見ていたので「欲しいのか?」って聞いたら「迷ってる」と返ってきた。どうやら安いモノは安いなりの価値しかないと教わっていたとのこと。興味はあるけど、買うなら高いモノを買った方が良いという考えが根底にあるから手をだしにくいと。
……元一般ピープルなオレからは許しがたい考えだ。
高けりゃいいなんて考えは時代遅れだ! 大事なのはその人に似合うかどうかだと両親は小さい頃から言っていた!
ということで、アクセサリーはオレが購入。無理矢理アリスに装着する。
元の素材は悪くないし、普通に似合ってた。
ありのままの事実で褒めただけなのにアリスは顔を真っ赤にしていたな。何となくだが褒められるのに慣れていないようだった。
帰り際に小さく「……ありがと」って言ってたから、別に嫌って訳じゃないらしいし良かった。
今までで1番女の子らしさのある可愛らしい表情だったけど、それは“言わぬが花”ってやつだろう。
そんな感じでアリスとの店巡りは終わって、宿へと戻った。
……あれ?
ちょっと待てよ?
今日の出来事を冷静に振り返ってみる。
もしかしなくても、オレってアリスとデートしてたのか?
【20XX年.〇月×日】
滅んだ国――3日目。
案の定、予感が当たったぞ(2回目)。
朝食の席でアリスと目を合わせるのが難しかった。昨日のがデートだったんじゃないかと思うと、変に意識する。
心の中で「コイツは妖怪クッキー泥棒だ……! 見た目詐欺の残念なクッキーおバカなんだ! 惑わされるなオレ!」と何度も呟いた。
アリスは「さっきからチラチラこっち見てどうしたの?」と訝し気に聞いてきたから、「ただの気のせいだ」って言ってクッキーを渡した。「そうね! 気のせいね!」って納得してリスみたくクッキーを頬張った。チョロすぎる。それでいいのかオマエは?
何だかアリスの方もオレを見ているように感じたけど、さすがに自意識過剰だよなぁ……
朝食を終えれば商人の護衛時間だ。
昨日の組は何事もなく平和に終わったそうだが、国が滅んだ影響で怪しげな輩や犯罪者も簡単に街や村へ入って来るから油断はできない。実際、数日前に護衛をケチった別の商人が襲われて帰らぬ人になったらしい。南無南無。
さて、仕事だ。オレ、アリス、オッサン、他に野良冒険者2人の計5名が今日の護衛担当となる。
前日にした話し合いの結果、見た目チンピラなオッサンを前面に出して怪しい奴が出れば睨みをきかせ(最初に矢面に立たせる)、オレとアリスは商人さんのすぐ側で万一の時のために控え(もしもの時は商人を逃がす)、他の2人が少し離れた場所から異常がないか見張る(他の護衛への緊急事態報告・安全確保・場合によっては加勢)というフォーメーションになっている。
ちなみに、オッサンは「オレが一番危なくね?」と聞いてきたが他4名で「気のせいだ」と言えば納得した。アリスとは別の意味でチョロい。まあ、いざとなったらちゃんと助けるつもりだし。
で、護衛開始から約2時間後。思った以上に早くその時は来た。
離れた場所にいた冒険者から如何にもなチンピラ数人が近づいているとの報告を受け、オッサンをスタンバイさせる。
はい。来て早々に因縁を付けてきましたね。オッサンが普通に見えるようなチンピラ×6が現れましたよ。トゲ付き肩パットなんて初めて見たぞ? 明らかに某世紀末の世界でヒャッハー!しながらバイクに乗る奴らだろ? 二次元へ帰れ。ついでに北斗七星の人にやられろ。
オッサンと言い争ってる最中に、商人が出している店の看板を蹴ってきたのでオレとアリスも動き出す。
あとは流れ作業だったな。アリスが気を引いて、オレが瞬殺する。それだけ。
厳ついだけで大して強くなかった。衛兵に聞いたら傭兵崩れと呼ばれる連中だったそうだ。戦争中に逃げ帰って盗賊まがいなことしていたと。
道理で歯ごたえがないと思った。腹パンで倒したけど、どいつもこいつも防御力が低いというか……
そんなことを言えば「後ろ後ろ」と指さすアリス。振り向けば膝をついて呻く味方のはずのオッサンが。
……どうやらオレの腹パン巻き込み事故に遭ったそうだ。ごめん。
アリス曰く、他の連中以上に流れるような自然の動きで腹パンを決めたと。
オッサン曰く、オレは味方なのに何で攻撃されるんだ?と。涙目で。
いや、マジでごめん。勝手に動くんだよ右腕が。
【20XX年.〇月×日】
滅んだ国――4日目。
案の定ry)以下同文。
朝起きたら、新しい称号を習得していた。
その名も――『称号:腹パンマスター』……!
腹パンする際の行動に補正が掛かるらしい。
その日はずっと不貞寝した。こんな称号マジでいらん。
……日記を書いてて悲しくなってきたぞ。
【20XX年.〇月×日】
滅んだ国――1日飛んで6日目。
昨日は何事もなかった。平和が1番だ!
そろそろ護衛も終わりそうだから、また店を回ることに。
グァバジュース(モドキ)を提供してる店の人との話で、冷凍の魔道具は温度調整が可能だからフルーツの完全冷凍することもできるという。溶け具合にもよるけど買った翌日でも食べれるしどうだ?と勧めてきた。もちろん買った。南国フルーツは割と好きだ。
話の途中で、シャーベットやかき氷はないのか聞いたら無いとのこと。凍ったものを細かくするという発想がなかったそうだ。詳しいことを話すと、店の人は頭に電流でも走ったかのような表情になって、無料でグァバジュース(モドキ)を渡してきた。曰く、口止め料らしい。
……数日したら、また来るか。
【20XX年.〇月×日】
滅んだ国――何日か目。
護衛依頼も無事に済んだので、しばらく冒険者らしい依頼を受けてから元の国に帰ることにした。
国が滅んでも人々からの依頼――主に魔物退治・納品はなくならない。魔物はそんなこと気になんてしないからな。
一緒に依頼を受けた人の中でオッサンは商人の護衛を新しく入った冒険者と再度継続して国へ、アリスと数人の冒険者はここに残るとのこと。
アリスもオレもソロで活動してるから毎日一緒というわけではないけど、狙ったわけでもないのにまたもや同じ宿屋だったのでその日の出来事などを夕食の席などで話したりしている。
そうそう。例のグァバジュース(モドキ)の店だけど、シャーベットを売り出していた。もちろん買ったさ。
かき氷の方はシロップが上手くいかないので断念したと言っていた。よく考えてみたらアレって合成着色料とか使ったものだから、今の時代の技術で個人が作れるものじゃなかったな。反省反省。
シャーベットのマネをしようとしている店は他にもあるらしいが、冷凍の魔道具を扱っている店は少ないのでしばらくは儲かってウハウハだから気にするなと言ってた。ついででグァバジュース(モドキ)をプレゼントされた。
……さすがに、ちょっと飽きてきたとは言えない雰囲気だった。
【20XX年.〇月×日】
冒険者ギルドの依頼で変わり種があった。
どうやら神様を信仰している人が建設予定の教会で使うシンボル、それのデザインを募集しているそうだ。
屋根の上にも飾れてアクセサリーにもできる、シンプルかつ神の信仰を感じられそうなデザインが欲しいらしい。無茶ぶりか。
一定期間の間に集まった中で「これだ!」というものがあれば、それをデザインした人に金一封の報酬だとのことで、すでにそれなりの数が集まっているそう。木の板にデザインと考えた人の情報(冒険者だったらどこの国所属の誰か分かるもの)を書けば良いらしい。
早速とばかり、たまたま一緒だったアリスも挑戦していた。見た感じアリスのシンボル案は……お世辞でも最終選考まで残りそうにない。一次審査で振るい落としにされそうだった。
微妙な顔で見ていたのがアリスにバレて、オレも挑戦することに。考えてもオリジナルでシンボルの案など素人なオレに出せるはずもなく、最終的に地球で使われていた十字架を描いて提出した。
あとから思うとさすがにシンプル過ぎたかな~と思ったり。だってアレ、キリストの話なんて欠片もんない異世界からしたら、縦と横に長い棒と短い棒を重ねただけなんだよな。手抜きかよって言われるレベルだ。描いてるのを横で見ていたアリスも「もうちょっとマジメに考えなさいよ……」と呆れていたし。
ま、結果は神のみぞ知るってやつだろ。
そういえば、あの女神様は元気にしてるかな?
【20XX年.〇月×日】
まさかの女神様、脳内降臨の件について。
今日は“天山”と呼ばれる異世界版の富士山、いや洋風だからエベレスト? どっちだ? いやいや、どうでもいいや。とにかく、デッカい山に登ったんだけど、そこで不思議体験したんだ。
前々から登ってみたいと思っていたんだけど、丁度近くで魔物退治の依頼があったから、そのついでで登ることにした。
地球にいた頃のオレじゃ、富士山登るのも数日間ひーこら言ってやっと登れるかどうかというところだが今は違う! 異世界で冒険者として活動したことによって培われた精神力・身体能力と、様々なスキルを合わせれば日帰りだって可能なのだ!
……辛かった事実は変わらなかったけど。何だよアレ。ザ・山道じゃん。最低限の獣道すらないじゃん。頂上までの道、誰か作れよって。
そうして悪戦苦闘しながら頂上に到着。お天道様に近いだけでな~~~んも無かった。空しかったんで、その辺にあった岩にスキルも駆使して『天山頂上』ってデカデカと日本語で彫った。何ていうスキルの無駄遣いだろうか。
で、最期にアレをやったわけだ。「ヤッホー!」って。日本人なら誰でもやるよな? オレ以外の日本人でもノリがあるならするだろう。
そしたら、なぜか異世界転移させた女神様が返事した。
ビックリしすぎて変な声が出たぞ。「ひょわいっ!?」ってなんだよ……
どうも“天山”って異世界版パワースポットらしく、神様と交信しやすいんだと。それで女神様も近況とか聞きたかったんだと。
近況については「まあ楽しくやってるよ」と無難に答えた。サルの魔物に殺され掛けたり、筋肉オネエにSAN値をゴリゴリ削られたり、“妖怪クッキーよこせ”と腐れ縁になったこと以外は今のところ順調だと。
女神様の表情までは分からないが、筋肉オネエのくだりで口元が引きつったような気配がした。「そ、そう。強く生きてね」って声が震えてたし。
その後、何事もなく普通に帰ってこの日記をつけている。
女神様の前じゃ言えなかったけど、最初に声を聞いた時に「ひっ! お化け!?」って思ったオレは悪くない……はず。
~あとがき劇場~
雪菜(´・ω・)「オメェ結構、天山で私と行動被ることしてたんだな」
剣二(;― ―)「こうして振り返ると確かに」
ステラ(*´∀`)「似た者同士だったんですね~」
雪菜( ゜д゜)?「あれ? そういえばアンタって、天山の頂上に日本語で何か彫ってたんだよね、デカデカと。私が天山に登った時、頂上にそれっぽいの見当たらなかったんだけど……」
剣二(゜д゜)?「え? 見逃しただけじゃないのか? 真ん中辺りにある突き出た岩に、目立つ大きさで彫ったはずだぞ?」
ステラ(;゜ロ゜)「あ、あの、確か天山に関する昔の文献で読んだのですが、頂上に祭壇を作る際、大きく突き出た岩が邪魔だったので、魔法で粉々にしたと書いてあったような……」
雪菜(´・ω・)「そういえば祭壇って頂上の真ん中にデーンッ!とあったな。……祭壇作る時、真ん中辺りにあって邪魔だった岩って、もしかしなくても……」
剣二゜(゜´Д`゜)゜「オレの思い出ぇえええええええええええええええええええええええええっっっ!!」
雪菜(;´・ω・)「その、何だ……ドンマイ」
ステラ(;><)「誠に申し訳ありましぇんっ!」




