ある大病院の院長の証言
瀬戸鈴音さんでしょう。あぁ、いますよ。それもその筈、私が担当しているんだから。彼女の会社で健康診断してるのも、私です。
重病でね。長期入院中です。今じゃ病巣も相当大きくなってて、生きるか死ぬかの境って所なのに。よくもまぁ、あんなに元気に動きまわれるものだ。感心しますよ。
初めてお会いした時、彼女は本当に心配そうでした。腹痛が頻繁に来るから、近所の診療所で診てもらったけど、もっと大きい所へ行きなさいって言われて。
調べてみたらなんと、ほら、「ここ」と「ここ」の所に、大きな腫瘍ができていたんです。
よく我慢してたと思いますよ、お若いのに。しばらく通院してもらって除去しました。
なのに、不思議な事ってのはあるもんですねぇ。数か月経ってからまた、瀬戸さんが倒れた、って会社から連絡が来て。
診てみると、同じ位置に腫瘍が再発していました。
今度こそ念入りに摘出して、もう大丈夫ですってなった筈です。瀬戸さん、少し痩せてたみたいでしたが。
今思うとそれがいけなかったんじゃないですかねぇ。二度ある事は何とやら。
彼女、また運ばれてきちゃって。誰がやってくれたのか、こっちに連絡が入る頃には、四〇二号室にもういたんです。
診てみると、もう亡くなっていた。
一晩霊安室に安置しておきました。そうしたら、生き返っていた。で、今に至ります。
でも調べてみると、悪性の腫瘍以外にもいろいろ不思議な事があるんですよ。尋常じゃなく低い体温、混濁した目。関節も今は上手く動かせないとの事……まるで死体だ。
それから……脈が恒常的に酷く弱いんです。生死の境をさまよう患者のようにね。でもある時を境に、はた、と止まる。ご臨終と同じ状態になる訳です。だけど一晩経つと元の通り、弱い脈に戻っています。――何故か、病巣も二つ一緒って所が気になるんですけどね。
まだ経過観察中なので断定はできません。
良ければ、会っていかれますか。四月の一日からずっと病院通い。入院も含めて、もう十ヶ月。エイプリルフールもいい加減にしてほしいと。
そういえばさっき、彼女のお友達だと言う男性と、すれ違った気がしますね。
〈つづく〉




