ある陰気な壮年男性の短い証言
――彼女と一通り話をして、俺は怖くなって逃げた。瀬戸鈴音という人がとても不気味に思えて、仕方なかった。
『変わってない』と言ったけど、比喩じゃなくて、中学生の時と、十五年前と何一つ変わってなかったんだ。本当に。
中学生だった時、彼女を大人びた顔つきの女の子だと思ってた。二十代って言われても判らなかっただろうな。でもその時と全く同じ顔。
普通、三十代っていったら、その……肌とか、皺とか、あんまり言いたくないけど、オバサンっぽくなるだろ。少なからず。
防腐処置された死体みたいに、青白い顔で、瀬戸さんは立っていた。少し大人びた、でも幼い顔のまま。妻が『生ける屍みたい』って言ってた事を思い出した。
別れ際に握手をしたんだ。手首に沢山の切り傷を見た。喉元にくっきり、赤いU字型の痕を見た。俺の手にはクシャクシャに丸まったレシートが握らされていた。
『TEL ×××‐×××‐×××
平坂大学付属病院 四〇二号室
お願いです 来てください
貴方と 話がしたいのです
瀬戸 鈴音』
これは……どういう事だろう。冬美さんが――妻が言う通り、本当に死ぬつもりだって事は想像できる。
だけど何でだ? 彼女の勤め先、中々良い所だって聞いてるぞ。男にモテない事もないみたいだし。
取り敢えず、来週金曜の午後なら空いてる。そこでここを見舞おうと思う。彼女についての情報は、その後じっくり話すよ。
〈つづく〉




