ある陰気な壮年男性の随想
さて……遂に俺は来てしまった訳だ。身の毛もよだつ同窓会に。忌々しい中学の連中が待つ場所に。
本当は来たくなかったんだけどな、安請け合いなんかするんじゃなかった。
瀬戸さん来てるのかな。それさえ判れば良いんだ、他の誰とも会わなくて。連絡こまめにとっておけば良かったんだろうけど、唯一仲良かったオタ友がいかんせん休みなんだよなぁ……
何だよあいつ、「推しの歌手が近所のライブハウスで公演やるから出待ちする」なんてさ。せめて同窓会終わってからにしてくれよ。
ま、こんな所でぐずぐずしてても仕方ないし、とっとと店に入るか。
「じゃ、今日は大いに盛り上がろうぜ! えーっと……葉月? お前も呑めよ」
――あー……うん、程々にな。あと俺、葉山だから。
……あんまりいたくないなぁ。同じクラスの奴にまで、名前忘れられるってどうよ。
酒勧めるって事はあいつら、俺が酔う所見たいのかな。一度デートした時酷い事になったって、冬美さんは言ってたけど。どこでばれたんだ?
気持ち悪い、気持ち悪い……だから義務教育期の知り合いは信用できない。
「お料理お持ちしました」
――どうも。
……これ食べたら早いとこ抜けよう。
「王様ゲームやるけど――あれ、誰か一人足りないよな?」
「え、気のせいじゃない?」
……ようやく抜け出してこられた。ここの店広くて助かったよ、遠くでぼうっとしてられる。お開きまでドリンクバーでも行くか――
「葉山君」
――えっ、あっ、えーと……誰だ?
「私よ、瀬戸鈴音」
――せ……瀬戸さん? どういう……
「難しい顔してるね。また暗い事考えてた?」
――あー、えーと、その……俺は別に……そんな、暗い訳じゃ……ごめんなさい。
「ううん、大丈夫。職場ではいつも冬美さんのお世話になってて……」
――あ、此方こそ。中学の頃は何か色々、有り難う。
……って、待って。本当に瀬戸さん?
「そうよ。どうして?」
――だって、昔と全然『変わってない』から。
「だから、同窓会に顔出したくなかったの。他のクラスメートに、何で『変わってない』んだとか、色々騒がれるかなって」
……
「葉山君。人間ってどうやったら死ねるの?」
……何言ってんだ、瀬戸さんは。気は確かか?
〈つづく〉




