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第15話 オーバーグルグルの登山

 過去は吹っ切り、地図を片手に元気よく出発する。今日のハイキングの目的地はロットムースファーナ(Rotmoosferner)である。途中、ホーエムート(Hohe Mut)を経由する。

 地図によると、ホーエムートまでは、下りの標準タイムが2時間30分となっている。じゃあ私の足では、上り2時間40分辺りかなと思いゆっくり上り始める。足元に咲き乱れる名も知らぬ小さな高山植物群が可愛い。放牧中の牛や羊のカウベルの音がアルプスらしく牧歌的で山旅の旅情を誘う。

(羊の鈴もカウベルと言うかは不明)


 途中、意外にも日本人の団体に遇った。初めは中国人の団体かもしれないと少し警戒したが、日本人で良かった。どうも今までの海外一人旅の経験から団体客はやや苦手なのであるが、特に中国人団体客は喧しく、傍若無人の印象が強い。

 

 中国人と言えば、一昨日の国際列車のティケットの一件が一瞬頭をよぎる。あの時、パスポートで私が日本人である事を理解した直後に乗務員の態度が一変した。どうしてか?

 それは恐らく、私を中国人だと思い込んでいたのであろう。日本人の私でも見分けがつきにくい。勝手な想像だが、これまでの車内での彼等の態度がど厚かましかったのであろうと推測する。あるいは、不正乗車を試みる輩がやたら多いとか。

 まあ今回は心ならずも、日本人の私が不正乗車をした事になるが。「青の洞窟」での分を数倍にして取り返した事になる(笑)。


 日本人の団体は10人ぐらいの中高年の紳士グループで、私に会った事は彼等にも意外だったようだ。

 ホーエムートには2時間で到着した。ここでスープの昼食を摂った後、ロットムースファーナ目指して再スタートする。途中、雪渓をトラヴァースする個所が幾つかあったがコース表示が完璧で1時間余りで到着し、ここで4グループが合流した。


 下山はコースを変えて谷底のルートを通る。ラスト1時間はトイレの我慢との戦いで、山行を楽しむどころではなかった(笑)。ロングスパートが効いて、2時間10分で到着した。


 ホテルに戻って1時間後、ジョギングを開始する。下山時のラストスパート(ロング)の影響か、走り始めがしんどい。舗装道路をホッホグルグル方面へ山を上る。かなりきつい。でも景観は最高だ。思ったより車は多い。山を歩いて登るより舗装道路を車で上る人が多いのは道理か。

 帰りに中年のランナーとすれ違ったが、その後引き返してきた彼にあっと言う間に抜き去られた。


 "You, fast!"

と、言ったら


 "No, comment."

と、返ってきた。


「トレーニングの邪魔をしないでくれ」

という意味か。



 アルプスハイキング2日目。

 途中までは昨日と同じコースを取り、昨日帰りに寄ったシェンヴィースヒュッテ (Schonwieshutte) 経由で、カールスルーハー

ヒュッテ (Karlsruher Hutte) に向かう。昨日とは逆にゆっくり楽しみながら歩いた。

 シェンヴィースヒュッテ~カールスルーハーヒュッテは静かな良いコースである。牧畜の家畜も放牧されている。山容は雄大で、高山植物もきれいに咲いている。その後はもう一つだった。


 当初カールスルーハーヒュッテで昼食の予定だったが、従業員が不愛想なので止めて次の目的地ホッホワイルデハウス (Hochwildehaus) に向かう事にした。ところが岩場をトラヴァースする難コースだったので、予定を変更して緑の多いゼーレンファーナー (Seelenferner) に行く事にした。柔軟対応か軟弱か?

 その結果、歩くのは楽であったが、特にこれといった魅力のない平凡な地点にゴールし、拍子抜け。


 下山はシェンヴィースヒュッテ迄は登りと同じコースを引き返し、そこからは谷に近いコースを取った。谷や滝が見られて良かったが、それより登山口周辺に広く咲いている小さな野の花が可憐で可愛かったのが印象に残った。


 オーバーグルグルの山は中腹から上の方では高山植物が見られない。高山植物が見られる下の方が魅力的に感じた。

 


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