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第12話 花の都・フィレンツェ

 翌朝、フィレンツェに向けて列車に乗り込んだが、車両を間違えてちょっと恥ずかしい思いをした。自分の席に着いた後荷物を棚に上げようとして苦戦していたら、隣席の日本人青年が助けてくれた。

 彼は36日間の予定でアメリカ、ヨーロッパ各地を巡っているそうで、今日はミラノまでの予定だそうだ。専ら、ドミトリーを中心に安いホテルを利用しているそうで、自分と同じ一人旅の貧乏旅行者である。最後にはロンドンの友人の家に世話になるとの事で、ここだけが違う。

 話に熱中してしまってあっという間にフィレンツェに到着したが、途中の田園の長閑で美しいはずの景色を見損なってしまった。


 フィレンツェでは5軒ほど当たったホテルは全て満室であったが、途中で言葉を交わした外人さんのアドヴァイスですぐ近くにあるユースホステルに落ち着く事ができ、結果オーライである。

 フィレンツェは車は多いが、ローマやナポリと違って街は結構きれいだ。ドゥオーモ広場近郊は建物が全て恐ろしくでかい。巨人の国の街に迷い込んだみたいな錯覚に陥る。

 また、ここは言わずと知れたルネッサンス文化が花開いた芸術の街であり、数多くの美術館や歴史的建造物が建ち並んでいる。

 美術館には2館訪れてみた。アカデミア美術館は長蛇の列で40分並んだ。ここでの目玉は何と言っても、「デヴィッド像」である。中学・高校の美術の教科書でお馴染みの一品であるが、流石に本物を間近に観ると鳥肌が立ちそう。何となく実物大かと思っていたが、5メートルぐらいはありそうだ。 


 続いて訪れたサン・マルコ美術館ではフラ・アンジェリコの「受胎告知」に注目する。今回の旅の予習で初めて知ったのであるが、かなり有名な作品のようである。

 階段を上がった、その眼の前に壁画として描かれている。聖母マリアが天使により、そのお告げを受ける緊張した情景を描いたものである。

 周りに誰も居なかったので30センチまで近づいて見入った。でもどうしても分からない。これぐらいの作品なら美術学校の学生なら誰でも描けそうな気がする。そう思いながら、作品の隅を少し触ってみようと指を近づけた。

 ”No!"。

 大きな声で怒鳴られた。誰も居ない訳がない。中年後期のがっしりした体格の、厳つい顔の門番が、しっかり椅子に座ってこちらを睨んでいた。



 フィレンツェ、2日目。

 美術館を2館訪れた。最初のウフィツィ美術館には開館15分前の8時15分に並んだ。ティケットを購入し入館したのは8時57分だった。予想以上の大きさで見応え十分だった。日本の教科書でお馴染みの「ヴィーナスの誕生」や「地球の歩き方」で推奨しているもう一つの「受胎告知」等は十分時間をかけて、何度も見入った。


 もう一つの美術館はおまけのようなもの。入館料が同額とはナポリの遺跡同様、納得できない……と言ったら失礼かな。自分が美術を理解できてないだけで、見覚えのある作品にしか興味が沸かないだけかもしれない。


 フィレンツェにある2作の「最後の晩餐」のうちの1つを観ようと、オンニサンティ教会を訪れてみたが門は閉まっていた。説明書きがあったが、イタリア語なのでさっぱり分からない。閉館日かな。


(フィレンツの美術館には超有名な画家たちによる至宝が数多く展示されている。それら有名な作品と同じタイトルのモノもよく見られる。別の情景を描いたのではなく、同じような情景を描いている。紛らわしくていけない)


 フィレンツェにもジョギングできそうな場所はある。街で見つけた市街地図を頼りに行ってみる。意外と思ったより近い。時刻を間違えて19km で止めた。最初から最後までずっとしんどい。

「Swiss Alpine Marathon (スイス・アルパイン・マラソン)」 の開催日が徐々に近づいてきている。こんな事で大丈夫だろうか?  気になる。


 夕食時、日本人と一緒になった。早期退職制度を利用して独立するそうだ。彼の話によると、私が明日向かうベネツィアは水が汚いとの事である。水の都なのに⁉


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