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4話 おう、バンドだ

「なんかあった?すげぇ形相でアンソニーが階段を登って行ったんだけど。」

と今度はアンソニーの部屋に徹平が入ってきた。


「あ、徹平!璃音くんとアンソニーが喧嘩して…ううん、あれは璃音くんが100%悪いんだけど、大丈夫かな!?」

「うーん。まぁ、璃音はあぁやってアンソニーと仲良くなったんだ。大丈夫だと祈ろうぜ。」

「そ、そうなの?」

「おう!多分大丈夫じゃねぇけどな!そんな事より、そーた。ちょっとこっちにきてくれないか?」


そう僕を誘うと玄関の方へと歩いていった。

僕はちょっとだけ腰を抜かしてしまい、ワンテンポ遅れながら徹平の後について行く。

上の階から「助けてー!!誰かー!!」という悲鳴ともの凄い物音が聞こえるが徹平は一度も振り返ることなく、靴を履き外へと出て行ったので、僕も大丈夫なのだろうと判断した。

外へ出ると徹平は主屋のすぐ横に建つ離れの前に立っていた。


「璃音が楽しそうでよかったわ。」

「そうだね。凄くはしゃいでる。」

「こないだも話したと思うけどよ、あいつ、対人恐怖症っていうの?日本から離れても中々治らなくてさ。」

「いやいや、だから、今も全然治ってないじゃん。」

「いやいや、だから、それでもかなりマシになったんだって。」

「…うーん。」

「実は俺は、あの後、少しの間あいつのばーちゃん家で世話になってたんだ。」

「…あの後?」

「おう、2年前の事件の後。」

「…あぁ。」

「雲隠れする為に、わざわざ田舎に逃げたのにさ。あいつ…バカだから外に出んだよ。止めたっていうこと聞きやしなくてさ。」

「…でもそれは…。」

「あぁ、分かってるよ。自分が思ってるより現実は酷くないと確信したかったんだろうよ。でも、石橋を叩けばいいってもんじゃねぇ。崩れそうな石橋なんて近づかないのが一番だ。」

「うん…そうだけど。僕も気持ちはすごく分かるんだ。僕も少し経ってから同じような事したよ。イグレシアで検索してさ…。」

「お前もバカだな。エゴサしてもいいことなんてねーぞ。」

「うん…分かってはいたけどね…。アレはダメージ大きい。」

「まっ、結局、璃音は一番ダメなタイミングで外に出ちまった。結果は…最悪だ。近所のガキだかなんだか知らねーが、ばーちゃん家の壁に落書きされてよ。それだけじゃない。終いには新聞にカッターの歯を挟まれて、ばーちゃん怪我してよ。」

「…酷すぎる。璃音くんが…璃音君のおばあさんが…何したっていうんだ…。」

「おう。マジで世間は冷てーんだ。まっ、そんで璃音は潰れちまってたわけよ。」

「もしかして…。」

「ん?」

「徹平…アメリカに渡ったのって。璃音くんの…。」

「勘違いすんな。別に璃音の為じゃねーって。俺は元から考えてた。…だけど…まぁ、放って置けなかったらのも事実だよ。あとばーちゃんにも辛い思いさせたくなくてさ。」

「優しいね。本当に。」

「バカ、優しいとかじゃねぇって。ただ日本にいない方が絶対にいいと思っただけだ。」

「…そうだね。」

徹平は主屋の二階の方を眺めながら少し悲しそうに微笑む。


「あっ違う違う、あいつの話をしたかった訳じゃないんだ。見て欲しいものがあるんだわ。」

そう言うと徹平は離れの鍵を開け、中を僕に見せた。

「ここを俺たちのスタジオにするつもりだ。」


驚いた。


中にはたくさんの資材や機材が部屋を埋め尽くしていた。まだ設置されておらず、山積み重なっている状態ではあるものの、プロの現場で使われるレベルのミキサーを始めとした高級品ばかりが揃っていた。これだけたくさんの機材を揃えるにはとてつもない金額がかかるはずだ。


「明日から早速、ここの改修を始めようと思うんだ。その為の資材も買ってきたんだぜ?すげぇだろ?」

「うん、これは本当に驚いた。」

「だろ?俺たちは本気なんだって知ってもらいたくてよ。」

「あのさ。芸能界をぶっ潰すって言ったじゃん?」

「おう。芸能界をぶっ潰す。その為にはまず、頂点に立たなきゃな!王になるぜ。」

「うん、その頂点を目指す方法って…。」

「おう、バンドだ。」

「やっぱり。」

「それしか思いつかねぇんだ。茨を通り越して刃の道だけどよ、バンドなら顔を見せないでもやっていける。実際そういうバンドだって今じゃ山ほどいる。二番煎じだけど、その流れに紛れ込むことが出来るだろ?」

「あー、動物のバンドとかいるもんね。」

「おう。解散しちまったけど、阿亀のバンドとか最高だったぜ。海外にだって大物バンドだっている。」

「そうなの?…僕は知らないや。」

「すげぇイカついマスクしてるんだぜ?マスクだけじゃねぇ。音だってイカつい。」

「へぇ。是非聴いてみたいな。でも、どうすんのさ。アイドルのマネージメントなら未だしも。バンドなんて…知識なんてないよ。」

「そこは柔軟に頼むわ。」

「本当に無茶を言う男だな君は。」

「へへ。」


アイドルとバンドは絶対に違うという結論以外、どこがどう違うかも想像も出来ないレベルの無知な僕に何をしろと言うんだ。


全くもう。

次回予告

5話 王道

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