↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/40

4話 カモ

「あっ、時間だねー。じゃあ、今日は2名様2時間デートで、手繋ぎオプションも入ってるから…合計22000円になります♪」

「はい?」

「え?あ、延長する??」

「延長?どうゆう事ですか?」

「え、私、説明したよね?アンソニー?」

「…。」


おい、このホワイト野郎。なんとか言えよ。


「そーたくん、私のお仕事ってお散歩サービスなの。料金説明もしたんだよ?そしたらアンソニーがOKOKって。二時間お願いしますって。」

「アンソニー…どうゆう事?」

「私、ニホ」

「アンソニー!!日本語わかるでしょ!?そんなベタな言い訳通用しないよ!?」

「…コンナニオ金カカル、知ラナカッタデス。本当デス。オ金、取ラレルコトハ、知ッテマシタ…ダケド、exciteシテマシタ。ヨク愛理ニャンノ話聞イテマセンデジタ…」


アンソニーの焦った表情を見れば嘘はついてないという事はなんとなくわかった。金額の説明も受けてはいたのだろうが、本人の言う通りあれだけ興奮してたのだ。

無理もない。

そう、これは調子に乗りすぎた結果だ。そして、僕がアンソニーに意地悪をした報いでもある。僕には強く彼を責める権利などない。


本来ならそれで済ませられる…はずだった。

当の愛理さんは「どうしよう」といった困惑の表情で僕たちを見ていたのだが…。

僕がしょうがないと溜息をつき、財布を取り出そうと手をポケットに手を掛けたその瞬間


彼女の口元がニヤついた。

僕の目にはそれがまるで悪魔の微笑みのように映り、ゾッと悪寒が走った。


これが一瞬だったら、僕も見間違えただとスルーできたのだけれど、残念ながら今も現在進行形で悪魔の笑みだ。

嬉しくて嬉しくて仕方ないのだろう。

本心がボロボロと溢れてる。


…確信犯じゃん。

アンソニーが興奮していて話が入っていないと分かった上でさっと説明を済ませ、日本人の僕には料金の説明を一切せず事を進めたな。そういえば、手だって自分から差し出したじゃないか。こんなの詐欺に近い。


「愛理さん…もしかして…。」

「ん?なーに?」

悪魔の微笑みが天使のそれへと変わったが、もう遅いぞ。


何が「丁度いい」だ。

カモか?

カモとして丁度いいのか?

身長と全然関係ないじゃないか。

回収しないフラグは立てないでくれ。

今更そんな可愛い笑顔に切り替えたって僕は騙せないぞ。僕と親友アンソニーの純粋な心を弄びやがって。

僕は恨みを込めて悪魔を睨みつけた。

警察に突き出してやる。


「…怖い顔、しないで?」

愛理さんは口元に小指を置き、目を潤ませながらか弱そうな声で言った。

ハハ、今頃そんなのが通用すると思ってるのか。

あざと過ぎて笑えてくる。本当に何様だこの女?

まぁ…しかし多分ここでモメてしまうと、怖いお兄さんが出てくるんだろうな。何としてでも大きなトラブルになるのは回避したいな。社会人として。うん、僕は別にこんな子供騙しに靡いてないぞ?ただ、大人なだけだ。


「アンソニー、半分は僕が出す。連帯責任だ。」

「…。」

「アンソニー?…いくら持ってる?」

「…300YENデス。」



逆にだ。

もし、お前の国で美女と手を繋いで2時間デートしてもらうサービスがあったとしよう。そんな極上サービスが3ドルで済むのと思うのか?それなら僕、マジでアメリカに移住するぞ。


「…っ。はぁ…愛理さん、とりあえず僕が払います。22000円ですよね。」

「うん♪ありがとーございます♪あっ、どうするぅ?お店まで行って払うぅ?ここで払うぅ?」

「…ここでいいです。」

「また遊ぼーね♪あ、そーたくん、今度は手繋ごうね♪キミ、結構、愛理のタイプだよ♪じゃーねー!」



と小さく手を振りそそくさと店から出ていった。

ほんと、笑わせてくれるぜ。



その一言だけで充分11000円にはなる。あれだけ腹が立ってたのに一瞬で人の気持ちを変えやがった。

多分彼女のご両親は具合が悪く、家族を支えるためにこの仕事をしているに違いない。

うん、そうだ。

そうに…違いないっ…!


「ソータ…。」

申し訳なさそうにアンソニーが僕に声をかける。まぁ金の事は後でいい。なんせ初めての日本だ。アンソニーに非があるとは言え、強く責められる事ではない。悔しいが僕も楽しい時間を過ごし、終いには人生初の告白までして頂いたのだから。気にしなくていいんだよ。

「ん?何?」

「愛理ニャン…可愛カッタデスネ。」


気にするどころか、まるで反省してない。

まぁ、変に引きずられるよりは何倍もマシだ。


「確かに。」

僕はこの秋葉原ぼったくり事件を通じて、アンソニーとの距離が一気に縮まったように感じた。

共に被害者だからなのか…

恋のライバルだからなのか…


多分違う。

痛い失敗という思い出の共有が僕達を近くさせてくれたのだろう。高校を卒業してすぐに地元を離れ就職した僕には体験する事ができなかったのだが、多分これが大学で経験できる大人の青春というものなのだろうとなんとなく実感した。





次回予告

5話 怖い怖い病

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。