94話目 顕現せしミレニアム
十字架の剣は、ついに地面に突き刺さる。
「…………」
片膝を着いた青年に、無色透明な剣の切っ先が突きつけられる。
否、その剣には仄かに虹色の光を放っている。
色鮮やかな彩りは、雨上がりの虹のようで、剣が弧を描くたびにそれを髣髴とさせた。
空に架かる虹。これほど目に見える幻想など、美しいものなど無い。
少なくとも、今の青年はそう思った。
そう思ってしまったから、今こうして膝を着いているのだった。
「教えてくれ。俺は、どうすればよかった?」
「……後悔、してるのか?」
結城は問う。しかし、彼は首を横に振った。
「いいや。それが分かったとしても、俺はこっちを信じたと思う」
「だよな。俺はそういう奴だ……夕焼けは、暁は己しか信じなかった。お前は、神しか信じなかった」
かつて俺が自分のものとした、もう一人の自分。暁色の水晶。
「俺は妄想を信じた。妄想は俺を信じてくれた。そういう妄想だった」
「ああ……なるほど」
きっと結城しか納得できないことを、青年は納得した。
「お前はもう完成されていたんだな。もう、理想を叶えていたんだ」
誰もが理想を叶えようとする中で、結城は妄想によってそれを完成させ、完遂させていた。
ならば、あとはそれを目指せば良いのだ。
目的地さえはっきりしていれば、あとはそれに向かって進むだけでいい。
叶わないかもしれない、などという疑念や不安を抱く隙間さえなく、ただ信じ、進む。
たとえ挫けそうになっても、結城自身の妄想が結城の理想を支える。
「怖ろしい。そんな奴を相手にしていたのか。俺が勝てないのも無理は無い。ただ一方的に信仰を捧げるだけの俺では……お前は独りでありながら、一人ではなかったんだな」
青年は理想を挫かれ、徐々にその姿を光の粒子へと変えていく。
いかに異世界の使途であれ、この世界に足を踏み入れた以上、この世界の法理からは逃れられない。
「出来れば夕焼けの俺とやらとも戦ってみたかった」
「戦わせてやるとも、俺の妄想の中でな。安心しろ。俺の妄想は真実に忠実だ」
妄想とはいえ、再現度に手は抜かないのが、結城の妄想である。
現実よりも妄想を重視してきたのだから、その程度のクオリティは当然だと、結城は付け加える。
「なるほど……それじゃあ、俺の理想、お前の妄想に託すとしよう」
そして青年は、白銀の輝きとなって水晶の剣に吸収されていく。
「マスター、お見事でした」
「いやぁ、レイランのおかげだ。まさに圧倒的だったな」
暁の……夕輝の時とはまるで比較にならない。
最初から最後まで二人がかりでの戦い。
しかも共闘相手がレイランともなれば、負ける要素はない。
「今回は敵地でしたから、周囲に配慮するようなこともありませんでした。私が居らずとも圧勝されたことでしょう」
「世辞が上手いなぁ、レイランは」
「マスター、まだ終わってはおりません。次に参りましょう」
そして結城は次の敵の方を見る。
が、新月の言葉通り、応援は不要かもしれなかった。
「チャージ開始、システム:デウスエクスマキナ発動まであと60秒」
「なぜです。なぜ機械如きに手こずるのです」
ゾーイと十字架アーマーの性能は拮抗していた。
腕から伸びる青い刃と白銀の剣が幾度と無く重なり、甲高い音を立てている。
目で追うのがやっとの超高速戦闘が空中で行われ、新月もうかつには手が出せない。
とはいえ何も出来ないわけではない。
新月のパーヴァートの能力によって思考を接続。状況に応じて即座に妄想、必要な武器を作成、顕現させる仮想システムとなる。
「この人形に、私達の信仰の何が劣っていると……?」
「私はゾーイ。その意味は生命」
すると教皇は、あぁ、と納得の声をあげた。
「なるほど、私としたことが失念していた。私達もまた、神に作られし人形であるというのに」
しかし、教皇は笑った。ひどく朗らかな笑みで、まるで優しく教え諭すような声で言う。
「あなた方の理想に対する信仰は、個々では屈強なものであると理解しました。しかし、あなた方はすぐに思い知ることになるでしょう。我らが信仰を捧げる神の偉大さを」
「……それでも、私たちは理想を信じます」
信じる。それは機械ではありえないはずの思考。
しかしゾーイは確かに言った。信じると。
「デウスエクスマキナ。発動」
青白い光がゾーイの身を包んだ。
瞬間、全てが終わっていた。
火花が散る音と、熱せられた金属が空気に冷やされていく音。
十字架の鎧は、その胸部を完全に蒸発させていた。
そのまま地面にゆっくりと着地し、そして倒れる。
「えっと」
終わった。割と楽に、そして呆気なく終わった。
後は、彼からの報告を待つのみとなった。
「マスター、これからは何をすればよろしいでしょうか」
「とりあえず、合流? クロードたちと。向こうが終わってるとも限らないし」
「はっ、それでは参りましょう」
レイランは右側、定位置についた。
「ふぅ……なんとか銀風が嗅ぎ付けて来る前に終わらせられましたわ」
「嗅ぎ付けって……もうちょっと仲良くしてもらえないんですかね」
「あら、好敵手として仲良くしていますわよ? それに、貴方がさっさとハーレムでも酒池肉林でも築けば、こうして私達が競い合う必要もなくなるのに」
「えぇ……」
大聖堂の扉を抜ける寸前、結城だけがその歩みを止めた。
ふと、振り返る。
「なんだ、この……」
違和感。
何かがおかしい。
自分の中の何かが、警鐘を鳴らしている。
声ならぬ声が、心に何かを必死で訴えかけている。
誰の声? なんのことを?
気をつけろ。まだ終わってない。
「気をつけろ?」
神は地面の塵で人を形作った。
俺は、奴らは、塵だから、塵に帰る。
気をつけろ。まだ終わりじゃない。
来るぞ。
「皆構えろッ!」
瞬間、禍々しい陽光が世界を照らした。
それは想定されるはずのない事態だった。
それは決してありえないとされていた事態だった。
世界と世界の争いは、神と神、住人と住人で行われる。
そのはずだった。本来は。
しかし、神は元人であった神の想像を凌駕してしまった。それも軽々と。
神の築きし理想郷は、現世に顕現する。
エルサレムは神と共に降臨し、千年王国は完全なる世界を創り上げる。
信徒が享受するは、完璧な世界。
大いなる神と僕たちに築き上げられた完璧な国。
それらが持つ力は、世界を改変するほどの力を有する。
それは既存の世界の終末と共に来たりて、悪の尽くを討ち滅ぼす。
それらは信仰への報いであり大いなる神の慈悲である。
故に、信仰なき者には、相応の報いとして、その居場所は無く、救いの手より零れ落ちる。
つまり。
「世界が侵食される、ということです」
胸を穿たれたはずの教皇が、その姿のまま立ち上がった。
金色の光が集い、その穴は瞬く間に埋められていく。
「たちの悪い冗談だな」
「大聖人が滅び、教皇も討たれた。ゆえにエルサレムは一度滅びました……しかし、大いなる神の御業によりて築き上げられた千年王国は、それゆえに復活の条件を揃えた」
即ち、エルサレムの敗北、滅びそのものが、ミレニアムという理想郷を完成させるためのトリガーだった。
そしてその理想郷は、この世界の法理を書き換え、侵食するほどの力を持つ。それこそが……
「それこそが、千年王国の完璧さがもたらす、神の御業なのです。大いなる神の、大いなる慈悲によりて、我らの魂は永遠を約束された。おお、主よ……」
両手を組み、感謝の祈りを捧げる教皇。
気付いたレイランたちはすでに結城を守るために陣を組んでいる。
「だから、あなた方がどれほど私達を滅ぼそうとしても、もはや無駄なのです」
「結城、セカンからメッセージが」
「なんて?」
ゾーイは淡々とメッセージを読み上げた。
「死んだはずの聖騎士、討ったはずの天使が次々と復活、再生を始めていると。また、攻撃しても即座に再生し、撃退は不可、現状では対抗手段がありません」
「ドクは?」
「通信途絶。リダイヤルを続けていますが、未だ応答ありません」
状況は最悪だった。
つまり、相手は絶対に死なないチートを使って、尚且つこっちのルールを書き換えるまでやってのけた。
このままでは、どうやっても勝ち目は無い。
本当に?
「レイランッ!」
「はっ!」
結城は水晶の剣を手に、レイランと共に駆ける。
迫る結城たちに対し、教皇は微動だにしない。
「極彩色の水晶剣!」
「シッ!」
レイランがすれ違いざまに首を刎ね、虹色の軌跡を描く剣が胸の胸部を貫いた。
必殺と必滅の一撃。強力な理想と妄想の前に、あらゆる存在を打ち倒す。
そのはずであった。
「あなた方の行いは尽く徒労に終わるのです」
「くっ!」
「マスター!」
伸びた手を即座にレイランが切り落とし、二人ともバックステップで後退する。
しかし、切り落とした腕は即座に光の粒子が集まり、元の形へと戻る。
「このままじゃジリ貧か……」
どうする。いかに俺でもこのままじゃ……
思案している最中に、ふと気付いた。
「なんだ、これ」
いつの間にか、視界が薄く青がかっていた。
見回すと、レイラン、ゾーイ、新月が青い結晶の中にいた。
否、青い結晶が囲んだのだ。
「こっ……」
声を放つ瞬間、膨大な光が視界を完全に塞いだ。
ユートピアが謎の爆発、更に撃破したはずの敵の復活。
戦場では混乱が相次ぎ、連携も乱れ始めた頃。
ユートピアの爆破よりも眩い光が、空中の城塞を包み込んだ。
空中での爆発でありながら、大地を揺るがし、荒波を立たせる衝撃は、敵味方全ての動きを一瞬だけ止めた。
そして、彼女は観察した。
浮き島より更に高い場所を浮遊し、惨状を見下ろしている。
「うーん」
もはや焼け野原となり、空中城砦はただの浮き島と化した中で、保護した彼ら。
そして、あれほどの魔力を用いた破壊にも拘らず、何も無い場所から溢れる光と、それが人型を形作る様を観察し続けていた。
「なるほど。魂の不滅性を利用した法理なんですね。となると、法理を直接崩す何かか、あるいは法理の管理人、設定者をなんとかしないといけませんね」
すると彼女は緩やかに降下し始め、結城の傍に降り立った。
防護のために張った結界を解くと、蓮華が傍に居ないことに気付いて、急にぎこちなくなる。
「あ、あの、大丈夫ですか……?」
「今の、ローラがやったの?」
結城は改めて周囲を見渡す。
もはや遮るものは何も無い。
あの建物の大きさならば、瓦礫で周囲に山が出来てもおかしくはないと言うのに、入り口があったであろう方向に何人かの人影が見える。
「それより、この戦争を終わらせる方法の、予想が出来ました。聞いてください」
内容は簡潔だった。
結城が神を倒し、相手の世界の法理を破壊、あるいは無効化する。
「ただ、あちらの世界に行けるのはおそらく結城さんだけだと思います。私たちはまだ理想に到達していませんから」
「いや、悪いが、君らの出番はない」
結城らが声の方を見ると、そこには一人の王が立っていた。
全知万能の王、アルカ。
蓮華のほかに最強は誰かと問うならば、恐らく一番先にこの人物が出てくる。
なぜなら彼はこの世界における最古参の一人だからである。
「アルカ王」
「私はこの日を待ち侘びた。来るべきこの時を。神は私が殺す」
「どうぞ」
と、結城はあっさりと身を引いた。
「マスター、よろしいのですか?」
「別に俺はこの世界で英雄になりたいわけじゃないからな。さっさと済ませて、俺を妄想世界に行かせてほしい」
「……善処しよう」
しかし、それに待ったをかける者がいた。
「神を討つのは我らが役目だ」
「私達の邪魔をするというなら、王とて赦しはしない」
いつの間にか闇黒の徒が居た。
結城はとにかくこの戦争を終わらせたいがために、アルカと闇黒の徒の間に立った。
「まあまあ、神は今回の他にもたくさん居る。今回はアルカ王に譲ってやってくれ」
「そういうわけには行かない」
「でも、お前たちの理想はまだ完成してない。神の居る次元には入れないと思うけど」
あの次元は理想を果たした者が辿り着ける場所。
その場所に足を踏み入れられるのは、『彼』、アルカ、ドク、そして結城のみ。
「ならば結城。お前を倒し、この力を示そう」
「うん。うん?」
話が噛み合っているようで、全く噛み合っていなかった。
「アルカ、とりあえず神様の方は任せるから。手早く終わらせちゃってくれ」
「ああ、もちろんだとも……すまないが、私が留守の間、アルカディアの方を頼めないだろうか」
「そっか、王が居なきゃがら空きか。了解」
手短なやり取りの後、闇黒の徒が何を言い出す隙もなかった。
アルカは腰にある剣を引き抜き、おもむろに振り上げ、一気に振り下ろす。
まるで空が作り物であるかのように、青い景色に裂け目が出来る。
それは膨大なエネルギーとか、強烈な異能によって引き起こされる現象ではない。
ただシンプルに、権限を行使しただけだと言わんばかりにすんなりと、呆気なく出来た裂け目を更に切り刻み、人間が一人通れる程度の穴が出来た。
穴の向こうは暗い、というより闇黒そのものだった。
一切の光が無い。何の混じり気もない、黒の絵の具で一切の隙間無く塗り固められたキャンバス。
アルカがそこに足を踏み入れると、裂け目は即座に塞がった。
「……」
あっという間の出来事に、闇黒の徒たちはアルカに声をかけることさえ出来なかった。
「まあ、今は緊急事態ってことで、ここは大目に見てくれると……」
「悪いが結城、中二病は俺達のアイデンティティ。理想とは別にして、譲ることは出来ない」
これは交戦不可避か、と結城は内心で溜息を吐きながら、同時に嬉しかった。
立ち塞がる敵と矛を交えるのは、なにがどうあれ心が沸く。
とはいえ、今は本当にそれどころではない。
神が倒されるまで永遠に復活し続ける聖人や天使を相手に時間を稼がなければならない。
「結城、剣を抜くがいい」
「ケイオス?」
「神を討つ。それこそが、中二病の力を知らしめることにも繋がる」
「だったら神を倒したアルカを倒せば同じじゃないか?」
「私たちは神魔を討つと名乗っているからな。神様のほうが好ましい」
意外と頑固だ。さっさとアルカディアに行って防衛戦に加わらないといけないのだが。
「なら丁度いい。この私に任せてみろ」
ふと結城の胸部から黒一色の六角水晶が出現する。
黒色の風が視界を埋め尽くし、霧散するとそこには一人の男が立っている。
闇黒の徒を前にしてなお、目立つ黒さ。
真黒の瞳、漆黒の衣、純黒の髪に闇黒の剣。
数少ない隙間から覗くベージュ色の肌は、見る者に彼が人であることをようやく実感させる。
「ダクスト……」
「前々から気になっていた。この私を差し置いて真の闇黒などと。ここは私が引き受けることにしよう」
圧倒的な存在感に、しかし闇黒の徒は一歩も引かなかった。
「ほう」
「お前も大いなる暗黒に導かれし者だな?」
ケイオスの問いに、ダクストは口元を歪ませた。
「闇黒に導かれた……私がか?」
ダクストはクツクツと肩を揺らし、やがて魔王にも似た哄笑をあげる。
「私こそが闇黒だ。結城という人間がその目に焼きつけ、更に己の中で育ませた、結城の抱く闇黒だ」
大仰に、しかし静かに語る。
片手を二人に伸ばし、指で招いて挑発する。
「そして故に、結城より弱いということはない。来るがいい、本物の闇黒を教育してやろう」
結城はレイランらを連れ、クロードたちの元へ急ぐ。
「急げ! 死ぬぞ!」
「マスター、ダクストというのは、それほどに強力な妄想なのですか?」
「あいつは、ダクストはそういうのじゃない」
本来なら、レイランほどの剣士なら、相手がどれほどの力量を持っているか分かるはずだ。
そのレイランが違和感を持つ。それ自体がすでに、闇黒の片鱗。
「少なくとも、俺がダクストにキチンと勝ったことは一度も無い」
「それは……」
「当然ですわね。ダクストを完全に倒してしまったら、あなたの妄想はそこで完結してしまうのだから」
新月だけが、結城と思考を共有できているかのような受け答え。
レイランはわずかに後方を振り返った。
すでに残った三人の姿は見えない。
「妄想は純粋さに応じて強度を増す。あれは結城の抱いた人間への嫌悪と、捻じ曲げた欲望そのもの。殺意に、性欲に……およそ七つの大罪の凝縮と言ってもいい。その浪漫的存在こそが」
「新月、人の妄想を冷静に解説しないで。恥ずかしいでしょ」
「おっと、これは失礼しましたわ」
やがて交戦中の安全無欠一行と合流する。
声をかけると、クロードも結城らに気付く。
「クロード!」
「結城! よかった、無事だったんだね」
「ああ、そっちも上手くやれたみたいだな」
しかしクロードは目を逸らす。
結城は首を傾げるが、すぐに思考を中断する。
「クロード、急いでここから退避だ。アルカディアに戻る」
「えっ、どういうこと? っていうか倒したはずの相手が復活してて……」
「話は後だ。とにかく何が何でもここから離れないと……」
「そうはさせない」
立ち塞がるのは一人の立派な身なりをした勇者。
一見すればクロードより勇者らしい立派な外装をしている。
隣に立つ聖女は、結城の中ではレイランほどではないにしろ、絶世の乙女といっても差し支えないと思えるものだった。
それはまるで主人公とヒロイン。
二人の左右を固める女戦士と魔法使いも、サブヒロインとしては申し分ない。可憐さ。
そこまで来て、結城はこの対戦を見てみたくなった。
「待った。分かった、戦いたいなら下でやろう。とにかく俺たちはここを降りなきゃならない。降りたらクロードがいくらでも相手するから」
「えっ、ちょ、結城!?」
「お前は、何を……」
混乱している勇者を、流れるようにクロードと共にすり抜ける。
とにかくこの場所を離れる。
今の結城にはそれしかない。
神の勇者に追われながらユートピア方向へと走る結城たちはすんなりと階段に辿り着いた。
そして一人のパーヴァートと遭遇する。
「やはりここに居たか」
「銀風、どうして……いや、どっから突っ込めばいいのか」
見ればユートピアは焼け野原。階段は途中で途切れていた。
が、それよりも結城が個人的に気になったのは、銀風の横にへたれこんだ二名のMGシリーズ、そして銀風が腕の中で胸を揉みしだき、現在進行形でセクハラされているフェイ。
結城がまず最初に選んだのは、セクハラだった。
呆れながらも興味を隠し切れない結城と、困惑の表情を浮かべる新月。
「なにやってんの」
「ほんとですわ、この節操なし」
「いや、まさか兵器の女体化が成功しているだなんて、こうして本物を見ると感慨深いものがあるよな」
「俺にも少し……」
「駄目だ。さんざん私が弄くってしまったからな。お前の追撃なんて受けたらそれこそ堕ちるぞ、Mr.パーヴァート」
有限の時間をセクハラへの質問とお伺いに使ってしまったため、結城は色々と浮かぶ疑問を振り払う。
「とりあえず起こして。ここから撤退だ。大至急」
「来たばっかりなんだが、了解だ」
銀風は宙を駆け、俺はレイランと新月、クロードらを妄想で創造した飛竜に乗せて、ローラは魔法で浮遊し、勇者らも天使に運んでもらう形でエルサレムを後にした。
地上に辿りつき、蓮華が居ないことに気付いたが、いかにダクストが強力でも、蓮華ならなんとか生き延びそうというのが満場一致だったこと。
そしてなにより、「蓮華ちゃんなら大丈夫」というローラの言葉で保留となった。




