92話目 理想VS神威
時間は遡る。
結城たちがエルサレムへの長い階段を駆け上がっている頃合、アルカディア。
展開された天使に対抗するため、アルカディアは準備を着々と進めていた。
飛空挺に魔術的防壁を構築し耐久度を向上。
また対天使に特化した術式の組み方や魔道具の開発、ローラを講師として迎え、魔法使いたちは己の理想のために、違える理想の魔法を学ぶ。
そうして完成したのが、魔砲陣である。
「みんな、準備はいい!?」
かつてユートピアの無人機がアトランティスを急襲した際、魔法使いたちが行使した魔砲術式を改良、軽量化、量産化したものである。
まず彼女らは三人一組で縦に並び、先頭は腰を下ろし、二番目は中腰、三番目は仁王立ちで杖を構える。
それぞれが魔弾装填、魔道照準、魔法射出の役割を持つ。
弾丸は魔力を結晶化させた魔石。この時のためにコツコツと量産を続けた。
六角の星を描いた魔法陣の上に、それぞれ魔石を六つ配置することで装填となる。同時に魔法防御の役割も担う。
照準は魔法陣の上に立ち、遠くの敵を視認するため特殊な水晶に魔力を通し、射出役の杖と魔力を通わせることで遥か遠くまで照準が定められる。
射出役は魔力が乱れると魔石が暴発する恐れがあるので、敵からの攻撃は回避できない。
どのような状況でも集中を乱されず、冷静に、真っ直ぐに飛ばす魔力コントロールが出来る精神力の高さが必要になる。
体位は様々で、射出役と照準役が入れ替わっていたり、射出役の獲物がステッキで弓のように構えていたり、両手でタクトを突き出していたり、ロッドをスタイリッシュに構えていたりする。
そして、今回組織された、魔女が砲撃を担当する魔導飛行艇団・黒曜の月。
その部隊長としてローラに任命されたのが、かつてアトランティスで射出役を担った魔女。
白いフリフリの付いた服に、黒地のこれまた白いフリフリのついたスカートという、あまり魔女という雰囲気のしない恰好。
茶髪のセミロングにドクロの髪飾り。顔つきは緊張で強張りながらも、目はしっかりと敵を見据えてブレがない。
「いい? 自分の理想を絶対に諦めなければ、絶対に死なない。それだけは忘れちゃ駄目だからね!」
「はい!」
アトランティスでの射出で最後まで立っていた五人のうちの一人である彼女は、それから更に理想と魔法の研鑽に努めた。
結果、ローラにそれを見抜かれ、部隊長という大役を仰せつかったのだった。
とはいえやることは難しくはない。
隊長らしく気高く振る舞い、誰もが理想を奮い立たせられるように語りかけ、誰よりも目立つように功績をあげ、更に士気を高める。
「目標、敵、天使群!」
今でもこんな大役は役者不足だと思っている。
しかし、それでも彼女が二つ返事で受けたのは、自分の努力を否定するわけにはいかなかったからだ。
彼女は決して力を持つ魔女ではなかった。勉強も幾度となく躓き、魔法も強力とはいえない。
それでも彼女は理想への執着、そして根性だけは誰よりも秀でていた。彼女の理想は……
「魔石装填! 合図の後は、各自好きなように撃ち続けなさい。防壁作動!」
最前の魔法使いが魔砲陣に魔力を通し、魔石を浮び上がらせ、同時に結界を作動させる。
この理想の世界で、また一人、無名の理想家の名が刻まれようとしている。
「ッてぇー!!」
魔女・藤咲 真樹。
後にマーガレット・アンド・オニキスと呼ばれる彼女の理想は、まだ始まったばかりだ。
飛行船からの砲撃が開始される。
いくつかの影が、飛行船を魔法すら越える速度で追い越した。
「魔道回線1171.24……通話できます」
「こちら飛竜の目。天使はうじゃうじゃいやがる。夏の夕暮れの電柱に集る羽虫みてぇだ」
影は三つ。それは飛竜と、それに乗る竜騎士と魔法使い。
「不安か、魔法使いのお嬢さん」
「い、いえ……飛竜乗りの、最高のお三方なんですよね?」
「ヘタクソが勝手に言ってるだけだがね。これくらい大したことじゃあない。さて」
しゃがれながら、無駄に大きい声で喋る竜騎士は後続の部隊へと声を投げかける。
「飛竜の牙、聞こえてるか。こっちがケツ振って天使を釣り上げてやる。あとはお前らで落とせ。特に竜人、お前は百羽落とすまで補給無しだ」
「ひゃ、百羽……」
後ろに乗る魔法使いが戦慄する。
対し、竜騎士は陽気に笑う。
「軽いジョークみたいなもんさ。だが、奴ならやれる。それくらいやってもらわねぇと、三つしかないトップエースの座は譲れねぇのさ。それじゃそろそろだ。お嬢さん、頼むぜ」
「は、はい。しっかりアシストさせていただきます」
飛竜は三頭、それぞれが分散し、天使の群れに突っ込んだ。
後続、飛竜の牙は五機編隊の飛竜。先頭を飾るは我らが竜騎士が誇る最強の騎手、竜人。
「ふざけんな! 百羽ってむちゃくちゃだろ!」
悪態吐く竜人に、後ろに同乗している水色の精霊使いが吹き出した。
「ふふっ」
「セレナまで……まあいい。セレナ、通信は出来る?」
「うん、大丈夫」
「よし……あー、聞こえてるか? 目が敵と接触した。これより作戦を開始する。なお、俺は安全無欠じゃない。自分の命と理想は自分で護ってくれ」
それは言われるまでもなく、この世界でそれをしない者は居ない。
他人に任せられるほど軽い理想なら、この世界に来るほどの執着はもってない。
そして、竜人はクロードと違って人の理想を背負えるほど強くはない。
だからこそ言っておかねばならない。
自分は部隊長であろうとも、その彼らに一切の責任を負わないことを。
「今更だぜ竜人。俺たちは竜騎士。ワイバーンを駆って、敵を落とす。それだけを考えてりゃいい。そうだろ?」
「まあ、その通りだが」
「なら、いつも通り好き勝手飛んでりゃいいんだよ。あの時みたいな活躍を期待してるぜ?」
「ったく……」
五頭の飛竜のうち、先頭の竜人は更に加速した。
「さて、行くか。ウィン、セレナ!」
「はい!」
セレナが応え、竜人の相棒ウィンは一際強く羽ばたく。
圧縮された空気をウィンの翼が叩きトップエースにも劣らぬ加速で天使の群れへと進撃する。
大量の天使と飛竜が交戦する中、あるたった一人の乙女が天使を相手に無双を誇っていた。
そこでは誰もが想像するとおり、天使相手に無双を誇る蓮華の姿があった。
「天使ってのも大したことは無いな!」
「油断したら危ないよ、蓮華ちゃん」
ローラのアシストで空中に魔法陣のような足場を作成し、蓮華はそれを使って空中にいる天使に迫る。
天使の剣捌きは決して並大抵ではなく、一流の剣士さえ簡単に屠れるであろう技巧であったが、蓮華はすんなりと打倒していく。
相手が剣を振り下ろすよりも早く近づき、早く打撃を見舞う。
やることはたったそれだけ。
人外じみた瞬発力で迫り、化物じみた怪力の一撃が天使を、背後に配置された仲間ごと吹き飛ばす。
しかし敵軍は多く、間も無く蓮華は取り囲まれた。
背後から振り下ろされた剣を振り向きざまの裏拳で破壊し、流水のようなスムーズさで回し蹴りに繋げ、天使の頭部側面を強打、吹き飛ぶ。
続いて左から迫る天使は横薙ぎに剣を振るうが、蓮華は左肘と左膝でそれをがっちりと捕え、右手で天使を掴む。
「オラオラオラァ!!」
蓮華は天使をそのまま振り回し、続々と迫る天使を次々にぶっ飛ばしていく。
あまりな痛快さと爽快さに、アルカディア軍、傭兵、高みの見物中であったアルカ王でさえも腹を抱えて笑う始末であった。
さて、そこで神の軍勢は秘密兵器を投入した。
古来より続く神話の世界では、必ず世界規模の大怪物というものが存在する。
そうして突如、エルサレムの直下に出現したのが、山脈の如き、茶色の剛毛に包まれた四足の巨大な獣であった。
「うおっ、でかっ!」
山どころか山脈を砕いていきそうな獣は、ただ単純にアルカディアへと歩行を開始する。
そのまま通行を許してしまえば、アルカディアという国はその地形ごと消え去ることになるだろう。
「これは倒し甲斐がありそうだ!」
そこでむしろ喜んでしまうのが蓮華なのであったが、ここでローラが声を上げた。
「蓮華ちゃん、私も戦うよ」
「おっ、そうだな。ローラにも見せ場が必要だ。やっちまえ!」
ローラは一度、双眸を閉じる。そして再び開いた時、アメジストのような紫色へと変化していた。
「魔は理不尽の権化にして、不条理の顕現。あらゆる法理を覆し、あらゆる法則を組み替える。光輝を捻じ曲げ、闇黒を引き裂いて……我が魔の力の断片、ここに顕現せしめん」
そしてローラは手を巨獣へと向けた。
すると、見る見るうちに日の光が、まるで暗幕をかけたように弱まり、周囲は薄暗くなる。
代わりに、眩いほどの紫色の光を放つ魔法陣が、巨獣を取り囲む規模で展開される。
青草の草原に走り書きされた魔法陣は、次の瞬間、より強い輝きを放った。
「開け降魔の門……いつもありがとう。ほら、食事だよ」
その声はあまりに優しく、まるで愛しい幼子に語りかけるかのようであった。
すると魔法陣の端から図太い触手が伸び、瞬く間に巨獣を絡み取る。
ところで、それはアトランティスでの戦場に居た何人かの人間に、おぞましい記憶を呼び起こさせていた。
「あっ……あれは、夢じゃなかったのか……」
目にするだけで自らの存在の小ささを自覚させられてしまう。
かつて絶滅の理想が人々を自害させようという心理を呼び起こしたが、これを目の当たりにした人間は他の者より幾分正気だったという。
「ああ、神よ……」
現在、対峙しているのが神が送り込んだ軍勢であるにも拘らず、思わず神の名を口にしてしまうほどに怖ろしく、醜悪で、おぞましい。
だが今回はそれだけではない。
触手のみならず巨大な蛇の頭部が巨獣に絡みつき、魔法陣の『奥』へと引きずり込もうとしている。
が、さすがに巨獣も激しく抵抗を見せている。
「うーん……蓮華ちゃん、ちょっと手伝ってもらっていい?」
「おう!」
蓮華はすぐさま足場から飛び降り、暴れる巨獣の頭部へと落下していく。
「力んで、力んで、気を込めて、力を一つの、方向へ……ッ!」
振り上げ伸ばされた右腕は引き締まっているものの、女性らしい腕であった。
落下する蓮華は、もう間も無く巨獣の頭部へ到着する。
「カァッッ!!!」
それは銃声に慣れた傭兵が、遠く離れたアルカディアに居ながらも思わず耳を塞いでしまうほどの爆裂音と、衝撃だった。
間違いなく地面は揺れ、アトランティスは軽い津波に晒された。
間違いなく一瞬、衝撃波のようなものが見えたという証言も後に聞くことが出来た。
「おお、割と頑丈だな」
そんな蓮華の一撃をもってしてなお、巨獣の頭は見かけは無事だった。
とはいえ、それから一切身動きせず、魔法陣から這い出ている異形に引きずり込まれてしまった。
蓮華はというと、ローラの用意してくれた足場からその様子を眺めている。
「でっかいなぁ。あんなの従えるなんてさすがローラって感じだな!」
「私なんて大したこと無いよ。あの子達と戦ってくれたのは蓮華ちゃんだもん」
「ローラだって援護してくれたじゃんか」
と、互いを褒めあっている。
そうこうしているうちに巨獣は完全に魔法陣の奥に沈んだ。
「脂が乗ってて美味しいって」
「それは良かったぜ」
「閉じよ降魔の門……またね」
魔法陣は次の瞬間には、何事もなかったかのように消えうせていた。
太陽の光も元に戻り、まるで全てが夢だったかのようだ。
あまりの出来事に、天使達も侵攻を躊躇っている。
「さぁて、下の様子でも見てみるかな」
エルフ・メイヴは苛立ちを聖騎士にぶつけていた。
「風塵と化せ……風魔刃・死屍累々」
荒れ狂う暴風が周囲を包み込み、それは巨大な竜巻となって聖騎士へと向かっていく。
木の葉のように吹き飛ぶ兵士たち。
それに対抗するため、白い服を着た聖女たちが解呪を試みる。
迫り来る竜巻に対し、V字方に囲むような配置。
「主よ、大いなる御手より、穢れし災厄を打ち払い給わん……」
優しい仄かな白光が聖女達を包み込み、連鎖。
V字の中央に光が集い、次の瞬間、煌きとともに閃光となって竜巻に放たれる。
が、呆気なく光は竜巻に飲み込まれた。
「あ、あれ!?」
入念に祈り、確信を持って打ち込んだ聖なる光は、実にあっけなく引き裂かれた。
迫る竜巻の時速は60キロにまで達しているため、祈っている時間は残っていなかった。
「う、うそっ!? 主、主よ! お、お助けください! たすけ……きゃああああああ!!」
哀れ、聖女たちは竜巻にもみくちゃにされながら巻き上げられていく。
神聖さ溢れる服もズタボロに引き裂かれ、聖騎士の集団の眼前にぺっと吐き出されて地面にぐったりと捨てられる。
「う、うう……」
「せ、聖女様の祈りが……」
聖女のあられもない姿に、聖騎士たちは動揺を隠せない。
禁欲もそこそこの半端な聖騎士にとって、神聖な衣服を破られた無惨な聖女の姿はあまりに背徳的だった。
その瞬間が、一匹の獣を相手にした時、致命的な時間となる。
「この、どスケベ共め」
一見ご褒美にも思える囁きを最後に、強烈な一撃が後頭部を打った。
「こ、こいついつの間に!?」
ある者は下から顎を穿たれ昏倒する。
ある者は風すら凌駕する速度のククリナイフで鎧すら切り裂かれ、腹部をかっ裂かれる。
ある者は蹴飛ばされ、背後に居る岸を巻き添えに倒れながら、ポイっと球を投げつけられる。
それは爆発し、紫色の煙が兵士たちを気絶させる。
「まったく、清く正しきは恰好だけか。のう、メイヴ?」
「知るか。結局人間なんて、揃いも揃って猿ばかりか」
「クカカ! そう言うなて。クロードの判断は間違っておらんよ。安全無欠がアルカディアの危機に不在とあっては示しがつかんからな」
とはいえ、ここまでなんの連絡もないのも気になる。
雅なら遣いとしては申し分ないだろうに。
「まあ、あの若造では、この天使の群れを抜けてこれるか分からんが。シッシッシッ……」
「お前、さいきん口調が年寄り臭くなってないか?」
「そうか?」
首を傾げるリューテの足元、自分とは別の影が差した。
「リューテ! 上だッ!」
「分ァっとるわい!」
胸の谷間から取り出したクナイを左手の指で挟み、真上に投擲する。
太陽を背にした何者かは、しかし容易くそれを弾いた。
「こやつ、出来るッ!」
台詞に反して獣のような笑み。
後ろに跳び退り、相手の着地と同時にクナイを投擲する。
緑髪の女はそれを容易く指で挟み取り、一気に加速。リューテに迫る。
「チィッ!」
直線的な動きから繰り出される拳は単調ながらも、避けるのがやっとの疾駆さ。
すれ違いざま、リューテはその背にククリナイフで斬り付けようとする。
しかし相手は避けるどころかむしろその場に留まるように身を翻し、左手の甲でそれを。
「受け止めた!?」
超高速の接戦に思わず笑みを零しながらも、背にある短刀で喉元に突きつけた。
が、そこでリューテは動きを止めた。
相手の右手の中指が、こちらの頚動脈のある辺りに触れていたからだ。
まるで同調しているかのように、相手も楽しげな笑みを浮かべていた。
「貴様……確か蓮華といったか」
「あっれ、お前は確か、えーっと……」
「安全無欠が一人、アマゾネスのリューテだ」
「あーっ! そうだそうだ! いやぁガンダーラの時より動きよくなったな!」
蓮華が手を引いたため、リューテも短刀を納める。
「あれ、クロードとかは居ないのか?」
「いない。クロードはユートピアに向かった。そしておそらくは……あそこに向かっているだろう」
リューテは空に浮かぶ城を見る。
蓮華もそれを見ているが、ふと思いついてリューテに問う。
「あー……なあ、やっぱ安全無欠のメンバー揃ってこの危機を乗り越えたいよな?」
「なんと?」
「やっぱり安全無欠が有名になるなら、皆で敵地に乗り込んで、ボスを倒してハッピーエンドがいいよなっ!?」
「ま、まあ、そう、か?」
リューテが困った顔でメイヴを見る。
「ふむ……確かに」
「だよなっ! じゃあ決まりだ、行くぞ!」
「行くって……」
あの場所に辿り着くには、アルカディアの城まで戻らなければならない。
アルカディアの城の頂上から、あの城までの階段が突如として現れたのだ。
「大丈夫、近道するからさ、っと!」
「なっ!?」
「えっ!?」
「ローラー! お前も行くよなー!」
蓮華はリューテとメイヴを腰の辺りに手を回して抱えあげると、大声で上空の船へと問う。
すると蓮華の脳内に直接ローラの声が響く。
「うん。私も行く」
「よし、じゃあ足場、よろしくな!」
「おい、一体なにを……」
「じゃあ、行っくぜぇッ!」
深く踏み込んだ蓮華。
次の瞬間、蓮華たちの姿は地上から消失した。
「ぬぅわあぁあぁあああああ!?」
「きゃああああああああああ!?」
「ローラ!」
蓮華たちは高速で上昇していた。
しかしその勢いも徐々に衰え、やがて止まる。
「お、落ち……」
「か、風を……」
瞬間、蓮華のすぐ足元に魔法陣が出現し、それに着地すると、再び急上昇の跳躍を見せた。
「ぐぬぅわあああああああああああああ!?」
「いぃやぁあああああああああああああ!?」
「はっはっはっは! ビビリすぎだぜ二人とも!」
大絶叫のリューテとメイヴ、対して蓮華は愉快そうに笑っていた。
ふと、跳躍した先に飛竜が飛んでいるのに気付いた。
「やばっ!」
飛竜に乗っているのは、竜人とセレナ。
「天使多すぎだろ。セレナ、一旦戻って補給するか?」
「うぅん、まだ、大丈夫……竜人、下!」
竜人も、そして飛竜も直感で下からの脅威を察知し、身を翻した。
「きゃっ!」
竜人の背にしがみつくセレナ。竜人は下から上へ通り過ぎる人物を、竜騎士の動体視力で捕えた。
「うわぁ、なんだあいつ……セレナ、大丈夫か?」
「舌噛んだ……」
「……戻るか」
舌を負傷したセレナと共に、竜人は一旦退却することになった。
三回の跳躍で、すでに城の頂点を追い抜き、飛竜や飛空挺の飛び交う空まで翔け上がった蓮華。
「もう一息だな……ローラ!」
ローラは魔法によってふわふわと飛行し、蓮華の隣に居た。
「私の後に続いてくれ!」
「うん、蓮華ちゃん。気をつけて」
そして蓮華はこれまで跳躍を軽々と凌駕する勢いで、城へと跳躍した。




