メノウ観光
「うう...」
目覚めの気分が悪い...
昨日、というよりも今朝まで私達の歓迎会は続いた。
酒に酔わない体とはいえ、流石に移動から朝までどんちゃん騒ぎというのは精神的にかなりの疲労を感じた。
途中でマヤちゃんとサラちゃんは寝かせたけど、同じく子供なイェンは朝まで大笑いでご飯を食べていた。
頭を振って意識の覚醒を促す。
昨日、結局赤の国の女王には出会えなかった。
現在居るのが、城...じゃなくて宮廷だっけか...
で、離れに住んでいるという女王へ挨拶をしたいと、フレアが聞いてくれたのだが、
「女王様はお疲れなご様子です、女王様の事はお気になさらずごゆっくりとおくつろぎください」
と、断られてしまった。
そうして手持ち無沙汰となった私達の前にごちそうがこれでもかと運ばれてきて、赤の国の兵士たちと宮廷で働く人達で朝までの騒ぎが始まった。
歌や踊り等も披露されていたのだが正直黒の国と文化が違いすぎて興味よりも疑問が勝ってしまった。
それよりも私は食べ物に惹かれた。
特に麻婆豆腐と言う食べ物が気に入った。スパイスで辛い味付けとひき肉が良く絡み、それがかかった淡白な味の豆腐が箸を止めさせない。
チカゲ隊長の地元の食べ物だと聞いていた米が一緒に置かれていたため、麻婆豆腐と一緒に食べていたら怪訝そうな顔をされたが...
そう言えば、チカゲ隊長の地元の文化に似たものをこの国ではよく見かける。
箸もそうだし、服装もどこか似た雰囲気がある。
因みに、フレアは最初に杯に注がれた紹興酒という酒を気に入ってずっと飲んでいた。
マヤちゃんは持ち前の人懐っこさですぐに打ち解けて、それに付き合っていたサラちゃんが振り回されていた。
しばらくしたら2人揃って座り込んでうとうとしていたので、部屋の場所を聞いて寝かしつけた。
子供が居なくなった事で場の盛り上がりが数段増し、気がつけば朝を迎えていた。
...
とりあえず今日やることを考えないと。
「フレア、起きて」
ぺちぺちぺちぺち...
「んん...お酒た~くさん。しあわせぇ...Zzz」
ダメだ。
私達に監視がつかないようにうまく動くんじゃなかったっけ?
...まぁ、そんなこといっても数時間もすれば任務のために動いてるだろうって信頼感はあるのだが。
とりあえず酔っ払いは放置してマヤちゃんとサラちゃんを起こしに行こうか。
「やっぱだるい...」
正直言って眠い。すっごく眠たい。
でも、精神的な疲れで肉体的な疲れではないんだ。2人と遊べる時間があるなら優先したいのだ。耐えろ私。
「二人とも起きて~」
どうせ同じ部屋だからとりあえず一緒でいいやとベッドに押し込んだ2人は、仲良く朝まで寝ていた。
2人の布団を剥がしてゆさゆさと揺すった。
「んぁー...ふぇっ!レナさん!?」
「おはよ」
良かった。酔っ払いと違って起きてくれた。
寝起きのサラちゃんがバタバタしてて可愛い。...いや、そんなにバタバタしなくても。
「マヤちゃん、起きてよー」
サラちゃんが幸せそうに寝ているマヤちゃんを揺さぶった。
...てか、よくよく考えたら私がマヤちゃんを起こすのって珍しいな。会った時から逆というか、マヤちゃんは早起きなイメージがある。
流石に長距離を野営しながら移動して、このベッドに寝かされたら起きたくなくなるか。
うん、わかるよ。
というより羨ましくなってきた。やっぱり私も寝ようかな。
ごろん。
「え、ええ!?レナさん、なんで寝て」
「んん、ふわぁ。おはよ、サラちゃん。あれ、レナお姉ちゃん、なんでこんなところで寝てるの?」
「Zzz」
「マヤちゃんが起きないからだよぉ!」
「そうなの?...じゃあもうちょっと寝よっかな」
「え、ちょっと。ええ、二人とも、起きてよー!」
――10分後。
「キミら何してるの?」
目覚めたフレアが部屋に入ってきた。
サラちゃんをからかった私。
私の様子から状況を察し、便乗して二度寝のフリをするマヤちゃん。
私達の様子にあたふたするサラちゃん。
混沌としていた。
――10分後。
「それじゃ、私は仕事を始めるね」
フレアの切り替わりが早い。さっきまでのだらしない顔が嘘のようだ。
「遊んで良いとは言ったけどあまり羽目を外し過ぎないように。それと、うっかり口を滑らせたりしないように。レナちゃんはそういう揉め事多いから。」
「はーい。」
「伸ばさない」
フレアがお母さんみたいな感じになった。
そんなやり取りをしてたらマヤちゃんとサラちゃんが服を着替え終わった。
「じゃあ、フレア。お願いしますね。指示があれば動くから」
「ほいよ~、楽しんどいで。2人も、治安悪い場所あるみたいだしレナちゃんから離れないように」
「「はい!」」
「素直で可愛いね~。そこの捻くれお姉さんも昔は可愛かったんだけどなぁ」
「ちょっと...」
なんか変な方向から飛び火してきた。
長くなる前に去ろうかなと思い始めたところでフレアがこちらを向いた。
「分かってると思うけど、夜は絶対に遅くなっても宮廷に戻ってくること。私は戻ってこれるか分からないけど不審な動きはしないように。それと、先に伝令が来ると思うけどクラウちゃんは予定通りなら来週到着だからね。」
「分かった、くれぐれも無茶はしないでね」
フレアが仕事で失敗するのは想像できないが、他国で隠密行動なんて危ないからな。
とりあえず私は遊びたい気持ちより子どもたちを守る気持ちを強めにしておこう。
――――――
―――
「今日はなにしよっか?」
宮廷から出て二人に聞く。
と、言っても他国は初めて、二人とも「うーん」と考え込んでいる。
歩いていると町並みが少しずつ見えて来た。
「ここが、黒の国で言うブラドの街?」
王都、この国では何ていうか分からない。
朱塗りの門をくぐった瞬間、ずいぶん派手な街だと思った。
街は華やか、というよりも騒がしい。
屋根はどれも端が上に反っていて、軒先には赤い提灯がずらっと並んでいる。石畳の道には露店がひしめき、焼いた肉や香辛料の匂いがそこら中から飛んできた。
...落ち着かない。
何だ、青の国では感じなかったような明らかな異文化を感じる。
人が多い。声が大きい。目に入る情報が全部新しい。
見慣れない文字、だけどこれもチカゲ隊長の故郷で使われている文字に似ている気がする。
ブラドとは何もかも違う。
でも嫌いじゃない。
「あ!いい匂いする!」
マヤちゃんが反応した。
え、昨日あんなに食べたのに...
いや、初めてあったときもそうだったか。マヤちゃんは食べるのが好きだ。
匂いがする方向に視線を向けると、露店で大きな木の器から湯気が上がっている。
「じゃあ、朝食にしようか」
「うん!やったあ!行こ、サラちゃん!」
「あ、待ってよ」
パタパタと2人が走っていく。




