次の任務
「ええと、なんでしょうか?」
私の質問に隊長は苦い表情を崩さないまま続けた。
「レナ、帰ってきてくれたことは非常に嬉しいんだが...わかるだろう?」
隊長から滲み出るストレスをとりあえず苦笑いで受け止めておく。
――マヤちゃんを連れてブラドの王城へ帰ってきてから、約1週間が過ぎた。
隊長の言いたいことは...まぁ、働けと言うところだろうか。
今日の午前中に隊長達が招集されて会議をやるというのをクラウから聞いた。
隊長は満を持して帰ってきた私が1週間目立った働きをしていない事を他の隊長から責められたんだろうか?
隊長の立場からしても"何も言わない"という選択は出来ないだろうね。だから嫌そうな顔をしているんだ。
「暇してはないですよ?」
「それは分かってるんだ。マヤはとても優秀な候補生だと連絡が来ている」
この1週間、私はマヤちゃんの生活の支援をしていた。
兵士として認められたとはいえ、流石に即戦力というわけにもいかない。
最初は私は同じ部隊への配属を...と考えていたんだけど、
流石に直接獣と戦う任務や、最近では隣国との関係も怪しい事を考えると、新人には荷が重いと思って頷けなかった。
マヤちゃんは兵士候補生として、城の離れにある訓練学校へ入った。
制服の色は私の物々しい軍服とは違って、白を基調とした爽やかなものである。
可愛かったな~
私がニヤニヤしていたら隊長がこちらを睨んでいる事に気づいた。
「すみません、女王暗殺の犯人と母の調査ですよね。進捗はありません」
隊長が私の発言を聞いて、分かってたとばかりにため息をついて項垂れた。
...そうは言われてもなぁ。
マヤちゃんを連れてくるために兵士には戻ったけど、結局自分の目的は見つからなかったのだ。
もちろん大切な人たちを守るためにっていうのもあるんだけど、いまいち兵士の仕事と自分の感覚と結びついてこない。
沈黙した私を見て、隊長がこの話を切り上げて次の話に移った。
ただ、私を見て一瞬だけ気の毒そうな表情をうかべたのが少しだけ引っかかった。
「今日の会議の議題なんだがな...我々の部隊で赤の国の調査をとのことだった」
「ほぉ」
私も気にしていた件だ。
トルマの件や、ニグル山での霧の件。無視しては通れない課題だ。
「斥候部隊から数名現地には派遣しているが、目につくような報告は上がってきていない。そこでだ、あえて大規模にコンタクトを取ってみようということになった」
隊長の説明はこんな感じだった。
赤の国と黒の国は長年親交が絶たれており、急に話を持ち出すと警戒される恐れがある。
掴んでいる情報をそのまま出すと警戒される。視察という形で入り込めば、こちらの手の内を探られる恐れが減る。
ダミーとして交友関係がある青の国にも話を持ちかけ、国家間の合同演習を提案する。
ということだった。
そして、今回の話で私が一番気になったのは、
「合同演習として参加するのは、候補生だ。もちろんマヤにも参加してもらう」
という発言。
「なんでですか?隊長。マヤちゃんを敵かも知れないところへ行かせようなんて。」
私の発言に、苦笑をうかべた隊長が返してくる。
「...だから言っただろう?働けと。調査が進んでいればどちらの名前も上がってこなかったはずだ。今回もちろんお前は護衛任務に行くだろう?」
「そりゃ、まぁ。」
「不服そうだな。まず、調査が進んでおらず暗殺者がいるかも知れないこの城内での暮らしよりもお前と一緒に行動していたほうが余程安全だと思うが。」
言われてハッとした。
そうか、私が女王暗殺を調査するということはマヤちゃんの身を守ることだったんだ...
もしも敵が国そのものを陥落させようとしているとしたら、メジャーワーカー不在の時にマヤちゃんの身へ及ぶ危険が段違いになる。
やられた。
急に降って湧いた難題だと思っていたけど、リスクの方はわかりやすくそこにあったんだ。
だから隊長は、私の意見を尊重してくれつつ、気が乗らないけど進言してくれてたんだ。
「すみません。隊長」
「まぁ、決まったものは仕方がない。それで、お前には合同演習中に赤の国の調査を行ってほしい。行動は、フレアと頼む。」
私が浅はかさを反省したことを分かったのか、それ以上は何も言われなかった。
「遊撃部隊はこの前の一件でほとんどの隊員を失ってしまってな。出払い状態が続きそうだ。青の国の使者にはクラウディアを同行させようと思う。」
どんどんと話が進んでいっていることにようやく頭が追いついてきた。
私はフレアと赤の国の調査、クラウは青の国へ合同演習の要請へ同行と。
「よかった...」
「何がだ?」
「あ、いえ。独り言です」
そっと口から声が出た言葉を隊長に拾われたが、流しておく。
青の国とは長年の交友関係が有るのだが、個人的に会いたくない人物がいるんだ。
でも、今回はクラウが行ってくれるということだったので、そっちの方は心配しなくて良さそうだ。
――とりあえず、ほぼ強制的にだが次に何をするかが決まってしまった。
次から次へと真新しいことばかりで、少しだけ緊張を覚えつつ隊長の部屋をあとにした。
空いてしまってすみません。
引き続きお願いします。




