昼休み
「隊長から聞いた?」
「うん!楽しみだね、レナお姉ちゃん」
訓練校の昼休みに合わせてマヤちゃんに会いに来たところ、思ったのと違う反応が来た。
ベンチに座って拍子抜けしている私を他所にマヤちゃんが続ける。
「合同訓練?っていうのは大変かもだけど、他の国に行けるんでしょ!?私、ブラドとトルマしか知らないから楽しみだなぁ...!お姉ちゃんは他の国へ行くのは初めて?」
キラキラと目を輝かせるマヤちゃんは完全に旅行気分だ。
...あー、あれだ。隊長は今回の遠征の趣旨をぼかして伝えているな?
察しなくても分かった。
重要人物。ましてや子供を不用意に危険にさらさないようにという判断、もとい隊長の気遣いだ。
嘘をつくのは心苦しいが、ここは隊長に乗っかっておこうか。
「青の国には行ったことあるよ。でも赤の国は初めてかな」
「そうなんだ~。どんな食べ物があるのかな~!」
早速食べ物の話題になっているのがマヤちゃんらしくて微笑ましい。
私も悲観的にならずに赤の国の観光予定でも建ててみようかな?
「あ、そうだ」
「ん?」
楽しそうだったマヤちゃんが何かを思い出したかのように後ろを振り返った。
「おーい、サラちゃん!こっちこっち!」
マヤちゃんが呼びかけると、校舎横の茂みからおずおずと一人の少女が出てきた。
歩く姿から気弱な子なんだなと勝手にイメージしてしまう。
歳はマヤちゃんと同じくらい。青い瞳に青い長髪...小さいクラウが現れたようだった。
シニヨンと大きめの眼鏡でだいぶ印象は違うが、それでも一瞬でクラウを連想するくらいには似ていた。
「お姉ちゃん、こちらはサラちゃん」
「さ、サラです!こ、こんにちは。レナ様」
「あ、どうも。レナです。」
急に目の前に現れた美少女に、素っ気ない返事をしてしまった。なんだ、「どうも」って。
...にしても、マヤちゃん。もう友達なんて出来たんだ。
マヤちゃんにズボラとか言われるような私じゃこんな短期間で友達なんて作れないよ。
「あの...」
「ん?」
私の目の前に来たサラちゃんはもじもじと何かを言わんとしている。
「え、と...ふ、ファンです!握手してください!!」
「え?あ、はい。どうも」
唐突に目の前に出された手にまたまた反射的に握り返した。
「わ、わたし、訓練校じゃ落ちこぼれで...でもこんな見た目だから、あのクラウディア様と比べられることが多くて、それで、この前うわさをうかがって、それで、それで...」
ああ。なるほど。
クラウは確かに訓練校では同年だけでなく年上と比較しても突出した成績を出していたから私も名前は知っていたしな。
確かに自分の成績がどうあれそんな人と比べられるなんてたまったもんじゃないな。
そんな重圧に耐えかねてたときに訓練校じゃ無名だった私がエリートを負かしたなんて話を聞いたんだろう。
まぁ、その実は私が我が儘を通しただけだったのだが。
「ありがとう、サラちゃん。」
ベンチから立ち上がって自分の胸の高さにある頭を抱いてみた。
やっぱり小さいクラウみたいで変な感じ。
「私はあなたが普段どんな生活をしているか分からないから励ますことはできないかもだけど、本当にお疲れ様。あと、マヤちゃんの友達になってくれてありがとうね。」
口下手な私じゃ変なことを言ってしまうかも知れないから、本心だけ伝えておくことにした。
――私も、そしてサラちゃんもお互いに黙ったままだった。でもその静寂は決して居心地悪いものでは無かった。
―――
――――――
「それで、お姉ちゃんは何しにここへ?」
「あ」
あ、そうだ。
隊長が作戦の概要を隠すつもりなら、ここへ来た意味が無いじゃないか。
「え、、、と。意味なきゃ来ちゃダメ?」
「良いよ別に、お姉ちゃんとご飯食べたいし」
そう言うとマヤちゃんが私とサラちゃんを食堂へと誘った。
―――
「...ふぅ、、、結構量あるね」
訓練校は城内にある施設のため、兵士だろうと利用は可能だ。
それでも、特殊な服を着た兵士は目立つことに代わりはない。むしろ城の食堂よりも遥かに視線を集めていた。
それと、子供好きの女王の意向からか質や味はともかく量は城の食事を凌駕していた。
「それで、お姉ちゃん。今回の遠征ってもちろん裏があるんだよね?」
あ、バレてたんだ。流石に唐突すぎて完全には隠せないよね。
目をパチパチしているサラちゃんを横目に話を続けた。
「まぁね。私"には"別の任務もあるよ。でもマヤちゃんは隊長が言っていた通り。合同演習で他国に自分の実力を示してくれればいいよ。」
「ふーん。そうなんだ。まぁ、お姉ちゃんが言うつもり無いなら別に聞く気ないけど。」
微妙に不服そうなマヤちゃんだが、それ以上聞いてくることは無かった。聞き分けが良くてありがたい。
「それと、サラちゃん?」
「え、は、はい。わたしですか?」
「マヤちゃんと一緒に合同演習出てみない」
「え、ええええええ!?」
そんなに驚かれても困る。
今回の遠征に実力なんて関係ないんだから、腕試し程度で考えてくれれば良いんだ。
言わば人選は自由。適当に候補生が呼ばれると思うが、私は私の居心地優先だ。
知ってる人、ましてやマヤちゃんの友達なんて知らない候補生よりよっぽど良い。
「腕試しだと思ってさ?」
「.......」
とりあえず俯いてしまったサラちゃんに概要だけ説明したら、昼休みが終わりそうな時間になったため立ち去ることにした。




