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モブに転生したと思ったのに私もヒロインって本当ですか?  作者: 芹屋碧
一章 転生垢抜けモブ令嬢な私と憧れの魔法騎士様とふしだらなヒロイン
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 『年齢制限版のヒロインよ!~~~全年齢版クリア後、希望者だけが課金することでできる特別オプション!!

 キスやエッチも攻略対象者と出来る特別版よ!!~~~~っずるいっ!!』




 先ほど講義室でアイナに告げられたことを思い出す。


 ――私は本当にヒロインなのかな・・・


 今までは自分がヒロインである可能性など微塵も考えたことはなかった。


 もしかしたらアイナさんが勘違いしているだけかもしれない。

 前世の記憶を持っているのなら、あんなにはっきりと私を敵視するのは本当にもう一人のヒロインだからなのか。


 ヒロインかもしれないということは受け止めたものの、ルナセイラはそれ以外全く知らない。


 「ルナセイラ」というヒロインが、どんな能力を持っていてどうやって攻略対象と関わっていたのかも。

 どうやって試練を乗り越えたのかも。

 どんなエンディングを迎えたのかも。


 そもそも攻略対象がアイラと同じなのかも何一つわからない。


 たとえルナセイラが攻略対象と体の関係を持つことを許されていたとしても、体の関係どころか彼らを好きになること自体考えられないだろう。




 ――・・・でも・・・もしセイオス先生が私の攻略対象なら・・本当に守ることが出来るかも?


 一つの可能性に、ルナセイラは少しだけ心が浮き立つ。


 

 教室へ戻るとアイナは攻略対象四名に囲まれ、いつものように席に腰かけている。


 ――・・・さっきの事があったのにアイナさんは気にしてないようね・・


 呆れ気味に見つめると、ふとアイナの後ろの席に腰かけていたサーシャと目が合う。


 彼はふっとこちらに向かって微笑みかけた。


 突然の事に目を瞠ったが、ルナセイラはすぐに視線を逸らす。


 ――どういう事?!・・・いま・・・確かに微笑まれた・・・よね?!


 これまでずっと同じクラスだったが、微笑みかけられたのは初めてだ。




 サーシャはマジェスティ伯爵家の嫡男。妖精と人間との間に生まれた稀有なハーフだ。

 妖精である母親に似た美しい銀色のロングストレートヘア、宝石のようなエメラルドの瞳、神秘的な透明感のある素肌、背丈は百七十前後程で男性のわりに低めだが、中性的な目鼻立ちは女性とも見える美しい容姿だ。

 妖精の血を引いている為、魔法スキルはSSで魔力量も非常に多い。

 頭も良く学年成績も十位以内。ただ、体力はないらしいが弓術スキルはSSと優秀。

 普段は本を読んだり、魔法を連携する研究などに夢中になっている。

 執着することが殆どなく、アイナや攻略対象の三人と話をしているくらいで基本は一人。

 美しいものは何でも好きなようで、花を愛でたり男女問わず美しいと思う者には優しい印象だ。


 ――・・・・もしかして・・私に微笑んでくれたのは・・・美しいと思われたから?


 それならば納得できる。昨日までは全く相手にされていなかったのに、今日いきなり微笑まれるなんてそれしか考えられない。


 納得いく答えを見つけてすっきりしたルナセイラは、セイオスの訪れを心躍らせながら待ちわびた。

 



 授業開始の鐘が鳴り、魔法学教諭ギシウスと共にセイオスも教室へやってきた。


 教室に入るなり、いつものようにセイオスはルナセイラを見つけて薄く微笑む。


 しかし、驚愕した面持ちで立ち止まった後、何故かぷいっと視線を逸らしてしまう。


 ――え??・・・・まさか・・今目を逸らされた?!


 今まで一度も目を逸らされたことのなかったルナセイラはショックで固まった。


 授業が始まっても心ここにあらず。


 何故自分がセイオスに無視されたのか全く理解できない。


 授業に全く身が入らず、ぼーっと机を見つめていると目の前にカサリと紙切れが置かれた。


 ――!!


 ハッとして顔を上げると、そこにはにこりと微笑みをこちらに向けるセイオス。


 しー・・・人差し指を唇に当てて、ニカっと歯を見せて笑うと何事もなかったかのように机の横を通り過ぎた。


 ――先生・・・嫌われたわけじゃなかった!!よかったぁぁああっ!!


 ルナセイラはホッとして脱力する。


 目の前に置かれた紙切れを開いてみると、メッセージが記されていた。


 『後で図書室で話を聞かせて』


 思わず表情が緩んでしまう。


 わざわざ手紙を渡してくれるとは思わなかった。


 流石王太子殿下、文字も殴り書きのはずなのにとても美しい。


 ――これは私の宝物ね!!


 綺麗に紙の折り目と皴を伸ばすと、自分の持ち歩いている予定帳に大切に挟み込む。


 先ほどまでの気落ちが嘘のように目の前がバラ色に感じる。


 授業の合間もセイオス先生は私と目が合うと少しだけはにかんで微笑んでいた。


 ――あー・・・もう今日はこれで最高だわ!!嫌な事全て忘れられそう!


 セイオスは自分にとってマリーエルと同じ位親しい友人であり、魔法剣士という稀有な存在であり、尊敬できて崇拝する存在。


 ――恋愛なんかよりもずっと尊いわ!!


 もしかしたらセイオス先生は私にとって「推し」という存在なのかもしれない。


 ――推しって・・・・最高だわ!! 

 



 四限目が終わるとすぐに片付けをして図書館へ向かう。


 相変わらず今日は一日中ずうっと周りからの視線が煩かったが、セイオスに会えたルナセイラは全く気にならなくなっていた。


 無意識に微笑みを浮かべ、廊下を生徒とすれ違う度に振り向かれていたなど知る由もない。


 図書館に入ると、セイオスは図書室の奥からこちらへやってきた。


 「今日はちょっと込み入った話もしたいから場所を替えるよ?」


 にこっと微笑んでセイオスはルナセイラの手を掴むと、引っ張ってきた道を戻るように踵を返して歩みを進めた。


 「今日は先生の方が来るの早かったんですね!」


 先にセイオスが着ていたことが嬉しくて、手を直に触れられていることすら気にならない。


 前世の影響もあるのだろうか。


 「今日は早く私も終わったんだよ。それに早く聞きたいこともあったしね!」


 振り返りウィンクされてドキリと胸が高鳴った。


 ――・・・今日のセイオス先生・・・・なんだかいつもと違う?


 案内されたのは、窓際の長テーブルの席ではあるが、入り口付近のいつもの席とは違い本棚を通り過ぎた奥のスペース。


 元々生徒は放課後は少ないのだが、奥のスペースは誰もいない。


 まるで二人きりのようにすら錯覚してしまいそう。


 「さ!ここに座って話そうか!かけて?」


 窓際に座るように促されて腰かけると、何故か隣にセイオスも腰かけた。


 ――???


 「向かいの窓際に座らなくって良いのですか?」


 「うん。今日はそれどころじゃないから」


 「??」


 浮かべた笑みは優しげなのに、何故か密やかに圧を感じて胸がどきどきと早鐘を打つ。


 ――・・・なんだかやっぱり今日のセイオス先生はちょっぴりいつもと違うわ・・・


 雰囲気に動揺して何から話し始めたらよいか逡巡していると、セイオスから話を切り出された。 


 「ねぇ、なんでそんなに今日は綺麗にしているの?いつもは隠してるのに・・・なんで?」


 速攻で確信をつかれ、ルナセイラはびくりと肩を揺らしでしまう。


 「――今日からは容姿を隠さないことにしたんです!」


 「・・・・・もしかして、昨日言っていた目標と関係ある?」


 「はい。この姿の方がセイオス先生を守れると思ったので!」


 当然のように答えたが、セイオスは全く納得していない様子で顔をグイっと近づけてくる。


 「待って待って!なんでそう思ったんだい?!

 ・・・むしろ今はルナセイラ嬢こそ守られないと危ない状況だよね?」


 ――な・・・なになに?!か・・・顔ちかいっ!!


 突然の接近になれない気恥ずかしさで顔に熱が集まる。


 俯きたいのに出来る雰囲気ではなくて、聞き返すことしかできない。


 「な・・・なんでですか?」


 「なんでですかって・・・気づいてないわけないよね?クラスの男子生徒みんな授業中なのに君に見惚れていたじゃないか!!」


 やはりセイオスも気づいたらしい。


 今日は休憩時間だけではなく、授業中ですら生徒たちの視線がルナセイラへ向いていた。


 よそ見をしていると怒られた生徒も多々いたのだから、気づかないのがおかしいと言えるだろう。


 「あー・・・それは・・・不可抗力です!」


 「そんなのでどうやって私を守るって言うの?」


 呆れながらも頬をぷくうっと膨らませてセイオスは問う。


 ――な・・・何その顔!!可愛くて尊いっ!!尊死しそうっ!!


 ルナセイラは決して前世でセイオスを推していたわけではないのだが、人となりを知った現世は気分は推し活だ。


 しかし、セイオスの表情に夢中になっている場合ではない。


 「守る」というワードが出た以上本題に入る必要がある。


 ルナセイラは呼吸を整え本題を切り出した。


 「――そうなんです!!実は・・とうとうわかったんです!!

 アイナさんが、なんで四人の男子生徒たちとふしだらな関係を築いていたのか!」


 「どういうこと?」


 訝し気に私を見つめるセイオス先生に、丁寧に今日の出来事を説明した。




 昼休み中に突然アイナさんに呼ばれ、断ろうとしたがまた殿下と共に叱責を受けそうになったこと。

 しかし、何故か殿下からは丁寧に謝罪の言葉を貰って、アイナさんと話を二人きりでしてほしいと頭をさげてお願いされたこと。

 そして、講義室でアイナさんと二人きりになった時、彼女が自ら殿下と他の三人との関係を認め、彼らと深い関係になったのは私に奪われたくなかったからだという事。

 殿下はアイナさんとの交際は順調と思っているようだが浮気されているとは知らないようで、もしばらされても殿下は自分の事を信じてくれるし、他の三人だって奪わせないとアイナが豪語したこと。

 ただ、豪語する割には取らないで!と悲痛な表情で何度も訴えかけてきたことまで報告した。 




 「やっぱり危険なのは私じゃなくてルナセイラ嬢の方だよね?!何やってるの!

 あの子に勝手に敵視されているじゃないか!」


 全て聞いたあと、ぷんぷん怒りながらセイオスは声を荒げた。


 「・・・敵視はされてますけど、わかったからには私が出来るだけセイオス先生の傍にいて守りますから!アイラさんと二人きりにさせません!」


 トンと胸を叩いて自信満々に笑みを浮かべたが、セイオスはジト目を返すだけ。


 「~~~~・・私の事はいいんだよ!あの子なんてどうにでも躱せるんだから!余計な心配しないで!

 ・・それより私はルナセイラ嬢があの子の言う通り、エディたちが君に近づいてくるかもしれない方が心配なんだけれど!」


 セイオスはむすっとしながら不安げに言う。


 ――今日は珍しい先生の表情がいっぱい見れて眼福だわ!!


 心配されているルナセイラはセイオスの事ばかりに夢中になっていた。


 「大丈夫です!私は他の女性に好意をもっている方なんて興味ありません!」


 「君が大丈夫と言っても説得力ないよ!手の甲にキスされて気を失うくらい純粋なのに!」


 昨日の恥ずかしい気絶の件を再び話題にされて、ルナセイラは羞恥で顔が真っ赤になっていく。


 「それはもう忘れて下さいよぉぉ!・・でも、セイオス先生が私を心配してくれるのは嬉しいですね!この姿でいるのも悪くないです!」


 頬を染めながらはにかみ微笑むルナセイラに、セイオスは少しだけ頬を染めてたじろぐ。


 「忘れられるわけないよ!

 ・・ルナセイラ嬢・・・・まさかとは思うけど、その容姿だから私が君を心配していると思っていないよね?」


 「違うんですか?今まで心配してなかったですよね?」


 首を傾げてからさも当然とばかりに肯定する。


 「それは君の容姿が今までは隠せていたからね!・・・・でもこれからは違うでしょう?昨日までの格好に戻ったって、もう皆には知られてしまったんだから!

 ・・・・それに・・・私だって君が容姿をわざと隠していることくらい入学当初から気づいていたんだ!相手の秘密を知っているのはルナセイラ嬢だけじゃないよ!」


 「え?!知ってたんですか?!」


 まさか入学したころから知られていたとは思わず、ルナセイラは驚愕する。


 「知ってたよ!・・・髪の毛の質感がおかしかったし、前髪から覗く綺麗な瞳だって・・私だけが知っていたのに・・・」


 「え?・・・もしかして・・・私の容姿を皆に知られて寂しい・・・とかおっしゃいます?」


 「~~~~~そうだね!!」


 頬を朱に染めてぷいっと視線を逸らすセイオスに、つられてルナセイラまで照れ臭くなる。


 まさかセイオスが自分の事を、想像以上に親密に想ってくれたと思わず感激してしまう。


 「――わ・・・・・私なんかが先生の傍にいて、迷惑じゃないかなって思ったこともあったので・・なんだか・・・すごく嬉しいですっ!」


 「~~~~~~!!」


 「――先生?」


 嬉しくて堪らなくて笑顔で告げると、何か言いたいことを堪えるように震えながらセイオスは俯く。


 「・・・容姿を戻してとは言わないけれど・・・これからは私の事を守るっていうのなら・・・ちゃんと傍にいて!・・・そうしたら私も・・君を守れるから」


 途切れ途切れになりながら、掠れるような声音でルナセイラのことも守ろうと言ってくれるセイオス。


 「はい!!お任せください!!」


 嬉しさが堪えきれなくて本能のままに大きい声音で元気よく笑顔で返事をしてしまった。


 「・・・・・」 



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