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モブに転生したと思ったのに私もヒロインって本当ですか?  作者: 芹屋碧
一章 転生垢抜けモブ令嬢な私と憧れの魔法騎士様とふしだらなヒロイン
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 エディフォールの勧めで、誰もいないいくつかある講義室の内の空いている部屋に二人は入った。


 入口まで連れ添っていたエディフォールは「部屋の外で待っている」とアイナへ告げていた。恐らくやじ馬たちが近づかないように見張ってくれるのだろう。


 ――まさかアイナが泣きだしたら、飛び込んでこようと考えている?


 ヒロインと二人きりになるなど危険要素しかない。万が一にも再びアイナがルナセイラを陥れるようと泣き出す可能性は高い。そうなった場合、分が悪いのはルナセイラだ。


 黙っていたアイナは、悲壮感を漂わせたまま話し始めた。


 「あの・・・ルナセイラさん・・・・貴女なんで自分を偽って・・・・入学したの?」


 ――・・・・そんなことで話がしたいって呼びだしたんじゃないでしょうね?


 「自分の容姿が有効活用できるとわかったので、隠す必要がなくなっただけですわ」


 当たり前のようににっこりと微笑みを絶やさずルナセイラは返事をする。


 「まさか・・・その有効活用って・・・・エディを私から奪う・・・為?」


 アイナさんの言葉が理解できない。私が容姿を元に戻したからといって、王族を狙いたいわけじゃない。確かに貴族令嬢であれば王子様に憧れを持つことはよくあること。だけど、それを私に当てはめて呼びつけるのはおかしい。


 「いいえ、私は自分以外へ好意を向ける殿方へ恋慕するなんて、ふしだらなことはいたしませんわ」


 「う・・・嘘よ!!」


 「嘘ではありません」


 「嘘!!」


 ――・・・なんなのこの子は・・・・


 流石に同じ問答を繰り返し、どう考えてもお門違いなことを考えているアイナにルナセイラは苛出ちが募る。


 「何故私が嘘を言っていると思うのですか?」


 悲し気な表情を見せて、私は原因を探ることにする。


 「だって・・・・だって貴女は、ふしだらなルナセイラじゃない!!!」


 ――今なんて言った?!


 聞き間違いだろうか。今、目の前に立つアイナさんは、確かに私に向かって「ふしだらなルナセイラ」と罵った。

 

 「アイナさん・・・自分の事をおっしゃっているのかしら?」


 「違うわ!私たちは愛し合っているから良いの!ふしだらなのは貴女よ!!」


 ――・・・・これって名誉棄損になるんじゃない?


 生まれどころか前世から私は男性と付き合ったことすらない喪女だ。そんな私に目の前のアイナさんは、堂々と大きな声で「ふしだらなルナセイラ」と決めつけている。


 ――・・・・これは裁判で訴えれば勝てる案件では?


 ルナセイラの事はふしだらだと宣い、自分の行いは「愛し合っているから良い」と恥ずかしげもなく言う。


 ――神経を疑うわね・・・


 「それなら殿下以外のバンデントイル伯爵家のアレクシス様は?エイモンド侯爵家のラジェス様は?マジェスティ伯爵家のサーシェン様はどうなのですか?」


 「な・・・・何を言っているの?!」


 わかりやすくあわあわとアイナは動揺が隠せない。


 「今、名前をあげた方々ともしているでしょう?それはふしだらではありませんの?」


 しらっとした顔で不思議そうに首を傾げながら眉尻を下げてルナセイラは問う。


 「かっ・・勝手なことを言わないで!!そんなことしていないわ!!・・・・ひ・・・ひどい!!」


 ぽろぽろ涙を零し、自分は悪くないとアピールするアイナ。


 ――・・・・なんでこんな女がヒロインになってしまったのか疑問でならないわね・・・


 「・・・まぁ、やったやってないは私にとってはどうでもよいことです。私に害さえなければ。」


 「だ・・・だったらなんで容姿を戻すのよ!!・・・奪おうとしているようにしか・・思えないでしょ!!」


 ――・・・また振り出し?・・・・被害者意識が強すぎるのかな・・

 

 昼休みは生徒の交流の時間も含まれており、二時間用意されている。


 食堂での騒動からすでに半刻程は経っているだろう。ルナセイラは次の時間セイオスに少しでも早く会うために教室に戻りたかった。


 ――・・・一体これはいつ終わるの?


 腕時計をしていたら確認せずにはいられない程、ルナセイラは時間が気になって仕方がない

 

 「先ほど殿下にも申し上げましたけど、私が自分磨きをすることはそんなにいけない事なのですか?」


 「~~~~~~・・・」


 何故かアイナは涙を流したまま悔しそうに口を引き結ぶ。


 ――何がしたいのかわからないわ・・・


 「そもそも、殿下と愛し合っているのであれば、私が容姿を変えようと気になさる必要ないでしょう?」


 「貴女が・・・貴女が余計なこと・・するからじゃない!!・・・・もうすぐエンディングなの・・・放っておいてよぉぉ!!」


 ――エンディングですって?!まさか・・・転生者?!


 「エンディング?・・・それは何のことですか?」


 「ちがっ・・・・これは・・・あ・・・貴女には関係ないこと・・・です!!」


 アイナは明らかに失言したことに気付いたのか更に慌てふためく。


 「私が余計なことをするとエンディングがどうとかおっしゃったじゃないですか。それは何なのですか?」


 「だって・・・だって・・・・貴女はずるいんだもの!!・・・私は・・・私は普通の見た目なのに・・貴女は何でも持っている・・・それなのに・・・それなのに同じヒロインだなんて、ずる過ぎる!!!」


 ――!!!!!


 「ヒロイン?・・・・今・・・私をヒロインだとおっしゃいましたね?」


 「あ・・・・」


 顔面蒼白で自分の言った事に驚愕するアイナ。


 ルナセイラはようやく話しの流れが見えてきた。


 ――隠す必要はないわ。とっとと本音を聞きだして終わらせましょ!


 ルナセイラは口角を上げて笑みを浮かべ確信に触れた。


 「アイナさんは前世の記憶をお持ちなんですか?」


 「!!!――・・や・・・やっぱり貴女転生者ね!?・・・だから・・・だから・・・私の攻略対象者たちを奪うんだわ!!許せないっ!!」


 ルナセイラの問いにアイラは答えず自分の言いたいことを捲し立てる。


 ――勝手にアイラさんは自分自身で答えを見つけ出し、私を悪者にするのね?

 

 「落ち着いてください。私は確かに転生者よ。でもそれとアイラさんとは関係ないでしょう?」


 「な・・・何言っているの?!元のストーリーに戻すために容姿を戻したんでしょう!!」


 ――元のストーリー?


 どう考えてもアイラさんの言っていることは私の思っていることとは食い違う。


 この違和感がなんなのかルナセイラにはわからない。


 「元のストーリーというもの事態私にはわからないのですけれど・・?」


 もう一度こてんと首を傾げて不思議そうにアイラを見つめる。


 「・・・あ・・・貴女は隠れヒロインじゃないのっ!!」


 ――隠れヒロイン??!・・・・・私はヒロインなの??・・私はモブなはずなのに・・・


 ルナセイラは信じがたく、じっとアイラを見つめて本心を探った。


 「な・・・なによぉ!しらばっくれるの?!私は特別版をプレイして知っているんだからね!!」


 ――特別版?


 ルナセイラは聞き覚えのない言葉に耳を疑った。


 私が前世で「リリマジ」をプレイしていた時、特別版などというものは聞いた覚えがなかった。噂で全年齢版以外の話を聞いたことがあったがそのことなのかと頭をよぎるが確信が持てない。


 「年齢制限版のヒロインよ!~~~・・っアイナの全年齢版クリア後・・・・希望者だけが課金することでできる特別オプション!!

 攻略対象とXXやXXXも攻略対象者と出来る特別版よ!!~~~~っっずるいっ!!」

 

 ――な・・・なんですって?!


 本当に年齢制限版が存在したことに愕然とする。しかも、そのヒロインがルナセイラだという信じられない話だった。


 「彼らが・・・貴女の毒牙に・・引っかからないようにしたのに・・・今更・・・ひどいっ!!」


 ――ま・・・まさかもう一人のヒロインのルナセイラに取られたくないがためだけに、四人と性交したの?!


 「貴女・・・私を牽制する為だけに四人とふしだらなことをしたんですか?」


 違うと言ってほしかった・・・同時に複数人を愛することは難しいだろう。それでも、ヒロインは四人が好きだからしたのだと思いたかった。


 「だって・・・しょうがないじゃない!エディとしたら他の三人もしてって言うんだもの!!しなかったら・・・貴女に取られちゃうじゃない!!」


 本当にセイオス先生の言ったとおりだった。


 アイナさんが殿下としたことで、周りが黙っていなかったのだ。恐らく殿下以外の三人はアイナさんと殿下が恋人同士と知りながらもしているのだろう。

ルナセイラというもう一人のヒロインに他の三人を奪われない為だけに、アイナさんは最初から他の三人ににも粉をかけたのだ。


 ――クズじゃない!!!なんでこんな子がヒロインなのよ!!


 「アイナさんが他の三人としていることを殿下が知ったらどうなるでしょうね?関係がバレたら私の事など関係なく捨てられてしまうのでは?」


 「そんなことない!!・・・・私は絶対エディに捨てられたりしない!!他の三人だって・・貴女にはあげない!!~~~~・・・っ私の攻略対象たちは・・全員私のものよっ!!」


 言いたいことだけを言い切ると、アイナは走って講義室を出ていってしまった。


 ルナセイラは自分のあずかり知らぬところで勝手に敵視されていたことにほとほと呆れた。


 ――・・・でも私がもう一人のヒロインって・・・・本当なのかしら?




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