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モブに転生したと思ったのに私もヒロインって本当ですか?  作者: 芹屋碧
三章 認められる聖女と認めない聖女
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 あれ以来、エディフォールに治癒の力について聞かれることはなかった。


 ルナセイラは、念の為セイオスにも話はしたが、特に問題にもなっていない。


 ここ数日は、放課後セイオスと図書室で調べ物をしてから王都の医療院へ向かっている。


 「・・・治癒の力を使っていた聖女は、一体どうやって魔力溜まりを浄化 したのでしょうね?

本当に素手で触れたりなんてしていませんよね?」


 聖女に関する文献は、すべて王城で保管されている。しかし、学園の図書室は聖女のことに関してかなり多めに文献の複製版が置かれているのだ。


 それは、聖女候補を育てる学園だからなのだろう。


 しかし、その聖女の文献の中に『治癒の力』を発現させて聖女になった者がいるという記録は、たった一冊にしか記されていなかった。そして、何人治癒の力を発現した聖女がいたかも不明なのだ。


 ーーもしかしたら一人しかいなかった可能性もあるの?


 文献には治癒の力の聖女がどのように浄化したのかという記録も残っていなかった。


 余程稀有な存在だった。もしくは、治癒の力の聖女が突然現れ突然消えて、記録自体をほぼ残すことができなかったのか。


 「・・・セイ・・私たちだけで調べるには限界なのではないでしょうか?」


 ルナセイラはおもむろに口を開いた。


 これまでは、「しばらくはルナセイラの治癒の力を秘密にしよう」と言うセイオスの意見に従っていたが、自分たちだけでどうにかできる問題でもないと理解していた。


 「ルナは国王陛下にも、自分が治癒の力の聖女だという事を報告した方が良いと思っているの?」


 「はい、既に王都の幾つかの医療院では、私の治癒の力を知られています。このまま隠し続けるということは、セイにとっても良くないですよね?」


 「!!・・・気づいていたの?」


 セイオスは気まずげに問う。


「はい、私が注目を浴びすぎないように守ってくださる気持ちは、とても嬉しいです。しかし、国王陛下へ報告をしなければいけないセイが、ずっと報告義務を行わなければ、セイが叱責を受けてしまうでしょう?

 私はそれは嫌です!」


 キッパリと告げるルナセイラを、セイオスは感慨深げに微笑む。


 

 「やっぱりルナは生まれながらの聖女なんだね・・・優しくて美しい・・・私とは大違いだ」


 「セイ?・・・何が言いたいのですか?」


 珍しく自分を落とすような言い方をするセイオスを、ルナセイラは訝しげに見つめた。


 「こめんね、確かに陛下への報告を怠っているのはその通りだよ。・・・これは私の利己的な考えによるものなんだ・・・ルナは私のことまで心配してくれているのに」


 「どういうことですか?何故隠すことがセイの利己的な考えになるのです?」


 「ーー君が聖女と公認されれば、ルナを守るのは私だけじゃなくなるからね。

 私は心が狭いから、誰かと共有したくないんだよ・・・私の大切なものは、私が1人で大切に護りたい」


 告げられた言葉はセイオスの独占欲を表す言葉だった。


 「セイ・・・私はセイがウィス様と二人で守ってくださったからこそ、これまで学園生活を楽しく送れましたわ。

 もし、他にサポート役が何人もついていたら、気持ちが落ち着かなかったでしょうし、うまく力を使えなかったかもしれません。

 だから、セイの取ってくれた行動は決して間違ってはいなかったと私は思います」


 「・・・ルナ・・」


 くしゃっと顔を歪め、泣きそうな子供の顔をしながら、セイオスはルナセイラを抱きしめる。


 「ごめんね・・・ルナを独り占めしたくて堪らない・・一秒だってそばを離れたくない・・誰にも見せたくない・・・でも・・・それが次期国王となる王太子の振る舞いとして、そぐわないこともわかっている・・」


 「・・・セイ・・もしかして・・・私が貴方の心に応えなかったから、そんなに不安を感じているのですか?」


 「ーー!!」


 セイオスはびくっと肩を振るわせたので、図星なのだとルナセイラは察した。


 自分が別れを恐れて足踏みしている間、セイオスは自分の気持ちの折り合いを取るために、彼なりに苦しんでいたのだ。


 セイは強い人だけれど、私を好きでいる気持ちが強くなり過ぎて、彼自身の思慮や決断を鈍らせてしまっていた。


 ーーもっと早く私が勇気を出していれば・・・


 ルナセイラは自分本位であったことに気づき、やっとセイオスを見ることが出来た気がした。


 「・・・私はセイの事をお慕いしております」


 「ーールナ?・・・っそれってーー」


 「ーーただ、もう暫くは、私たちの心の距離の縮め方はゆっくりでお願いしたいんです。私は聖女となる覚悟を決めたばかりです。

 ここで『初めての恋人』に浮かれているわけにはいきません・・・きっと私の心は、自分を上手に律することができなくなってしまうでしょう・・・聖女のお役目を果たすことができなくなるのではと不安なのです」


 「・・・付き合えないけど私が好きってこと?」


 「はい・・・もうしばらくは、それで許していただけないですか?・・・その間、誓って他の人に目移りしませんし、万が一そんなことがあったら、私を閉じ込めても構いません!」


 抱きしめていた腕を緩め、ルナセイラの瞳を覗き込むセイオス眼差しは、真意を確かめたくて必死に見えた。


 「閉じ込めるのも嬉しいけど・・・確約も嬉しいものだね・・・今はそれどころじゃないのに、私の事を想って告げてくれて嬉しいよ。

 私も君に誇ってもらえるような王太子となろう」


 「私はセイが素晴らしい王太子殿下でいらっしゃると信じています。だからこそ、私も貴方の助けになれる聖女になってみせます。

 ですから、国王陛下へのご報告と、専門家の方々の助力を要請していただきたいです!」


 「わかったよ。今夜にでも陛下へ報告をすると約束する。」


 「ありがとうございます!・・・それで・・・そろそろ離れませんか?」


 ずっと腕の中に閉じ込められていたルナセイラは、頬を赤く染めて「早く離してほしい」と訴える。


 「ダメ!折角両想いだってわかったのだから!気が済むまで離さないよ」


 セイオスはニカっと歯を見せて笑う。黒縁メガネをしたままでも愛おしく、素敵に見えて、ルナセイラは気恥ずかしくてポスっと彼の胸に顔を埋めた。

 


 ***



 ーーで・・・なんでこんなことに?!


 ルナセイラは王城の謁見室のレッドカーペットを進み、国王の御前に跪いていた。


 隣に共に跪いているセイフィオスがいてくれることが唯一の救いだ。


 「面を上げるがよい」


 威厳ある国王陛下の言葉が響く。


 私たち二人の両側には、宰相や大臣、王国の騎士団長、魔術師団長まで控えている。


 ーーい・・・生きた心地がしない!!


 まさか聖女であることをセイオスが報告して、翌日に呼ばれることになると思わず、ルナセイラの心は準備も間に合わず動揺していた。


 「そう気負わずともよい。まさか私の治める治世で、二人も聖女が現れるとは思わなくてな。どうしても会いたいとセイフィオスに無理を言った。許せよ」


 「ーー恐悦至極でございます!」


 ルナセイラはとにかく無難な言葉を探して、不敬にならないように全力で頭の中を回転させた。


 「ーーそれで、其方の名は?」


 「ルナセイラ・オレイヌと申します」


 ーー陛下は私の名前を知らないの?


 何故かルナセイラが名乗ると大臣たちが騒めく。


 ーーえ?・・・な・・なになに?!・・・没落寸前の貴族だってバレた?!


 ルナセイラは騒めきに生きた心地がしない。


 「ーーそうか・・・オレイヌ家か・・・其方は聖魔法ではなく治癒の力を使うのだな?」


 「はい。左様でございます」


 更に謁見室内に動揺が走る。


 ーーどういうこと?オレイヌ家と治癒の力が何か関係あるの??


 全く先の読めないピリつく雰囲気に、ルナセイラの頭の中はショート寸前だった。


 「其方は治癒の力の聖女のことをどこまで知っておる?」


 「私は、学園の図書室でセイフィオス殿下と共に調べましたが、治癒の力を持った聖女がいたという事しか存じ上げておりません。」


 「そうか・・それであればオレイヌ家の記録を調べると良い。」


 「我が家に・・・聖女の記録が残っているのですか?!」


 国王は頷き告げる。


 「治癒の聖女は、オレイヌ家の令嬢以外発現しておらぬ。その為、記録を保管し続ける役目を、そなたの家は今も担っておるのだ」


 ーーな・・・・なんですって?!


 とんでもない事実に驚愕し、ルナセイラは目を瞠った。


 横で跪いていたセイフィオスがぎゅっとルナセイラの左手を握りしめる。


 恐らくセイフィオスは、昨日のうちに国王に聞いていたのだろう。


 動揺している素振りはなく、国王陛下を見つめたままだが、握られた手はとても優しかった。


 自分が聖女の力を発現したのが、遺伝によるものだという事実に驚愕したものの、少しだけ疑念は拭えた気がした。


 ーー聖女の家系なら・・・聖女が生まれてもおかしくはないわね・・・でもなぜお父様たちは教えてくれなかったの?!




年内目標の20話更新無事にできました。

来年もコツコツ執筆をがんばります。ぜひブクマ、評価などで応援をよろしくお願いします。

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