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モブに転生したと思ったのに私もヒロインって本当ですか?  作者: 芹屋碧
三章 認められる聖女と認めない聖女
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 セイとは、なんとか『友人』続行の約束を取り付けることができたが、彼の私への甘さは拍車がかかっていることを理解しないわけにはいかなかった。


 放課後の図書室での二人の時間は、もう「覗き見」なんて関係ない。


 セイオスがずっと眺めているのはルナセイラだけ。


 「〜〜〜〜・・・なんですか?」


 教科書に向かう視線だけをセイオスへ向けて耳を赤くしたまま不満げに問う。

 

 「別に?――・・可愛いなと思って」


 「~~~~~~・・・・!!」


ニコニコと微笑みながら甘いことばかり言う。


 「邪魔してないでしょ?だから勉強してて良いよ?」


 「視線が・・・・うるさいんです・・・・」


 頬を朱に染めてルナセイラはふてくされる様に言う。


 「ふふふ・・・慣らすためにしてるから〜〜」


 「〜〜〜〜・・・そんなに図太くなんてなれないです・・・」


 「そんなルナだから可愛いんだよ」


 甘い言葉を延々と囁きながら蕩けるような視線を向けられて、ルナセイラは今なんの拷問に耐えているのか自問したくなる。


 羞恥で瞳が涙で潤み始めると、ヨシヨシと優しく頭を撫でられる。


恥ずかしいのに頭を撫でられると嬉しくて堪らない私がいる。


 ――・・・何も考えなくてよい犬だったら・・・・思いっきりセイに甘えられるのに・・・


 自分でもおかしなことを心の中で呟いている自覚はある。だが、ルナセイラは心の声に従うことはない。


 前世、私は全く恋人を作りたくなかったわけではない。だけど、縁を自分から作りにいかない限り、恋人を作る機会すらえられないような環境だった。


 無理やり友人に男性を紹介してもらったことも片手で数える位だがないわけではなかったはず。


 ――・・・でも、全て上手くいかなかった。


 いつからか『恋は向いていない』と自分に言い聞かせるようになっていた。


 その私の価値観が、転生して乙女ゲームの世界に生まれた今もなお根付いている。


 ――どうして友人から恋人になりたいと思うのだろう?


 ――人を好きになるタイミングって何なんだろう?


 ――付き合いたいとどんな時に思うのだろう?


 今世は友人すら少ない。女性ではマリーエル、男性ではセイオスの二人だけだ。


 ――・・・セイと恋人になったら・・・・友人ですらいられなくなるのが・・私は嫌なのかな・・


 恋人の殆どにはいずれ別れがおとずれる。


 恋人から愛を信じた人たちですら、結婚しても離婚してしまう夫婦は少なくない。


 ーーだけど友人は違う!一生ものよ!


 喧嘩をしても、お互いが友人でありたいと願い続ければ、ずっと繋がっていられる。


 優先順位は配偶者や恋人より下がってしまっても、それでも細く長く続けようと思えば続けていけるのだ。


 一生続くと言っても過言ではない。


 きっと私はそんな友人関係を尊く思っているし、失いたくないのだ。


 ――難しいな・・・・・


 友人以上に近づきたい気持ちもあるのに、近づくがゆえに壊れることを恐れる。


 ――私は・・・臆病者なんだ・・・


 セイが凄いと思う。私が断っても諦めずにぶつかってくれる。


 ――セイはなんで恋人になりたいと思うんだろう・・・


 愛を信じ、貫く強さがあるのだろうか。


 ――私にはない・・・・


 それでもセイが少しずつ慣れようと提案してくれたのは嬉しかった。


 ――臆病者な私にでも・・・希望があるよね・・・・


 隣に座るセイオスを感じながら、私は勉強に集中するふりをした。



 ***



 翌日の昼食後、庭園を散歩して歩いていた私は、前方で女生徒たちがきゃっきゃと談笑している姿が目に入った。


 ――やっぱり友達っていいな・・・・


 楽しそうな雰囲気に素直に羨ましさを感じてセイオスに会いたくなってしまう。


 きゃあぁぁぁあっ!!


 突然前方で女生徒の叫び声が聞こえたかと思うと、目の前から水が勢いよく飛んでくる。


 ――え?!


 気を抜いていたルナセイラは防御する暇もない。


 「っきゃぁぁああっ!!」


 水撃にびしょ濡れになりルナセイラは勢いよく飛ばされた。


 ずさぁぁああっ・・・・


 飛ばされた先は奇跡的に芝の上で体の痛みはほとんどない。


 「・・・い・・・一体何が?・・・」


 びしょ濡れなまま、何故こんなことになったのかわからず困惑した。


 「ご・・・ごめんなさい!!大丈夫ですか?!」


 慌てて先ほどの悲鳴が聞こえた方から走ってきた女生徒たちに謝られて、やっと状況がわかってくる。


 「一体・・・何をしていたんですか?」


 「ごめんなさい・・・新しい水魔法を友人たちに披露していたら操作を間違えてしまったんです・・」


 謝る三人の少女のうちの一人が謝罪してきた。


 「魔法の披露は訓練場などでしてくださいね。庭園でするのは他の生徒が危険にさらされる場合があります。次から気をつけてくだされば謝罪を受け入れますわ」


 「・・・わざとではないのに・・・そんな言い方なさらなくても・・・ルナセイラ嬢はお綺麗でも・・・怖い方なんですのね・・ねぇ?・・・」


 「・・・ほんとですわね・・・」


 ――??この子達は何を言っているの?


 危険行為をしたのだから、したことを指摘されたなら素直に聞き入れるべきなのに、なぜ非難されなければならないのかルナセイラは理解できない。


 「貴女方は反省してはいないということですか?」


 「そういう訳ではありませんわ・・・ただ、謝っているのですから、受け入れてくだされば良いだけでしょう?」


 「私が注意をしたのが気に入らないのですね?」


「だって私たちは反省しているからこそ謝ったんですのに・・・こんな心が狭い方だったなんてガッカリですわ!他の方々はこんな方だとご存知なのかしら〜?」


 「自分たちがしたことを棚に上げて、相手を貶すなんて随分お里の知れるご令嬢たちだね?」


 「っな・・・なんてことをおっしゃいますの?!・・・っえ!!」


 突然の声の乱入に、声を荒げて振り返った令嬢は固まった。


 「見たままの感想を言ったまでだけど?」


 「サーシェン様っ!!!」


 木陰で本を読んでいたのだろうか。サラサラの銀髪を靡かせて本を持ってこちらへ歩み寄る姿は神々しい天使のような少年、サーシェン・マジェスティだった。


 何やらブツブツ囁くと、突然ルナセイラの全身からふわっと風が巻き起こり、水がすうっと抜けていく。出来上がった水の塊はばしゃりと地面に落ちた。


 濡れ鼠だったルナセイラは攻撃を受ける前の状態に戻っている。


 「・・・・・・」


 令嬢たちはルナセイラを見て唖然としていた。まるでこんなはずではなかったかのように。


 ――まさか・・・この子達わざと?


 ルナセイラの心に令嬢たちへの疑念が芽生える。


 「サーシェン様助けてくださってありがとうございます!とても助かりましたわ」


 「美しいものが汚されるのは僕の目に毒だから」


 ーーやっぱり私を気にしてくれていたのは「美しいもの認定」してくれたからなのね・・・


 あっさり本音を言うサーシェンにルナセイラは苦笑した。


 「ーー何?・・・思ったようにいかなくて不満なの?」


 視線を向けられ、考えていたことを当てられた令嬢たちは「そ・・・そんなことございません!私たち失礼致します!!」と、慌てて去っていった。


 「私が嫌がらせされたのだとご存知だったんですね・・・お見苦しいところをお見せしてしまい申し訳ございません」


 悲しげな表情を滲ませながらお辞儀をすると、サーシェンからとんでもない言葉が飛び出す。


 「ーーアイナに恨まれてるの?」


 「ーー・・・え?」


 ――なんで今アイナさんの名前が?!


 「あの令嬢たち多分アイナの取り巻きだろうから。・・・アイナの匂いがしたし」


 ――取り巻き?!・・・匂い?


 「それは一体・・・・」


 「最近アイナに狙われてばかりでしょ?気をつけた方がいい。多分アイナは諦めてないからね」


 言いたいことを言うと、サーシェンは校舎の中へと戻っていった。


 「彼は・・・私とアイナとの確執を知っている?」








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