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モブに転生したと思ったのに私もヒロインって本当ですか?  作者: 芹屋碧
二章 攻略対象たちが放っておいてくれません
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 第一訓練場へセイオスとルナセイラが戻ると、すでに実技は始まっていた。


 皆二人ペアになって攻撃と防御のどちらをするか決めて実践している。


 それぞれが得意な初級から中級の魔法を放ち、防御魔法で受け止めることの繰り返し。


 今のところけが人は出ていないようで、わいわいと楽しそうにクラスメイト達は実践を重ねている。


 ――みんな楽しそう・・・私のパートナーは誰だったのかな?


 よくよく訓練をしている生徒たちを見てみると、三人で組んでいる生徒たちが目に入った。


 ルナセイラの心はスンっと静まり、高まる期待を打ち消した。


 ――・・・・これは・・最悪な組み合わせだわ・・・


 なんと三人で組んでいたのはアイナとエディフォールとアレクシスだった。


 ――誰と組んでも嫌でしかないじゃない!!!

 一人は自分を嫌うヒロインで、残り二人は攻略対象とかありえない!!


 特に自分の訓練着を隠したアイナとは絶対にルナセイラは組みたくなかった。


 どうしたものかと不安げにセイオスを見つめると、何故かちらっと八重歯を見せて笑みを浮かべウィンクされた。


 「??」


 「まぁ、ちょっと待っていてくれるかい?」


 セイオスはディランテ教諭の下へ報告に行ってしまった。


 数分ほどすると、話を終えた先生方はルナセイラの下までやくる。


 「オレイヌ君、訓練着が見つかって良かったね。

 ただ、もう生徒たちはある程度訓練を進めてしまっているのだよ。今から加わるのは君も不安だろう?

 今日はセイオス先生とペアを組んで実技をしてみてはどうかな?」


 ――え?!・・・まさか先生と一緒??


 正直、今はセイオスと顔を合わせるのも気まずい。それでも、彼等と組むよりは百倍マシだと思えた。


 「はい!私も自分の魔法スキルの低さを理解しているので、クラスメイトに迷惑をかけたくありません! 

 それでお願いいたします!」


 満面の笑みでルナセイラは返事をした。 


 「??!!」


 突然背後からルナセイラは物凄い殺気を感じる。


 パッと後ろを振り返ると、こちらを睨みつけるアイナと一瞬目が合いさっと視線を逸らされる。


 剣術スキルがSSランクまで到達したおかげで、ルナセイラは他人の悪意や殺気には、敏感に反応することが出来るようになった。


 訓練着を見つけたルナセイラに、気まずい表情を浮かべる様子も罪悪感を抱く様子もないアイナ。


 それどころか殺気を向けてくるということは、聖女としての自覚どころか、人としても疑うレベルまで彼女は堕ちてしまったのだろう。


 呆れて溜息を吐くと、ルナセイラは気を取り直してセイオス先生にペアをお願いした。


 「先生!・・・不慣れですがお付き合いよろしくお願いいたします!!」


 「――大丈夫!ちゃんと受け止めるから、安心してどんな魔法でも放ってごらん!」


 セイオスはニカっと歯を見せて笑うと、ひらひらと片手を上げて少し離れた場所から手を振ってくる。


 深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、ルナセイラは手を目の前に差し出しセイオスに向けると火魔法を唱えた。


 『ファイア』


 しかし、唱えた瞬間何故か体の奥がいつもより高揚し、予期せぬ程の強い魔力が溢れだす。


 ――え・・なっ・・なに?!


 疑問を感じた時にはもう遅く、膨大な炎の渦が手のひらから発生した。


 「――っ・・・くぅぅっ!!」


 あまりの炎の強さに、ルナセイラは手を動かすことも魔力をコントロールする術もない。


 立っているだけでもやっとの状況だ。


 ファイアは初級も初級。火魔法の攻撃魔法の一つ。渦を巻いて立ち上がるような炎の柱を出したりしない。


 ――・・・・ま・・・まさか・・・魔力暴走?!


 ルナセイラが気付いてもどうにもできない。


 渦巻く炎はみるみる立ち上がり、大きく膨らみルナセイラを包み込む。


 「――ルナ!!」


 ――あ・・・あつい・・・くるし・・い・・


 体は燃えるように熱を感じ言葉を発することすら叶わない。熱風で視界すら塞がれて目も開けていられない。


 立っているのも奇跡な程で、いつ自分も渦巻く炎の竜巻で意識を飲み込まれるかわからない。


 ――ひやっ・・・・


 体を包む灼熱が急に冷たい癒しに変わった。


 熱風が止み目を開けると、セイオスがルナセイラを抱きしめている。


 なぜか自分の身体には水の膜が張られ、熱から守られていた。


 ――セイオス先生が助けてくれたの??


 あっという間だったようにも感じるし、数十分の時が進んだかのようにも感じた。


 ただ、気づいた時にはセイオスにより巻き起こった炎は収束し、水魔法のおかげでルナセイラの負った火傷も殆ど治癒されていた。


 ぎゅっとセイオスに抱きしめられたままほっと一息つくと、セイオスの身体はぐらりと力がぬけて膝から地面に崩れ落ちる。


 「先生っ?!?!」


 悲鳴のように大きい声を上げて叫んだルナセイラは、セイオスの顔を覗き込んだ。


 「先生っ・・・大丈夫ですか?!」


 「――ごめん・・・ちょっと力使いすぎちゃって・・・自分の守りが・・甘かったみたいだ」


 よく見ると、セイオスの服の損傷は酷いものだった。


 熱風で裂けた服の合間から見える肌は明らかにひどい火傷をおっている。


 「・・・私のせいで・・・私なんかの為に・・・ごめんなさい・・・」


 悲しみの感情のままにぽろぽろと涙が止めどなく溢れ出る。


 「大丈夫・・・これはルナのせいじゃないから・・・とりあえず・・・医務室へ一緒に行って・・・くれないかな?」


 涙でセイオスの顔が良く見えない。


 心配させまいとセイオスが薄く微笑もうとしてくれているのがわかった。でも痛々しくて見ていられない。

 

 ――・・・これが私のせいじゃないというなら・・・・なんなのよ・・・


 大きな巻き起こった炎を目にした生徒たちや、ディランテ教諭が傍へかけよってきた。


 「・・・ディランテ先生。・・・・ルナセイラ嬢に・・確認しなければならないので・・・彼女を医務室に・・・・付き添わせてもよいでしょうか・・・」


 言葉を途切れさせながらも問うセイオスに、ディランテ教諭は同意する。


 「・・・そ・・そうだな!確かにあのような魔力暴走は確認が必要だ。そうしなさ――」


 「――待ってください!!」


 ディランテ教諭が許可を出そうとしている途中、言葉を遮ったのはアイナだった。


 ――アイナさん?!


 「今はそれどころじゃないです!!私にセイオス先生の治癒をさせてください!!」


 「アイナ君?きみ・・・治癒魔法はしっかり習得できているのかね?

 私が知る限り、まだ聖魔法もBランクだったはずだが・・」


 「も・問題ありません!・・わ・私が聖女候補なのですから!!

 く・・クラスメイトの失態を補い・・・先生を治癒できるのは私しか考えられません!!」


 言葉を途切れさせながらも自分がするべきなのだと主張してくるアイナに、ルナセイラは不安を感じずにはいられない。


 ――・・・まさかこんなところでイベント発生なの?!・・・いやだ・・・


 「うーむ・・・しかしなぁ――」


 「――断る」


  冷たい声音でセイオスはディランテ教諭の言葉を遮った。


 「・・中途半端な聖女・・候補に・・・中途半端な魔法など・・怖くて頼みたくなどない!

 君はまともな聖女になれるよう・・・授業に専念しなさい・・・・」


 「・・・・で・・でもっ!!」


 「ーー行け!!」


 きっぱりとアイナへ断ると、セイオスは更に殺気交じりの視線で命令を飛ばした。


 アイナは殺気に充てられ、がくがくと震えて何も言い返すこともできず、逃げるようにエディフォールの下へと走っていった。


 「・・・・では先生・・・ルナセイラ嬢と・・・医務室へ行ってきます・・・後は・・お願いします・・」


 「あ・・あぁ、わかった。気を付けていくようにな!」


 呆気に取られていたディランテ教諭はセイオスの身を案じる言葉をかけた後、生徒たちに実践に戻るよう檄を飛ばした。





 ***





 「・・・セイ・・・ごめんなさい・・・わたし・・・」


 ルナセイラは涙を零しながらセイオスに謝った。


 ――・・・こんな状態で医務室までたえないとならないなんて・・・私に治癒の力があれば・・・


 自らの肩にセイオスの腕を回し、祈るように瞳を閉じて心の中で叫んでから立ち上がろうとした。


 なぜかその瞬間、急にふわっとセイオスの身体が温かくなり、軽くなったように感じる。


 「――・・・??」


 不思議に思い、瞳を開けてセイオスへ顔を向けると、唖然とした表情で固まる彼と目が合った。


 「――・・嘘だろう?!」


 「ど・・・どうしたんですか?」


 先ほどまでぐったりして青ざめていたはずのセイオスは、いつもの血色の良い肌の色を取り戻し、ルナセイラの肩をグイっと引っ張り立ち上がった。


 まさかセイオスが自ら元気に立ち上がるとは思わず、ルナセイラは意図せず全体重を彼に預けてしまう。


 しかし、何事もなかったかのようにセイオスはルナセイラの肩を抱いたまま意気揚々と医務室へと歩みを進める。


 ――え・え?・・な・・なになに?!

 なんでセイオス先生に・・私が肩を貸してもらってるの?!


 ルナセイラの頭の中は、訳がわからず混乱して目が回りそう。


 正気を取り戻した時には、セイオスによって医務室の椅子に腰かけさせられていたのだった。



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