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59話 ナポレオンの力

 ロキ達にナポレオンの攻撃が迫る中、ドレインとノワールは魅了されているかのようにナポレオンを見ていた。


 ロキだけは危険を感じ動きだす、隣にいるドレインとノワールは何故だが..あの光を見てから様子が可笑しくなった。可笑しくなった理由は後にして二人を助けるため行動に出る――。


 「ごめんドレイン! ノワール様」

 「うわっ!」

 「きゃっ!」


 ――二人に体当たりして部屋に押し入れる。二人は床に倒れる。


 ドレインとノワールが痛みで我に返り顔を振るう。ドレイン達が我に返ったと同時にナポレオンの腹が床を壊す音が鳴り響きバウンドして、ロキに間近まで迫る。


 ロキは焦りながら声を大きく叫ぶ。


 「ドレイン! ノワール様を頼む! 先に行けここは任せろ.....ぐ」

 ナポレオンの腹がロキに突撃してきて床と壁を壊しながらバウンドする。


 ノワールは目の前でロキが消えたので焦り声を出す。


 「ロ、ロキ君大変だ! 直ぐに助ける!」


 立ち上がって姿を消したロキを追いかけようとした時――肩を掴まれ静止される。


 振り向くと――顔を真っ赤にしたドレインがいた。


 「ドレイン君今すぐ手を離しなさい!」 

 ノワールは少し怒った口調で話した。


 ドレインは照れながら話す。


 「ノ、ノワール様駄目です。ここはロキに任せて下さい」

 「何を言ってるんだドレイン君」」

 「ロキなら大丈夫です」

 「何を根拠にそんなことを言ってるんだ! 助けて加勢するんだ一緒に戦えば勝てるかもしない」

 「無茶ですノワール様。それに今の..身体能力が低下してるノワール様が言っても....」

 「足手纏いか..」

 

 ドレインはノワールの落ち込んでいる表情を見て焦り混乱する。


 「あ、足手纏いなんてそんなことじゃなくって、何て言ったらいいかその....」

 「ふっ、いいさ、今はこの状態だしな、悔しいがドレイン君が掴んでいる手を外す力さえも出ない。でもドレイン君はいいのか..ロキ君一人では危険だぞ、相手はナポレオンだ強敵だぞ」


 ドレインは頷いて真剣な表情で答える。

 

 「俺はロキを信じます。ロキならあいつに勝てると信じます」

 「ふふ、ドレイン君はロキ君と同じこと言うんだな」

 「えっ」

 「先程、ロキ君もドレイン君は無事だと信じていた。羨ましいよ、本当。ロキ君とのパーティーは長いのかい」

 「俺とロキは出会って一週間ぐらいですよ」

 「本当に、そんな短い時間で信頼関係を構築するなんて凄いな。ロキ君の事はわかった。納得は言ってないが足手纏いなのは事実だ。それでどうする?」

 

 ドレインは窓枠から見える外の景色を見る。


 「馬に乗って、冒険者ギルドが調査してる魔物の巣に行って救援を呼びます」

 「わかった、その策で行こう。ところで.....いつまで肩を掴んでるんだい、ドレイン君..」


 ドレインはノワールの肩を見て――自分の腕がノワールの人肌を感じ、顔を更に真っ赤にして慌てて肩を離す。


 「わ、わわわわ、す、すいません。ノワール様」

 「ふっ、ドレイン君。わたくしは女扱いされるのが嫌いだ」

 

 同時刻、ロキの身体半分はナポレオンの腹に埋まっていた。汗や体臭がロキを襲ってくる、何とかして逃れようとするが、汗で手が滑り力が入りづらい。しかも床や壁にぶつかると更に深く埋め込まれる。底なし沼の恐怖を体感していた。


 「ぐぁぁぁぁ、臭い汗が顔に気持ち悪い離しやがれ! 片手だけでは抜けられない」


 ロキが悔しそうな声を上げるとナポレオンは喜色な声を上げる。


 「ざまぁみろ! ノワールは俺様の女だ!! さっさと潰れろ!!」


 ナポレオンはロキを押し潰すように床に叩きつける、床と地面は浅いため実際は床ではなく地面にぶつかっていた。


 ロキは地面に叩きつけられると。


 「がはっ! 口に汗が入った気持ち悪い」

 

 ナポレオンの腹はバウンドして宙に浮く、ナポレオンはロキの声を聞き苛ついた声を上げる。


 「ちっ、まだ潰れねぇのかしぶとい奴だ」


 ナポレオンはある方向に視線を変えて――口角を上げ顔を醜く歪める。


 バウンドしながら視線の先に移動する。


 ナポレオンが目指した場所は、商人などを襲い奪って使い物にならない物や高く売れなかった物を置く倉庫だ。倉庫の周りは頑丈な石材で出来ている。


 ロキは苦悶な表情で辺りを見渡して危機感を感じる。


 「な、なんだここは? 石の匂いがするぞ」

 「ここはガラクタを捨てていた倉庫だ。鼻が良いじゃねぇか!」

 「どうして倉庫に移動した。あ、また口に汗が....」

 「中々お前が潰れないから、ここに移動した! 味わぇぇ!!」

 

 ナポレオンはロキを石材に叩きつける。


 ロキは今までと違う痛みに襲われ苦悶な表情する。


 「がはっ! ま、まさかここの床は石で出来てるのか!!」


 ナポレオンの腹はバウンドして宙に浮く。


 「その通りだ! だが、これでもまだ潰れねぇか! 本当にしぶとい奴だ。だがこれで終わりじゃねぇ。俺様に逆らったことを後悔しろ」


 ナポレオンはかけ声と同時に前腹だけではなく背中も更に肥大化する――。

 

 ーー<闘技>”どどどどっどすこいバウンドボールプレス”ーー


 ――肥大化した背中は天井にぶつかりバウンドする。


 そして、ロキを石床に叩きつける。


 「がはっ! 威力が増した!」

 「どんどん行くぞーー! 潰れろーー!!」


 ナポレオンの身体は何度も床と天井にぶつかり合い繰り返す。その度にロキは石床に叩きつけられダメージを受け苦悶な表情をする。


 「ぐはっ! このままじゃまずいぞ!!」

 

 ロキが最悪な状況に狼狽してると、エイラ少佐の冷たい声が頭の中に響く。

 

 ⦅ロキ二等兵、直ぐに肘を曲げ腕を上げ力強く堪えろ、絶対に肘の位置を崩すな!⦆

 ⦅ぐっ..ど、どうしてですか?⦆

 ⦅いいから黙って従えロキ二等兵!⦆

 ⦅は、はい)


 ナポレオンのがバウンドして宙に浮いた――ロキはエイラ少佐の指示の下、肘を曲げて固定する。


 ナポレオンの腹が床に激突する前にロキの肘がぶつかって痛みと衝撃がくる――。


 肘は石床にぶつかりドーンと衝撃音が倉庫中に鳴り響き、石床から亀裂が何本も入って行く。

 「痛ってぇぇぇぇ!?」

 ロキが肘に強烈な痛みが走り絶叫するが、痛みを我慢してエイラ少佐の言われた通りに肘を固定する

 

 ――拳にナポレオンの腹が突き刺さる。


 ナポレオンは腹に突然衝撃をくらい口を開けて苦悶な声を上げる。


 「さっさと潰れろ..ろは! 腹が痛いいいいいい!」


 ナポレオンの身体がロキの腕に体重を乗せると――腕が深く腹に突き刺さっていく。深く突き刺さっていく分痛みで絶叫する。


 「いいいいいったいいいいいいいい!!」


 ロキはエイラ少佐の作戦を理解し必死に腕を固定するが、当然、肘にナポレオンの全体重が圧し掛かってるので痛みが走る。


 痛みを我慢するため気合を入れて声を上げる。


 「舐めるなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ロキの肘と拳、ナポレオンの腹がぶつかり合う、お互い痛みを堪えて相手を倒そうとする。数分の時間が経つと――ロキの顔に汗が大量に掛かる..が、その汗の発生はロキではなく......ナポレオンだ。


 ナポレオンはこれまで圧倒的な攻撃力で敵を潰してきた。その為、回避や防御を苦手としてる。そして攻撃....ダメージを受けることがなかった。久しぶりに痛みを感じ、身体中から苦悶汁が滝のように溢れ落ちる。

 

 ロキはナポレオンの汗で苦痛と悲痛を通り越して怒りを覚え、絶対に負けるかと気合を入れ直す。


 数秒の時間が経つと――ナポレオンは痛みに耐えきられず闘技が自動的に解除される。


 「痛い、痛い、俺様の腹が痛いいいいい!」


 ナポレオンはの闘技が解除されると、ロキはナポレオンの動きを即座に察知して、埋まった半身を片手の力で持ち上げる――。


 「このぉぉぉぉぉぉぉ! 気持ち悪い腹がぁぁぁぁーー!」

 ――埋まった身体が8割まで戻ると、怒りを込めてナポレオンの腹を蹴り上げる。


 ナポレオンは痛みで狼狽えていて何も出来ず腹に衝撃を受け吹き飛ぶ。吹き飛んだ際に後頭部が石床に激突して――。


 「はっいいいいいいいい! いばっ! あっ、頭ががががが痛いいいいいいい!?」


 ――頭を抑えながら繰り返し転がり回る。

 

 ロキはナポレオンがのたうち回る姿を見ながら、自分の身体に着いた汗――ナポレオンの汗を床に落ちていた布で拭きとる。床にはナポレオンが暴れたせいで略奪品が散らばっていた。ロキが使った布も略奪品の一つだ。


 身体に着いた汗を拭きとって、ふき取った布を木箱の上に置く。それから身体に以上が無いか準備体操するかのうように調べる。神妙な表情でナポレオンを見ながら。


 ⦅エイラ少佐、助言ありがとうございました、助かりました。正直、俺一人では冷静に対応が出来ませんでした⦆

 ⦅部下兼研究材料のロキ二等兵を失う訳には行かないからな⦆

 ⦅手厳しいけど..助かりました感謝します⦆

 ⦅感謝はもう必要はない。それよりも目の前の敵を侮るな、この有機生命体は強敵だ⦆

 ⦅ナポレオンがこんなんに強いとは驚きました。正直想像も出来ない。だって..大頭領を大統領って言ってる奴だから馬鹿にしてました⦆

 ⦅実際馬鹿だろうな。有り得ない勘違いだ。....こんな馬鹿に負けるなよロキ二等兵⦆

 ⦅絶対に負けるわけにはいかない!⦆

 ロキはエイラ少佐と話しをしながら周囲を見渡す。


 ロキの目の前では、今だ頭を抑えながら転がり回っていた。ナポレオンが暴れるたび略奪品が床に落ちる。壊れやすい壺が落ちるとガシャン!っと音が倉庫の中に鳴り響く。


 ロキはフッと床に落ちている女の子の人形を拾い上げる。

  

 「こんな人形まで奪ったのか....」

 人形に懐かしさを感じて手に取って調べ、人形を正面から背中に回してみると――赤い塗料、真っ赤な血で染まっていた。


 ロキは人形に付いた血を見て驚き、歯を食いしばって呟く。


 「これは血なのか..ふざけやがって!」

 ロキは人形の持ち主のことを考えて怒りをあらわにする。人形を持っていない片手の拳を握りしめて――ナポレオンを殺意を持って睨みつける。


 「このクズが!」


 ナポレオンは肥大化した自身の身体を何とか持ち上げる。肩から息を切らしながら腹の痛みを和らげるためさえずる。別の手で後頭部を抑える。


 「俺様の腹が裂けるぐらい痛いーー! 俺様の後頭部が割れるぐらい痛いーー! 畜生全部あいつのせいだーー許さん! 許さん!」

 

 ナポレオンは腹と後頭部の痛みの原因になったロキを殺意を込めて睨む。瞳から薄っすらと涙が流れていた、痛かったから。


 ロキとナポレオンはお互いに殺意を持って睨み合う。


 ナポレオンはロキの顔を正面から見て懐かしさを覚える。


 「まだ、ガキじゃねぇか。それにその黒い髪に瞳の色は..何かネジみたいなのが見えるぞ? だけど黒目だ。もしかしてお前は日本人か? 日本人にしては堀が深いぞ..おい! お前は日本人なのか答えろクソガキ!」


 ナポレオンが威圧的な態度で質問してきたので、ロキは苛立っていた、他にも周囲の略奪品の多さを見て元日本人として人間として、ナポレオンはクズ野郎と改めて認識した。


 ロキは馬鹿にするように話す。


 「日本人か..さぁな、お前には関係ないことだデブクズ!」


 ナポレオンはロキの言葉を聞いて声に出さない程怒り顔を真っ赤にする。ロキはナポレオンの怒り顔を見て淡々と話す。


 「お前馬鹿過ぎだろ。大統領って何だよ。なんで棟梁から大統領になるんだよ」

 

 ナポレオンは唾を吐きながら反論する。


 「だ、だから大統領だろうが! それよりもやっぱりお前日本人か答えろ!!」

 「俺が言ってるのは大棟梁だよ。大工の親方や社会の筆頭格を指すことだ! 何で合衆国の大統領になるんだよ」

 「な、なに大統領じゃない、そんな訳あるかお前..俺様を惑わそうとしてるな騙されないぞ。それよりも俺の質問に答――」


 ロキはナポレオンの話しを遮るように話す。


 「――大体お前は合衆国の意味分かってるのか? 何で大統領になったら世界を支配出来るんだよ! ――」


 ナポレオンは反論しようとするがロキが話しを遮って話すため口をパクパクして何も喋れない。その姿はとっても滑稽である。


 「――それに大統領はアメリカだけじゃない。ドイツ、イタリア、フランス、フィリピン、インドネシアも呼ばれたはずだ。これ以外の国もあったはずだ。 ナポレオン..お前は――」


 ナポレオンは大統領が他の国にもいることを聞いて、恥ずかしさと怒りで顔を更に真っ赤にして怒鳴ろうとするが。


 「う、五月蠅い。そんなこと知ってる大統領が何人もいるぐらいな常識だ。それよりもお前いい加減質――」

 ナポレオンは狼狽えながら声を上げて反論するが、又してもロキに話しを遮られる。


 「――馬鹿だ!」

 たった一言、ナポレオンに発した。


 ロキはナポレオンの苛立ちと怒りでみるみるうちに表情を変えてく姿を見て楽しんでいた。自身の死のきっかけになった原因とナポレオン達による被害者の多さに憤怒していた。これぐらいでは怒りは収まることはないが仕返しになったと思った。


 ナポレオンは苛立ちと怒りは限界を越え、身体をジタバタと動かして暴れ出し声を上げる。


 「ああああああああああああああああ!? いい加減俺様の質問に答えろーーお前ーー!!」


 ロキは冷めた目で答える。


 「五月蠅いデブクズ」


 ナポレオンの怒りは越えに越えて爆発する。 


 「ああああああああああああああああ!?  デブクズ言うなーー明日からダイエットするんだーー! ああああああ..生意気な奴だ殺してやるクソガキがーー!!」

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