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57話 ナポレオンは怒る

 ロキはナポレオンの大頭領宣言でどうして世界が支配出来るのかと考えながら呆然としていると、演説で気分を良くしたナポレオンは横腹を叩きながら声を上げる。


 「俺様が大統領(だいとうりょう)になった暁には全て俺様の物になる!」


 ナポレオンの言葉に疑問に感じた手下の一人が声を上げる。


 「ナポレオン頭領、どうして全てナポレオンの物になるんですか?」


 ナポレオンは胸を張って声を上げる。


 「世界で一番偉いからだ! この国の王よりも偉い!! 当然、他の国の王よりも偉い!!」


 手下達に動揺が走り騒ぎ出す。

 

 「「えっ!?」」

 「そ、それは幹部連中よりも偉いんですか?」

 「俺様の方が偉い!!」

 「そ、それじゃ、大ボスよりも偉いんですか?」

 「俺様の方が偉い!!」

 「じゃぁ、本家の連中よりも偉いんですか?」

 「俺様の方が偉い!!」

 「「おおおおおおおおお!?」」

 「も、もしかして、【四面悪来】よりも偉いんですか?」

 「俺様の方が偉い!!」

 「「おおおおおおおおお!?」」

 「ま、まさか..【悪の鏡】よりも偉いんですか?」


  手下達はナポレオンの発言に、期待を持ちながら今か今かと待ち焦がれていると――ナポレオンが声を上げる。


 「俺様の方が偉い!!」

 「「おおおおおおおおお!?」」

 「「ナポレオン! ナポレオン! ナポレオン! ナポレオン!....」」


 ナポレオンは両手を挙げて騒いでいる手下達を静かにさせ、その場に静寂な空間を作り出した。


 ナポレオンは息を大きき吸い込み吐き出すように声を上げる。


 「ここに....ムラカミ合衆国の建国を宣言する! 俺様は初代大統領ナポレオンになる!! 世界の全ては俺様の物だーー!!」 

 「「おおおおおおおおお!?」

 「頭領、俺にも分け前をくれ」

 

 ナポレオンは顔を横に振って怒声を上げる。


 「違う! 今から俺様をナポレオン大統領って呼べーー!! あとlevel1で大統領になるんだ、もうなったも当然だ!! ぎゃはははははは!!」

 「ナポレオン大統領! ナポレオン大統領! ナポレオン大統領! ナポレオン大統領!」

 「俺様はお前達にもちゃんと褒美をくれてやる! 世界中の富も権力も女も全て俺様達の物だーー!!」

 「最高だーー! ナポレオン大統領!!」

 「世界を支配するナポレオン大統領にどこまでついていくぜ!」

 「「おおおおおおおおお!?」


 ナポレオン達はこれから得られると富を妄想しながら、欲望に満ちた顔で騒ぎ飲み食いを繰り返す。その中、ナポレオンは己の演説に心酔して顔を醜く歪める。


 ロキは部屋の端に移動して、上席が見える場所で呆然としながらナポレオンの演説を聞いていた。


 ⦅合衆国? もしかして..ナポレオンが言ってた..だいとうりょうは大頭領じゃなくって、大統領のことか、まさかの語呂合わせ⦆

 ⦅あの有機生命体は馬鹿なのか? どうして頭領から大統領になれるんだ。馬鹿だ⦆

 ⦅ナポレオンを見てると冗談じゃなくって本気で大統領になれると思ってますね⦆

 ⦅それに大統領になったからといって、この世界を支配できるのも意味が分からない⦆

 ⦅ナポレオンはこの世界に来て馬鹿になったのか? それとも元から馬鹿だったのか..あんな馬鹿のせいで死ぬハメになったのかよ⦆

 ⦅そう落ち込むな..ロキ二等兵..ぷっ⦆

 ⦅励ました後に笑うのを辞めて貰えません。しかも笑いを堪えた失笑だから辞めて貰えません! ここは敵地なんですから場所を考えて下さい、エイラ少佐!!⦆


 ロキは失笑に腹が立ち真剣にエイラ少佐に語り出した。


 ⦅怒るなロキ二等兵、お前が酷く傷ついたことが分かった。それにしても落ち込むロキ二等兵の姿が滑稽で..ぷっ⦆

 ⦅くっ、その笑いを堪えた失笑がムカつく! ん、ナポレオンが..」


 ナポレオンは上機嫌な顔でダルマ腹を叩き声を上げる。


 「ムラカミ合衆国、建国の祝いに来た客人がいる連れてこい!」

  

 ナポレオンが拳を挙げると、上席のドアから手下と騎士が入ってきた。そして――その後に両腕を屈強な男達に掴まれた状態でノワールが運ばれて来た。


 ノワールの姿に興奮した手下達が騒ぎ出す。


 ノワールを見ると縄などで拘束はされていないが足取りが悪い。顔を見ると真っ青で覇気が感じられない以前会った強者の凄みが感じられない。だが目だけは周囲の男達を睨み、特に騎士を睨んいた。


 男達はノワールをナポレオンの足元まで運ぶ。


 ナポレオンはノワールを見下ろしながらかっこよく声を上げる。


 「久しぶりだな、ノワール」


 ノワールは床に手を置き身体を支えながら顔を上げる。


 「......貴様は誰だ!」

  

 ナポレオンは顔を真っ赤にして怒声を上げる。


 「俺様を覚えてないのか! お前に告白したむ..ナポレオン様を覚えてないのか!!」


 ナポレオンは怒りで冷静さを失い、うっかり本名を語るところだった。それ程怒っていた。


 ノワールは驚愕した表情でナポレオンを見る。


 「本当に貴様は..ナポレオンなのか? 確かにその鼻輪に見覚えがるが、冒険者をしてた頃と風貌が違いすぎるぞ。オークよりも酷いぞ」

 「うるさい! メス豚が――」


 パンと音が響いた。ナポレオンはキレてノワールを平手で叩き吹き飛ばす。吹き飛ばされたノワールは転がり倒れるが、直ぐに顔を上げナポレオンを睨む。


 「――少し太っただけだろうが俺様を忘れるんじゃねぇ」

 

 ロキはノワールが叩かれて飛び上がろうしたがエイラ少佐が止める。


 ⦅待てロキ二等兵、もう少し様子を見るんだ⦆

 ⦅くっ、何で止めるんですかエイラ少佐! ノワール様が叩かれたんですよ⦆

 ⦅青髪の有機生命体は無事だ、唇を切ったようだが大怪我ではない。冷静になりなさいロキ二等兵⦆

 ⦅..わかりました⦆


 ロキは下唇を噛みしめながら悔しい表情で思い出す。出入り口で別れたドレインは一人で突っ走ってないかと、ロキはドレインを探すため周囲を見渡すが見当たらない。


 ロキは冷静さを失ってドレインが装備してるマントの効果、認識妨害に掛かってしまった。


 そしてドレインもまたノワールが叩かれたことに怒り冷静さを失っていた。ドレインは弓でナポレオンを射ようとしたが手下が邪魔で放つことが出来なかった。ドレインの頭の中にはノワールを助けることが一杯でロキのことを忘れていた。ドレインは矢を放てる場所に移動する。


 当然ドレインもロキ同様に認識妨害に掛かってしまった。


 ノワールは唇が切れ血が流れる、それを手で拭い顔を上げナポレオンを睨み続ける――ナポレオンは睨み続けているノワールを見てイラついてた。今までの奴等だったら恐ろしさに身を縮め助けを懇願してきた。


 ナポレオンが鼻息荒くノワールに近づくと――騎士がナポレオンとノワールの間に入って来た。


 騎士は手を挙げナポレオンに声を掛けて――。


 「ナポレオン殿お待ち下さい。勝手にリディア様に手を出さないで下さい汚れるじゃないですか」


 騎士はナポレオンに対して尊敬も畏怖も無く立場は同じようにせっす。


 ナポレオンは無言で静止する。だが、身体を震わせていた。


 ――ナポレオンが歩みを止めたことを確認して、床に倒れるノワールを見て声を掛ける。


 「リディア様怪我は大丈夫ですか?」


 騎士は心配な表情でノワールに声を掛けるが、ノワールは大きく声を上げる。


 「ロドリゲス..貴様! 良くも仲間を裏切り部下を殺したな!! こ、この..何で力が入らないんだ」

 

 ノワールはロドリゲスに飛び掛かろうとするが、身体に力が上手く入らない。


 ロドリゲスは顔をノワールに近づける――ノワールの手がギリギリ届かない距離に。ノワールは手が届かないことは理解しているが、部下を殺され目の前に仇がいる拳に力を込めて手を振るうが――。


 「おっと危ないですね、リディア様。 そんな身体で何が出来るんですか」

 

 ノワールは悔恨の思いで拳を繰り返し振り上げる。

 

 「ロドリゲス、わたくしに何をした!」


 ロドリゲスは顔を馬鹿にしたように歪め拍手する。


 「リディア様にナポレオン殿が頂いた薬を使ったんですよ。貴重な【弱体化の薬】をね」

 「【弱体化の薬】だと、どうやってわたくしに飲ませた? 飲まされれば気付くはずだ」

 「えぇ、ですから苦労しましたよバレないように、毎日少量ずつ料理に入れてましたからね、即効性はありませんが、蓄積された弱体化の効果が今になって効いてますからね。これをくれたナポレオン殿に感謝です」

 「どうして私達を裏切った!!」


 ――ノワールは大きく振るった拳が空振り床に手を置く。


 ロドリゲスはノワールが伏せている姿を見て、卑屈な表情して見下ろす。

 

 声色を変えて声を上げる。

 「どうしてだと..そんなことは決まっているだろが、女の貴様が3番隊の隊長だとふざける! 俺が何十年かけてここまで来たと思ってる。だが、お前は僅か数年で隊長まで上り詰めた、ふざけやがって!!」

 「それが仲間を裏切った理由か..それだけの理由で部下を殺した――」

 「――それだけの理由だと本当にムカつく奴だ! それと部下を殺した理由だとあいつ等はお前の強さと魅了で心酔してたからな邪魔になると思って始末したんだ」


 ロドリゲスはノワールの話しを遮って、今までの悔しさと怒りを込めて罵声する。

 

 ロドリゲスはノワールはの身体を舐め回すように見て下卑た顔で歪める。


 「無能な部下共の気持ちも理解は出来る。いい身体してやがる」

 「くっ、わたくしに触れるな!」

 「ナポレオン殿と約束して、私が最初に味見するんですよ。そうですねナポレオン殿..」


 ノワールは座りながら腰と尻を使い後ろに下がる。上手く力が入らない身体を必死に動かす。


 「くそ近づくとな!」


 下席にいる手下達は騎士で凛々しく美しいノワールが必死の姿を見て興奮する。


 ロキはエイラ少佐の指示を無視してノワールを助けようとするが、あいつの動きが見れ様子を見ることにした。


 ロドリゲスもまた興奮して鼻息を荒く近づき手を伸ばして触れようとすると――大きな影がノワールとロドリゲスを覆う。


 ロドリゲスは後ろを振り向くと。


 「ナ、ナポレオン殿か驚かせないでくれ」

 

 ナポレオンは無言で鼻息荒く威圧を掛ける。


 ロドリゲスはナポレオンの尋常じゃない雰囲気を感じとるが。


 「や、約束..いえ、お先にナポレオン殿がノワールを味わって下さ――」

  

 ナポレオンは肥大化した両手を大きく広げる、ロドリゲスの声は耳に届かず――。


 「俺様に命令するなーー! 俺様に命令していいのは俺様だ!! 潰れろ!!!」


 ――ナポレオンの両手はロドリゲスの頭を挟むように潰す。


 潰されたロドリゲスの頭は骨が砕く音が聞こえた同時に、ナポレオンの両手の隙間から血が噴き出す。ロドリゲスの身体は頭を失い力なく倒れる。


 ノワールの顔や身体にロドリゲスの血が飛びかかる。


 ノワールはロドリゲスの死体を何とも言えない表情で見る。先程まで憎くって溜まらなかった、仲間を裏切り殺した奴だ。それでも長年共にした仲間の死を見せられ憤りを感じた。

 

 ナポレオンは真っ赤に汚れた血を挙げ叫ぶ。


 「俺様の物に手を出すんじゃねぇ! お前等良く見とけ、あのノワールを俺様の女にしてやる」

 「「おおおおおおおおお!?」

  

 ナポレオンは”マリデン商会” との約束を”ノワールに手を出さない”約束を興奮の余り忘れてしまった。いやとうの昔に忘れてたかもしれない。


 かつての仲間の死を見たノワールは呆然としていた。絶世の美女のそんな姿を見て興奮したナポレオンは真っ赤な手でゆっくりと近づき、ノワールとの楽しみを想像して顔を歪める。


 ロキはノワールの危険を見て動きだそうとする。


 ⦅もう我慢できないノワール様を助ける⦆

 ⦅ロキ二等兵危険だぞ。あそこには行けば逃げ場はないぞ⦆

 

 ロキはノワールを助ける算段するため床や壁等周囲を見渡す。


 ⦅それでも行くのかロキ二等兵。しかも相手はlevel59の強者だ⦆

 ⦅......⦆

 ロキは無言で真剣な表情をする。

 

 ⦅本当にお前は無茶をする奴だ⦆

 ⦅エイラ少佐、力を貸して下さい⦆

 ⦅..仕方がない。これも良いデータが取れるだろう。力を貸してやる⦆

 ⦅いつもありがとうございます⦆

 ⦅それでどうやって向こう側に行く。邪魔な有機生命体を倒してからでは間に合わないぞ⦆


 ロキは視線を壁に向ける。

 

 ⦅今の俺のステータスと装備の性能で行けるはずだ、と思う⦆

 ⦅賭けだな。無様に賭けが失敗して落ちるだけか⦆


 目の前の手下を倒しながらでは救出に間に合わないし、ナポレオンがノワールをどこかに連れていく恐れがある。漫画やアニメで壁の上を走るのを思い出し試してみようと試みた。

 

  ロキのステータスと装備の性能に勝負を賭けた。


 ロキはギリギリまでバレないように身を隠すためマントを深く被る。


 ロキは集中して――エイラ少佐と言葉を重ねる。


 ⦅<戦闘モード>開始⦆


 エイラ少佐の冷たい声が頭の中に響く。

 ⦅要救助者を救出せよ。及び勘違い野郎を討伐せよ⦆

 ⦅了解⦆


 <戦闘モード>開始と同時に身体能力が向上し集中力が高まる。次に闘気を全身に纏う。


 ロキは瞬発力を生かして走り出す。壁を斜めに向かって片足を一歩置く、直ぐにもう片方の足を前に出し駆け上がる。ロキは重力に逆らうように壁の上を走る、走った際に壁が壊れる音が鳴る。手下は不思議な音に気付き動揺して周囲を見渡す。

 

 ナポレオンはノワールに触れる間近に音に気付き顔を横に向けると――。


 ロキは壁の上を走りながらナポレオンを捉え両足に力を込めると閃光を纏う――。


 この豚野郎が!! ーー<闘技>”閃光跳弾蹴”ーー


 ――跳弾で壁を壊し壁に大きな穴と破壊音が鳴り響いた。跳弾した蹴りは閃光の光を宙に描きながら真っ直ぐナポレオンの歪んだ顔を捉える。


 「誰だ俺様の楽しみを邪魔するや..つばるば」


 ――ロキの蹴りは丁度振り向いたナポレオンの顔に激突し閃光が発散した。


 ナポレオンの口が九の字になって歪み、衝撃で身体が吹き飛び、料理が置いてあるテーブルを壊して、壁に激突し壁を破壊して見えなくなる。


 上席は肉料理が床に落ちテーブルの破片が散らばり、ナポレオンの激突で壁が崩れ土埃が舞っていた。


 ロキはナポレオンに<閃光跳弾蹴>を与えた。その反動生かして空中で一回転して床に着地する。


 ロキのマントが風圧と衝撃ではだける。そしてマントの効果の認識妨害がなくなり姿を認識出来るようになり。


 手下達がナポレオンが突然吹き飛び。ロキの姿を見て騒ぎ出す。


 ノワールはロキの背中を見つめ弱々しく話す。


 「だ、誰..助けが来たの?」

 

 ロキはノワールに振り向いて、安心させるため優しく声を上げる。


 「助けに来ました、ノワール様」

 

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