56話 ナポレオンは宣言する
馬の蹄を追跡して数十分、人工物らしき建物を見つけた。
建物は古い屋敷のようで所々壁が崩れており、他にも蔦のようなもので覆っている。外壁も脆く崩れて人が通れる程の隙間がある。そして外壁も蔦が覆っている。
門があったであろうな箇所には門が置かれていなかった。
建物を囲むように木々が生えており、建物は森と一体化して見分けがつかない、馬の足跡がなければ誰にも発見されなかっただろう。
そして、馬の足跡は古い建物の中まで続いていた。
ロキとドレインは近くにあった岩の横に隠れながら建物の様子を伺っていた。
ドレインは警戒しながら小声で話す。
「..馬の足跡は目の前にある建物に繋がっているな」
「こんな所に建物があるなんて不思議だ」
「まぁな、古き新緑の森に建物を見たのは――ボブオーク達が作った小屋ぐらいか」
「あれは小屋だぞ。これは屋敷だ魔物では建てられないはずだ、これを建てたのは人間だ」
「誰かが建てたのは関係ない! 今はノワール様を助ける事が先決だ!」
ロキは気持ちが不安定になっているドレインの肩に手を置いて、安心させるように話し掛ける。
「ドレイン少し落ち着け冷静になるんだ。俺達が失敗したらノワール様を助けられないんだぞ」
ドレインはグッと我慢するような表情をして冷静さを取り戻す。
「....ふぅーー、そうだなここで焦っても意味がないな、すまないロキ」
「いつものドレインに戻ってくれて頼もしいよ。とにかく、あの建物にノワール様がいる可能性が高い」
「ん! どうしてだ。足跡が続いてるのは分かるが、どこかに移動した可能性もあるじゃないか」
ロキは建物を睨みながら答える。
「俺の<気配察知>スキルで、あの建物の中に大勢の人の気配がする。それとノワール様の気配に似た感じがする」
「ノワール様の気配が分かるのか?」
「ノワール様の気配は他に人間より特徴があるから分かるんだ。説明はしずらいが気配の感じ方が違うんだ。レイカさんやドレインは人間の気配って分かるが、ノワール様は別な気配なんだ」
「セリアエルフの気配ってことか?」
「たぶんな、とにかく気配の区別の説明がしずらいんだ。俺が感じたのはあの建物の中にノワール様と同じセリアエルフの気配を感じことだ。それと大勢の人間の気配を感じる」
ドレインはロキの神妙な表情を見て声を上げる。
「何人ぐらいだ! 教えてくれロキ」
「....28人だ。あの建物の中に28人いる!」
「多いな..28人か」
ロキは不安な表情をしてるドレインを見て、不安を一掃させるため話す。
「..今からでも遅くない応援を呼びに戻るか」
「ふざけるな! 俺は絶対にノワール様を助けるぞ!」
ロキは不敵に笑う。
「それこそドレインだ」
「たく、俺をおちょくるのは辞めてくれよ」
「すまんすまん。ついな許してくれ」
「俺も弱腰だったよ、おかげで決心がついた。それでどうする、そろそろ行くか」
ロキは建物を凝視するようにずっと見ていた。
「..ドレイン不思議に思わないか?」
ドレインはロキの真剣な表情を見た後に建物に視線を向けて考える。
「....見張りか」
ロキは頷く。
「そうだ見張りが一人も見当たらないんだ。気配で何となく居場所を把握は出来るんだが、一箇所に集まって動かないんだ。何かの罠なのかと見てるんだが判断が出来ない」
「だがここにずっと居てもノワール様を助けることは出来ないぞ」
ロキはドレインの言葉で納得して重い腰を上げる。
「..わかった、行こう。だけど慎重に行くぞ、冷静に行動しろよドレイン」
ドレインは苦笑いしながら答える。
「お前が言うな、戦闘になったら一番制御が利かないのはロキだぞ」
ロキとドレインは建物に侵入するためマントを頭から被る。
ロキ達が準備を終えると、エイラ少佐の声が頭の中に響く。
⦅ロキ二等兵、初の救出任務だ、今後のため良い結果を期待する⦆
⦅失敗は許されないので最高の結果を出します⦆
ロキはエイラ少佐なりの応援だと思い力強く答える。
ロキとドレインは流石に正面からの侵入はしないで外壁の方に警戒しながら移動する。森の中に入ると罠がないか足元に気を付けながら外壁に近づいて行く。
ロキ達はノワールを捕まえた敵に最大限に警戒していた、ノワールはグレーテル城塞都市の騎士団の3番隊隊長で魔法を使えると昨晩レイカから教わっていた。その強者であるノワールを生きたまま捕らえる強い敵がいると認識してたからである。
ロキ達は外壁の目の前まで何事もなく辿り着いた。外壁を近くで見ると少し力を入れただけで簡単に崩れそうな壁だった。二人は安堵しながら外壁の隙間から敷地内を覗いてみると、馬舎が遠くに見え数頭の馬が見える。だが、敷地内を見ていて違和感を感じる。
ロキは隣にいるドレインに小声で話す。
「ここまで罠が一つもなかったな。ここにいる奴等は敵に対して何も警戒してないのか? 警戒など必要ない程強者なのか」
「ノワール様と騎士団を倒す強さがある奴等だ。罠なんて必要ないと思ってるんだろ」
ロキは眉間にしわを寄せ、拳を握り締める。
「それほどの強者か..正直ビビッてきたよ」
「ロキ..最悪はノワール様だけでも助けるぞ」
「その時は..ドレインがノワール様を連れていけ」
「な、何言ってるんだ。俺も残るぞ」
「馬鹿。二人も残ったら誰がノワール様を安全な場所に連れて行くんだ。それに近くにはレイカさん達もいるんだ応援が来るまで時間を稼いでやるよ」
「すまんロキ」
「謝るなよ。それに負けると決まったわけじゃない! 俺が悪人を全員倒してやるよ!」
ドレインは苦笑いしながら答える。
「頼もしいなロキは..それにしても..本当に誰もいないな」
「あぁ、馬はいるのに世話をする奴もいないし、見張りもいない何らかのスキルで身を隠してるのかと思ったけど見当たらない」
二人は覚悟を決めお互い頷く。
ロキ達は壁が崩れないように慎重に隙間を通って行く、敷地内に入って視線を動かして警戒する。何もないと判断し急ぎ足で建物の壁に隠れる様に近付く。
ロキ達は無事敷地内な入ったことに安堵して、次に建物の中に入るための侵入口を探す。壁伝いを歩くと窓が開いてる部屋があった。部屋の中を確認するためそーとゆっくり頭を上げる。
部屋の中に人は見当たらず、床が壊れていたり壁の破片が散らばっていた。それと新しいゴミなどが落ちていた。間違いなくここに誰かがいると確信した。
ロキはドレインに頷いて答える。
「誰もいない..行くぞ」
「あぁ」
ロキが最初に窓枠を通て建物に侵入する、ロキは廊下に誰か通らないか警戒するため廊下側の壁に移動する、チラリと廊下を覗くが誰もいない、ロキが生きを飲んで集中してると奥から人の声が大勢の人の声が聞こえてきた。
ロキが人の声が聞こえた先に視線を向けると後ろから音が聞こえた。音に驚いてビックと身体を強張らせると――ドレインが隣に移動して来た。
ロキは音の原因はドレインかと安堵する。
「何だドレインか..」
「俺以外に誰かいたのか?」
「いや、何もない。それよりも奴等は奥の部屋に居るみたいだ」
ロキはドレインの足音で怖がったことをドレインにバレないように話題を変えたが――。
⦅ロキ二等兵..今、怖がったな。兵士として情けない奴だ⦆
⦅な、なんの事ですか⦆
⦅男として情けない⦆
⦅だから別に怖がっていないです⦆
⦅嘘をつくなロキ二等兵! 本当に情けないぞ⦆
⦅うっ⦆
⦅本当の事を言いいなさい⦆
⦅..集中してたので突然後ろからドレインの足音が聞こえて驚きました⦆
⦅戦いの場で恐怖により身体の制御が利かなくなれば致命的だ。私はこれから<恐怖耐性>を獲得するために新メニューを考える⦆
⦅えっ! 新メニュー!!⦆
⦅<毒異常耐性>スキルを獲得に成功したんだ。<恐怖耐性>獲得のため毒キノコ以上の方法を考えるぞ。だが、前から案はあったんだ例えば、ウィリアムという名称の有機生命体に......⦆
――エイラ少佐は上機嫌にロキ二等兵に冷たく言い放つ。エイラは最近、感情の制御が上手く行かい事がある、ロキ二等兵が女型の有機生命体に媚びを売っているとイライラしてくる。
だが、今は感情の制御の事は忘れることにした、可愛い部下のスキル獲得のため新しい訓練方法を模索してる所だ..ロキ二等兵が困る顔が想像出来て楽しくってしょうがない。さぁ、プランを再編成だ。
ロキはエイラ少佐の説明を聞いて余りの恐怖のため顔を青褪める。そして、新メニューの原因になったドレインを親の仇のように睨みつける
ロキに睨まれたドレインは意味がわからず顔を傾ける。
「突然どうしたんだよ怖いぞ。睨むなよロキ」
「なんでもないさ..」
ロキはノワールの救出に集中するため深呼吸して落ち着きを取り戻す。
「慎重に奥の部屋へ向かうぞ」
ドレインは小声で呟く。
「お前がな..」
ロキ達は声が聞こえて来る先を目指して歩いてた。周囲の床や壁を見ていると木材で補強されていた、広い建物のため活動範囲限定して整備されているようだ。
歩き続けていると騒がしい声と、時たま食器が割れる音が聞こえる。そして香ばしい料理等の美味しな匂いが漂ってくる。
ロキはしかめっ面してドレインに視線を向ける。
「..宴会してるのか?」
「この匂いは間違いないだろ、ここにいる奴等は宴会してる。だから、誰も見張りがいなかったんだ! ふざけやがって!!」
「イラつくのは同意するが冷静になれドレイン。奴等が一箇所に集まってた理由がわかったんだ。後はノワール様の救出だけだ」
「そうだな。それでノワール様の気配は分かるか?」
ロキはノワール様の気配を探すため<気配察知>スキルに集中する――。
頭の中でソナーのよう動き周囲を察知してゆく、近くにいるドレインの気配を察知し、次に28人の人間を察知する、ノワール様の気配を探すため集中力を高めると――ノワール様の居場所を察知した。
ロキはノワール様の居場所を察知すると苦虫を噛み潰したような表情する。ドレインがロキの表情を見て不安そうに尋ねる。
「ど、どうしたんだノワール様の居場所が分からなかったのか」
ロキは顔を横に振る。
「違う。ノワール様の居場所は分かった。だが、ノワール様の居場所は奴等の近くだ」
「くっ、何処か別の場所に捕まってると思ったのに、しかも奴等の近くなんて危険だ」
ロキ達はノワールが牢屋等で幽閉されていと思っていた。見張りがいない今なら誰にもバレずに救出できると思っていたが、ノワールは攫った奴等の近くにいることが分かり、悔しさと同時にノワールの危機が分かった。
ロキ達は先を急ぐように歩き出した、奥の部屋から光が漏れていた、そこから大勢の声が混じり合い聞こえてくる。
部屋のドアは開きぱなっしで警戒感などまったく感じられない。余程、腕に自信があるのか――それとも馬鹿なのかと考えながら、ロキ達は左右の出入口に別々に移動する。
視線を合わせてお互いに頷く。ロキ達は同時に顔を動かして部屋を覗くと――。
部屋の中は学校の体育館のようで上席と下席で別れていて、下席には大きなテーブルが多数置かれおりその上に料理や酒が多く置かれていた。手下らしい者達がテーブルの周りに集まり、食事や酒を飲みながら談笑していた。
そして一番奥の上席には巨大なテーブルが置かれ、テーブルの上に大量の肉料理が置かれいた。その肉料理を一人で独占してる男がいた。オークよりも巨大で――デブが両手で別々の肉料理を持ち一心不乱に食べ続けていた。
――大勢の男達は食事と酒に夢中で、敵など来ないと思ってるのか警戒心は全く感じられなかった。
ロキ達は男達に警戒しながらノワールを探すが見当たらない。もう少し奥を探そうと部屋の中に入ると、上席にいたデブが立ち上がり、下席にいる人達を見下ろせる位置に移動する。
下席にいた手下達は酒樽を持ってデブに叫ぶ――。
「ナポレオン頭領ありがとうございます」
「ナポレオン頭領最高だーー」
「頭領ーー幸せだーー」
――ナポレオンと言われたデブは偉そうな顔して片手を挙げて答える。
ロキは驚きデブを凝視する――。
身体は前にも後ろにもぜい肉が付き、横にもぜい肉が付き風船のように広がっていた。首が見当たらずぜい肉のせいで頭と身体がダルマ体型のようになっていた。顔を見ると頬はニキビだらけで脂ぎっていた。そして鼻を見ると――特徴的な鼻輪をしていた。
ロキは記憶を巡り思い出す――間違いなくあの鼻輪は”村上”がしてた物だと思い出す。
ロキが口を開けたまま呆然としているとエイラ少佐の声が頭の中に響く。
⦅あれはロキ二等兵の記録の中にあった同じ有機生命体か?⦆
⦅....たぶん村上です。手下にナポレオンと言われていますし、あの鼻輪は覚えてますよ⦆
⦅確かに記録の中にある鼻輪と類似してるな⦆
ロキとエイラ少佐は同時に同じ言葉を響かせる。
⦅変わり過ぎだろ!!⦆
――ロキとエイラ少佐が驚く程、村上の身体は大きく肥大化していた。
ロキとエイラ少佐が村上、いや、ナポレオンを見ていると――。
――ナポレオンは胸を張り声を上げる。
「俺様の..俺様の話しを聞けえ野郎共ーー!」
手下達はそれぞれ酒や料理を持ち声を上げる。
「「おおおおおおおおお!!」」
ナポレオンは自慢家に声を上げる。
「俺様のlevelは今59だ! あと1level上がれば新しい職業を獲得できる。俺様の職業は戦士、暴力者、盗賊、大盗賊、頭領だ!!」
手下達は意味など気にせず声を上げる。
「「おおおおおおおおお! 頭領!!」」
ナポレオンは両手を大きく翼が広がるように伸ばす。
「俺様はここに宣言する! levelが60になったら..俺様は世界を支配する力を手に入れる――。」
「「おおおおおおおおお! 世界を支配する力ーー!!」」
「――俺様は..俺様は....”大統領になるーー!!”」
「「おおおおおおおおお! ダイトウリョウ!?」」
手下達が大歓声を上げる中、ロキは顔を傾けてすっ頓狂な声を上げる。
「はっ? 大頭領で世界を支配?」




