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54話 ナポレオンの強欲

 ロキは今、古き新緑の森の中にいた。


 グレーテル城塞都市から古き新緑の森まで今までの半分の時間で辿り着き、新しい装備の性能に驚いていた。


 「新しい装備のおかげで暗くなる前に古き新緑の森に入れた。装備製作してくれたウィリアムさん達に感謝だな」


 ロキは足を止め、新しい装備を見ながら制作してくれた三人に感謝の言葉を話してるところ、エイラ少佐の冷たい声が頭の中に響く。


 ⦅装備を製作した有機生命体達は優秀な職人のようだな⦆

 「ハルカさんに防具を作成してもらい、マリさんは指輪を性能も効果もかなり上昇してますから、まだ、使っていませんけどウィリアムさんが作成してくれた、短剣とシミターも切れ味が良さそうだ。」

 ⦅ネームドモンスターの素材を十二分以上に生かして作成されているな、職人の腕は素晴らしい⦆

 「ウィリアムさん達に装備作成を頼んで正解だったな、ウィリアムさんに最初、出会った時は..あの変態筋肉は本当に――」


 ロキはウィリアム――変態筋肉に身体を触れたことを思い出して身震いする。また、玄関前でのマッスルポーズを思い出し身体を強張らせる。


 「――あんなことが無ければ尊敬出来る人なのに残念だよ」

 ⦅ロキ二等兵は筋肉が好きなのか、体力作りのプランに追加しなければいけないな⦆

 

 ロキは悲痛な表情で拒絶する。

 「止めて下さい、本当に止めて下さい。大体、俺の身体は体型が変わったりするんですか、寝る前に毒キノコを大量に食べてますけど体重は増えてませんよ」

 ⦅ロキ二等兵はいくら食べてもMPに変換されるか体型は変わることはない。だが私の兄弟の誰かが無機物に筋肉増減の操作を研究していたはずだ、その研究データを手に入れればロキ二等兵の身体を改造出来るはずだ⦆


 ロキは呆れながら質問する。

 

 「無機物に..機械に筋肉..必要なんですか? 意味がない気がするんですが、エイラ少佐の兄弟は頭大丈夫」

 ⦅ロキ二等兵! 研究に常識など必要ない必要なのは......”探求心だけだ”⦆

 「その探求心が..筋肉ですか――」


 ロキは日本のロボットアニメを思い出し、ロボットと筋肉を融合させると....イメージが出来上がり..一言。

 

 「――キモイ」


 エイラ少佐は研究の題材や姿勢等淡々と語っているがロキは全く聞いていなかった。


 それどころか自身の身体を見て不思議に感じる。身体は金属で出来てるはずなのに汗もかく、だが汗の匂いはしない。怪我をすれな出血もする、血の色は赤いが擬態してると前にエイラ少佐が言っていた。


 外見的に変わってるのは瞳が機械のところだ。これもよく見なければ気づかれることはない。


 エイラ少佐は先程”改造”と言っていた改造すると変わることが出来るのか、それとも新しい機能が追加されれば改造が出来るのかもしれないが――。


 「――ウィリアムさんのような..筋肉はあり得ないな、絶対しないぞ」

 

 筋肉増減の改造は断固拒否を決意する。


 ⦅――探求心とは、聞いてるのかロキ二等兵!⦆


 ロキは頭の中でエイラ少佐の研究の重要性を説明を聞き流しながら森の中を駆けていた。


 森の中に入ると木々が暗闇を生み辺り一帯を暗くしていた。


 「エイラ少佐話しは後で聞きます、レイカさんやドレインがいる魔物の巣に急いで行きます」

 ⦅..これからが大事な話しになる所だったのに、納得はいかないが仕方がない、後で必ず聞かせるからなロキ二等兵⦆


 ロキは嫌そうな表情をして、瞳に集中させる――。

 「エイラ少佐の話しは怖いけど、今は暗闇の中を走るため視覚機能を使います」


 ――瞳は暗視機能に切り替わる。


 「よし、行くか!」


 木々が邪魔で月の光が差し込まない森の中を駆けて、ロキのマントは風を受けて翻る。


 「ん!」


 ロキの<気配察知>スキルに魔物の反応があり動きを止める。


 ロキは魔物の気配を感じた場所に鋭く視線を向ける。


 「どうしようか」

 ⦅何故動きを止める必要がある、このまま走り続ければ気づかれる事もないだろ、そんなに近くにいるのか?」⦆

 「近くに魔物はいません。ただ、魔物は移動していて、この先で待ってれば鉢合わせることが出来ます」


 ロキは鉢合わせ場所に指をさす。

 

 ⦅だから何故止まる必要がある⦆


 ロキはマントを触る。


 「マントの効果を試してみようと思って」

 ⦅隠密効果向上と認識妨害効果か..ロキ二等兵の考えに賛成する、効果を確認するため試してみた方がいいだろう⦆

 「エイラ少佐の了解も得られましたしやってみます」


 ロキは魔物との鉢合わせ場所に移動する、茂みの中に隠れないで少し目立つように、木の横に立ちマントを頭から身体を隠す様に被る。


 しばらくその場で待ってると、ブーーっんと虫の羽音が聞こえてきた。横目で見ると魔物の正体は蝿を大きくしたモスキートだった。血を好む魔物で何度か討伐したことがある。


 ロキは息を殺しながら、モスキートが目の前に来るのを待つ、モスキートの羽音が段々と大きくなり聞こえてくる。ロキは緊張しながら待ち続ける――。


 ――ロキは視線だけモスキートを追いかけ、目と鼻の先にモスキートが何事もなく通過する。視線だけ動かしてモスキートが見えなくると緊張を解く。


 ロキは頭のマントを外して息を吐く。

 「ふぅーー、正面から戦うより緊張した」

 ⦅だが、これで効果の実証にはなった⦆

 「効果抜群でした、目と鼻の先にモスキートが来た時焦りましたが、全然気づかれませんでした」

 ⦅他の魔物にも有効かどうかは分からないが素晴らしい装備だ⦆

 「装備を作成してくれたハルカさんには感謝だ。それにこのマントはドレインの戦闘スタイルに合うだろう。さて行くか」

 

 ドレイン達がいる魔物の巣まで走り続けていると、地面に馬車が通った後があり、しばらく走り続けると、森の中にオレンジ色の光がぼんやりと見えてくる。


 「誰かが焚き火に火を着けたのか、魔物は大丈夫なのか? 魔物は獣と違って火を怖がらないから心配だけど、レイカさんや冒険者ギルドの職員がいるんだ何か対策はしてるだろう。さて後少しだ行くか....ん!」


 ロキが移動を開始しようとした時に、地面に多くの馬の蹄を発見する。馬の蹄の跡は馬車の後を踏んでいたため違和感を感じた。


 「なんで馬の蹄が車輪の跡を踏んでるんだ」

 ⦅変だな、一緒に行動してれば蹄の跡は、車輪の横にある可能性が高いと思う。後ろを護衛していた有機生命体もいた可能性もあるがな⦆


 ロキは頷く。

 「そうですね、後衛を護衛していた馬の跡かもしれない気にし過ぎたか」

 ⦅とにかく先に行けば分かることだ⦆

 「そうですね」


 ロキは不安な気持ちがあったので急ぎ足でドレイン達がいる場所を目指し、そして――。


 ――ドレインが魔物の巣の入り口前で、身動きせず立ち続けていた。


 ロキは声を上げながらドレインに駆け寄る。

 「ドレイン! どうしたんだ大丈夫か!!」


 ロキが近づいてもドレインに反応がない。ロキは両手でドレインの両肩を持ち激しく揺さぶる――。


 「おいドレイン! どうしたんだ! 喋ってくれドレインーー!」


 ――ドレインの耳元で声を上げて頬を叩くが、人形のように無反応だ。


 ロキが心配していると女性の――レイカの声が聞こえてくる。


 「ロキ君大丈夫だよ」


 ロキはレイカに疑いな目を向ける。


 「どうして大丈夫なんですか、ドレインは固まったままで動けないんですよ」


 レイカは呆れながら説明する。


 「夕方頃までノワール様がここに居たのよ」

 「えっ! ノワール様がここに居たんですか、どうして?」

 「ロキ君、ノワール様のこと知ってるの?」

 「前に古き新緑の森からの帰りに、ムラカミ盗賊団を見かけたとの情報でノワール様が来た時に忠告を受けました」

 「そうなんだ、ノワール様がここに居た理由は同じことね、ナポレオンを捕らえるため情報収集のためここに立ち寄ったのよ。私達も来たばっかで情報はなかったけどね。それにしても良かった、ロキ君までノワール様の毒牙にかかったと心配したよ」

 「ど、毒牙ですか..」


 レイカは肩をすくめながら顔を向ける。


 ロキはレイカの視線の先を見ると――数人の男達がその場で固まっていた、まるでドレインと同じ状態だ。


 「こ、これは..もしかして..」

 

 レイカは頷き答える。


 「ロキ君が考えてるとおりよ、ここにいる人達はノワール様に声を掛けられて固まっている人達よ。まぁ、気持ちは分かるわよ、女性の私から見てもノワール様は美しい女性ですし、セリアエルフ種という珍しい種族だからね」


 ロキはレイカの話しを聞きながら固まっている人達を見るが何故か見えずらい――。

 

 エイラ少佐の声が頭の中で響く。

 ⦅ロキ二等兵、暗視のままだぞ⦆


 ――エイラ少佐の言葉で思い出すと暗視機能を使ったままだった。


 暗視機能から通常の視覚に切り替える。そうすると世界の色は代わり焚き火の火が周りを明るく照らす。


 そして、隣にいるドレインを見ると――顔はトマトのように真っ赤になり、目はハートマークになり、口を緩みきってだらしない顔になっている。


 ロキはドレインの情けない姿を見て少し動揺しながらレイカに質問する。


 「どうして、ドレインの顔が大変なことになってるんです」


 レイカは少し溜息を吐き答える。


 「はーー、ドレイン君はね、別れる時にノワール様が「ここは任せたぞ」と声を掛けられて手を肩に置いたのよ」

 「それだけですか..」


 レイカさんは呆れながら頷き答える。


 「それだけよ。..今はドレイン君達にことはほっときましょう、ほっとけば時期に復活するでしょう。さぁ、ロキ君行こう、ここまで急いで来たんだから疲れてるでしょう」


 レイカは前を歩き道案内をする。


 ロキは呆れながらドレインを見て――。


 「..ドレイン..女で失敗するなよ、綺麗なバラには棘があるんだからな」


 ――ドレインに忠告した後、レイカを追いかけようとした時..思い出す。


 「ノワール様か..蹄の跡は、それなら心配する必要はないな」

 「ロキ君! 早く一緒に休憩しましょう」


 ロキは視線を向けると、レイカが両手を大きく横に振っていた――。


 ――ロキも片手を挙げて声を上げる。


 「今行きます!」

 

*************************************

 

 ナポレオン視点


 大きなテーブルの上に大量の肉が置かれている、その大量の肉を目の前の男――ナポレオンは片手で持ち口に運ぶ、拳の倍の、大きさの肉の塊を三口で平らげ次々と口に運んでいく。


 大量の肉が少なる前に配膳係の手下が料理を運んでいる。ナポレオンが上機嫌に肉を食べていると、近づいて来る手下がいる――。


 ナポレオンは食事を邪魔されて不機嫌な表情する。

 「どうした俺様は楽しい食事中だぞ! 邪魔をするな!」

 

 ――手下はビクつきながら声を上げる。


 「ナポレオン頭領、食事中すいません! 至急お知らせしたいことがありまして」

 

 ナポレオンは食べカスを飛ばして声を上げる。

 「早く要件を言えーー! 料理が冷めちまうだろうが!!」

 「は、はい、裏切り者が”青い妖精”を捕えて来ました」


 ナポレオンは立ち上がり声を上げる。

 「捕まえたか良くやったーー! ノワールは牢に入れておけ、それと念入りに薬を撒いとけ力が復活したら面倒だからな」


 ナポレオンは捕まえたノワールを下品に弄ってやろうか考えて顔を歪める。


 「くっくっ、大事な商品だが少しぐらい味見しても良いだろう、この俺様を振りやがった女なんだからな! ぎゃはははははは..」


 ナポレオンが下卑た笑みで高笑いしてると、申し訳なさそうに手下が声を上げる。


 「それと、もう一つお知らせたいことがあります」

 「なんだ、折角いい気分でいたのに今度は何だ」

 「はい、死体の処理場に冒険者ギルドの連中が来てます」


 ナポレオンは目を鋭く睨む。


 「なにーーどうゆうとことだ。あそこには結構強いオーク達が居たはずだぞ」

 「はい、そのオークが冒険者に討伐されたみたいです」


 ナポレオンは悔しそうに舌打ちをする。

 

 「ちっ! 折角、経験値稼ぎに育てたものなのに、誰だ横から取りやがってムカつくぜ」


 ナポレオンは拳をテーブルに叩き突ける、その衝撃で肉が転がり落ちる。


 転がり落ちた肉を拾い上げ、息を吹きかける。


 「ふーーふーー、三分ルールだ。あむぅ、くちゃくちゃ..」


 床に落ちた肉を食べる、周りの手下は慣れてるのか気にせず立ち続ける。


 口にある肉を食べ終えたナポレオンは顔を歪め声を上げる。


 「経験値稼ぎは別の場所でやればいい。それにどっちみち最強の力が手に入るんだ! 心配する必要はねぇ。それよりもノワールだ味見してくるかーー」

 「ボスいいですか手を出して、青い妖精、いえ..ノワールはマリデン商会から大事に扱えと――」

 

 ――ナポレオンは大きな声を上げ、手下の言葉を遮る。

 「黙れ! 俺様に命令するな! 俺様が決めることだ分かったなーー!!」

 「す、すいません」


 ナポレオンは下品なイメージを想像して下を舐める。


 「ノワールはどんな味がするのか....ん! いい匂いだ」


 ナポレオンが移動しようとした時、新しい料理が運ばれ、料理の匂いがナポレオンの鼻に辿り着く、腹をさすり満腹感を調べる。


 ナポレオンは鼻で大きく吸い込むと椅子に座り治す。


 「ノワールは逃げねぇから明日だ! 今は肉だーー! どんどん新しい料理を運んで来い」


 ナポレオンは明日のことを想像して下卑た表情で料理を平らげていく。


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