53話 新装備は激強
冒険者ギルドの職員が誰かの指示を受け忙しく動いていた。その様子を見ていた冒険者達は噂話をしながら騒ぎだした。
ロキ達はギルド職員の様子を見ながら、しばらく待っていると、エレインと副ギルドマスターのレイカが急ぎ足で駆け寄って来た。
レイカが真剣な目でロキ達に話し掛ける。
「お待たせしました。ロキ君、ドレイン君。エレインから”魔物の巣”と”ボブオーク”の報告を受けました。ボブオークの素材を、こちらでアイテム鑑定したところ間違いなくボブオークの素材だと分かりました。それともう一つ冒険者の人骨を多数発見したとの報告も受けました、間違いないですか!」
ロキ達は一緒に頷く。
「間違いないないです魔物の巣で多くの人骨を発見しました。ただ..」
「ただ..なんでしょうか?」
「推測ではあるんですが、冒険者以外の犠牲者もいるんじゃないかと思いまして、冒険者だけの犠牲者だったらギルドから忠告が何か連絡があると思ったので違和感を感じました」
レイカは神妙な表情で話す。
「それほど多くの人骨があったんですね。ロキ君が言った通り多くの冒険者が行方不明がありましたら、冒険者に勧告致します。それと先月も冒険者で行方不明者はいました、当然魔物を相手に危険な仕事をやっていますので犠牲者はいます」
ロキ達は納得して頷く。
エレインは続けて話す。
「ですが、警戒レベルの行方不明の人数ではありません。ですので現地にギルド職員を派遣致します。ロキ君とドレイン君には悪いんですが”魔物の巣”の案内を緊張依頼でお願いしたいと思っております」
ロキ達は少し困ったように話す。
「休憩は後回しだなドレイン」
「しょうがないさ、それにここで待ってる時に休憩はできたから体力は大丈夫だ」
ロキ達は話し合いをした後、レイカに視線を向ける。
「俺達は大丈夫です」
「道案内任せて下さい、あそこまでの道は覚えましたから大丈夫です」
レイカはロキ達の顔を見て軽く会釈する。
「ありがとうございます二人共。それでは早速出発しましょう、準備は他の職員がやっておりますので、馬車まで移動しましょう」
レイカがロキ達を馬車まで案内しようとすると、エレインが申し訳なさそうに話し掛ける。
「副ギルドマスター待って下さい。ロキ君にウィリアムさんから言伝があります」
ロキが答える前にレイカが不満そうに話す。
「筋肉野郎からの言伝..私は聞いてないですよエレイン」
「ロキさんへの言伝ですから、流石に”部外者”の副ギルドマスターに報告は出来ません」
レイカは笑顔で額に青筋を浮かべながら話す。
「..部外者..私とロキ君が..ふぅーーまだ根に持ってるのエレイン」
「何の事かしら、”部外者”のレイカ」
エレインも負け時笑顔で、レイカと火花を散らしていた。
ロキ達はレイカとエレインの緊迫した雰囲気で話し掛けられずにいた、そこへロキの横から女性の声が聞こえて来た。
「ロキさん大丈夫ですか」
声が聞こえた先に振り向くと、ギルド職員のリリアナがいた。
ロキは軽く会釈して話す。
「久しぶりですリリアナさん。それでレイカさんとエレインさんは仲が悪いんですか」
「仲が悪いというかライバルですよ。えーーと、5年前に二人が副ギルドマスターに推薦されてから、お互いにライバル視してますね。まぁ、でもその前から、良くぶつかっていたような気がします」
リリアナは二人の様子をうんざりしたように二人の関係を説明した。
ロキはウィリアムの言伝が気になったので話し掛けようとすると、横にいたリリアナが声を上げる。
「副ギルドマスター! エレインさん! 受付で見っともないですよ。それとロキさん私もウィリアムさんの言伝は知ってますので代わりに伝えます。”装備が出来たから、いつでも店に来てくれ”だそうです」
ロキは驚いて声を上げる。
「もう装備出来たんですか、昨日は二日後に出来ると言ってたのに、一日早く出来たのか」
ロキは新しい装備のことで落ち着かない様子だった、その様子を見ていたドレインは話す。
「ロキ行ってこいよ。道案内は俺がやっておくから任せてくれ」
ロキは嬉しそうに喜色を上げる。
「いいのかドレイン」
「新しい装備が気になるんだろ気持ちは分かるからな、だから道案内は任せてくれ」
「ありがとうドレイン。新しい装備を着たら俺も直ぐに行くよ」
「ロキは後で来るんだったら、矢を補充したいからウィリアムさんの店で購入しておいてくれ、代金は後で払うよ」
「わかった、矢だな。レイカさん悪いんですけど俺は先にウィリアムさんの店に行ってきます」
ロキはレイカに同意を得る前にマリ装備屋に向かうするので、レイカは呼び止める。
「待ってロキ君、新しい装備が気になるのはしょうがないけど、その前に緊急依頼の依頼金は一人金貨20枚になります、宜しいですか」
ロキ達は道案内で金貨20枚なら幸運だと思い頷く。
「ありがとうございます。依頼金は道案内が終わりましたら支払います。それとボブオークの素材ですが売却は考えておりますか」
ロキはドレインに話し掛ける。
「ドレインどうする売るのか?」
「正直分からないなお金に困っている訳ではないから、ロキが決めてくれ」
「分かった。レイカさん売却は考えていません、返却をお願いします」
「残念ですが仕方がありません。ただ、ボブオークの情報が少ないので記録を残すため、しばらく預からせれ貰えないですか」
ロキは横眼でドレインを見ると頷いていた。
「いいですよ」
「ありがとうございます。それとこちらが二人のギルドカードとオークの買取金額になります」
ロキとドレインはギルドカードと買取金を受け取り、ロキは一足早くマリ装備屋に向かった。
レイカさんは悲痛な表情でロキの後ろ姿を見て。
「折角ロキ君と一緒に馬車に乗るはずだったのに、邪魔しやがって筋肉野郎は――」
レイカは隣にいるエレインに憎々しく睨む。
「――エレインあなた..分かってて魔物の巣のこと報告したわね」
エレインは惚けた様に話す。
「さぁ、分かりません。私<未来視>スキルは持っておりませんから、ただ部外者の副ギルドマスターには関係ないことです..”よ”」
レイカとエレインはお互い睨み合い続けていた。ドレインは助けを懇願するようにリリアナに視線を向けると、その場に既に居なかったそれどころか周りには冒険者もいなくなり、孤独感を襲うドレインは胃を抑えながら立ち続ける。
「ロキ..助けて」
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ロキは嬉しそうにマリ装備屋に向かっていた。
エイラ少佐の呆れながら冷たい声が頭の中に響く。
⦅ロキ二等兵浮かれ過ぎだ。気持ち悪い⦆
⦅うっ、気持ち悪いは酷くないですか⦆
⦅事実だ。だがこれでようやくまともな装備が手に入る。そろそろ別の場所に移動して電子生命体を探した方がいいだろう⦆
⦅移動か..候補はあるんですか?⦆
⦅王都クロスか迷宮都市ラクスだ⦆
⦅迷宮都市ラクスか..ドレインも行ってみたいって言ってましたから興味がありますね。迷宮といえばお宝、お宝といえば魔法書だ。絶対魔法を覚えてやるぞ⦆
⦅ロキ二等兵、適正が無いと覚えられないぞ⦆
⦅フラグを立たせないで下さいよ、エイラ少佐不安になるじゃないですか⦆
ロキとエイラ少佐は頭の中で会話を続け歩いてると、目的地のマリ装備屋の前に着く。
ロキは入り口前で変態筋肉のウィリアムがいないことを祈りながらドアを開ける。
開けてみるとウィリアムの筋肉は見当たらず安堵する。商品を並べていたハルカがこちらを振り向く。
「いらっしゃいませ! あ、ロキさん来てくれたんですね」
ハルカは嬉しそうにロキに近寄る。
「お母さんが明日ロキさんが来るって言ってたから今日は来ないと思ってました」
「俺も明日来る予定だったんですけど、冒険者ギルドでウィリアムさんの言伝があったので来ました。それで新しい装備はどこに」
ロキは新しい装備が気になり嬉しそうにハルカに話す。ハルカもロキの嬉しそうな表情を見て笑顔で答える。
「くすくす、嬉しそうだねロキさん」
「嬉しいですよ、待ちきれない気持ちです」
「待っててロキさん奥に置いてあるから、お父さんとお母さんも丁度、作業部屋にいるから持って来てもらうね」
ハルカは可愛い口で大きく息を吸って声を上げる。
「お父さんとお母さん! ロキさんが来てるから装備を持って来て」
少し経つと奥の部屋からウィリアムの声が聞こえてきた。
「....ロキが来てるのか早いな。分かった装備を持って行くから待っててくれ!」
ロキとハルカが新しい装備のことで談笑してると、ドアが開く音と足音が聞こえてくる。
ロキは視線を向けると疲れた顔のウィリアムがいた。だが瞳は達成感と誇りで輝いていた。
ウィリアムは新しい装備をテーブルに大事そうに置く。
「これがロキの新しい装備だじっくり見てくれ」
ロキは近づき装備を見る。最初に目がついたのは緑色の鎧だオオカミの紋章が刻まれていた。重さはどうだろうと両手を伸ばす。
「持ってもいいですか?」
「当たり前だろロキの装備だ」
ウィリアムに断ってから持とうとしたら三人に笑われてしまった。確かに俺の装備何だから断る必要はなかった。緊張していたようだ。
改めて装備を持つと軽く前に装備していた軽装よりも軽く感じた。鎧を軽く叩いてみると金属音ではないが鈍い音が反響する。
「以前装備していた軽装よりも軽いし、衝撃を防いでくれそうです」
ハルカが嬉しそうに説明した。
「私も驚きましたこんなに軽くなるとは思いませんでした。ミスリルとネームドモンスターの素材を混ぜて通常のミスリルよりも軽く頑丈な金属になりました。しかもですよこの装備には――」
ハルカは興奮して声を上げる。
「――効果が付いてるんです」
ロキは凄さに気づかず不思議そうに思い、そして思い出す。
「効果? 効果! 効果は迷宮の魔法装備しか付かないんじゃないんですか!!」
ウィリアムが腕を組んで説明する。
「俺も始めて知ったんだ、まさか効果が付くとは思わなかった。もしかしたら素材によって効果が付くのかもしれない」
「素材によってですか?」
「そうだ今回見たいにネームドモンスターの素材とかだ」
「ネームドモンスターの素材ですか? あそこに飾ってある武器もネームドモンスターの素材で作ったんですよね、効果を付いてるんですか」
「あれには効果は無い。あれとの違いは魔石だ、今回の装備には魔石の一部を削って粉末にして各装備に混ぜたんだ。それによって効果だけじゃなく性能も格段に上がっている」
ロキは驚き他の装備も見る。投擲に向いてる短剣やシミター見たいな三日月刀がある。籠手や足鎧もありマントもあった。どれも鎧と同じ緑色をしてオオカミの紋章が刻まれている。
「ウィリアムさんこのオオカミの紋章は」
「それは俺達が刻んだ訳じゃないぞ、完成した後に自然に刻まれたんだ。紋章だけじゃなく緑色もそうだ」
「何か怖いんですけど、呪いは無いですよね」
「知らん。全部ロキの装備だ持って帰ってくれ」
ロキはマントに刻まれいるオオカミの紋章見る。
⦅ロキ二等兵、何かどことなく”ネームドモンスター”に似てる感じがするな⦆
⦅怖いこと言わないでくださいよ、エイラ少佐⦆
⦅ロキ二等兵もそう思うのだろ⦆
⦅うっ、確かにどことなく”ゴルバ”に似てる感じがする⦆
ロキがマントを見てるとウィリアムが話し掛ける。
「ロキそのマントにも効果が付いてるぞ」
ロキはウィリアムに話し掛けられ驚く。
「えっ、えっ、マントにも効果があるんですか」
「そうだ。隠密効果向上と認識妨害効果だ、他の装備の性能と効果が知りたければこれを見てくれ」
ウィリアムはロキに書類を見せる。
「これは..装備の詳細ですか? もしかしてウィリアムさんは鑑定が出来るんですか!」
「俺にそんなレアなスキルはないぜ。その代わりアイテム鑑定の魔法道具があるのさ、俺が若い頃に迷宮に潜って手に入れた魔法道具だ」
「アイテム鑑定の魔法道具か便利ですね。それじゃ装備の性能と効果見てみますね」
ロキはウィリアムから書類を受け取り装備の詳細を確認する。
「どれどれ」
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種類 短剣
名前 風牙”ゴルバ”の短剣
性能 腕力を300上げる
効果 切断ダメージ10%アップ
付与 なし
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種類 シミター
名前 風牙”ゴルバ”のシミター
性能 腕力を2000上げる
効果 切断ダメージ12%アップ
付与 なし
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種類 身体装備
名前 風牙”ゴルバ”の鎧
性能 体力を2000上げる。 俊敏を1500上げる
効果 風魔法ダメージ5%カット 衝撃ダメージ5%カット
付与 なし
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種類 腕装備
名前 風牙”ゴルバ”の籠手
性能 体力を1500上げる。 俊敏を1500上げる
効果 風魔法ダメージ5%カット 衝撃ダメージ5%カット
付与 なし
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種類 足装備
名前 風牙”ゴルバ”の足鎧
性能 体力を1500上げる。 俊敏を2000上げる
効果 風魔法ダメージ5%カット 衝撃ダメージ5%カット
付与 なし
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種類 靴装備
名前 風牙”ゴルバ”の靴
性能 体力を500上げる。 俊敏を2000上げる
効果 風魔法ダメージ5%カット 衝撃ダメージ5%カット
付与 なし
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種類 マント装備
名前 風牙”ゴルバ”のマント
性能 俊敏を1000上げる
効果 隠密効果向上 認識妨害効果
付与 なし
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種類 指輪装備
名前 風牙”ゴルバ”の指輪
性能 魔力を500上げる。 精神を500上げる
効果 稀に風が生まれる。 ????
付与 なし
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「はっ?」
ロキは目を擦ってもう一度装備の詳細を確認する。
「はっ! ウィリアムさん性能の数値可笑しくないですか?」
「ロキも驚いたか、俺達も性能の数値を見て最初は驚いた、アイテム鑑定の魔法道具が壊れたのか心配して、前に鑑定した装備で確認したが異常はなかった。だからその数値は間違っていない」
「でも、これ前の風牙狼の装備の100倍ですよ。こんなに違うんですか」
「ロキが驚くのは不思議じゃない。だが迷宮で発見される魔法装備の性能はこのぐらいだ。だからこそ魔法装備は高く取引されている。それにBランク以上の冒険者は魔法装備を装備している奴等は多いし、ランク4以上の魔物を相手にするんなら、このぐらいの性能がなければ太刀打ちできない」
ウィリアムの説明でなんとなく納得する、ロキ自身levelアップでステータスが上がって強くなったけどボブオークとの戦いは苦戦した。それにボブオークはランク3の魔物だ、ボブオーク以上に強い魔物は多くいる。
ロキが考えていると、ウィリアムが話す。
「ロキ! 奥に部屋を貸してやるから着替えて来いよ」
「えっ、いんですか部屋貸して下さい」
ロキはハルカの案内で部屋に行く。部屋の中で新しい装備に着替える、装備の性能なのか身体が軽く感じる。
「これは....凄いな。装備を着ただけで強くなった感じがする」
⦅実際に数値上は向上してるから、力加減に気を付けるんだな⦆
⦅了解⦆
ロキは両手足を軽く動かして不快感が無いか確認する、不快感は見つからず。
「何かいい匂いがするな新品の匂いかな、そろそろ行くかウィリアムさん達は待ってる」
シミターと短剣を腰と背中に取り付ける、鎧にはシミターと短剣が備え付けられるように工夫がしてある。
ロキは部屋を出てウィリアム達がいるお店に向かう。
三人の前に出ると嬉しそうに歓声を上げる。
「良く似合ってるぞロキ」
「ロキさん恰好いいですよ」
「緑色もいいですね」
ロキは褒められて照れたので誤魔化すように頭を掻く。
「あ、ありがとうございます。こんな素晴らしい装備」
エイラ少佐が不機嫌な冷たい声が頭に響く。
⦅馬子にも衣裳だ!⦆
⦅うっ、少しぐらい褒めてくれてもいいじゃないですか⦆
⦅恥ずかしくないのか、ただの社交辞令だ!!⦆
⦅ぐはっ! 本当は似合っていないのか?⦆
ロキがエイラ少佐の口論で心にダメージを受け落ち込んでいると、マリが近づいて話し掛けてくる。
「ロキさん大丈夫ですか? 何だか落ち込んでいるようだけど、この指輪もロキさんの新しい装備ですよ」
ロキはマリが持ってる指輪を見る、指輪には魔石が取り付けられていた。
「指輪..そういえばさっき見た詳細にも指輪が書いてあった」
「そうですよ。魔石を削って使いましたので少し小さくなりましたので指輪に取り付けました。とても素晴らしい装備ですから大事に使って下さい」
ロキはマリから指輪を手渡される。
「ありがとうございます大事します」
指輪を右手の中指にはめる。
ドレインに頼まれた矢を購入する。それと風牙”ゴルバ”の短剣と風牙”ゴルバ”のマントをリュックサックに入れる。短剣は前にドレインと約束したので渡す。マントは狩人のドレインに似合うと思ったので予備を上げることにした。
全ての準備が終わったのでウィリアム達に視線を向ける。
「ウィリアムさん、ハルカさん、マリさん新しい装備ありがとうございました。これがあればどんな魔物にも負けないと思います」
ウィリアムはマッスルポーズで話す。
「ロキ装備も大事だが、筋肉はもっと大事だから鍛えとけよ」
マリが申し訳なさそうに話す。
「ごめんなさいロキさん。夫は照れてるだけですから」
ハルカは心配な表情で話す。
「ロキさんは直ぐに無茶しそうだから心配です。ロキさん気を付け下さい。それと、いい素材を手に入れたらまたお願いします」
ハルカの欲に染まった笑顔を見て苦笑いしながら外に出る。
空を見上げると薄っすら茜色が見え、陽の光が新しい装備を照らす緑色に光幻想的に見えた。
「急いで魔物の巣に行かないと暗くなりそうだ。早速新しい装備の性能を見てみるか!」
ロキはドレインとレイカがいる古き新緑の森に急いで向かった。




