52話 ボブオーク戦闘後
小山の上で、血や灰、土等で汚れたまま寝ているロキの顔に陽の光が差し込む。
片手で日の光を遮る。
「......もう朝か早いな」
体力を回復させるため普段なら<スリーブモード>で体力を回復させていたが、ドレインが近くにいるため使用しないで、<自己治癒率アップ>と<疲労回復>スキルで回復をしていた。
疲れ切った表情で上半身を起こし、両手を閉じたり開けたりを繰り返して体力を確認する。
「完全には体力は回復していな、まぁ、これだけ回復してればグレーテル城塞都市まで戻れるか」
顔を動かして周囲を見渡す、周りは昨日ボブオークと戦闘した後と変わらない、ボブオークが創った魔法の壁や魔法の槍があり、ロキが闘技を使い地面を破壊した傷跡が残っていた。あれ程積まれていた灰は無くなっていたが人骨はまばらに地面に転がっていた。
「結構派手に戦ったな、昨日は疲れてよく見なかったら分からなかった」
ロキが周囲を見渡してると、エイラ少佐の冷たい声が頭の中に響く。
⦅最初の頃に比べると随分強くなった! それにしても昨日の闘技は驚いたぞ⦆
ロキは少し恥ずかしそうに話す。
⦅<閃光跳弾蹴>のことですか⦆
⦅そうだ! まるでロキの記憶の中にあった〇〇ライ〇ーの技に似ていた⦆
恥ずかしすぎて悶絶する。
⦅あ~~言わないで下さい恥ずかしすぎる~。俺は知らなかったんだ新しい闘技が〇〇ダ〇キックなんて知らなかったんだ⦆
⦅何故そんなに否定する、素晴らしい威力だったぞ。それに昔は何度も練習してただろう記憶の中で確認済みだぞ⦆
頭を両手で抑えて悶絶する。
⦅それは~子供の頃だ~~!?⦆
⦅ロキ二等兵良かったじゃないか.....夢が叶って!⦆
⦅あ~~辞めてくれ~~!⦆
ロキが悶絶してると突然――。
「がぁぁぁぁ! すぴ~~、がぁぁぁぁ! がぁぁぁぁ..」
――隣から騒音が聞こえてくる。視線を向けるとドレインがイビキをかいて寝ていた。
ロキが若干呆れながらドレインを見ていると。
⦅五月蠅い有機生命体だ! よくこんな場所で寝れるものだ、ロキ二等兵が居なければ死んでるぞ⦆
⦅そういえば、夜間にゴブリンや他の魔物が近く来てました。けど直ぐに森に戻って行ったな⦆
ボブオーク達はこの辺一帯を縄張りにしていた。ロキとボブオークの戦闘音は森にも鳴り響いていて、そのため魔物達がボブオーク達の様子を見に来ていた。
ロキが昨晩の出来事を思い出していると、ドレインのイビキ声が酷く鳴っていき。ロキの心情が呆れから怒りに変わってきた。
「ドレインいい加減起きろ!!」
ドレインを起こすため拳を握りしめ額に殴り込める。
額から鈍い音が聞こえたと同時に――。
「いってぇーーーー!?」
ドレインは額を抑えながら絶叫する。
ドレインは状況が分からず真っ赤になった額を抑えて、薄っすら涙目になっている。
ロキはそんなドレインを見て呆れるように溜息を吐く。
「やっと起きたかドレイン、いくら何でも寝過ぎだぞ」
ドレインはハッとして申し訳なさそうに答える。
「また..イビキをかいていたか?」
ロキは無言で頷く。
「すまんロキ。ギルトン師匠にも注意されたんだけど、疲れて寝るとイビキをかいて寝ちまうんだ」
「この前森で夜営した時はイビキをかいていなかったけど」
「あぁ~、あの時は薬を飲んでたからな、それで薬が切れてるのを忘れてた」
「そんな便利なアイテムが売ってるんだ」
「ロキは知らないのか? 結構有名な商品で冒険者や旅をする者には必需品だぞ」
ロキは少し自慢家に話す。
「俺はイビキをかかないからな必要ないよ」
ドレインは冗談ぽく不貞腐れて答える。
「俺のイビキ声で迷惑掛けて悪かったよ。許してくれロキ」
「しょうがない許してやるよドレイン、ほら立てよ」
ロキは地面の座っているドレインを立たせるため手を差し伸べる。
「ありがとうロキ」
ドレインはお礼を言った後、オーク達が建てた小屋を見て提案する。
「グレーテル城塞都市に戻る前に探索するか、昨日は碌に探索出来ず戦闘になったからな」
ロキは少し考えて答える。
「....そうだな、ボブオークとオークの解体が終わったら探索するか、犠牲にあった冒険者に悪いが使える物が残ってあるかもしないし」
「何かあるかもしれないからな。良しさっさと解体を終わらすぞ」
ロキ達はボブオークをとオークの解体をする。ボブオークは討伐証拠の部位が分からないので魔石と角、耳だけにして後はギルドに報告した後に回収することにした。オーク達も魔石と討伐証拠を回収した。肉は大量にあるので、ドレインが燻製のやり方知っていたのでオークが建てた小屋を使って燻製部屋にした。
オークが作った魔物の巣を探索したがめぼしい物は見つからなかった。小屋の中も調査したが、あったのは魔物の毛皮や骨だった。勿論ボブオークが居た建物の中を見たら、ボブオークの骨が数体大事そうに置かれていた。もしかしたら、俺が倒したボブオークの兄弟なのかもしれないと思った。
数時間掛けて探索したが何も見つからなかった、俺とドレインは肩を落として落ち込んだ。だが不思議に思ったことがある犠牲者の装備品が無かったことだ。ドレインに装備品のことを聞いたら何で無いんだと答えていた。
魔物の巣を探索を終えグレーテル城塞都市に戻ることにした、ここまでの道のりは覚えたので最短距離で森を抜けることができた。途中魔物に出くわすこともなかった。
ロキ達は休憩無しで走り続け、昨日の戦闘の疲れもありへとへとになりながら、丁度昼前にグレーテル城塞都市の冒険者ギルド前にたどり着いた。
ロキとドレインは隣に並んで一緒に冒険者ギルドのスライドドアを開けて中に入っていく。
ロキは隣のドレインに話し掛ける。
「ドレイン疲れてるけど、報告するため受付に並ぼう」
ドレインは頷き答える。
「早く報告してどっかで休憩しよう」
ロキ達はボブオークのことを報告するため受付の列に並ぶ、列は数人の冒険者達が並んでいた。暫く待っていると前に並ぶ冒険者のパーティーメンバーの話し合いが聞こえてくる。
「王都に勇者が来てるらしいぜ!」
「マジか勇者が来てるのか! それで二つ名はなんだ」
「知らねえ~よ」
「馬鹿かお前は二つ名が分からなければ意味がねぇだろうが。まぁ、しょうがねぇなぁ、それで女か男か女勇者だよな!? 女勇者美人揃いって噂だからな」
「女勇者美人なのか~いいね」
「王都行きの護衛依頼があったら行くか女勇者様に会いに!」
「王都の護衛依頼か~だけどよ、女勇者が来てるか分からないしな~」
「はぁ! 勇者は女じゃねのかよ!!」
「知らねえ~よ」
「ふざけんな! 俺は女勇者のパーティーに入るの夢なんだぞ」
「お前が......無理だろ..鏡で自分の面をよく見ろよ」
「何だとてめえ!」
「女勇者のパーティーメンバーは美男が多いと聞くぜ! お前の面はゴブリン+10だろうが! ぎゃはははは」
「てめえ..」
「「辞めろ馬鹿共!!」」
勇者の噂話しをしていた冒険者が殴り合いの喧嘩になるところを仲間の冒険者達が止めに入った。
ロキは勇者の言葉に興味を持ち小声でドレインに話し掛ける。
「ドレインは勇者は知っているか?」
「勇者か..俺が子供の頃から知ってるのは【聖血六手】かな憧れたな」
「有名なのか【聖血六手】は?」
「ロキは知らないのか結構有名だぞ」
「悪いが知らないよ。それに他の勇者も知らないな、ドレインは詳しいのか【聖血六手】」
「俺も詳しく知らない、子供の頃に親父から聞いたことがあるだけだ、童話の話しだからな」
「童話の話しに勇者が出てくるのか、ありきたりだな、どうせ最後は悲劇話しになるんだろ」
「よく分かったな、勇者は血の涙を流しながら最愛の恋人を殺して、自分が助けた人々を殺して行くんだ」
「それ本当に童話なのか? 子供に聞かせる話しじゃないぞ」
「だから、誰も知らないさ最後の話しは」
「じゃあ、何でドレインは最後の話しを知ってるんだ」
「ん! ......何で俺知ってるんだ! 親父から聞いたのか..違う親父じゃない、誰から聞いたんだっけ忘れた」
「ドレインもうボケたのか」
ドレインは必至に勇者の最後の話しを誰から聞いたか思いだそうと考えている。
ロキはドレインの様子を見ながらエイラ少佐に質問する。
⦅エイラ少佐は勇者のことを知っていますか?⦆
⦅勇者か..有機生命体の勇者は詳しくはないが、電子生命体にも勇者の職業を持つ者はいたぞ⦆
⦅電子生命体に勇者ですか?⦆
⦅不思議か電子生命体に勇者があるのは、我々だって生命体だ、それにこの世界では力と一定の知恵があれば世界から獲得できる。ロキがいた前の世界とは違うぞ⦆
⦅俺の中ではまだ、電子生命体はコンピューター、AIだと思うところがありました。すいませんでしたエイラ少佐⦆
⦅正直な謝罪を受け入れよう、ロキ二等兵⦆
⦅....勇者か..俺も勇者に慣れるかな⦆
⦅ロキ二等兵が勇者....。 ぷっ⦆
⦅笑うことはないと思いますけど。エイラ少佐は知ってるんですか勇者の職業を獲得出来る方法⦆
⦅勇者..興味がないから知らないな。 ....ぷっ⦆
ロキとエイラ少佐が頭の中で会話をしていると、ドレインはまだ必至に思い出そうしてた。
「....俺は誰から聞いたんだ。 夢? 神官? ..思い出せない。俺は誰から......」
ドレインは俯きながら小声で誰にも聞こえない声で独り言を喋っていた。
前に並ぶ冒険者が動き出したのでロキは移動する、ドレインが気付いていないので声を上げる。
「ドレイン! 聞こえていないのかドレイン!!」
ドレインはロキの声で我に返る。
「はっ、悪い考え事していた」
「大丈夫かドレイン、もうボケたのか」
「ボケていねぇよ、少し考え事してただけだ」
ロキ達は冗談話しをしながら受付の順番が来るのを待っていた。
待つこと数分順番が来て向かうと、受付はエルフのエレインだ。
「こんにちはエレインさん」
「お久しぶりです、ロキさん随分とボロボロな恰好してますね。あら、そちらの方はロキさんのパーティーメンバーですか?」
エレインはロキの隣にいたドレインを見ていた。ロキは片手を動かしてドレインを紹介する。
「仲間のドレインです。ほら、ドレイン自己紹介しろ!」
ドレインは顔を赤くして挨拶する。
「お、おお俺はドレインでです」
ドレインは緊張していたため口が上手く動かない。ロキはドレインの赤くなってる顔を見て「お前惚れっぽい過ぎだろう」と小声で呟く。
エレインは緊張したドレインを見て軽く笑いながら答える。
「くすっ、初めましてドレインさん、私はエレインです、よろしくお願いします。もしかしてドレインさんのお父さんはドランさんですか?」
「はははははい」
ドレインは緊張して上手く喋れないので代わりにロキが答える。
「ドレインの父親はドランさんですよ。良く分かりましたねエレインさん」
「だってドレインさん、若い時のドランさんにそっくりですから、それに今のドレインさんと同じように
私の前で顔を赤くしてました」
「ドランさんも緊張してたのか(若い頃のドランさんを知ってるってことは、エレインさんはいくつなんだ)」
エレインさんの年齢を考えてると鋭い視線を感じ――エレインさんを見ると、威圧を感じる満面な笑顔で。
「くすっ、どうかしましたかロキさん。......何か変なことを考えてましたか?」
ロキは恐怖を感じ――隣にいたドレインも恐怖を感じたのか我に返って、ロキ達は背筋を伸ばして直立不動で。
「「何も考えていません!」」
笑顔のエレインは両手を軽く叩いて答える。
「それは良かったです、女性の秘密を深く考えないで下さい。..自己紹介が長くなってしまいましたね。本日は依頼の報告でしょうか」
ロキ達はギルドカードとオークの魔石と討伐証拠や素材を渡した。ボブオークの素材は装備製作に使えるかもしれないから提出しない。それと魔物の巣のこと、ボブオークを討伐したことを報告した。それから被害にあった冒険者の人骨を発見したことも一緒に報告した。
報告を受けたエレインは驚き口を開けたまま固まっていた、長年の超ベテラン受付嬢として直ぐに我に返る。
エレインは恥ずかしかったのか顔を少し赤くして話す。
「ロキさん! ドレインさん! ボブオークの素材がありましたら貸して貰えませんか、上司に報告するためお願いします」
ロキ達はお互いに顔を見て(いいよなと)頷く。
ロキはリュックサックからボブオークの素材を出す。
「エレインさんこれが、ボブオークの魔石と素材です」
エレインは魔石と素材を凝視して答える。
「..オークの素材に似ていますが違いますね。直ぐに返却致しますので貸して下さい」
「どうぞエレインさん」
「有難うございます。それと申し訳ありませんが、しばらくここで座って待って下さい」
「大丈夫ですよ、俺達は急いでいないので待ってます」
「すいません」
エレインはロキ達にお辞儀した後、後ろに並んでいた報告待ちの冒険者に説明して、ボブオークの素材を持って上司に駆け寄る。
報告を受けたギルド職員は驚き、そしてギルド全体が慌ただしく動き出した。ちなみに暇になっていたロキ達は欠伸をかいてほのぼのとしていた。




