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51話 オークの巣4

 凶悪な槍がドレインの命を奪うと迫る中、ロキは喉が壊れるぐらい大きな声で友の名前を叫んだ。


 ドレインを襲う槍の後ろ姿を見ながら必死に追いかける、ロキは残っている力を両足に込めて駆け寄る。


 ボブオークは無様に追いかけるロキを見て高らかに笑う。親であるオークメイジや仲間のオークを殺した憎き餌、”キサマも大事な者を失うがいい”と天高く仲間達に届くように笑い続ける。


 「プギャギャギャギャギャギャギャギャ!?」


 ロキは必死に駆け寄るが、槍に追いつくどころか、槍は先に進みドンドン遠ざかっていく。ドレインの..友の..死のカウントダウンの数字が一桁になろうと差し迫っている。

 

 「ドレイン! くそーー!! 追いつけよ俺! もっと早く! もっと..もっと..もっと早く走れよ! 追いつけ! 追いつけ! 追いつけ! 追いつけ! 追いつけ! 追いつけぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 ドレインに迫る槍を睨みながら懇願するように追いかける。決して失いたくない仲間の友達を助けるため、全身に残る力を振り絞って追いかける。


 それでも槍に追い付くことが出来ず遠ざかって行くの見ながら、思い浮かべたくないドレインの死を連想してしまう。

 

 ロキの絶対に助けると言う思いがじわじわと絶望に染まっていく中、僅かな希望を乗せ吠える――。


 「力を寄越せぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 ――ロキの思いの奥底――千尋の谷の底から噴き出る思いで叫び願う――。


 ドレインは迫って来る槍を見て足掻くのを辞めた、この場から逃げることが出来ないからだ。ただ一抹の不安がある、必死に追いかける友..ロキのことだ。


 ドレインは悲痛な表現で。

 「何をやってもここから抜け出せないな..済まない親父、お袋、俺はここで死ぬ。..ロキ..ごめん..後は頼む..お前なら..きっと..」


――ロキの強い思いが叶う。


 ーーユニークスキル<完全適用>が発動しましたーー


 ーーユニークスキル<負けず嫌い>が発動しましたーー


 ――そして、世界の声が響き渡る。


 《<闘技>”閃光跳弾蹴”を獲得しました》


 ロキはユニークスキル<負けず嫌い>で身体能力が向上する。


 ロキは願うように声を大きく上げる。

 「ドレインを助ける力ぉぉぉぉぉぉ!!」


 ユニークスキル<完全適用>はロキが最も願い必要な力を適用させた。

 

 新しく覚えた、ドレインを助けるための闘技を使う、そうすると身体が技を放つために必要な予備動作をする、両足が光に包まれると天高く垂直に飛び一回転して足裏に力が溜まり空を跳弾――。


 ーー<闘技>”閃光跳弾蹴”ーー

 

 ――空を蹴った反動と落下スピードを合わせ閃光の如く、ドレインの命を奪うとする”凶悪な槍”に追いつき破壊する。


 攻撃の衝撃で砂煙が舞いロキの姿をぼんやりと隠す。


 ドレインは突然の爆風と衝撃で驚き、爆風音が聞こえた先に視線を向けるとロキの背中が見えてくる。


 「うわっ! な、なんだ魔法の槍が破壊されたのか? 何があったんだ砂で見えづらいぞ、ロキなのか?」


 ロキはボブオークに注意しながら、首を少し傾け悲痛な表情でドレインを見る。


 ドレインはロキの悲痛な表情を見て声を上げて抗議する。

 「ロキ何だその顔は!」

 「普通ここは可愛い女性を助けて惚れられる所だろ、それが..灰や砂で汚れている男だからな残念過ぎる」


 ドレインは苦笑いしながら答える。

 「悪かったよ、可愛い女の子じゃなくってよ」

 「そうだぞドレインお前が悪い」

 「はいはい。俺が悪いよ。そろそろ手を貸してくれ、俺一人の力じゃこの穴から抜けられないんだ」


 ロキはドレインの足の先を見ると、地面が砂になって砂漠の流砂のように細かい砂だ。これでは抜け出せることが出来ないだろ。


 ロキは右手を出しドレインの腕を掴み引っ張り上げる。


 「ぐっ、重いなドレイン。痩せろーードレイン!」

 「うるさいぞロキ、俺は太っていないぞーー! あと少しだ」

 「ぐっ、おりゃーー!!」

 

 ロキの全力の力でドレインを引っ張り上げる。身体能力が向上していたロキでもかなり大変だった。ドレインの足を見ると固まっている土が付着していた。


 「..砂の中で土を固めたのか? あのボブオーク器用に魔法を使うな」

 ロキはボブオークの強さを改めて警戒しながら睨む。


 ロキがボブオークに視線を向けてると、ドレインの力ない声が聞こえる。


 「ロキ..すまん体力の限界だ。立ち上がる体力すら残っていないすまん」


 ドレインの様子を見ると顔や身体から大量の汗が滝のように流れていた。死の恐怖と流砂で足掻いてたので体力を使い果たしていた。


 悲痛な表情をしているドレインに話す。

 「謝るなよ、ドレイン。後は俺に任せてくれ」

 「すまな――」

 「ドレイン!」

 「そうだった、助けたくれてありがとう。..ロキ後は任せた」


 ロキはドレインの言葉に答えるように、右手を拳にして合図するように上げる。


 ドレインはロキの後ろ姿を見続けながら小声で呟く。

 「ロキ..お前は凄いよ。新しく戦技も覚えて..少し嫉妬するよ..」

 

 ドレインは何もできない無力な自分に対して悔しい気持ちで一杯になっていた。


 ロキはボブオークを睨み、真っ直ぐ近づきながら呟く。


 「ドレインを助けてる時に、何か仕掛けて来ると思ってたけど、何もしてこなかった。もしかしてMP切れで魔法が使えないのか?」

 

 エイラ少佐の冷たい声が頭に響く。

 ⦅ロキ二等兵、<戦闘モード>の活動限界が近い注意しろ!⦆

 「了解、短期戦だ」


 ロキは警戒しながら歩く。目の前にオークの死体がある、死体の胴体を左足で踏みつけると、ボブオークが怒声を上げる。


 ロキはボブオークの怒声を聞いて呟く。

 「仲間を殺されて悔しいよな。俺もドレインを友を仲間を失う所だった。だからお前の気持ちは理解出来る。きっとゴルバも同じ気持ちだったんだろ」


 呟きながら歩くと次は人間の頭蓋骨があった。頭蓋骨を右足で踏み呟く。

 「お前も..たくさん人間を殺した。生きるために..たくさん殺した――」


 ロキは覚悟を決めた目をする。

 「――”食うか喰われるかだ!!”」


 ロキは咆哮するように声を上げる。そして全力な力でボブオークに駆け寄る。


 ボブオークも負け時と吠え、魔法を仕掛ける。


 ロキの目の前に突然、地面から土の槍が伸び襲い掛かる。

 

 「..だよな..MP切れなんてことはないか、魔法を仕掛けてくるよなーー!」


 ロキは槍を避けるため横に跳躍する、着地と同時に更に跳躍するが、土の槍が正面と左右からロキを逃がさんと襲い掛かる。


 ロキは両手に闘気を集中させ、攻撃と防御を高める。闘気を纏った腕で左右の槍を破壊して、正面の槍を身体を捻って避ける。槍が顔を掠めるロキは怪我を気にせず、槍の胴体に殴打して破壊する。


 頬から赤い血が流れるが気にせずボブオークがいる場所を睨む。ボブオークは魔法で壁を作り守られていた。


 「あと少しで辿り着く。後は壁か..破壊するか? それとも壁の横を通って行くかだな」


 ボブオークが創った壁は周囲全体を守っているわけではなく。長方形の壁が同じ大きさで四方八方囲んでいたが、壁と壁の間に人が1~2人ぐらい空いていた。その間からボブオークの姿も見える。


 ロキは土の槍を破壊と回避をしながら近づいて行く。


 近づきながらスキルをいくつか発動させる、短期戦のため出し惜しみなく全力で戦う。

 

 ボブオークが創った壁の目の前まで辿り着き、空いて隙間を通ろうとするとボブオークが杖を上げ何かを仕掛けようとするが――。


 ――ロキが先に仕掛ける。


 両手を重ねボブオークに向ける――。


 ーー<闘技>”狼牙衝撃波”ーー


 ――解き放たれたオオカミの牙は土の壁や地面を切り裂き、砂煙を発生させながら突き進む。土の壁が音を出して崩れていく。崩れた際に細かい砂が生まれた。粉塵と砂煙で視界を悪くする。


 闘技はクールタイムがあり短時間での連続使用は出来なかった。だが闘技のlevelが上がりクールタイムが短くなったので使用することが出来た。

 

 エイラ少佐は作戦が成功したことに喜びの声を上げる。

 ⦅ロキ二等兵上手くいったな⦆

 「はい、良し上手くいきました。あの道を通ればボブオークが何か仕掛けてくると思ってた」


 ロキは次の行動に移るため、視界を遮っている砂煙を真っ直ぐ見る。


 「視覚機能を使います。フォローお願いしますエイラ少佐!」


 瞳の色が黒から赤に代わり機械音が聞こえてくる。視覚機能の一つでサーモグラフィーがある。この機能を使いボブオークの熱を探す。


 機能の実験は過去のパワーレベリングの時に使用していて確認済みである。


 ロキの視覚が可視光線から熱線映像装置の視界に切り替わる。


 「ん! 切り替わる瞬間は気持ち悪いな、だけど見えるぞ。黒いのが壁か、そして....赤いのがボブオークか!」

 

 ロキは決着をつけるため駆け寄る。


 ボブオークは砂煙のせいで視界が遮られ苛立っていた。この状況を作ったのは仲間を殺した”餌”であるからだ。


 周囲を見渡しても砂煙である、杖を振りかざして砂煙を遠ざけようとするが、まったく意味がない。


 視界が悪く餌の居場所も分からないため徐々に不安になっていく、その時、地面を土を踏む足音が聞こえる。その足音が大きく聞こえるたび不安が増して恐怖が生まれる。


 不安と恐怖で動揺したボブオークは身を守るため、ある魔法を唱える。

   

 「プガァ、ププ、プガァ!!」


 ロキは赤い人型に向かって駆け寄る、途中ボブオークの声が聞こえてきた。ボブオークは黒い物を振りかざし、何かを叫んでいる。


 ロキはボブオークに居場所がバレないように頭の中で考える。

 ⦅ボブオークは何をやってるんだ。この黒いのは? 杖か? もしかして魔法を使おうとしているのか⦆

 ⦅ロキ二等兵! ボブオークは混乱してるはずだ、何か仕掛けてくる前に倒せ!⦆

 ⦅了解⦆


 ロキはボブオークの真っ正面に突き進み、闘技を使うとしたが――。


 ――目の前に黒い物が地面から伸びて来た。ボブオークが恐怖の余り、自身を守るため土の壁を周囲に創った。これが壁では無く槍であればロキは負傷していた可能性があった。

 だが、ボブオークは不安と恐怖で思考が死にたくないと一択になった。

 

 ロキは突然の黒い物が現れ驚いたが、冷静に思考を巡る。


 ⦅この黒いのは..壁か..邪魔だ! この壁の向こうにボブオークがいるんだ!!⦆


 覚悟を決めたロキは、再度武技を使うため構えなおす。


 右腕を後ろに下げる――今まで多くの魔物を倒してきた、信用できる必殺の武技を壁の中にいるボブオークに向ける。


 ロキは気合を入れるため腹の底から声を上げる。


 「うぉぉぉぉおぉぉぉおぉぉぉ!」

 

 予備動作が終わった手刀が――。


 ーー<闘技>”鋼槍貫き手”ーー


 ――壁に激突する、壁は今までの壁よりも厚く土質も違うようだ。金属同士がぶつかるような音が聞こえ、火花が生まれ散る。


 壁の中にいるボブオークが狼狽え吠える。


 「プギャプギャプギャプギャ!?」


 ロキは拮抗している右手の先端に視線を向けて更に声を上げる、壁に小さなヒビが生まれる。


 「うぉぉぉぉおぉぉぉおぉぉぉ!!」


 気合いと共に――<力を溜める>スキルを発動する。


 スキルの発動と同時に右腕から、嫌――右胸の奥から熱い力を感じ血液が流れるように肩から腕へ、そして手の先端の先までに力が流れる。

 

 手刀は壁を削り火花を散りながら破壊していく。壁の小さなヒビは新しく生まれ、ヒビは大きくなる――。


 「うぉぉぉぉおぉぉぉおぉぉぉ!!」

 

 ――手刀の先端がぶつかっている箇所を中心に壁が崩れる。そして壁の中にいたボブオークに突き刺さる。

 

 ボブオークが痛みで絶叫する。

 「プギャァァァァァァァ!!」


 ロキはボブオークを睨み。

 「”俺が食うかお前は喰われるかだ!!”」


 最後の言葉と共に手刀を貫通させると横に薙ぎ払う。


 ボブオークの腹部が抉れ大量の血が流れ、ボブオークが失った身体に視線を向けると、短く吠えると後ろから倒れ息絶える。


 ロキは血が付いた手を拭うように払う。血が倒れているボブオーク、地面、壁に付着する。


 ロキが力を抜くと。

 

 ⦅<戦闘モード>終了。今回も無茶したなロキ二等兵⦆

 「はっはっはっはっ、そうですね。ただゴルバとの戦いよりはマシですけどね」


 ロキは苦笑いしながら答えた、身体に怪我はあるが満身創痍ではない、装備も壊れていないからだ。


 ロキは倒れたボブオークに視線を向ける――。

 

 「死んだか..」


 ――ボブオークが死んだことを確認してドレインの所に向かう。


 ドレインはまだ体力が回復しておらず地面に座っていた。激しい戦闘音が聞こえた後の静寂、そしてロキの姿が見えドレインは安堵した表情で迎える。


 「ロキ無事か良かった。ボブオークは倒したんだな」


 ロキは頷くと、ドレインの傍に座る。

 「ボブオークは俺が殺したよ。ゴルバ程ではないけど強い魔物だった」

 「ゴルバ? ネームドモンスターのことか、ネームドモンスターより強かったら俺達は死んるよ」

 「そうだな」


 ロキはゆっくりと上半身を地面に下ろす。


 ドレインが驚いて声を上げる。

 「ロキ大丈夫か、怪我をしたのか?」

  

 ロキは心配しないように手を横に繰り返し振る。

 「大丈夫だ怪我はしていない。疲れただけだ」


 ロキは両手を上げてバンザイをする。

 

 ドレインは呆れながら答えて、上半身を地面に下ろして仰向けになる。

 「ふぅーー心配させるなよ。この後大変だぞ、冒険者ギルドに報告しないと」

 「ドレインも一緒だ」

 「あぁ~俺も疲れた~~」

 「休憩してからグレーテル城塞都市に戻るぞ」

 「今からだと夜中になりそうだな。夜の森を移動するのは危険だ」

 「..それならここで一泊しよう。移動が危険ならここで泊まった方が安全だ」


 ドレインは思考を巡る。

 「..人骨があるが森で泊まるよりは安全か」

 「他にオークがいたら大変だけどな」

 「その時は俺の弓で仕留めるさ。ロキに頼りきったら駄目だしな」

 「任せたドレイン」

 

 ドレインは小さい声で呟く。

 「俺は..力が欲しい..守られるだけの弱い人間になりたくない」


 ドレインは悲痛な表情で真っ赤な空を見る。

 

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