49話 オークの巣2
古き新緑の森の浅瀬にある密林。
ロキとドレインは茂みに隠れながら、魔物を視認できる位置まで近づいていった。
茂みの先が見えてくる、その先に視線を向けると、土が掘り起こされ木材で簡易的な柵が作られていた。奥の方には小屋らしきものが数棟建っている。
ロキが小声で呟く。
「これは..魔物が作ったのか?」
「わからないが、手先が器用な魔物だと可能だ。それと知識が高い魔物がいる恐れもある」
「群れのボスか?」
「魔物を確認するためにも、もう少し近づこう」
ロキはドレインの提案に頷く。
魔物が作った柵は簡易的で乱雑に置かれており、柵と柵の間に人が通れる程の隙間がある。
ロキとドレインは警戒しながら柵の間をくぐり抜けて、魔物の巣の中に入っていく。
魔物の巣の中は、中央が小山になっており、そこに焚き火の後があった。炭の中や周りには獣の骨や人間らしき骨が積まれていた。
「ドレインこれは..人間の骨だ」
「たぶん古き新緑の森に探索に来た冒険者だ」
「それにしても結構多いぞおかしくないか、こんなに冒険者に被害があったら冒険者ギルドで問題になってるはずだ」
ドレインは驚き頷く。
「た、確かにそうだ。襲われたのは冒険者だけじゃないのか?」
ロキとドレインが襲われた人間の多さを考えると、魔物の声が聞こえてきた。
ロキとドレインは声で驚いたが、警戒していたので直に立ち直る。身を隠せる場所を探すため周りを見渡す。
ロキとドレインはお互いに目を合わせる『ここしかないよな』と合図し頷く。
二人は積もれている炭の中に入る。魔物は掃除をしていないため炭も多く残っていた。
二人は炭と骨の山で身を隠して、声が聞こえた先に視線を向ける。
周りの小屋よりも一回り以上大きい建物の中から2体の魔物――オークが出てきた。
ロキは小声で呟く。
「オークか..普通のオークだな。あいつらのどちらかが群れのボスじゃないよな」
「あぁ、そうだな。ボスではないだろ。以前俺達が討伐したオークは、オークソルジャーとオークアーチャーだった。ボスだったらそれ以上の個体のはずだ」
ロキはオークが出てきた建物を暫く眺めながら<気配察知>スキルを集中させる。集中させることによってより完璧な気配の見分けができる。
<気配察知>スキルで再度確認をした情報をドレインに伝える。
「ドレインこの場所には俺達以外の人間はいない」
「俺達意外はいないか..全員殺されたってことか..」
「助けられなかったのは残念だが、もう一つ知らせたくことがある」
「なんだ?」
「オークが出てきた建物の中に他の奴よりも強い気配を感じた。たぶんそういつが群れのボスだ」
「あの建物の中にいるのか、他のオーク達も建物の中にいるんだよな」
「オーク達は中にいる、あの中で何をやってるんだ」
ロキの<気配察知>スキルに反応があった。
「ん! これは..群れのボスが出て来るぞ」
ドレインは驚き建物を凝視すると――驚き固まる。
建物からぞろぞろとオークが出てきた、その後に出て来た魔物はオークと比べて一回り二回り以上の大きさだった。魔物の大きさは4メートルを超える巨体で腕や足周りの筋肉は太く逞しかった。顔は凶悪でオークとゴブリンが合わせたような顔で、目は鋭く真っ赤な瞳をしている、口にある牙は多く外にはみ出ていた、頭には一本の大きな角がある。手には杖を持っている。
ロキは驚き動揺しながら小声で話す。
「ド、ドレインあれはオークなのか?」
「......」
ドレインから返答がない――返答がないため顔を覗く。
ドレインは口を開けたまま固まっていた、驚きと魔物から漂う畏怖で身を固めていた。
ロキがドレインの顔を覗いてると、エイラ少佐の声が頭の中に響く。
⦅あれは..もしかして【ボブオーク】か⦆
⦅エイラ少佐あれがなんだか知ってるんですか⦆
⦅2000年前にもいた魔物だ。だが個体数は少ない、特殊な魔物だからだ。あれはオークとボブゴブリンのハーフだ」
⦅オークとボブゴブリンのハーフですか?⦆
⦅魔物の中には少ないがメスがいる。魔物は有機生命体だけではなく他の種族の魔物を攫って妊娠させる。魔物同士で生まれた個体は、魔素溜りで生まれた個体よりも強力な力を持つ。そして今回はオークとボブゴブリンの個体でボブオークだ⦆
ロキはエイラ少佐の説明を聞き驚いていた当然のことである、そのため口から声を出してしまった。
「..ボブオーク」
ドレインの耳にロキが声が響き渡り意識を覚醒させる。
「ボブオーク? ロキはあれを知ってるのか!」
ロキは口を滑らせた事に焦る、ドレインにどう説明すればいいのか焦っていた。そこへエイラ少佐から助言が聞こえる。
⦅ロキ二等兵、冷静になれ。どっちみち有機生命体に説明は必要だった焦る必要はない。簡単に説明すればいい物知りで頑固なエルフに教えてもらったと、な⦆
⦅エイラ少佐あれは話しの流れで..すいませんでした。ドレインの説明はこんな簡単でいいんですか?⦆
⦅どう説明するんだ。有機生命体に電子生命体である私のことを教えるのか信じないと思うぞ⦆
⦅..そうですね。物知りで頑固なエルフに教えて貰ったことしましょう⦆
ロキは小声で呟く。
「昔住んでいた村にいた物知り頑固なエルフに教えて貰った魔物に特徴が似てるんだ。あの魔物はオークとボブゴブリンのハーフだ」
「オークとボブゴブリンのハーフか? そう言われると顔が似てるかな? ロキの知り合いのエルフは物知りだな」
「まぁな、だけどもう会えないけどな..」
ロキは悲痛な表情をする――。
⦅ロキ二等兵、勝手に私を殺すな!⦆
⦅エイラ少佐、空気読んでください。ドレインがエルフに会いたいって言ったら面倒くさいですよ⦆
――ドレインはロキの心情感じ取る。
「..そうか残念だな。俺も会ってみたかよ」
「あぁ~、残念な人を亡くしたよ」
ロキはエイラ少佐に話し掛ける。
⦅ほら言ったでしょ。エイラ少佐⦆
⦅有機生命体のことはロキ二等兵の方が理解してるか⦆
エイラ少佐は渋々納得した。
ドレインは神妙な表情で話し掛ける。
「ロキ..強さは聞いたのか? ボブオークのランクはいくつなんだ」
ロキはドレインに返答するため思考を巡る――。
エイラ少佐が冷たく話す。
⦅ボブオークのランクは3だ。ロキ二等兵が倒した風牙狼のネームドモンスターよりは弱いと思うが。目の前のボブオークがネームドモンスターじゃなければな⦆
――ロキはフラグが立たない事を思いながらドレインに話す。
「ボブオークのランクは3だ」
ドレインは考えてから話す。
「ランク3か..危険だな! グレーテル城塞都市に戻って冒険者ギルドに報告しよう、俺達だけでは危険だ」
ロキは頷く。
「グレーテル城塞に戻ろう。この装備じゃ危険だし、新しい装備を拝まないで死ぬのは嫌だな」
「折角ウィリアムさん達に依頼した装備だもんな。死ぬのはごめんだ急いで撤退しよう!」
ロキ達が撤退しようとした時、オーク達が小山を囲むように移動していた。
ロキはオーク達の動きを見て周囲を見渡す。
「オーク達がなんで..俺達のことがバレてるのか?」
「そんな馬鹿な..誰にも見られてないはずだ。これでは撤退できないぞ」
オーク達はロキ達の居場所を把握しているように小山を囲んでいた。
ドレインはオーク達の行動に驚いて焦っていたが、ロキは<完全適用>スキルのおかげで、その場に適用した。
適用したロキは冷静にオーク達を見渡した――オーク達を指示する..この魔物の巣のボスであるボブオークだ。
ボブオークはロキ達がいる場所を鋭い目で睨んでいた。
ロキはボブオークの目を見て思考を巡る。
⦅エイラ少佐、ボブオークに居場所がバレています⦆
⦅..可能性を考えれば、ロキ二等兵と同じ<気配察知>スキル持ちだ⦆
ロキは驚いたが冷静に考える。
⦅えっ! ..だけどそう考えれば納得がいく。 俺と同じように<気配察知>スキルであれば居場所がわかる⦆
⦅魔物も有機生命体と同じようにスキルを覚えている。生まれながら覚えている魔物や、進化してスキルを獲得できる魔物がいる⦆
⦅ボブオークに居場所がバレてるんだ! 隠れても意味がないな⦆
ロキは覚悟を決めて灰の中から立上る。ドレインは驚き声を上げる「おい、ロキ!」ロキはドレインの声を気にせず、ボブオークにいる場所に歩き小山の上から、ボブオークを見下ろす。
ロキはボブオークに指をさす。――ロキが動くたび身体に付いてた灰が風を舞い、死の灰の匂いを漂わせる。
ロキはボブオークを睨み――。
「戦ってやるよ! ブタ野郎!!」
――覚悟を決めたロキは宣戦布告する。




