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47話 ロキ株を失う

 まんぷく亭の一室。


 ロキとドレインはヘイロスとドランに、まんぷく亭でオーク肉をご馳走した。宴会は夜遅く続いたが、ヘイロスはアカベリー商会に戻ったが、ドランはドレインと一緒に酔い潰れてしまったので、宿を借りて親子一緒の部屋に寝かせた。


 ロキはドレイン達が泊まっている部屋をコンコンと叩くが、しばらく待ってみても返事がない。


 部屋の鍵はロキが預かってるので、部屋を開けて覗くと。


 ドランとドレインはベットの上で、土色の顔をして、頭を手で抑えながら項垂れていた。ドランは上半身を起こして、頭痛を抑えながら視線をロキに向ける。


 「..ロキか? ず、頭痛が、頭が痛い」

 

 ベットの上で寝ていたドレインが苦悶な表情でドレインに視線を向ける。

 

 「お、親父声がでかい。頭が痛い」

 

 ロキは二人を見て溜息をする。


 ロキは部屋に備え付けて置いてあるコップに水を入れて二人に渡す。


 「ドランさん水です。ドレインもほら水だ」


 ドランは受け取り水を飲む。

 

 「ゴクゴク、ロキありがとうな」 


 ドレインは頭を抑えながら上半身を起こして水を受けとる。


 「あー水。あー頭痛い」

 

 ロキはドレインが落としそうになったコップを掴む。

 

 「ドレイン大丈夫か、今日の訓練は無理みたいだな」

 「ご、ごめんロキ。つ、つつ、頭が痛い」

 「今日は横になっていろドレイン」

 「ごめんロキ」

 「もういいから横になれ」


 ドレインは申し訳なそうにベッドの上で横になる。隣にいるドランを見ると立ち上がろうとしていた、だが、身体にアルコールが残っているのか足元が振らついていた。


 ロキは驚いてドランの身体を支える。

 「ドランさん危ないですよ。横になって下さい」

 「..行かないと。あ、頭が」

 「どこにですか?」

 「ヘイロスさんの警護をしないと..頭痛が..」

 「無茶ですよ、ドランさん。..俺がドランさんの替わりにヘイロスさんの警護をやりますから心配しないで下さい」

 「な、なに言ってるんだロキ。こんな二日酔いぐらいーー。あ、あた、あ、頭が..」

 ドランは頭痛の痛みで頭を抑える。


 ロキは安心させるため真剣に話す。

 「ドランさん。ヘイロスさんの警護は任せてください」


 ドランはロキの真っ直ぐな瞳を見て申し訳なさそうに答える。

 「..すまん。ロキ、ヘイロスさんの警護頼む」

 「後のことは任せて下さい、ドランさん。ドレインも安静にしていろ」


 エイラ少佐の冷たい声が響く。

 ⦅有機生命体は自己管理もできないのか⦆

 ⦅まぁ、ドランさんは息子と飲めて嬉しかったんだろ⦆


 ドランとドレインは二人揃って頭を抑えながら感謝する。

   

 「「ありがとうロキ」」


 ロキは苦笑いしながら答える。

 「親子そっくりだな。じゃあ行ってくるよ」


 ロキは二人の頭痛を気遣ってドアを静かに閉じる。部屋の鍵をまんぷく亭の女将に預け、アカベリー商会にいるヘイロスさんに会いに行く。


 朝の光が街を照らしている。


 アカベリー商会の店先で、馬車に積んである物資や商品をヘイロスは店員と一緒に仕分けしていた。アカベリー商会では主に果物、野菜の青果物、肉等の素材を取り扱っている。


 新鮮な青果物や肉は店先で販売するため見栄えよく置いていく。アカマツ村の物資は隣の倉庫に積まれている。


 ヘイロスが店員に指示が終わった所で話し掛ける。

 「ヘイロスさん、おはようございます」

 「おぉーロキか、昨日はご馳走になった。..その様子だとドランは..駄目だったか?」

 ヘイロスはロキの周りを見てドランがいるか確認した。


 ロキは顔を横に振る。

 「ドランさんとドレインは二日酔いで、ベッドの上で寝ています」


 ヘイロスは嬉しそうに話す。

 「ドランは息子の成長が嬉しかったんだろな。あんなに酒を飲んだからな」

 「ドランさん嬉しそうでしたね。それでドランさんの代わりにヘイロスさんの警護に来ました」

 「警護か? ..まぁ、殆ど店の手伝いになるかな、商品の整理と数量の確認だ」

 「そうなんですか、ドランさんは警護って言ってましたけど」


 ヘイロスは少し考えてから困ったように答える。

 「ドランは心配そうだからな」

 「心配ですか?」

 「あぁ、ここ最近..嫌..昔からか、マリデン商会の嫌がらせ行為があるからだ」

 「マリデン商会の嫌がらせですか」

 

 ヘイロスは頷く。

 「マリデン商会の商会長【ノドス】とは同時期に商人になったんだが。儂が気にならないのか昔から嫌がらせがあったんだ。ガラの悪い人間を雇い店に窃盗させたりとか、店に放火をしたりとか色々あったんだ」


 ロキは驚きながら質問する。

 「窃盗! 放火! なんで? ノドスは捕まらないんですか」


 ヘイロスは苦虫を噛み潰したように悔しそうに話す。

 「..ノドスは貴族相手に手広く商売している。裁判にかけても貴族が証人として発言をする、犯罪を侵しても捕まることもなくお咎めないのだ」

 「貴族相手に商売を?」

 「あいつは、ノドスのマリデン商会の主の商売は【奴隷】だ。しかも、貴族の依頼で違法に奴隷にしたりもしている」


 ヘイロスからノドスの悪質な嫌がらせや、犯罪紛いの商売を聞いたロキは。

 

 ロキは無意識に歯を食いしばり、拳を握り締めていた。

 「違法に奴隷..貴族が依頼..そんな奴が捕まらないなんて..許せない!」

 

 ヘイロスはロキの肩に手を置く。

 「..ロキ、お前の良心な気持ちは嬉しい。だから、今は拳を鎮めて怒りを収めてくれ」


 ロキはヘイロスの言葉で我に返った。怒りで強く拳を握り締めていたようだ。

 「ヘイロスさん..すいません」

 一番悔しいのはヘイロスだと思い、ロキは心から謝罪した。


 ヘイロスは場の雰囲気を変えるため大きな声を上げる。

 「さて、ロキ! ドランの代わりに、こき使ってやるぞ! 早速、荷物を倉庫に運ぶのを手伝ってくれ!」

 「..わかりました」


 その日のロキは、荷物が運ばれたら商品を仕分けして倉庫に運ぶ、積まれた商品の数量を確認する作業で一日が終わった。


 マリデン商会からの嫌がらせはなかった。


 

 まんぷく亭。


 ロキはベッドの上で大の字になって両手足を伸ばしていた。


 「あぁ~、疲れた~、肉体的疲労はないけど、精神的に魔物と戦うより疲れた~」

 ⦅ロキ二等兵の精神を鍛えるには丁度いいかもしれないな⦆

 「勘弁して下さいよ、エイラ少佐。ちまちました仕事は苦手なんです」

 ⦅......⦆

 「なんか言って下さい、エイラ少佐。凄い不安なんですけど」


 ――部屋のドアが叩く音が聞こえる。


 ロキは上半身を起こしてドアに視線を向けると。


 ドランの声が聞こえる。


 「..ロキ、今いいか?」

 「どうぞドランさん入って来てください」

 「ん! いいのか、誰かいるんじゃないのか?」


 ドランにエイラ少佐と会話を聞かれたと思い焦るロキ。

 

 小声で呟く

 「..あ、どうしよう」

 ⦅心配する必要はない。有機生命体に私の声は聞こえてないから、問題はない⦆

 「そ、そうか。そうですよね。エイラ少佐の声は俺だけしか聞こえないんだから、心配する必要ない。そうしたら、ドランさんにどう言い訳すれば」

 ⦅簡単なことだ。独り言をしていた。妄想癖がある。演技の勉強をしていた。実はもう一つの人格があると答えればいい⦆

 「どれも人格が問われる言い訳だー」


 ロキが頭を手で抑えながら悩んでいるいると、部屋の外から声が聞こえてくる。

 「ロキ、大丈夫か。叫び声が聞こえたぞ」


 先程の会話も聞かれ焦るロキに。


 エイラ少佐から冷たい声で問う。

 ⦅ロキ二等兵..お前が決めろ⦆


 ロキは覚悟を決め..最善な答えを決めた。


 ドランを部屋に入れるため、鍵を開けドアを開ける。


 ドランの隣では、二日酔いが治ったドレインもいた。二人共心配してる表情だ。


 ロキは最善な。一番無難な言い訳をする。


 頬を引きつきながら。

 「ド、ドランさん大丈夫ですよ。お、俺..ひ、独り言が好きなんですよ」


 三人の間に微妙な世界ができ。


 ドランとドレインは苦笑いしながら答える。

 「そ、そうかロキは独り言が好きなのか。そうか、今日は疲れたんだな。すまなかったロキ、俺の代わりに警護をしてくれてありがとう。今日はもう休め」

 ドランはロキの両肩に手を置き心配して謝罪した。


 ドレインも同情するように見てくる。

 「ロキ..親子のせいでごめんな。あ、明日はいつものロキで会ってくれ。お休み」


 ドランとドレインを部屋に入れる事なく、呆然としているロキの目の前でドアがゆっくりと閉じていく。

 

 「あ..終わった。色々と」


 ロキが憤りを感じながら、黄昏てると。

 

 ⦅ぷ......ぷ......ぷ....ぷ..⦆


 エイラ少佐の笑いを止めようとする、含み笑いが頭の中で響いてくる。


 ロキは情けなくなりながら、小声で呟く。


 「本当に人間ぽっくなってきたなー」



 次の日、ロキはドランとドレインに空元気で朝の挨拶をした。ドランとドレインも空気を読んで軽く合わせてくれた。


 ドランはヘイロスの警護に戻り。ロキとドレインは矢の補充をするためマリ装備屋に向かっている。


 「ロキ、矢の補充が終わったら、古き新緑の森に行くのか?」

 「ドレインに予定がなければ、補充が終わったら行く」

 「そうしたら、オークの巣を探さないか」

 「オークの巣? あるのか?」

 「分からない。だが、もし、あるんなら早めに巣は潰した方がいい。魔物が群れを作ると危険だ」


 ドレインは真剣な眼差しで語る、ロキはドレインの目を見て頷く。

 「わかった、古き新緑の森に行ったら探索してみよう」

 「助かるよロキ、俺一人じゃ探せないからな」


 会話しながら歩いてると、あっという間にマリ装備屋に着いた。


 マリ装備屋の前でドアを開けるのを躊躇してるとドレインが。


 「ロキどうしたんだ、入らないのか」

 

 ロキは神妙な顔でドレインを見る。

 「..ドアを開けると..ウィリアムさんがマッスルポーズで待ってると思うと..」


 ドレインも顔を青ざめる。

 「ウ、ウィリアムさんか」


 ロキは頷く。

 「そうだ、変態だ」

 「でも、開けないことには先に進めないぞ」

 「そうなんだ」


 二人は覚悟決める。

 「ドレイン逃げるなよ」

 「ロキも一人で逃げるなよ」


 ロキがドアを開けて覗くと。


 ――笑顔のマリが店番をしていた。


 ロキとドレインはほっとした顔をしてお互いを見る。

 「「良かった」」


 マリを見ると右手でこいこいと手招きをする。

 「二人共営業妨害、早く来なさい。それと人の夫を変態呼ばわりは失礼よ、早く来なさい」

 

 マリの雰囲気に二人は硬直し、先にドレインがマリの畏怖に負け言い訳をする。

 「ち、違います。変態呼ばわりしたのはロキです! 俺は関係ありません」

 「ひ、卑怯だぞ! ドレイン! 逃げないって言っただろ」

 「う、うるさい! マリさんは別だ」


 ――突然、パンと乾いた音が店内で響く。


 マリが手を叩いたようだ。無表情なマリが手招きしてる。

 「二人共早く..来なさい」

 「「はい」」

 二人は項垂れながら歩く。


 エイラ少佐が嬉しそうに話す。

 ⦅この有機生命体は最高だ⦆

 

 ロキは⦅何が最高なんだと⦆心でツッコミながら、マリの説教を受けていた。勿論、隣で項垂れながらドレインもだ。

 

 マリの説教が終わり、ドレインの矢の補充も無事完了した。ドレインは矢の数量と傷がないか念入りに確認している。


 ロキは製作依頼した装備の進捗状況を聞く。

 

 「マリさん、ウィリアムさんとハルカさんは?」

 「夫とハルカは奥の部屋で製作に集中してるわ。二人共集中してると声を掛けても反応がないのよ」

 「大丈夫ですか二人共」

 「ちゃんと食事をしてるから大丈夫よ。よっぽど嬉しいのね。あんなに集中して作業してるのは久しぶりだわ。ロキ君ありがとね」

 「いえ、俺は製作を頼んだだけです」

 「ふっふっふっ、それでもよ。あ、それとロキ君が知りたいのは進捗状況でしょ。昨日二人から聞いたわ、製作は順調よ。もし、ロキ君が来たら伝えてくれと言われたわ。あと、三日で完成するかもしれないから、時間があったら来てくれってことよ」


 ロキは嬉しそうに話す。

 「本当ですか、分かりました。三日後にまた来ます」

 「夫とハルカには伝えときます」


 隣で矢を確認していたドレインから声が聞こえる。

 「ロキ、確認が終わった」

 「良し行こう、ドレイン。マリさん俺達はこれで。また、三日後来ます」

 「行ってらっしゃい二人共。それと今後はお店の前で変な儀式は無しよ」


 二人は揃ってお辞儀する。

 「「はい、マリさん」」


 ロキとドレインはマリ装備屋の後、西門から出て、古き新緑の森に向かっていた。


 ドレインが思い出したように話す。

  

 「なぁ~、ロキ。マリさん怖かったな」

 「普段、優しい人を怒らせると怖いって言うのは本当だな」

 「だな。マリさんは怒らせないように注意しないと」

 「気をつけよう」


 エイラ少佐の嬉しそうな声が響く。

 ⦅あの、有機生命体は良いサンプルになった⦆

 ⦅..サンプル?⦆

 ⦅ロキ二等兵には関係ないことだ⦆

 ⦅絶対俺に関係しますよね。最近、エイラ少佐、様子とういうか反応おかしくありませんか、大丈夫ですかエイラ少佐⦆


 ロキが無言であるが、色々表情を変えてるので怖くなり、ドレインは顔を強張らせながら後退りしていた。


 ドレインは小さく呟く。

 「ロキ..妄想してるのか?」


 ロキはまた一つ人としての株を失った。


 ――本人が気付かない所で。

 

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