46話 グレーテル城塞都市の七不思議
グレーテル城塞都市の冒険者ギルド。
冒険者達が依頼の報告や、魔物の素材を持って受付に並んでいた。時間帯も忙しい夕方のため混雑していた。
ロキとドレインは運よく混み始める前に並んでいたので、魔物の素材を受付に報告していた。
ロキとドレインが待っていると、エルフのエレインが買取金を持って戻って来た。
「お待たせしました。ロキ君、ドレイン君。オークの魔石が5個とオーク肉が40キロで、金貨54枚になります」
ロキがエレインに質問する。
「オーク肉は1キロ、銀貨1枚になるんですね」
「今の相場だと銀貨1枚になります。ロキ君がオークソルジャーとオークアーチャーの肉も売ってくれたら、もう少し高くなるよ」
ロキとドレインはオークソルジャーとオークアーチャーの肉は自分達で食べる分しか持って来てなかった。
ロキとドレインが今晩の夕食はオークソルジャーとオークアーチャーの肉を食べようと話しをしていた所、耳が良いエレインに聞かれていた。
ロキは申し訳なさそうに答える。
「ごめんなさい、エレインさん俺達で食べる分しか持って帰らなかったから」
エレインはクスクスと笑う。
「冗談ですよ。今度に期待します」
ロキは今度に期待すると言葉で思い出した。
「今度と言えばエレインさん森で....」
ロキは森で見たオークの集団が何処かに戻る様子だった事を報告する。もしかしたら、オークが巣を作ってる恐れがあるためだ。
「..話しを聞く限りでは判断が難しいですね。実際に見ている訳ではありませんし、推測だけで判断してます」
「そうですね。一応報告だけしました」
「わかりました。こちらも上の方に報告書は出しときます。情報ありがとうございます。あ、それと西の街道にムラカミ盗賊団が見かけたと、情報が入りましたので気を付けて下さい」
街道で会った、セリアエルフのノワール様の情報と同じだ。
ロキは軽く会釈して答える。
「わかりました、エレインさんも外出する時は気を付けて下さい」
ロキとドレインは金貨とギルドカードを受け取って移動する。
ロキは金貨を見てドレインに提案する。
「ドレイン、俺は金貨20枚でいいよ」
「は! 何言ってるんだ。金貨27枚でいいだろう。丁度半分だぞ」
「だけど、ドレインは矢を補充しないと行けないだろ」
「だけどよ..」
「俺はドレインの矢で何度か助けて貰ったし、練習で弓を使わせて貰ったからいいんだ」
ドレインは考え込む。
「....わかったよ。ありがとなロキ。助かるよ」
ドレインの矢は安価ではなく、高価なオーク材の矢を師匠のギルトンの指示で使っている。
アカベリー商会、グレーテル城塞都市支店前。
ロキとドレインは夕食をヘイロス達も一緒に食べようと向かっていた。
3階建ての木造の前で、ヘイロスとドランは店仕舞いをしていた。警護のドランは手伝いだろ。
「ヘイロスさんドランさん! お疲れ様です」
ヘイロスとドランは作業を止め後ろを振り向く。
「..ロキとドランか?」
「..ん! ドラン! ロキ」
「アカマツ村の復興に必要な物資の方は順調ですか」
ヘイロスさんが嬉しそうに声を上げる。
「順調だ。冒険者ギルドも復興の周知に手伝ってくれたから物資は早め揃った。だから、今日の午後に第一便をアカマツ村に向かった所だ。ドラン俺達は第三便の馬車に乗ってアカマツ村に戻るから、予定では7日だ」
ドランが頷き答える。
「わかりました。それまでロキと一緒に活動しています」
ドランがドレインに近づいて質問する。
「それで今日はどうした。戻る予定の確認だけか?」
「親父違うぞ。俺とロキでオークソルジャーとオークアーチャーを討伐して、肉が手に入ったからご馳走しに来たんだ」
ドランは息子の成長に喜び誇らしく答える。
「お前達だけで討伐したのか凄いな」
ヘイロスが答える。
「それでどこで料理するんだ。家にある台所を使ってもいいぞ」
ドランはロキに視線を向けて来る、ロキが答えてくれと。
「ヘイロスさん俺が泊っている宿で頼んみるつもりです」
「宿の名前はなんじゃ」
「まんぷく亭です。オーク料理が美味しいです」
ドランが声を上げる。
「まんぷく亭か懐かしいな」
「ドランさんまんぷく亭知っているんですか」
「あぁ、俺も若い頃お世話になってたからな、あそこなら材料を渡せば調理してくれるぞ」
「ヘイロスさん、ドランさん予定は大丈夫ですか」
ヘイロスとドランは頷く。
ロキは嬉しそう声を上げる。
「肉はたくさんありますから行きましょう」
まんぷく亭。
ドランはまんぷく亭に入ると懐かしそうに声を上げる。
「女将久しぶりだな!」
椅子に座って休憩していた女将が顔を上げてドランを見ると嬉しそうに声を上げる。
「ドランの坊主じゃない久しぶりだね」
「坊主は辞めてくれよ女将。俺には息子がいるんだ、ドレインこっちに来てくれ」
ドレインは前に来て挨拶する。
「ドランの息子のドレインです」
「若い頃のドランにそっくりだね。私はまんぷく亭の女将だよ。内は宿もやってるから今度泊まりに来なさい、サービスしとくよ。あら、そこに居るのはロキにヘイロスの坊主じゃない」
ドランの後ろにいたロキとヘイロスは片手を上げて挨拶する。
ロキは先程の女将の言葉で疑問に感じたことがあった。
⦅エイラ少佐、女将さん今ヘイロスさんのこと坊主って言ってませんでしたか?⦆
⦅..言ってたがそれがどうした⦆
⦅えっ、だってドランさんは分かりますけど、ヘイロスさんはどう見ても女将さんよりも年上に見えますよ⦆
⦅有機生命体に興味ない⦆
⦅ですよね~⦆
⦅その態度はなんだ! 学習しないなロキ二等兵⦆
⦅す、すいません⦆
ロキとエイラ少佐が会話していると、ドランが説明して女将にオーク肉で調理を頼んでいた。
ロキとドレインは女将にオーク肉を渡すと笑顔で答えた。
「あんた達が討伐したオークだってね。今日は腕に縒りをかけて料理を作って上げるよ。座って待ってなさい」
4人で座ってしばらく待っていると、女将が元気よく料理を運んできた。
「今日はたくさんお食べ。お酒もサービスするよ」
オーク料理が次々と運ばれてくる――オークステーキ、オークの生姜焼き、オークかつ、オークのビリカラ煮込み、オークシチュークリーム......。
ドランはロキからドレインの戦いぶりを聞いて嬉しそうに飲んでいた。――顔が真っ赤になるぐらい飲んでいる。
ヘイロスは女将にお酒を注文して――しばらくすると女将がお酒を持ってくる。
「はいよ。ヘイロスの坊主。ベリーエールだよ。あんたの爺さんが好きだった酒だね。孫のあんたも好きになってるとはね」
ヘイロスは苦笑いしながら答える。
「ベリーエールは一族全員が大好きじゃ」
「そうかい」
女将は笑いながら他のお客様の接客に行く。
ロキは酔っぱらってるヘイロスに質問する。
「ヘイロスさん..女将のことで聞きたいんですけど?」
「うん? ロキかなんじゃ。女将のことで聞きたいこと」
「はい。女将さんがヘイロスさんのことを坊主って呼んでたんだ」
ヘイロスは少し考え込む。
「....不思議に思ったか、儂が坊主と呼ばれて」
「はい」
「儂も若い頃に祖父に連れて来て貰ったんだ」
「えっ、祖父に? 連れて来て貰った?」
ヘイロスは不思議そうな顔をする。
「儂がロキやドレインと同じくらいの年齢の時に祖父に連れて貰って来たんじゃ。――その時から女将は、今と同じ年齢、姿で働いていたんだ」
「えっ、女将は人間じゃないんですか? 長命種ですか?」
ヘイロスは顔を横に振る。
「わからん。誰にも女将の経歴、種族、年齢は知らん、それに――儂の祖父も坊主と呼ばれていた」
「えっ、女将さんの年齢は一体いくつになるんだ」
ヘイロスは神妙な顔して答える。
「それが七不思議。グレーテル城塞都市の七不思議の一つだ」
「女将さんの年齢が――七不思議」
ロキは異世界に変な七不思議があるな~と思いながら出てくる料理を食べていった。
ロキがヘイロスから女将さんの秘密を聞いてる時、隣のドレインとドランは浴びる様にお酒を飲んでいた。――翌日、親子で一緒に頭を抱えて寝込んでいた。
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村上視点
部屋の中には村上しかいない。豪華な料理が大量にテーブルの上に並ばれていた。10人前はあるだろう。
部屋の中は美味しそうな匂いが充満している、村上は大きな肉の塊を掴み、大きな口を開けて口に運ぶと。
「最高だ! まさしく俺様のためにある料理だ。ゴクゴク、ぷはぁー、ワインの味も最高だ! これも俺様のためのワインだ」
村上は料理を食べながら自己主張している。料理も酒も全てが俺様の為に特別に用意されたものだと、本気で考えている。
村上はテーブルの上にあった大量な料理を平らげていく、料理が少なると大きな声を上げる。
「おい、俺様の料理をもっと持ってこい! お代わりだ!」
部屋の外で待機していた者が誰かに指示をだす「ナポレオンがお代わりをご所望だ。早く持って来い」ナポレオンの手下が、急いで次の料理を準備する。
村上は一人で料理を食べるのが好きだ。マナーはないため下品であることは、自分で分かってるからだ、だから、誰にも見られたくないため一人で食べる。
村上が料理のお代わりを待ってると、ドアを叩く音が聞こえる。
料理を期待していた村上は大きな声を上げて歓迎する。
部屋に入って来た手下を怪訝そうに見る。料理がないからだ。
村上は顔を赤くして怒鳴りつける。
「おい! 俺様の料理はどうした!」
怒鳴られた手下は萎縮しながら答える。
「ナ、ナポレオン棟梁。マリデン商会から言伝が来ました」
村上はマリデン商会と聞いて怒りを収める。
マリデン商会はグレーテル城塞都市でトップスリーに入る大商会だ。だが、裏では違法奴隷や麻薬等、違法の取引をしており、村上と協力して犯罪を侵している。
最近のグレーテル城塞都市付近の盗賊被害はマリデン商会の依頼である。
村上はマリデン商会に多くの援助して貰っている。今、村上がいるアジトもマリデン商会が用意したものだ。
そのため依頼を断ることは出来ない。
「..マリデン商会の言伝はなんだ?」
「へい、ナポレオン棟梁。『青い妖精は甘い蜜を吸いに来る、罠を仕掛け綺麗なまま捕えよ』っと言伝です」
村上は下卑た笑みで顔を歪める。
「やっと本命が来たか! 待ってろよ青い妖精! 俺様を振ったことを後悔させてやる」
村上は声は高らかと上げ、拳をテーブルに振り落とす――振り落とされた衝撃で料理で使っていた皿が床に落ち割れる。
「俺様に歯向かった奴は全てぶっ壊してやる! 餌に食らいついた裏切り者に連絡しろ! 『青い妖精に甘~い蜜を飲ませてやれ』」
手下は頭を深く下げて部屋から出ていくと――料理が部屋の外で待機していた。
村上は料理のいい匂いが漂って来て涎を垂らす。涎を手で拭い上機嫌で声を上げる。
「料理を運べ! 今日は最高だ! 俺様は後、level1上がれば――世界を支配する力を手に入れる。その上、俺様に歯向かったあの女を辱しめることができるぜ!」
料理をドンドン口に運んでいく、口の周りは脂等で汚れ、顔に付いた料理の脂と自前の油で、照明の光を反射する。
醜く汚れた顔を更に下卑た笑みで歪める。
「この世界は最高だー! 俺様のためにある! ヒャッハー!!」
村上は声は高らかに上げ笑い出す。
部屋の中は下卑た笑い声が響き渡る。




