45話 青髪エルフとの対面
古き新緑の森の浅瀬に複数の足音が聞こえてくる。
足音の主は魔物――オークの集団だった。オーク達は獲物を捕まえて巣に運んでいた。獲物を守るように前衛に錆びた大剣を持ったオークソルジャーと後衛を守っている、弓持ちのオークアーチャーだった。
オーク達は獣声を喜びながら上げていた。この古き新緑の森の浅瀬でのオーク達の強さはゴブリンよりは強く剣熊よりは弱い魔物である。ごく稀に餌を求め下域から魔物が移動し食料を求めオークを襲ってくる。
オーク達は無事狩りが出来て喜んでいた。
そのオークの集団を覗く者達がいた――。
――ロキはドレインから借りたマントを、身体全体を隠す様に被っていた。
地面を人一人入るぐらいに掘りその中でロキを身を潜めていた。土や枯葉で自然に一体化するように擬態していた。この3日間ドレインに教わった技術である。
そのドレインは周囲を見渡すため木の上に登り、木の葉っぱを使い擬態していた。
ドレインは身を隠しながら弓を構え――オーク達を捉えていた。弓の玄を引っ張り一番邪魔になるオークアーチャーに狙いを定める。
オーク達は狙われるも知らずに歩き続け――ドレインの攻撃範囲に入る。
ドレインは合図をするかの様に矢を解き放つ。ドレインは淡々と次の準備をする、解き放たれた矢は確実に当たると自負してるからだ。ロキの援護をするため弓を構える。
解き放たれた矢は一直線にオークアーチャーの眼球を捉える。
「ギャァァァァァァ!」
オークアーチャーの眼球に矢が突き刺さり絶叫する。
仲間のオーク達は慌てるかのように後ろを振り向くと、オークアーチャーの目に矢が突き刺さっていた。敵がいるとオークソルジャーは辺りを見渡す――。
――地面からロキが飛び出す。ロキはオーク達の目と鼻の先に近い場所で擬態していた、そして、オーク達は気づかずに歩いていた。
背中を見せているオークソルジャーに強烈な回し蹴りをくらわす。
「グッ! ガァ..」
オークソルジャーは吹き飛び大地にキスをする。
獲物を持っていたオークは仲間を助けるため、獲物をロキに投げつける。
「フゴ!!」
オークソルジャーが大地にキスしたので、少しおかしく油断していた。
⦅ロキ二等兵!!⦆
急に気づいたため回避が間に合わずロキの肩に当たる。
「ぐっ、油断していた」
⦅ロキ二等兵、戦闘に集中しなさい⦆
エイラ少佐の注意を受けたロキは歯を食いしばって反省する。
「ぐっ、すいません」
攻撃が当たった場所に異常がないことを手と視線で確認する。
オーク達がロキを囲む様に動き、じりじりと近付いてくる。
ロキは身構えながら腰の短剣を取り出す。そして、<戦気>を短剣に纏う。
オークソルジャーが蹴られたことで怒り心頭のため待ちきれ大剣を振りかざす。
ロキは大剣をよく見ながらバックステップで避ける。 ロキの横にいたオークが動き出すが――。
――ドレインの矢がオークの眉間に刺さる――オークそのまま絶命して後ろに倒れる。
他のオークが騒ぎ出すが、オークソルジャーは気にせずロキにもう一度大剣を振りかざす――。
――ロキは大剣を短剣で受け流す――横に流れる様に動き、短剣を交差するように構える。
ーー<戦技>”強刃十字切り”ーー
オークソルジャーの横腹に十字に切りつける。
「ギャァァァァァァ!」
大きく切り裂かれた腹を見て、泡と血を噴き出して倒れ絶命する。
ドレインはオーク達がロキの邪魔にならないように矢で牽制していた。
オークソルジャーを倒したロキは視線を変える。その先に痛みを耐えながら弓を構えているオークアーチャーがいた。 オークアーチャーは木で身を隠しながらドレインを狙っていた。
ロキは仲間のオークソルジャーがやられて慌てるオーク達に切り裂きながら、<戦気>から<闘気>スキルに切り替える。
<闘気>を足に集中して纏い、<俊敏一時向上>と<腕力一時向上>スキルを発動する。そして新し覚えたスキル<力を溜める>を発動する。すると身体の奥底で力を塞ぐ感じがする。
オークアーチャーは弓を構えていた――仲間のオークの声が聞こえ視線だけずらすと、目の前に――。
――ロキはオークアーチャーの腹部を目掛けて。
塞いでいた力を解き放つーー<闘技>”正拳突き”ーー
「ギャァァァァァァ!?」
オークアーチャーの内部が潰され、その力が強すぎたため背中に大きく穴を開ける。
オークアーチャーが木にぶつかり滑るようにズルズルと地面に倒れ絶命する。
ロキは攻撃の威力に唖然としたが、瞬時に気持ちを切り替え残っているオークを見る。
オーク達の肩や腕に矢が突き刺さり、その場に動けにいた。ロキはドレインに任せてと合図するように右手を上げる。
――矢が止まり。戦意喪失しているオーク達にロキは近づき止めを刺していく。
慈悲は与えない。この世界は弱肉強食だ!
ロキは解体の準備をするためオーク達を運んでいた。事前に水場がある場所は発見していたからだ。
短剣は血で汚れているため水で洗い流す。
「これで綺麗になったかな..次は砥石で磨くか」
ロキが短剣を砥石で磨いてると。
ドレインが駆け寄ってきた。
「無事かロキ! オークの攻撃が当たったから心配したぞ」
ロキは申し訳なさそうな顔をする。
「うっ、あれは怪我は大したことないよ」
「本当か? あの時のロキは一瞬動きが固まっていたからな」
「あれは..大地にキスしたオークソルジャーを見て面白かったんだ..すまん」
ドレインは笑いだす。
「なんだそれは..ロキはたまに抜けている時があるからな心配だぞ、大丈夫かよ」
ドレインは笑いながら解体の準備をする。
⦅ロキ二等兵は、たまにではないけどな。度々戦闘中に抜けていることがある。もっと集中しなさい。毎回<戦闘モード>で戦えるわけではないぞ⦆
⦅..はい。気を付けます⦆
<戦闘モード>は身体能力だけではなく、集中力、戦闘への集中力が増す。
ロキとドレインは一緒に解体して終わりに近づいていた時、ドレインがロキの解体を見る。
「..ロキの解体も大分上手くなったな」
ロキは視線を変えずに答える。
「ドレイン先生のおかげさ、解体だけではなく狩りの仕方や採取、森の知識を教えてくれたからな、あとさっきの擬態の仕方もためになったよ。ありがとう」
ドレインは苦笑いしながら答える。
「ギルトン師匠、直伝の技術だからな。まぁ、俺もロキから<戦気>スキルの心得を教えて貰ったからな、身体の内側にある力を武器に纏う方法、何となくだけど力を感じることができたからな。その次はロキように<戦技>スキルを獲得するぞ」
ロキとドレインはオークの解体が終わり、持って行く素材を選別していた。
ロキは選別が終わった素材をリュックサックに詰めていた。 ――ドレインが思い出したかのように話す。
「あ、ロキ。矢が少なくなってきたから、そろそろグレーテル城塞都市に戻ろう」
ロキは作業を止め自分の身体を見る。土、血、汗で汚れていた。
「そうだな、戻るか。 そういえばオーク達はどこに向かっていたんだ?」
「さぁ~? 巣じゃないのか」
「オークの巣が近くにあるのか」
「たぶんな、補充が終わったら戻ってくればいいさ」
「だけど、ドレインは物資が揃えば戻るんだろう」
「そうだけど、まだだと思うぞ。親父は時間が掛かるって言ってたからな、さぁ早く戻ろうぜ」
「了解」
ロキとドレインは古き新緑の森の浅瀬にいたため、早めに森を抜けグレーテル城塞都市に繋がる街道を歩いていた。
太陽は真上でハオの世界を照らしていた、昼頃のためロキとドレインは、古き新緑の森で狩った魔物の肉を燻製にしていた。保存が効いた肉を食べながら足取り軽く歩いていた。
ドレインが肉を食べながら話す。
「もぐもぐ、このまま行けばグレーテル城塞都市にいつ頃着くんだ?」
「そうだな。夕方前には着くと思うぞ」
他の冒険者とたまに通り過ぎたりして、街道を歩き続けるいると――<気配察知>に反応があった。
「ドレイン――グレーテル城塞都市から複数の人が来る」
「ん、冒険者じゃないのか」
「..違うと思う。速さが違う。....見えた」
ロキは視覚機能で遠くのものを見ることができる。
そしてドレインは<遠視>スキルで見る事ができる。
「あれは..騎士か? 盗賊ではないだろ?」
「当たり前だドレイン。盗賊が堂々と街道を走らないと思うぞ」
「そうだよなロキ。とりあえず移動しよう」
ロキとドレインは騎士の通行の邪魔にならないように道を外れ待機する。怪しまれないように両手を上げて、通り過ぎるのを待っていると――。
――騎士の一団がロキ達の目の前に立ち止まった。
ロキとドレインが緊張してると――先頭の騎士から綺麗な女性の声が聞こえて来た。
騎士が兜を取ると――ロキは息を飲んだ。
――美しい女性だった。顔は神の手で創られたように整っていた。髪の色は青く滑らかにウェーブがあり、長さは肩にかかるぐらいだ。スタイルは金属製の鎧を着ていて分かりづらいが、細っりとして女性の丸みがわかる。そして耳の先端が長かった、3日前に南の門で見かけた人だ。
ロキは小さく呟く。
「..エルフ」
青髪の騎士は聞こえたのか、額に皺を寄せる。
「わたくしの身体をジロジロと見られてるのは慣れていますから不問にしますが..エルフ。種族名を省略されるのは好ましくありません。訂正して下さい、そこの冒険者」
青髪の騎士の後ろに控える騎士から威圧を感じる。
ロキは情報が整理できず困惑している――助けを懇願するようにドレインを見ると――こいつも固まっていた。口を大きく開けて、虫が入るぞドレインっと心の中で語りかける。
ドレインではなく。
⦅隣の有機生命体には聞こえていないぞ? それよりもエルフが返答を待っているぞ⦆
⦅ドレインはどうでもいいんですよ。でも、この女性はエルフですよね⦆
ロキはエイラ少佐と頭の中で会話して、心に余裕を持つことができた。
「申し訳ございません騎士様。おれ..自分はエルフでしか種族名が分からなくって、すいませんでした」
ロキは相手が騎士の為、とにかくこれ以上問題にならないように謝罪をする。それが騎士に対して礼儀になっているかは分からないが。
騎士達が騒ぎ出した。
「リディア様に対して、なんだその謝罪の仕方は!」
リディアが左手を上げて部下を抑える。
「抑えなさい! わたくしの部下が怒鳴って申し訳ございません冒険者。あなたの謝罪を受け入れましょう。 わたくしの種族名はセリアエルフです。種族名に誇りを持つ者もいます気を付けなさい。そういえばあなたの名は?」
「俺は..」
言葉使いに問題があるロキに騎士達が騒ぐ。
リディアが綺麗な声を上げる。
「やめなさいあなたたち。冒険者わたくしは細かい礼儀は気にしません続けなさい」
「俺はDランク冒険者のロキです。 えーーと?」
リディアは思い出したかのように話す。
「そういえば、わたくしの名前を教えていませんでしたね。【リディア・ウタ・ノワール】です。ノワールで構いません」
「ノワール様それで俺達になにか用ですか?」
「用は特にありません。ただ、西の街道にムラカミ盗賊団が見かけたと情報が入りましたので、あなた達に警告と見かけたか情報を貰いたいと思いましたが、その様子だと情報はないようですね」
ムラカミ盗賊団? 村上がここに? ロキは思考を巡っていた。
リディア達は情報がないため街道に戻ろうとしていた。
「ノワール様質問いいですか」
リディアは視線を向ける。騎士が声を上げようとするが、左手を上げて止める。
「構いませんよロキ。質問をどうぞ」
「ムラカミ盗賊団は南の街道に現れたのではないんですか?」
「3日間に商隊が襲われました。現地に赴き調査してると、部下が複数の馬の足跡を発見しました。その先を追いかけると南西へと続いていました。盗賊達の攪乱ではないかと疑っていましたが、西の街道でムラカミ盗賊団の頭領【ナポレオン】を見かけたと情報が入りましたので、至急調査に来ましたのよ」
ロキは感謝をするが、どうしてそこまで冒険者にナポレオンの情報を教えてくれたことに疑問を感じた。
「ナポレオンが西の街道にいるんですか。ノワール様はなんで情報を教えてくれたんですか?」
「当然です。冒険者と協力するのは大事な事です。それに冒険者ギルドには連絡済みですよ。わたくし達は当分ここで調査してます。ロキ些細な情報で構いませんなにか分かりましたら、わたくしか冒険者ギルドに伝えなさい」
ロキは頷く。
「分かりました。ノワール様」
リディアは凛々しい笑顔をする。
「当然よ治安維持は騎士団の仕事です。そういえば隣の青年は大丈夫か? ずっと固まっているが」
ロキは隣にいるドレインに視線を向ける――変わらずに口を開けたまま固まっていた。
ロキはリディアを見て笑顔で言う。
「大丈夫です。ノワール様気にしないで下さい」
「そ、そうか。たまにいるんだ人の顔を見て固まる者が心配でしょうがない。ふぅーではロキ、我々は調査に戻る気を付けて帰りなさい」
「はい。ありがとうございます」
リディアが騎士の先頭の前に着くと「3番隊行くぞ」と声を上げ馬で駆けていく、部下である騎士達も馬を走らせ付いていく。
ロキの視線がリディア達を見届けていると――ドレインが騒ぎ出した。
「な、なんだあの美しい人は..美し過ぎて心臓が止まるかと思ったぞロキ」
ロキは呆れるように話す。
「ドレイン大丈夫か?」
「それにしても美しかった..」
ドレインはすっかり惚けているので肩を叩く。
「ほら、ドレイン! 暗くなる前に帰るぞ」
「いた! 叩くことないだろう痛かったぞ」
「叩いて悪かったよ。だけど、ドレインはノワール様に見惚れ過ぎだ」
「ノワール様。また、会えるかな」
ロキはドレインをほっといて歩く。そして歩きながら声を大きく上げる。
「置いていくぞ。ドレイン」
「あ!待ってくれロキ」
ドレインは美女に弱いなと思っていると。
⦅ロキ二等兵も見惚れいただろうが、あの有機生命体、エルフのどこがいいのか、まったく意味がわかない⦆
ロキは頭の中でエイラ少佐の愚痴を聞きながら、ドレインのノワール様妄想話しを耳で聞き、肩を落として項垂れながら歩く。
早く帰りたいと思いながら――。
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????視点
商業都市カシマ、グレーテル城塞都市から南側にある人口5万人の中都市である。
数年前に事業に失敗した商人の屋敷。そこに傭兵団がねぐらに使っている、傭兵団と名ばかりに盗賊紛いの犯罪をして金を稼いでいた。この屋敷の元の持ち主の商人を騙して奪い、家族全員を殺した犯罪者である。
傭兵団のメンバーは強くBランク冒険者並の強さを持っている。頭の切れる者が居て貴族と上手く立ち回っているため捕まえることができない。
なによりも、この傭兵団を仕切っている者。Aランク冒険者並の強さで【鬼殺し】の二つ名を持つ、【ダンケル】がいるからだ。
ダンケルは素手で握り潰すことが得意――嫌、好きだ。 男、女、子供、老人、魔物をありとあらゆる者を潰していた。そして、潰した魔物の中にはオーガがいた。
ダンケルは自分の欲望を満たすためだけに人を襲い握り潰す快楽者だ。全てこの手の握力の力で築いてきた。
――だが、ダンケルは初めての恐怖で、2メートルを超す巨体は震え腰を低くくして縮んでいるように見える。
ダンケルの周りには手下である傭兵団のメンバーが死んでいた――ただの死に様ではない、目、舌、耳が無い者達。そして、身体中の体液がなくなってようにミイラになって苦悶な表情をしていた。
つい数分前まで全員生きていた。いつものように仕事(犯罪)の報告を受けながら、酒を飲んでいた――。
――突然そいつは現れた。なんの前触れもなく、当たり前の様にいた。そいつの姿は執事服のような恰好をしていた、両手の甲には赤く光るアザが見えた。そして――惨劇が始まった。
俺は手下と一緒に、そいつを殺そうしたが、攻撃を受けても微動だにせず、淡々と処理をするように手下を捕まえ殺す。助けを懇願しても反応もなく淡々と殺す。
ダンケルは余りの恐怖で身を縮めていた。そして懇願する。
「だ、誰に頼まれたんだ。か、金か倍を出すぞ!」
そいつは近づいてくる。
「倍じゃ駄目なのか! 全部、全部渡すから命だけは助けてくれ! 俺は死にたくない!?」
ダンケルは必死に助けを懇願する――。
――今まで助けを懇願していた者達、自分の命はいいから家族だけでも助けを懇願していた者達を、下卑た笑みで殺し続けた。
そいつはダンケルの頭を掴み。
「肥えた魂よ。罪状。殺人罪、脅迫罪、強制性交等罪........」
淡々と罪状を述べる。
ダンケルは苦しみ出す、痛みの為、絶叫するが声が出ない。声帯がない? 目の前がまっくら突然真っ暗になる。
(あぁ~~目が目がない。俺の目が~!)
声帯がないため声が出ない、ダンケルは口をパクパクを開ける。手で顔を触り眼球があった場所を触ると空洞になっていた。
耳は残っているため音だけが聞こえ更に恐怖をする。
そして――身体中の体液、力が吸われていく。魂までも吸われる――どこか別の場所に送られる浮揚感を感じると、身体中――違う、魂を焼く痛みを感じ、ダンケルの魂は絶叫する。
『ぎゃぁぁぁぁあぁぁあぁぁあぁぁ!?』
魂が抜かれたダンケルの身体をゴミを捨てるように投げ捨てる。
そいつは両手を祈るように天高く掲げる。
「アーセス......捧げよ..<悪魂神託>」
両手の甲のアザが赤く光る。
「..肥えた魂..ムラカミ....アーセス......捧げよ」
そいつはグレーテル城塞都市の方に視線を向け祈る。
「捧げよ....」
そいつは忽然と闇に溶ける。
その場に残ったのは――苦悶の表情したダンケルと手下だけだった。




