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39話 風牙狼6

 ーーユニークスキル<負けず嫌い>が発動しましたーー


 --生命が著しく低下したためNS因子スキル<生存本能>が発動しましたーー


 頭の中に”世界の声”が響き渡りーー頭の中のネジがずれて..い..く..。


 負ける..いや..だ! 死んだら全て終わる..いや..だ! 負けたくない! 負けたくない! 負けたくない! 


 ーーマ..ケ..タ..ク..ナ..イ!? --


 ロキの周りから黒いマナが床や壁から現れ漂い舞い踊る。


 黒いマナを吸収し自らの魔力に変換され身体の全てに血液のように巡り。金属の心臓に鼓動が生まれ激しく動き出す。そして壊れかけていた身体の中から力を感じ細胞一つ一つが活性し始める。


 全身の痛みがなくなりそれどころか力が湧き上がってくる。倒れていた身体を起こし立ち上がり拳を何度も握りしめて身体の調子を確認する。


 風牙狼の軽装が役目を終えたがように砕け床に落ちる。他の装備もいつ壊れてもおかしくない状態だ。


 吸収しけれなかった黒いマナがロキの周囲をゆっくりと回転し始める。


 ロキのいつもと違う、声が重なり震えた声が響く。

 「あぁ..あ..あぁ..ああぁぁぁぁ....」


 ロキの頭の中に耳障りな邪魔な声が普段と違うエイラ少佐の心配してる声が響き渡る。

 ⦅ロキ二等兵! 聞いてるのか返事をしろロキ二等兵ーー⦆

 

 邪魔だ! 俺の邪魔だと聞き捨てる。


 ロキの意識は正常に物事を認識していた、エイラ少佐が心配してることもわかっていた。だが今は邪魔だ..俺を殺そうとしたゴルバを殺すことが優先だ。それ以外は全て邪魔だ。


 腹の底から溢れんばかりに力を込めて声を張り上げる。

 「ゴルバーーーーーーーー!?」

  

 黒いマナが急速にスピードを増し、ロキの周りを竜巻のように回転し、家の中の机や箪笥等が浮かび回転しはじめ、竜巻は天井を突き抜け破壊していく。


*************************************

 ゴルバ視点


 ゴルバは酷く疲弊し満身傷痍だった。ロキの<戦技>”狼牙衝撃波”を受けた腹部の毛色は緑色から鮮血色に変わっていた。今もなお血が流れていた。


 怒りの力を込めたーー”風狼憤怒咆哮”をまともに食らった、クロカミに自慢の風の力を纏った牙で切断するはずだったがーー鋼鉄のように頑丈な身体で切断することができなかった。だが、クロカミの身体を破壊する力で吹き飛ばした。


 かつてないほどの死闘に勝利した、ゴルバは勝利の雄叫びを天高く掲げる。

 「ウォオオンンンンンンンンンン!?」


 ゴルバが吠えると同胞の風牙狼やグリーンウルフも一緒に吠え始める。

 「「ウォオンンンンンンンンンン!?」」


 ゴルバは辺りを見渡してみるとーー憎き餌達はクロカミが敗れ絶望に顔を染めていた。


 勝利の雄叫びをしてる同胞のグリーンウルフを見てゴルバは思い出していた。かつてゴルバもグリーンウルフから風牙狼に進化したことをーー。


 「ナ..ナゼ..シンカ..ハジマラナイ..ナゼ」

 ――ゴルバは動揺した。


 クロカミを殺し、その糧でゴルバは進化してるはずだと、何故進化しないんだと困惑する。


 ゴルバが困惑していると同胞が心配して近づいてくる。

 「クゥゥゥゥゥン」


 ゴルバも顔を近づけて寄せ合う。

 「ゴルバ..ダイジョウブ..ダ」


 この同胞とはゴルバの名を与えられる前から付き合いだ。共に生き、共に狩りをして、共に傷つき、共に悲しみ。そして共に同胞を作った、かけがえのないーー最愛の雌だ!


 ――ゴルバが傷ついた身体を休めてると――ゴルバを呼ぶ声が聞こえ、突然竜巻が現れ憎き餌の住処を破壊した。その先に見えたのは殺したはずの――。

 「クロカミーーーー!?」

 ――宿敵がいた。


*************************************

 ドラン視点


 ドランとギルドンは家族を庇えながら風牙狼達に睨み続け、けん制していた。ロキが一人で風牙狼のネームドモンスターと戦い、苦戦しながらも負け時と応戦し、ロキの<戦技>が風牙狼に決まると、風牙狼に大きな怪我を与え勝利を掴んだと思っていたが、風牙狼の強力な咆哮でロキも俺達も全てが吹き飛んでいた。地面に倒れ伏せ、何とか顔を上げてみると、ロキが吹き飛んで行く姿が見えた。更に風牙狼が遠吠えをして俺..いや俺達は恐怖で身を縮め震えていた。


 「..ロキ」

 「くそっ俺達はもう駄目か..いや子供達だけでも」

 「あんた、こんなことになるなんて..」

 「親父..」

 身体の痛みで立ち上がることもできず、ドラン達は絶望していると、突然大きな音が聞こえ視線を向けると竜巻が現れ家を破壊して、暫くすると竜巻の威力が少しづつ収まり薄っすらと向こう側の景色が見えてくる、その場所に人型が歩いていると――その時ベリーちゃんの喜びの声が聞こえてきた。


*************************************

 ヘイロス視点


 ドランとギルドンがベリーを抱えて連れてきた。エマーがベリーの顔を見たら安堵して涙を流した。

ビートがギルドンからベリーを渡されて目から涙を流した。ビートはエマーを安心させるため、ベリーを抱き抱えエマーに近づく、エマーはベリーを叱っているが、叱られてる本人は笑顔でロキのことを話している。


 「あぁぁぁぁ、ベリー! 心配させて駄目じゃない」

 「おみやげおにいちゃんが、わんちゃんにめっするの。ままをいじめた、わんちゃんめっするの」


 ヘイロスはロキに視線を向ける。

 「若いの..すまん。..頼むぞ」


 ロキとネームドモンスターの戦いから数十分間の時間が経ち、祈るように眺めてるネームドモンスターが突然大きな声を上げ全てを吹き飛ばし--儂は地面に頭をぶつけ意識を失った。


 「..わ、儂は..一体なにが..あ、頭が痛い」

 ヘイロスは痛みで頭を手で押さえていると、ビートが心配した表情で近づいて来る。


 「あっ、お義父さん気づきましたか」


 ビートの説明によるとネームドモンスターの咆哮で皆が風圧を受けて倒れたようだ、儂は運が悪く頭を地面に強く打って気絶したようだ。


 説明が続きは残酷な内容だった、若いのロキが戦いに敗れてしまったことだ。

 「..儂より先に死に追って..」

 悔しく肩を落としてると、風牙狼達の遠吠えが聞こえてくる。そして皆の顔を見ると悲痛な表情で青ざめていた。これから起きることを考えると。


 「..せめて若い者達だけでも逃がさんと」

 まだ頭痛がする痛みを我慢して立ち上がろうとすると、突然大きな音が聞こえ振り向く、生まれて初めて見た竜巻を見て驚きしばらくすると、竜巻の中から人型が微かに見えてくる。そしてベリーが大きく声を上げた。


 「おみやげおにいーーちゃーーん」


*************************************

 ロキ視点


 天空に上がった家の破片がバラバラと落ちる。ロキは破片が身体の当たっても、何も気にせず歩き続ける。今、頭の中にあるのは敵であるゴルバに勝つこと。


 ロキは家の破片を踏み潰しながら歩いてると、どよめきが聞こえて時間が少し経つと歓声の声が聞こえてきた。


 一際大きい声でベリーの声が聞こえてきた。


 ベリーの声に応えることはない、今はゴルバと戦い勝利することだ。


 風牙狼やグリーンウルフを邪魔だと睨むと、風牙狼達は情けない声を上げて「キャインン」後ずさる。その姿を見せても警戒しながらゴルバに近づいて行く。


 ゴルバは寄り添ってた仲間から離れるとーー雰囲気が変わる。


 強い威圧を感じる――ゴルバも既に戦闘態勢に入っている。


 「クロカミ..イキテタカ..コンド..ハ..カクジツニ..アタマヲ..ツブス」

 ゴルバは睨み吠える。


 ロキはゴルバの言葉に対応せず睨みつけながらゴルバに近づいて行き――6メートル程手前で立ち止まる――。

 

 ――攻撃態勢の構えをとる。


 お互い敵対心を持ちながら睨みつけ――そして、動き出す。


 ――最初に動き出したはロキだった。ユニークスキル<負けず嫌い>とNS因子スキル<生存本能>で異常までに向上した身体能力を生かし動く。


 ゴルバは目の前の獲物が消え困惑する「..クロカミ?」視線を動かし探すが見つからない。ロキは目にも止まらない速さでゴルバの横に移動し、その勢いを殺さないように足に力を込めて、反動を生かし腕を曲げてエルボーを「ここだ」、今だ困惑してるゴルバに与える。


 「..ガハッ!」

 ゴルバは横腹に痛みを感じた。また、牛並みの身体が吹き飛ばされる。なんとかバランス感覚を生かして、上手く着地して何が起きたか確認しようとするが――。


 ――ロキはゴルバの着地と同時に、先程攻撃した箇所と同じ所で強烈な飛び蹴りを与える。ゴルバの口から「グッ、ガハッ!」血を吐き出して、衝撃と痛みで身体がふらつき倒れようとするが気力で保つ。


 ゴルバは口から血を吐きながら憎々しくロキを睨みつける。

 「オノレ..クロカミ!」


 ロキはゴルバに反撃の猶予を与えないため瞬時に動きだす――。

 「一気に仕掛ける」


 ゴルバの死角を狙って――横顔に右、左、右、左、右、左、右、左と殴打を繰り返し一方的な攻撃の嵐を与える。


 ゴルバは一撃の重みに困惑していた――クロカミの力が先程よりも別格であると、こんな短時間になにがあったと困惑していた。


 ドランやヘイロス達は唖然とした表情でロキの戦いを見届けていた。


 「..ロキの動きがまったく見えないぞ」

 「若いの..一体なにがあったんだ? スキルかなにかか?」

 

 ロキの戦いを見てる人達は最後の希望を掛けて見届けていた。ネームドモンスターや風牙狼達の囲まれ死の恐怖で身を震えてていた。もう終わりかと思った時、殺されたと思ってたロキが再度戦いを挑んでいった。また負けると思ってた戦いは別の意味で裏切られることになった。あのネームドモンスターに圧倒してるのだ。アカマツ村の人達は希望の戦いを見届ける。


 ゴルバは殴打の連打に耐えながら、ロキに向かって飛び掛かり攻撃を仕掛けるが――。


 ロキは冷静に対応する。

 ーー<闘技>”正拳突き”ーー

 ――ゴルバの顔面に与える。


 吹き飛んだゴルバは自らに怒り、そしてクロカミのに憤怒する。ロキを睨み口に最大の力を込める――。


 ロキはゴルバの口辺りに力を感じ――。

 「あ、あれは止めないと!」

 ――ゴルバの攻撃を止めようと動き出す。


 ゴルバは近づいて来るロキを見て「モウ..オソイ..クロカミ」口を大きく開く。


 ロキがゴルバの動きを見て攻撃を止められないと回避に切り替えようとした時ーーエイラ少佐の声が響きわたる。


 ⦅ロキ二等兵そのまま突っ込め! お前の意識が正常化は分からないが、全力でフォローをする⦆

 

 ロキは意識を無理矢理戻して片言に話す。

 「エ..エイ..ラ少..佐」


 ロキはエイラ少佐の言葉を信じゴルバに向かって突っ込む。


 そしてゴルバが――。


 ーー”風狼憤怒咆哮”ーー

 ――先程より強大な力で咆哮を放った。


 ロキは一切心配せず突っ込んでいき、咆哮がロキの2メートル前で何かとぶつかり火花を散らしていた。

 咆哮を防御してるのは一体何かと見てみるとーーナノメタルだった。


 ⦅ロキ二等兵ナノメタルで攻撃を防ぐ事ができるのはこの一度だけだ次はない! これで決めろーーロキ二等兵!」


 ロキはエイラ少佐から得たチャンスを生かすため最後の決戦に向かう。


 ゴルバは目を見開いて驚いていた。憎きクロカミを吹き飛ばそうと放ったーー”風狼憤怒咆哮”ーーが何かとぶつかり合い防がれていた。そして、そのままクロカミが近づいて来ることに驚きーーまた歓喜した。


 「クックックックックックックッ、マダダ..クロカミ」


 ゴルバはクロカミとの決着をつけるため、自慢の牙に風の力を纏い最後の決戦に挑む。

 「クロカミーーーーーー!」


 ロキも渾身の一撃に力を込める。

 「うぉぉぉおぉぉぉぉぉーー」

 ーー<闘技>”鋼槍貫き手”ーー

 

 ロキの”鋼槍貫き手”とゴルバの牙が辺ると、何かを削るような音が響き渡り、数秒間拮抗していたが、ロキの手刀がゴルバの牙を断ち切った。そしてそのまゴルバの内側に入り心臓を貫く。


 心臓を貫かれたゴルバは血を吐きながらロキを睨む。

 「ガハッ......ク..カ」

 

 ゴルバを助けようと同胞の風牙狼がロキに襲い掛かろうとした時――。

 

 ――ゴルバは同胞に向かって吠える。

 「アォォォォォンーー」


 風牙狼達は戸惑いながら軽く吠え、ゴルバに居る場所とは違う森の方にバラバラに逃げて行く。


 同胞の姿を見届けたゴルバは静かに目を閉じた。


 ロキはゴルバの死を目の前で見届けゆっくりと腕を戻した。先程まで命をかけた戦いを繰り広げ憎しみあったいた。だが今は違う最大の敬意を払って大切にゴルバの身体を地面に置く。


 ゴルバの仲間の風牙狼達が逃げていくのを見てる。今から追いかければ殺すことができるだろう、だが追いかけない。ゴルバの最後の頼みだからだ言葉は分からないが通じるものがあった。甘いかもしれない、また同じようなことが起きるかもしれない、後悔するかもしれない。


 「それでも俺はゴルバの最後の頼みを聞くよ」


 ゴルバに寄り添っていた風牙狼が天高く冥福を祈るように吠えた。そして森の方に走り去った。


 ロキは急に力が抜け、片膝を曲げながら地面に座る。

 

 「..終わったか」

 ⦅ロキ二等兵聞こえるか?⦆

 「は..い」

 ⦅大分身体を疲労してるようだな⦆

 ロキは弱々しく頷く。


 ⦅<戦闘モード>終了 使用過多のため疲労最多⦆


 ⦅<緊急スリープモード>30秒後に強制実行する⦆


 ロキは答える時間も与えられず力が抜けていく。ゆっくりと意識が遠くなり。

 

 遠くからヘイロス達の喜びと心配している声が届く。


 ⦅ゴルバの討伐完了だ。今は休めロキ二等兵⦆


 エイラ少佐の言葉が最後に意識を閉じていく。

 

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