31話 アカマツ村へ1
「....うっ、毎回この毒キノコの後味で起動するのは最悪だ。口の中に食べ残しが....と、取れないな」
舌で毒キノコを取ろうとするが悪戦苦闘する。
エイラ少佐から呆れる声が聞こえる。
⦅ロキ二等兵朝からなにやってる?⦆
食べカスを舌で取ろうとするため変顔になる。
「..い、いやその..毒キノコが口の中に残ってて....おっ、取れた」
エイラ少佐が呆れながら忠告してくる。
⦅そんなことよりいいのか、護衛依頼は冒険者ギルド前の広場で集合ではないのか⦆
ロキは飛び跳ねるうように身体を起こし声を上げる。
「あっ、ああああああ急がないと、時間は....時計がないから分からないんだった。急いで着替えないと」
ロキは部屋を見渡して時計を探すがあるわけがない、時計を持ってるのは貴族や富豪しかない、今の世の中で手に入れる方法は魔道具しかない。そのため、まんぷく亭のような安宿では置いてあるわけがない。
急いで装備を着替えると――。
⦅ロキ二等兵、騒ぐな周りに迷惑だ⦆
ロキはヤバイと驚いた表情をする。
「あっ、確かに。....すいません」
小声で謝罪を呟く。
ロキは装備を着替え終わり部屋を出て、チャックアウトすると――女将さんに叱られた。
「朝早くから騒いだら駄目だよ。こんな朝早くから仕事かい気を付けて行きな。......これを持って行きな」
女将さんが厨房から紙袋を持ってきて渡す。
ロキが紙袋の中身を見ると。
「あっこれ....いい匂いだ」
女将さんが笑顔で言う。
「それはサービスだよ。いってらっしゃい」
「ありがとうございます。頂きます」
ロキはまんぷく亭の女将から貰った、オークサンドを食べながら街道を走ってる。
「もぐもぐ..うーーん美味いな。あっ、手にソースが付いた」
舌で手に付いたソースを舐める。
エイラ少佐から注意される。
⦅ロキ二等兵汚いですよ。....それとそろそろ集合場所が見えてきますよ⦆
食事が終わり広場に視線を向けると、早朝とは思えない人の多さだった。商人や冒険者が馬車の周りで話し合いの相談等をやっていた。ロキも急いで向かう。
広場に着くと護衛依頼の依頼者を探していた。
「えーーと確か商会の名前がアカベリー商会だったかな....どこだろう?」
集合場所は広場と聞いたが、こんなに馬車があるとは思わなかった。そのため依頼者がどこにいるかわからないでいる。
ロキは困り果てているとエイラ少佐から声が聞こえる。
⦅ロキ二等兵、ギルドカードが光ってるぞ⦆
ロキは驚いてギルドカードを出して、覗くとカードの概要欄に追加項目があった。
「これは.....馬車に黄色の布が目印と書いてある」
周囲を見渡すと馬車の周りに布で旗印にしていた。馬車に結んだり、布を持っている人達がいた。黄色の布を探すと..馬車に布が巻かれ風の流れを読み取っていた。馬車の近くで白髪で60代ぐらいの男性や皮鎧を着ている冒険者達がいた。
馬車に近づくと白髪の男性と冒険者達が荷物を馬車に運んでいた。白髪の男性と冒険者達は昔馴染み見たいな雰囲気で仲が良く感じた。
白髪の男性が依頼者だと思い声を掛ける。
「あ、すいません。こちらはアカベリー商会の護衛依頼でいいですか?」
白髪の男性は荷物を床に置き視線を向けると。
「――おぉぉ重い重い。ふぅっ、すまんな若いの。確かにここがアカベリー商会だ。若いのが最後の冒険者だな。儂はアカベリー商会のヘイロスだ、よろしくな若いの」
腰の痛みを感じながら声を大きく挨拶してきた。
第一印象は大事に爽やかに心掛け挨拶する。
「おれ――自分はEランク冒険者のロキです。よろしくお願いします」
「よろしくな若いの、だがの儂に敬語なんていらんぞ。堅苦しいのは嫌いだからの気軽でよい。それと他の冒険者も紹介するぞ」
ヘイロスが冒険者達に話し掛ける。
「おーーーーい! ドラン! ナイル! マリ―! 来てくれ。依頼仲間を紹介するぞ」
馬車で荷物の整理をしていた冒険者達が作業と止め集まり出した。
一番最初に30代後半の男性が太い声で話す。
「おう、俺はCランク冒険者のドランだ。よろしくな!」
次に近づいて来た男女の冒険者は、男性が女性をエスコートしてるように支えながら近づいて来る。男性は20だ代前半で、女性も20代前半でソバカスがあり素朴に見える。
「自分はDランク冒険者のナイルだ。そしてこちらが婚約者のマリ―だ。よろしくな」
紹介して貰ったマリ―もナイルと一緒に挨拶する。
「私はマリ―よ。ふっふっ、ナイルの婚約者です」
紹介が終わった二人は見つめ合って――二人の世界に入っていた。正直うざいが――突然エイラ少佐が。
⦅なんだこの有機生命体は..うざいな⦆
エイラ少佐もうざかったらしいので。
⦅目の前でやられるとうざいですね⦆
エイラ少佐に同意する。
ヘイロスとドランがナイル達に呆れてる視線を向けてるが、第一印象は大事なのでロキも挨拶する。
「Eランク冒険者のロキです。よろしくお願いします」
お互いに挨拶が終わると、代表としてヘイロスが説明する。
「この三人は昔馴染み..まぁ、子供の頃から知ってる奴等じゃな。三人共..嫌儂もじゃが里帰りがメインだ。孫の誕生日にアカマツ村へ向かう所だ。ドランも家族がいるからだ。ナイルとマリ―は両親に結婚の報告に里帰りだ」
ドランはヘイロスの説明に頷くが、ナイル達は見つめ合ったままだ。――あの二人は無視しよ。
「皆さん同じ村出身なんですね。それじゃなんで冒険者達ギルドに依頼したんですか? 一緒に里帰りするんだったら冒険者ギルドに依頼しなくっても帰るんじゃ」
ヘイロスが困ったように話す。
「毎年この時期に里帰りするんだが、いつもより里帰りの者達が少なく、盗賊の被害が多く出てるから冒険者ギルドに依頼したんじゃ、流石に3人だけでは馬車を守ることが出来ないので、あと一人募集したんだ。だがの報酬が少なく集まらなかった所ギリギリ昨日冒険者ギルドから連絡が来たんだ」
「昨日じ――俺が受けなかったら、4人で出発してたと言うことですか」
ヘイロスとドランが大きく頷く。――あのバカっプルはもういい。
ヘイロスの指示で荷物を馬車に運ぶ、本来冒険者はする必要はないが昔馴染み――子供の頃から知ってる中なので手伝う。この馬車に積んでる荷物がアカマツ村にとって大事な物だと分かってるのもある。生活に必要な塩や保存に効く豆類等があり、他にも家畜の餌や、緊急時に必要なポーション類も多く積んである。
3人の先輩冒険者が手伝ってる中なにもやらない勇気はないので手伝う。荷物運びは鋼体生命体であるロキにとっては苦にもならないので運び出す。ドランとナイルが力持ちだなと褒めていた。
毎年より早く荷物の積荷が終わり、ヘイロスが喜びロキに感謝する。
「凄いの若いの。見かけによらず力持ちだな感謝するぞ」
ロキは恥ずかしそうに頭を掻きながら。
「そんなことないですよ。皆さんのおかげです」
謙虚は日本人の美徳だからが――。
ヘイロスとドランが苦笑いしながら話す。
「若いの素直に感謝の言葉を受け止めておけ」
「そうだぞ。ありがとなロキ」
ロキは素直に声を上げる。
「はい」
馬車の積荷が終わり操車にヘイロスが立ち上がって声を上げる。
「では今回の護衛のリーダーはドランに頼む。ドラン指示してくれ」
ドランは一歩前に出て視線を3人に向ける。
「今回はアカマツ村まで馬車を護衛する依頼だ。俺は馬車の右に付く、ナイルは背後を頼む、マリ―はヘイロスさんの横で前方を頼む、そしてロキは左を頼む。ナイルとマリ―はロキの援護を頼む」
3人共大きく頷く。ナイルとマリ―は先程のバカップルと違い真剣な表情だった。
3人の顔を見お終わったドランは頷き。
「アカマツ村まで2~3日の距離だが、順調に行けば2日目の夕方に着くだろう! 今日の野営地は追って説明する。出発するぞ!?」
グレーテル城塞都市から出発して数刻経っている。
4頭の馬が馬車を動かす。馬車の車輪が土や石を踏み回る。日本のようにコンクリートやアスファルトで整備されていない茶色い道を進み、大きい石を踏み進めると大きく馬車が揺れる。
ロキは時たま揺れる馬車を見て荷物は大丈夫なの? ヘイロスとマリ―の尻は大丈夫なの? と心配しながら左を警戒して、エイラ少佐にもナノメタルで魔物がいないか見て貰っている。
⦅エイラ少佐どうですか、魔物はいますか?」
⦅――ロキ二等兵注意しろ、右の森から魔物が見える注意しろ⦆
⦅えっ、魔物ですか! 皆に知らせないと――⦆
⦅待てロキ二等兵、魔物はまだこちらに気づいていない――ん、駄目だ気づかれた。早い来るぞ⦆
エイラ少佐の声と同時に地面を強く踏み潰す音と獣の声が聞こえる。周囲の雰囲気が変わる。
「フガァァァァァァ!?」
ドランが緊張した声で大きく叫ぶ。
「ハンマーボアだーー!?」
ドランが前に出て指示をする。
「俺が前に出る。ナイル、ロキはハンマーボアの横を頼む。マリ―は馬車の上から弓で威嚇しろ、ヘイロスさんは俺がやられたら全力で逃げろ。お前達もだ」
ロキは急いでドラン達に向かうと、ドランが片手剣と盾を叩きハンマーボアに興味を持たせる。ナイルは緊張した表情で槍を持つが、指がーー身体全体が揺れていた。馬車の上にいるマリ―は弓を構えいつでも発射の態勢だ。
ヘイロスは強張った表情で自虐的に説明する。
「ハンマーボア相手に逃げられるわけがないだろう、こいつの突進の速さは馬以上じゃ荷物があろうが、なかろうが逃げられん。逃げられんしハンマーボアを村の近くまで連れて行くのは反対じゃ」
ドランはハンマーボアを見ながら。
「すまんヘイロスさん。3人共行くぞーー!」
ドランはハンマーボアの前に出て注意を向ける。
ハンマーボアの背中に矢が当たるが、固い毛に弾かれる。
「やっぱり只の矢じゃ通じないわ」
ハンマーボアは矢なの気にせず獲物を定める。顔の前に金槌のような角に見えるが、筋肉の塊である岩や鉄際も砕く強靭な力がある。顔を横に振り獲物を選ぶが、先程からうるさい音が気になる。
「フガァァァァァァ!?」
うねり声と共にハンマーを振りかざす。
ドランは盾で防ぐ経験の差なのか、うまく衝撃を和らげながら防ぐことができたが。
「ぐっ、なんて力だ....腕が痺れるぜ」
横からナイルが動く、ロキも合わせて短剣を両手に持ちハンマーボアの横腹に向かう。
ロキは注意を向けるためナイルより先に向かう。ハンマーボアの動きに合わせて短剣で切り裂く。
「こっちだT字。くっ、固いな駄目か」
短剣で切り裂いたが、毛が邪魔をして肉を切り裂くことが出来なかった。
ナイルは反対側から槍で突いたが。
「くらぇぇーー化け物! なっ」
ハンマーボアは毛だけではなく皮も固かったため槍も弾かれる。
4人の冒険者は必死にハンマーボアと戦いを繰り続けていた。ヘイロスはマリ―に矢の補充や馬が暴走しないように宥めていた。
ハンマーボアは4人の獲物と攻守を争っていたが、体力の疲れは見られなかった。逆にロキ以外の冒険者達は緊張と恐怖で多くの体力を擦り減っていた。
特にナイルは、まじかに見え獣の匂いやうねり声が聞こえ、極度の緊張状態だった。――その時疲れが溜まった足がもつれ倒れる。
「......あっ!」
全員に緊張が走る。
その隙を見逃さないハンマーボアは動き出す。身体全体を動かしナイルに向かって突進しようとした時――。
ドランがナイルを助けようと動く。
ーー<戦技>”半月スラッシュ”ーー
上半身を大きく捻りハンマーボアに飛び掛かり切り裂く。
ハンマーボアの横顔を大きく切り裂き血が鮮血する。
「ちっ」
ドランは舌打ちした、本来<戦技>”半月スラッシュで止めを刺すため温存していた。ナイルを助けるため使用した、それでももっと致命傷を与えてるはずだった。
ハンマーボアを自慢な毛や皮を切り裂かれたが冷静だった。先に一番目障りな獲物を殺すため動く。
ハンマーボアは大きく顔を横に動かし、<戦技>を使用したばかりのドランに向かってハンマーを振りかざす。
「フガァァァァァァァァァァ!?」
ドランは盾で防ぐことが出来たが、吹き飛び転がる。
「ちっ、この化け物がーー。ぐっ、ぁぁぁぁ....」
転がり気を失う。
ナイルは動けずにいた。余りの恐怖で腰が抜けていた。そこでアカマツ村一番の冒険者がハンマーボアの攻撃を受け吹き飛ぶ所を見てしまった。更なる恐怖が生まれ身動きが出来なくなった。
「ぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁ」
ハンマーボアは倒れている獲物を定め、ゆくっりと前足を上げハンマーで潰そうと動く。
マリ―は状況が整理できず立っているだけで、ただ目の前にいる婚約者が殺されそうとしてる所を涙が止まらず、大きく叫ぶ。
「ナイルーーーーお願い逃げてーーーーーー!?」
全ては一瞬の出来事だった。ナイルが倒れ。ドランがハンマーボアの攻撃を受け吹き飛ぶのはだがーーロキも動いていた。
⦅エイラ少佐行きます⦆
ロキとエイラ少佐の声が重なる。
⦅<戦闘モード>開始⦆
エイラ少佐が高らかに宣言する。
⦅ロキ二等兵、ハンマーボアを討伐せよ⦆
「了解」
ロキは全身に纏っていた<闘気>をもう一度練り上げる。<戦闘モード>中は能力が向上してるからだ。全身に<闘気>を感じ両手にある短剣を勢いよくハンマーボアに向かって投擲する。
二つの短剣は真っ直ぐハンマーボアに飛んで行く――。




