19話 ナタリー魔道具屋
やっとマラソンが終わった、宿の食事の時間が無くなると伝えたけど、直ぐに了解は得られなかった。ロキ二等兵には必要ない。ロキ二等兵のためだ走れと聞かなかった。MPを回復したいのでお願いしますと頼んだら渋々食事の了解が得られた。これ毎朝やるのかな?
⦅ロキ二等兵。今回は電子生命体の反応はなかった⦆
⦅えっ、......そうか。マラソンで街の中を走るから、その時に電子生命体も一緒に探してたんですか⦆
⦅一石二鳥だ⦆
⦅ことわざお気に入りですね⦆
⦅効率が良いぞ⦆
異世界に来て日本のことわざを褒めてくれるのは嬉しく思う。
宿に戻り女将からお湯を借りるマラソンで汗をかいたので身体を拭くためだ。まんぷく亭にはお風呂はない、この世界の大抵の家に風呂場はない。備えられてるのは王族貴族の屋敷ぐらい、後は高級宿にお風呂があるしい。いつか入りたいものだ。
「ふぅー。スッキリした」
汗を拭いたことで今日の予定を確認する。
⦅エイラ少佐、食事の後は魔道具屋に行っていいですか⦆
⦅電子生命体を探索しますから、昨日とは違う道で行きなさい⦆
⦅了解しました⦆
魔道具屋に行く前にまんぷく亭で食事をする。今日のおススメは甘辛たれのオーク焼きだった。大変美味しかった。周りの人達もうめぇうめぇと食べていた。
食事が終わり宿を出る。
⦅魔道具屋に向かいますか。エイラ少佐、道を教えてください⦆
⦅魔道具屋まで誘導します⦆
エイラ少佐の指示のもと昨日とは違うで魔道具屋に向かった。
大通りから路地裏を通っているとガラの悪い3人組が近づいて道を塞いできた。
「にいちゃんよ~。金貸してくれ」
「そこでよ。暴漢にあって金取られた。だ~か~ら金してくれ」
「暴漢にあった可哀想な俺達に貸してくれ~。返すからよ~」
3人組は嫌な顔をしながら近づいて来た。
正直怖くない。この3人組の強さはわからないが、剣熊に比べれば弱い。なので当然の応対をする。
「断る。そこをどけ」
怒り出す3人組。
「あぁ~。生意気だぞ。俺達を誰だと思ってるんだ」
「だまって金を置いてけ」
俺の視線が啖呵をきっている2人を見てると、もう1人の人間が持ってた剣でいきなり切りかかってきた。
そいつの動きはエイラ少佐が監視していた。
⦅ロキ二等兵。右の馬鹿が動いたぞ⦆
⦅了解⦆
返事と共に相手の攻撃を避け左足で顔面を蹴り上げる。蹴りで相手の顎を砕く。それを呆然と見ていた仲間は声を上げる。
「あっ、あ~てめえ。ふざ――――」
最後まで話しを聞く必要ないので喉を潰す感じで殴る。
喉を潰された相手はしぶとく倒れずにいる。
「ふ、ふふがるけけ」
耳障りなので<正拳突き>スキルで鳩尾を殴る。吹き飛び、もう1人のチンピラに当たる。ぶつかった痛みで動けずにいるので顎を蹴り上げる。
鳩尾に<正拳突き>スキルをくらったチンピラを見ると白目を向いて口から泡を噴いてた。
3人のチンピラを上から見下ろした。
「正当防衛だ。じゃあな」
⦅顎と喉を潰したから、うまく喋れないだろう。エイラ少佐、路地裏は治安が悪いから進むのをやめましょう⦆
⦅人間相手の良いデータが録れた。今後も路地裏を活用するぞ⦆
やっぱ駄目だったか、諦めて返事をする。
⦅はぁ~はい⦆
路地裏を歩きながら考える、先ほどのチンピラ達は弱かった。動きにキレがなかった、只剣を振ってるだけだ。levelが低いのか俺の種族levelは4だ。それよりも低いのかと考えているとエイラ少佐から話し掛けてきた。
⦅levelが全てではない。身体能力の差もある。そして一番大きいのはロキ二等兵のスキルの多さだ⦆
⦅スキルですか?⦆
⦅そうだ。スキルの獲得は難しい、多くの物は職業を選択した時に獲得ができる。ロキ二等兵の場合以上だ。特に<闘気>と<闘技>スキルは相当な熟練者が獲得できるものだ⦆
⦅へぇ~。俺は天才かな⦆
⦅ロキ二等兵。調子に乗るな、先のあれはゴミだ。廃棄処分だ⦆
エイラ少佐と冗談話しを交えながら魔道具屋に向かった。
路地裏を抜けて昨日の夜に通った大通りに来た。大通りは昨日の夜と違って人が多く歩いてた。またお店の前で店員が宣伝をしていた。人混みの中に入り群衆の一部となって目的地を目指した。
横目でお店を見ると、雑貨屋、武器屋、防具屋、本屋、肉屋、青果店、奴隷店等色んな店が見えた。奴隷店を見たときは顔を曇らせった。店の前で鎖に繋がって並ばされていた。皆、顔に表情は暗く目に光がなかった。身体は汚れ、服もずっと洗っていないので黄色くなり汚れていた。女性が多く年齢も子供から年寄りまでいた。
「奴隷か」
小声で呟くと。
⦅ロキ二等兵。全ては救えない⦆
「えっ」
⦅可哀想だから、弱いから等同情したとしても、只の自己満足だ⦆
⦅厳しいですね⦆
⦅ロキ二等兵。今はできることだけをやれ⦆
⦅本当に厳しい⦆
⦅それに見た目で騙されるな。奴隷の多くは犯罪者だ⦆
⦅子供もいますが⦆
視線を向けた子供は5~6歳ぐらいに見える。
⦅あれは小人族だ⦆
⦅小人族。ちっちゃ⦆
⦅今はできることをやれ⦆
エイラ少佐に心配されて気持ちが軽くなった。そして自然に口からでた。
⦅ありがとうございますエイラ少佐⦆
⦅うぅん。なに礼だと。調子が狂う⦆
歩き続けていると、ナタリー魔道具屋が見えた。昨日は暗く良く見えなかったが、他の店より古く歴史を感じる建物に見えた。
お店のドアを開けるとリンリンと鈴の音が響いた。商品を整理していた店主から声が聞こえた。
「いらっしゃいま......あら、昨日のお待ちしておりました」
昨日とは違い笑顔で応えてくれた。
「昨日は閉店時ですいません」
「昨日は用事がありましたので、こちらこそすいません」
お互いに笑いながら許しをえた。
「今日はどのような商品ご希望ですか」
「えーーと。少しお店の中を見てもいいですか」
「はい。大丈夫ですよ。御用がありましたらお声かけて下さい」
店主は会釈して商品の整理に戻った。
お店の中は宝石店のようにガラスケースらしきものに魔道具が入っていた。お店の中を歩いて魔道具を見て、日本にあった冷蔵庫、時計、掃除機、ゴミ箱?、棚?、テーブル?、椅子?、テント、ランタン、おおきい鍋等種類豊富にあった。棚?は魔道具なのかと不思議に思うものも有った。テントやランタンはキャンプで使うのでイメージがしやすい。
気になったのは値段だ。一番安いので大金貨20枚だゼニーにすれば2000万だ。
そしてチートアイテムの一つマジックバックだ。見た目が普通のカバンや金属で出来てるカバンも有った。入る容量も色々で手提げバッグぐらいから、トラック一台分の容量が有った。当然値段も高い、手提げバッグの容量で大金貨10枚だ。
高いよ。魔道具高すぎる。
⦅エイラ少佐、魔道具はこんなに高いんですか?⦆
⦅同じだな。ダンジョンでしか手に入らない魔道具は高い⦆
ダンジョンでしか手に入らないと言葉に疑問を感じた。
⦅ダンジョン以外にも魔道具が手に入るんですか?⦆
⦅技術があれば魔道具は作成できる⦆
⦅あーー当たり前か作ればいいのか、でもなんでダンジョンに潜るんだ⦆
⦅ダンジョンから出る魔道具には付属効果や稀に神の祝福が与えられるからだ⦆
⦅付属効果か......テーブルに?....。⦆
エイラ少佐と会話をしていると、店主から声が聞こえた。
「どうかしましたか?」
「えっ」
「いえずっと商品を見ていましたので」
どうやらエイラ少佐と会話をしている時視線がおかしかったようだ。
「ね、値段が高いな~と思ったので」
首を傾ける。
「失礼ですが、魔道具を見るのは初めてですか」
「はい。初めてみました」
店主が少し自慢家に話す。
「店の商品は全てダンジョン産になります。ダンジョンの付属効果が付いてますので高いです」
「へぇ~全部ダンジョン産か」
空気を読んで同意する。
更に自慢家に話す店主。
「ナタリー魔道具屋は全て先祖代々、自らダンジョンで手に入れた商品を置いてあります」
「えっ、店主も冒険者なんですか」
「もちろん現役です」
胸を上げて自慢する。
「お客様も冒険者ですよね」
「はい。冒険者ランクはGランクです。様づけとか敬語はいいのでロキと呼んでください」
店主は少し考えて答える。
「......それじゃお言葉に甘えてロキよろしくね。私はナタリーで冒険者ランクはBランクだよ」
「ナタリーさんはBランクですか凄いです」
「ありがとう。だいぶ話しが逸れたね。魔道具の付属効果のことだね。まぁ、色々あるんだけど、例えばこの椅子の付属効果は座るとHPとMPの回復だよ。それと姿勢を整える効果もある」
「回復? 姿勢?」
椅子に座る効果を聞いて驚く。
「ダンジョン産の付属効果は2種類以上ある。専門の職人が作った魔道具の効果は1個までが限界だ。だからダンジョン産の魔道具は高い」
ダンジョン産の価値を知って驚く。
「高い理由がわかりました。ありがとうございます」
「いいよ。いいよ。素直な子は好きだよ」
ナタリーの印象がだいぶ変わった、今は頼りになる姉御に見える。
店内を見渡して一番興味がある商品がなかった。
「ナタリーさん魔法書は置いてないんですか?」
「魔法書?」
ロキは身を乗り出して答える。
「火の魔法書、水の魔法書、風の魔法書......まてよ、光の魔法書もいいな」
ナタリーが慌てて止める。
「ちょっとちょっと待って、火の魔法書等の四代属性の魔法書は魔法ギルドが独占してるから手に入らないよ。光の魔法書も協会が管理してるか手に入らないよ」
「あっ、忘れてました。魔法ギルドが独占してるの。光の魔法書も協会が管理か......」
肩を落として落ち込んでいると。
「魔法書が欲しいなら魔法ギルドで買うしかないね」
「いくらですか?」
「火の魔法書level1で白金貨20枚」
金額を聞いて驚く。
「高い。魔道具より高い」
「まぁ、高いね。そんなに欲しいなら自分で手に入れるしかないね」
「ナタリーさんは魔法書手に入れたことないんですか」
「あるよ。使わず魔法ギルドに売っちまう。高く売れるしね。それに適正がなければ魔法は使えないし、魔法装備で補えるからね」
「魔法装備ですか?」
「魔法装備は適正無しでも使えるからね。便利だよ」
店内を見渡して答える。
「魔法装備は置いてないんですか」
「ここは魔道具が専門だからね。興味があるんなら武器屋か防具屋に行ってみなよ」
「武器屋か後で行ってみます。後で魔導書も見に行ってみます」
ナタリーが困ったように答える。
「武器屋は大丈夫だけど、魔法ギルドは厳しいかな、あそこは貴族か一部の金持ちしか相手にしないよ、行ったとしても嫌な気分になるだけだよ」
「ナタリーさん今日は色々ありがとうございます」
お辞儀をする。
「いいよ。こっちも楽しかったしまた来ておくれ」
「お金ができたら来ます」
出入口の方に向いて歩き出す。
ナタリーが笑顔で応対する。
「またのご来店をお待ちしております」
ナタリー魔道具屋を出たロキは歩き出す。
⦅魔法書は残念だけどしょうがない。それにしても面白いことを色々と聞いて勉強になった⦆
⦅ロキ二等兵。どこに向かってるんだ⦆
⦅武器屋です。予備の武器が必要だと思うので⦆
⦅本音は⦆
⦅魔法武器を見に⦆




