王、その始まり
…それは、遠い昔の少年の嘆きだった。
ねぇ、何で…いなくなったの?
何で、ぼくは一人になったの?
何で
何で、
何で
〈あいつらが、ヒトがぼくから大切な人をうばったんだ〉
ヒト……人族が、ぜんぶうばった。
〈うばわれたんだ。ヒトに〉
ヒト、ヒト、ヒト、ヒト。
そいつらがいたから、ぼくは一人になった。
そいつらがいなければこんなことにはならなかった。
いらない、いらない、いらない。
父さまも母さまも姉さまもヒトにころされた。ぼくたちは悪いことなんてしてないのに。
姉さまは父さまや母さまより前にころされた。森でまものたちとおはなしするのが姉さまは大好きで、あの日も近くの森まであそびにいってた。
何もわるいことなんかしてないのに。おはなししてただけなのに。
父さまと母さまはヒトとなかよくなるためにヒトの国にいっただけなのに。
なんでころされたの?
みんながなかよくくらせるんだ、っていってたのに。
〈なかよくなんて、うそだった。ヒトはぼくたちとなかよくする気なんてなかった〉
ヒトはぼくたちとなかよくなる気なんてなかった。ぼくたちはヒトにとってわるいものでしかなかった。ヒトとぼくたちはちがういきもので、ヒトはぼくたちをこわがった。
おぼえてるんだ。父さまたちにないしょでヒトのあそんでるばしょにいったときのこと。
ぼくの目はおかしいって、気味がわるいって、みんないつのまにかいなくなってた。あそびたかっただけなのに。
わるいことなんかしてないのに、ヒトはぼくらをきらっている。
なにもしてなくても、ヒトはぼくらをこわがっている。
ヒトとぼくらはちがう。
ヒトはこんな目の色をしてない。つばさだってない。
でも、ぼくらだってみんなちがうところがたくさんあって、それでもなかよくしてて、ヒトみたいに過ごしてて、たのしくて。
〈ぼくらだって、ヒトと同じように過ごしてるのに……なんで、〉
なんで、なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで、
ぼくらは……ヒトにいろんなモノをこわされるの?
ぼくらは、ヒトにきらわれるの?…ヒトに、こわがられるの?
なんで、こんなセカイにぼくらはいきてるの?
泣いてるみんなをぼくはしってる。
村がなくなっちゃったって、炎がごうごう燃えてたって。
たべものだって足りなくて、みんなおなかがすいてるって。
かぞくがかえってこないって。
ぜんぶぜんぶ、ヒトがかんけいしてるって。
ぼくは、しってる。
〈みんながかなしいって泣いてる。くるしんでる〉
それなら、こんなセカイはいらないよ。
みんながわらって、しあわせだっていってくれなきゃ、そんなのセカイじゃない。
ぼくらだけがふこうだなんて、ぜったいに受け入れない。
かなしいこともくるしいことも、ぜんぶかえしてやる。
しあわせをうばった、人族に。
煌々と輝く瞳の中燃えていた感情を推し量ることなんて、きっと誰にもできない。
これはそんな、悲しい悲しい王様の話。
すべてを憎んだ王様は、確かにその日ここで生まれた。




