日々は過ぎて
あの手紙をもらってから三年、私は父との文通を続けていた。私は魔術を使えないが、代わりに家の鷹を飛ばして貰った。一緒に育ってきたといっても過言ではない鷹には私の魔力が分かるため、私が意図的に気づかれないようにしない限りは遠く離れていようと居場所が分かるのだ。
そのお陰で今もこうして文通をすることができている。
予感は日に日に強くなるばかりで、正直怖い。
今日が終わって、明日が来る。ただそれだけのことが当たり前ではないのだと、なんとなく分かる。
不安で、仕方がないのだ。
これまでも嫌な予感ばかりが当たっていたし、人に伝えるのは難しいがただ本能的に感じ取っているのかもしれない。
今までに起きた出来事が頭の中に浮かんで、消えて…それをただ繰り返して、自分は何もできない。
結局私は強くなんてない。いつまでも無力で、圧倒的な流れの前に跪くしかないのだ。あの日もまたそれと同じ。
変えたくて、どうしても変えたくて足掻いてもどうにもならない何かが目の前にある。
けれど、無駄だとしても私は足掻くことを止めたくない。予定調和であってそうでない世界の片隅で、ずっとずっと望んだものを手に入れようと叫んでいるのだ。
「私は、絶対…」
弟子を、守る。
最愛の弟子を、世界を背負うその心を。
そのためなら、この命は惜しくない。それは、私の中にある「生きたい」という願いと反している。どちらも心から願っていることのはずなのに、それらが重なることはない。
私ができることがあるか分からなくとも…それでも私は守りたいのだ。
__覚悟なんてとうにできている、迷う必要はない。
今の私に喪うことより怖いことなどない。あの苦しみも悲しみも、今までの後悔も、全ての始まりはそこからだったのだから。
そこから、私はきっと変わったのだろうから。
大切な人を喪う悲しみを、私は知っている。
目の前で灯火が消える瞬間を、私は知っている。
無力に嘆く人の気持ちを、私は知っている。
この手で掴めるものの儚さを、私は知っている。
それらは全て私自身だ。
だからこそ、決して譲れない。
ラピスの心がバラバラになってしまわないように、宿命を独りで背負うことのないように。
最期まで足掻き続けたその先に、何かを遺せたなら…。
そう、願わずにはいられなかった。
飛び立った鷹が蒼い空へ羽ばたく。小さな筒には、大きな想い。
一通の手紙を、未来へ託して。




