私の生きる理由に
強い意志の籠った瞳が、私を見つめている。
あの時の私もこんな瞳をしていたのだろうか。
絶望は力に、後悔は強迫観念に。
そうして失うことを恐れながらも進んで来たのは私だ。
果てに待っていたのがこんなことだとも知らず、こんな苦痛だとも知らずに。
目の前にいるこの子も、きっと抱える想いはあの時の私と同じなのかもしれない。
でもこのままではこの子は押し潰されてしまう。
自身が背負う、大き過ぎるものに。
ここで私が申し出を断ったとしても、きっと自分で進もうとするのだろう。
人に、頼ることを知らず。ただ突き進んで。
「私を師として、君は後悔しないのか?…私は、言うなれば失敗した人間だ。本当に守るべきものを見失い、今になるまで気づきもしなかった」
「“行動を起こす前から後悔することを考えるな”…私のおじいさまのことばです」
「だから今の私に正直でいたいんです。…もしこうかいしたとしても、それはのりこえなきゃいけないことだと思うから」
とても純粋な答えが、ただ眩しい。
確かな決意ほど強いものはないのかもしれない。
けれどそれは、言うなれば諸刃の剣だ。
この子の答えの尊さを私はきっと知っている。
この子の危うさを私は知っている。
それならば、私の選択肢はただ一つ。
「君の名前は?」
「…ラピス。ラピス・シェイリル・トナ・レイン」
「ラピス、か」
「あの、アリィナさん」
「師匠だ。今から私は、君の師だ。行くぞ」
ただこの子が迷わないように、もし迷ったとしても道標としてこの子を支えてやるだけしか、私にはできない。
直感的にそう思った。
だからこの子を、ラピスを私の生きる理由にさせてくれ。
故郷という、私の世界に対する償いだとは思わない。償いはできないと分かっている。
しかし目の前にいるラピスを放っておいてはいけない気がするんだ。
どこまでも、暗い底へ沈んでしまいそうで。
「待ってください、師匠!」
だからお前も見守っていてくれ。
私の歩むこの道を、しっかりと。
いつか向かう…そのときまで。
___道標と姫の道が交わった。
時計の針は刻一刻と時を蝕んでいき、五度目の十二時を指すそのとき、ひとつの終焉を告げるだろう。
「ああ、何故…何故こんなにも無力なのかのう。欠片よ、答えておくれ」
ひとつの予言が与えられたその場所で、老婆は光り輝くその欠片に問う。
答えはない。そう分かっていても、問わずにはいられなかった。
姫に、世界は残酷だ。




