愛弟子へ
この手紙をお前が読んでいるということは、私はもうこの世にいないのだろう。これは、私がお前と旅をし始めてすぐ、もしもの時のために父上に送り預けていた物だ。
いつかお前が来たら、手紙を渡して欲しいと。
本当は縁起が悪いからこんな事したくはなかったんだが、私は嫌な予感ほどよく当たるからな。
昔よりも強くなったか?成長したお前の姿を傍で見てやれないのが残念でならない。そして、お前を支えることが出来ない事が悔しい。
私は母上のルーツを探すために旅をしていたと、お前に話したよな。私はお前と出会う前に、母上はフェルマータの民の血を持つ者である事を知ったんだ。
思えば昔から、私は周りと比べて異常だった。ありえない早さで刀を扱えるようになり、周りの大人達は私を「天賦の才の塊」と語る様になったが、その反面どこか一線を引かれていた。それに影では「化け物」と、私は呼ばれていた。
今考えてみれば、フェルマータという民の特異性による物だが当時はそんなことも知らなかったからな。きっと父上や道場の皆がいなければ、私は歪んでしまっていたと思うんだ。お前と出会う事だってなかったかもしれない。
旅をする前は何をしていたのか、お前に聞かれたことがあったな。あの時はまだ、自分の中で決着がついていなかったから話さなかったが、決着をつけた今だから言える。
私は、皇国に仕える将軍だった。
ある時私は皇帝を玉座から引きずり下ろそうと画策する者の存在を知り、その者の策に嵌まってしまった。
忠誠を誓った王は私を信じてはくれなかった。その後だ、大反乱が起きたのは。あれ程の事が起きたというのに、私は国には戻らなかった。裏切られた様な感覚は、私の中に確かな憎しみを生み出していたのだろう。
私は国を、私が救えたであろう人々を、見捨てた。
国民に罪はない。絶対王政であった当時の皇国の判断は、誰にも覆す事が出来なかった。
気づいたときには、遅すぎたんだ。
お前は今、大切な物があるか?
それにお前は気づいているか?
決めるのはお前自身、行動するのもお前自身。
その時、最善だと信じた道を行け。だが、決して目を背けるな。
お前が抱えてるものが大きすぎることは分かっている。何度も迷って、しっかりと見つめてみろ。
そうすればきっと、お前は私の様にはならない。
道を違えた私を、馬鹿な私を師匠にしてくれてありがとう。
慕ってくれて、ありがとう。
お前が生きている。
それだけで私の人生は無駄な物ではなかったと断言出来る。
この命を落としたとしても、ずっと愛している。見守っている。
最愛の弟子に、仲間が出来ることを願う。
支え、支えられる。そんな仲間が。
お前の師、アリィナ




