26話ー何が正で何が負か
おまたせしました!
ギイィー‥
両開きの扉が重厚な音を立てて開いた。
漏れ出てきた空気はどす黒く、どこか妖しさを秘めている。
「……」
前を見据え、その瞳に確固たる意志を宿すラピス。
ふよふよと浮いていたシュリはラピスの肩に乗りぶるりと身を震わせた。
内部は暗闇で満ちていて、何がどこにあるのか全く把握出来ない。全身の感覚を研ぎ澄ませ、それでも前へ進む。
…恐怖を感じていない訳ではない。
それを抑え付けているだけの話だ。
今ラピスがしようとしている事は、歪みを正す行為であると同時に生きる者すべてを平等に不幸にする行為だ。
「遠ざけられた“負”をそれぞれの下へ返す」
口に出してみると、その恐ろしさが改めて精神を蝕む。
“そう…キミは多くのニンゲンを不幸にする”
声が反響し、まるで呪うように囁いた。
「知ってる」
“いいや、キミはまるで分かってない”
「分かってる」
“嘘つき”
「………て」
“世界の為に、多くのニンゲンを不幸にするのは正しいのかなぁ?”
「黙ってっ!!」
『ラピス!』
「…シュリ?」
『ぼうっとしてちゃ駄目。…呑まれるよ』
戸惑いながらもラピスはこくりと頷いた。
(さっきのは、何…)
気のせいだったのかラピスには分からなかった。
ようやく暗闇に目が慣れてきたようで、それに伴い恐怖が和らいできた。
コツコツとラピスのブーツが床を鳴らす。音の反響の仕方が変わらないことから、まだまだ奥があると確信した。
辺りに目を凝らしてみてもただ等間隔に柱が立っているのが見えるだけ。部屋と呼べる様なものも見つからない。
「__っ!」
『ラピス!』
不意に感じた殺気。
本能でそれを避けるも頬を一筋の血が伝う。
“流石だね!精霊の姫”
楽しそうに、無邪気に笑ったのは幼い少年。
少年は負であるが故に正を知らない。また善悪の境界を知らない。
___無邪気な子供とは、時に残酷なものだ。
「あなたが…此処に封じられてきたモノ?」
“そうっ!初めまして、ボクを消しに来たおねーさん”
少年が手を翳すと暗黒を映した弾丸がラピスを襲う。
しかし、その弾丸たちはラピスを貫く事なく軌道を変えた。
“あれ~?おっかしいなぁ”
『…物騒な挨拶ね、ホント』
普段からは考えられない程の威圧感を纏ったシュリが少年を睨み付けた。
いつもの赤毛は紅蓮に染まり、暗闇の中で輝いている。
少年はそんなシュリを見て口を尖らせた。
“キミなんてお呼びじゃないのに…”
『…全ての正から生まれたあたしと、全ての負から生まれたあんた。対だからこそ、堕ちてしまったあんたを元に戻すのはあたしの役目になってる』
“変わってないね、シュリ”
『名前を失くしてからあんたは歪んだわ、より一層ね』




