21話ーこのひとときを心に刻んで
お待たせしました!
「そう…」
ネライダの言葉に込められた意味。
それを知っていて尚、ラピスはただ肯定した。
きっと、昔からあった大切なモノ。
そして、いつも気がつくと見失っていたモノ。
___その全てが、今のラピスの目には映っていた。
その全てのために自分が出来ること。
世界の為とは付属品でしかない。
(皆が生きてく、この世界の柱になる。…傍にいなくても、見守ることはきっと出来るから)
ラピスには、仲間達のいない世界を愛することは出来ない。
生きる者に共通して存在している感情が、そうさせてしまう。
希望と絶望、正義と悪、愛と憎しみ。
表裏一体となった感情の羅列は、生者と死者を狂わせる。
隠された願いは刃となって周囲を襲う。
諸刃の剣は自身をも傷付ける。
どう足掻いても、その先に待つのは死。
(私が__姫が柱になる。それは決められていた事。…鐘がなったら私は、私が私でいられる最後の時間のなかで“断罪者”になる)
世界を揺るがす存在の排除こそが、姫に科された使命だ。
『神様は、酷いよ』
「アネモ?」
アネモは拳を力強く握り締めている。
上げられた顔は、涙に濡れていた。
『っ神様は、酷すぎるよ!ラピスは私達の唯一なんだよ!?…何で、ラピスが』
「アネモ。…私は貴方達の唯一だよ。でも、世界の唯一でもある」
『…だって、だって』
アネモの涙を、ラピスはそっと拭った。
「ありがとう、私の為に涙を流してくれて。……ほら、早く本題に戻ろう?まだ、私の時間は終わってないもの」
ラピスは自分の感情を抑えるように、力なく笑った。
そう、まだ鐘は鳴っていない。
鐘の鳴る時が近づいているという、あくまでも予測に過ぎない。
いつ鳴るのかは誰にも分からないのだ。
ラピスの意思を汲み取ってか否か、ピュールは口を開いた。
『…そうだな。今は、術への対策を練ることが先だからな』
「うん。…きっと、各地に散らばる民についている精霊も封じられる」
『ああ。魔族はもう、ラピスの……姫の存在に気づいているからな』
難しい顔をして、ピュールは考え込む。
姫の存在に気づいているからこそ、こんな行動を起こしたのだろう。
殺したと思っていた存在が生きていることに焦りを感じている証拠だ。
『此処から加護を与えるっていう手があるぞ』
ガイアは自信たっぷりに告げた。睡魔に負けてしまったネライダをバシバシと叩きながら。
ドゴッ
『…またか』
『ガイアー、壊しちゃ駄目だよ!』
「……ネライダ、大丈夫?」
大きな音を立て、ローテーブルの端がネライダと共に床に沈んだ。
ガイアは然程気にせず椅子に座る。
『痛いなー。…もうちょっと優しく起こしてくれてもいいんじゃない?ガイア』
『こうでもしないと起きないだろ、お前は』
『あったりー』
ネライダはむくりと起き上がり、何事もなかったかのように立ち上がった。
『加護を此処から贈るには、ちょっと準備しなきゃねー』
「どのくらい掛かるの?」
『すぐ終わるよ』




