17話ーティラードとの邂逅
山の中腹。
ひっそり閑としたその場所に、里はあった。
「…今、里長の許へ御連れ致します」
ラピス達はその言葉に頷き、民の後ろをついて行く。
「よくお越し下さった、姫様方」
「初めまして。ティラードの民がひとつ、アオバの里長」
恭しく礼をする里長に対し、ラピスは凛とした表情で応じる。
この世で最も尊く、唯一無二の存在に相応しい表情であった。
そして、ラピスは問いかける。
「この里の情報を伝達している精霊は、何処にいるの?…里に、何が起きたの」
「魔族の件は、文の通りでございます。……精霊様の事は」
里長が近くに立っていた民に声をかけると、民は無言であるモノを運んできた。
「石……?中から、精霊の気配が」
「その通りでございます、姫様。事件の前日から、精霊様がこの中に…」
「何、で」
驚きを隠せないラピスに、里長は首を左右に振った。
「…分からないのです、儂らにも」
目を伏せ、眉を下げて申し訳なさそうに里長は言う。
ラピスはシュリに目配せをした。
シュリは石にふわふわと近寄り、目を閉じると石に手を乗せた。
眉間に皺を寄せ、難しそうに顔を歪ませる。
そしてぽつり、と呟いた。
『………!そう……分かった。任せて』
「シュリ。…教えて」
ラピスはシュリを促した。
シュリは力強く頷き、告げる。
精霊は魔術によって石に閉じ込められ、自力で出られないという事。
助け出す為には、姫のチカラが必要だという事。
そして精霊は衰弱しており、消滅の危険があるという事。
「…シュリ。私は、何をすればいいの」
『神言だよ』
「ラグ・スペル…?」
ラピスに思い当たる節はない。
(そんな言葉が、あるんだ)
『そう。神言は古の言葉…、そして神が使った原初の言葉でもある』
「原初の、言葉。…でも私、聞いた事も無い」
不安そうに顔を俯かせたラピスに、シュリは笑い掛けた。
『大丈夫。知ってる筈だよ?…思い出して、昔の事』
「昔……」
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【回れ 廻れ 光の礫 世界に加護は齎されん】
『おかあさま。いま、なんていったの?』
『ふふっ、そうね。あなたにはまだ教えてなかったわね……母様が今言ったのは、神様の言葉よ』
『かみさまの、ことば?』
『そう、神様が使った言葉。…今は使われなくなってしまったけれど』
『なんで?なんでつかわれなくなったの?』
『…神様が、消えてしまったからかしら。母様も、よくは知らないけれど。今度ラピスにも教えてあげるわ』
『ヴィオ、ラピス』
『レン、お帰りなさい』
『おとうさまっ!おかえり!!』
『ただいま、ラピス』
『さ、ご飯にしましょうか』
『ああ』
『うんっ、おなかすいた!』
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『……ス。………ラピスっ!』
「シュリ、何でもないよ。今思い出したから。……あの言葉が、神言」
シュリの声に、ラピスはそう返す。
(お母様、お父様……見守っていてください)




