15話ー現在
魔族によって一人の少女が殺され、その兄である青年が仇を討ったという内容の手紙を読み終え、ギルドマスター達は表情を曇らせた。
しかしカラギアとブランシェだけは冷静なままだった。
魔族の動きが活発化している意味を、二人は知っている……いや、この場に居る者の中では三人というのが正しいだろう。
民である三人は、紛れも無く当事者なのだから。
民とは亡き神の遺志を受け継ぐ者たちであり、人族の敵にも、魔族の敵にもまわる可能性を持つ者でもある。
人族は民の存在を「神話の中の者」としか見なくなり、あくまでも夢物語という認識をしている。
その為、民を認知すらしていない。
ここに居る三人の様に人族の中で生活している民が存在しているのは、それが大きな要因とも言えるだろう。
しかし魔族は違う。
民の存在を「自分たちを脅かす敵」だと認識している。
それ故に魔族は“四族狩り”と称して四つの民を見つけると、民たちの命を奪う行為を繰り返してきた。
今や民の数は減少し、人里離れた秘境に隠れ住む者がほとんどとなってしまった。
「ラピス」
「マス、ター?」
ブランシェはラピスの手をふわりと包んだ。
(血が……)
先程まで強く握り締めていたのであろうラピスの手から、血が流れていた。
意識を集中させ、手に力を集める。
すると、血が流れていたのが嘘のように傷が塞がっていた。
ラピスはブランシェに目配せし、感覚を確かめるように手を開いて閉じてを数回繰り返す。
(また…また民が殺された。私は、皆を導く存在のはずなのに)
会った事もない民に対してこんな情が浮かんでくるのは、ある意味で運命共同体と言えるからなのだろうか?
そんな疑問は、いつからあったのかも思い出せないほどに心の奥深くに…。
自分の終わりは知っている。
いつ終わるのかは分からないが、終わり方は決まっている。
問題なのは其処に至るまでの過程だ。
その過程で、どれだけの成果を残せるかが鍵となる。
___これからの未来の為に、私が作り上げなきゃいけないのは土台。
(でもそのためには、民のチカラが必要。……一人じゃ、宿命は果たせない)
顔を上げて皇帝タカオミを見据え、ラピスは静寂を破った。
「…アオバの里の場所は、何処」
それは、ラピスの意志が音となって表れた瞬間だった。




