12話ーミヤビの父
___翌日、謁見の間。
玉座に座る黒髪黒目の男性が一人。垂れ目の所為もあってか、醸し出す雰囲気は柔らかい。
相対するは五大ギルドの精鋭一同。
「よくぞ参った、西の精鋭達」
「依頼を受けた以上、誠心誠意を尽くし協力致します」
一歩前へ踏み出し、カラギアは恭しく頭を垂れながら答える。
「期待しておるぞ。カラギアよ、私の娘がそなた等一行に世話になったと伺ったが……それは真か?」
「はっ、皇帝陛下」
視線をラピスに向け、カラギアは「一歩前へ出るように」と無言で告げる。
(…私、ただ道に迷ってただけなのに)
釈然としない様子のラピスは戸惑いつつも前に出た。
「おお、そなたが…」
「私は…道に迷っただけ。感謝されるようなことを、した覚えはない」
「陛下に対しその言動は無礼であるぞ!!」
皇帝の重臣である初老の男性がラピスを睨み、怒鳴る。
対する顔色ひとつ変えない。
というのも
(……男の人、怖い…)
という考えの下、フリーズしてしまっているからなのだが…。
それを見かねたブランシェはラピスの前に立ち、口を開いた。
「無礼を承知で申し上げます。この者は他人に接することに慣れておりません」
「そのような者を連れてくる事自体が間違っておるのだ!」
「ソウシ、口を慎め。…口調については特に気にしておらん」
「陛下!!」
「口を慎めと言ったのが聞こえておらんのか?……まぁよい。ラピスと言ったか?そなたには滞在中だけでも娘と仲良くしてやって欲しいのだが」
その言葉は「皇帝」としてではなく「ミヤビの父」としての本心だった。
(親……か)
ラピスの両親はもういない。
父方の祖父母は生きているかも知れないが、ラピスは一度も会ったことが無かった。
…普通なら孫の顔見せをするのがここの常識だ。
それをしなかったのはきっと、魔族に見つかる危険を避ける為だったのだろう、とラピスは考えている。
ラピスは、皇帝でありミヤビの父___タカオミをじっと見つめた。
ミヤビは幼い、しかし皇女という立場に縛られている。
行動を制限されている事、それは好奇心旺盛な子供にとって毒なのだろう。
「それだけだったら……頼まれなくてもそうしてる。身分に固執する、ことは……私の主義じゃない」
「……娘の事、頼んだぞ」
タカオミは安堵の表情を浮かべると、たった一言そう言った。




