7話ー道中
草原を走る影。
獲物は鋭い牙を持ち、蛇の様な体からは体毛に覆われた四つの足が伸びている。
異形の魔物は、草原を駆ける。
本能で、自分に勝ち目が無いことを悟っていた。
追いかける影は小さい。
だが、確かな殺気を魔物に向けていた。
キラリ、と魔物の視界に入ってきた光。
ギシャアアアァッ
魔物の断末魔が、広い草原に響く。
事切れた死骸に近寄っていくのは、蒼銀の髪を持つ少女。
ニヤリ、と笑うその姿は、妖しくも美しい。
「あー、ラピスにまた負けちまった」
「当然。…私、負けないもん」
ラピスは駆け寄ってきた少年___カイルに微笑む。
美しい、の一言に尽きる笑顔なのだろうが、血に塗れた死骸が背後にある所為で、恐ろしい。
手早く討伐部位を剥ぎ取るラピス。
カイルは慣れているので特に気にしないが、後から駆け寄ってきた面面はひくり、と頬を引き攣らせる。
それもそのはず、ラピスは嬉々とした表情で部位を剥ぎ取っているのだから。
その反応は正しい、ただカイルが慣れているのがおかしいだけだ。
「…おい、いつもこんななのか?」
「?それがどうした」
完全に感覚が麻痺している、と黒曜のメンバー以外の者は思った。
そんな周りの様子を見て、カイルは苦笑する。
「まぁ、始めは驚いたけどな……。いや、慣れって恐ろしい」
気にならなくなったのは何時ごろからだったか、とカイルは考えるが、思い出せないようだった。
意外とカイルは順応性が高いのかもしれない。
今は五大ギルドの精鋭たちがカナン皇国へと向かっている最中だ。
船のある港を目指し、草原を進んでいる。
大陸内であれば基本は馬車で、別大陸に行く場合は転移陣か船を移動手段として使うため、帝都から皇国までは丸三日かかる。
無論、途中で魔物に襲われることもあり、その度にメンバー達は魔物を狩る。
この行事は年に一回、魔物が活発に活動する夏に行われている。
定期的に狩っていかないと魔物の個体数が増え、各地に被害を及ぼしてしまうからだ。
その為、道中で発見した魔物をひたすら狩っていく。
「獲物は早い者勝ち」と決まっているので、各ギルドのマスター以外は馬車に残らず魔物を狩る。
「クソッ、やっぱり死神の嬢ちゃんか」
「見たか!私たちのエースの力!!」
「う…3000ギルを無駄にした」
「ガハハハ、10000ギルの儲けだ」
「よく懲りないな、お前ら」
…馬車に残ったマスター達が「誰が魔物を一番多く狩るか」という賭けが行われているのは余談だ。




