3話ー総本部へ
朝の活気に満ちた市場を、ラピスは歩いて行く。
(朝の空気は綺麗だから好き。…でも人が沢山いるのは嫌い)
今の季節は夏。
まだ朝だと言うのに、汗が伝う。
ラピスはそれがこの上なく不快だった。
すれ違う人々、活気づいた市場の熱気。
目的地に着いた頃にはクタクタだった。
「ただいまぁ…マスター」
覇気のない、らしくない声だと知りつつも、ラピスはそこまで気を回せるほど元気がなかった。
唐突に頭がクラクラし、よろめいてしまう。
「おい、平気か?」
そんなラピスの腕を咄嗟に掴み、カイルは顔を覗き込む。
「ん………もう平気。大丈夫」
「そうか?…にしてもラピス、疲れてんじゃねぇのか?」
「…平気」
ラピスの言葉はあながち嘘でもないようで、カイルが腕を放してもふらつくこともなかった。
「ラピス、本当に無理とかはしてない?」
「マスター、そんなに心配しなくても大丈夫だから…」
現れたブランシェは眉を顰めラピスに話しかけるが、ちょっと過保護な気がしてならない当の本人。
「それならいいけど……」
まだ何か言いたげなブランシェは口を噤むと、ギルドのメンバー達に呼びかける。
「みんな。これから総本部まで行って来るから、留守を頼んだわよっ!何かあったらすぐに念話すること。いいわね?」
「おうっ」 「分かりました!」 「いってらー」「もうそんな時期か…」
約三十分後、ブランシェ、ラピス、カイル、ロイ、ルイスの五人は総本部に着いた。
「…暑い」
「我慢しろ、ラピス。……気持ちは分かるが」
「説得力ねぇっつーの、カイル」
「ロイ、お前は黙れ。暑苦しい」
「…ルイス、それ遠回しに俺がうざいと言ってるんだな」
「何が悪い」
「こらこら、皆うるさいわよ。___沈められたいの?」
「「「「……………」」」」
「さ、静かになったところでグランドマスターの所に行きましょ」
殺気を放ったブランシェの言葉に、黙り込むことを決めた四人だった。
「おい、あのギルドって...」 「五大ギルドのひとつ“黒曜の旅団”だ...」
「マジかよ、あの黒曜が何でここに...」 「滅多に来ねぇのに...」
建物の中に入ると、ヒソヒソとした話し声が聞こえてくる。
それもそのはず。
五大ギルドが一つ“黒曜の旅団”は五大ギルドの中でもメンバーが少なく、二十人弱しかメンバーがいない。
マスターであるブランシェがその実力を認めた者しかメンバーになることが許されないからだ。
そのためメンバーの実力は折り紙つきで、五大ギルドの中でも一番強い。
また女性のマスターというのはとても少ないため、注目を浴びるギルドでもある。
ブランシェはヒソヒソと話すそれらを無視し、グランドマスターの部屋へと足を進めていく。
四人は黙ってブランシェに続いていく。




