初めての依頼
季節は秋。
肌寒くなってきた頃、ラピスは初めての依頼を受ける事となった。
今回の依頼は、魔物の討伐依頼。
ブランシェはラピス一人で依頼を受けさせる事に抵抗があった為、ラピスとカイルの二人で依頼を受ける事になった。
(…別に、気にしなくてもいいのに)
師と旅をしていた時には、魔物や動物を狩って生活をしていた。
だから、きっと一人でも大丈夫だとラピスは思っていた。
「おい、ラピス」
「何…?カイル」
そういう訳で、ラピスは機嫌が悪い。
拾われてから一ヶ月も狩りをしていない。
毎日ギルドのメンバーと打ち合い、漸く依頼を受けていいと言われたのに「一人で受けるのは危ない」という理由でカイルと共に依頼を受ける事になった。
(まるで、私が頼りないみたい…)
ただの魔物くらいだったら、自分にだって倒せる。
今まで、師と一緒にいた時がそうであったように。
「ほら、行くぞ」
「…分かってる」
ラピスの表情は変わらないものの、その声は少し拗ねているようで。
機嫌が悪い、という事はカイルにも分かった。
スタスタと歩き出すラピスだが…
「おい、そっちじゃないぞ」
「……」
方向音痴だった。
ラピスと師が二人旅をしていた時はそんなことは無かったが、それはひとえに師のお陰だった。
ラピスは頬を赤らめてカイルを見つめる。
「…方向、分からない」
「はぁ……」
あからさまにため息をつくカイルに、ラピスはムッ、とする。
カイルはそんなラピスを文句あるか、と視線を返す。
それからラピスの手を取ると歩き出す。
「……?」
「こうでもしてないと、お前絶対どこかに行きそうだからな。異論は認めない」
「……むぅ」
しぶしぶ、といった様子で小さく頷くラピス。
カイルはそんなラピスに満足そうに微笑んだ。
「ここが討伐する魔物がいる森だ。お前は常に俺の傍を離れるなよ?」
「何で」
「方向音痴は黙ってろ。ターゲットの魔物を見つけたら、まず俺が突っ込んでく。俺が魔物の気を引いてる間にお前が一撃食らわせろ。…一撃で沈められるよな?」
カイルは不敵に笑った。
「いいよ。…私の実力、カイルに見せてあげる」
ラピスは負けず嫌いだ。
「一撃で沈める」と言った以上、相手に容赦などしない。
久しぶりの狩りに、ラピスは気持ちが高揚する感覚を味わった。
森の中を進む二人。
遠くから、獣の唸り声らしきものが聞こえた。
耳を澄ませ、何度も確認しながら魔物の方へ歩を進めていく。
数メートル先に狼の様な魔物の姿を確認すると、二人は目配せをし合う。
魔物の大きさは、二人の体の2倍。
はたから見れば、無謀な事にしか見えないだろう。
「はああああっ!」
ガルルゥッ
カイルは魔物の前に飛び出し、双剣を振り下ろす。
が、魔物は本能でそれをかわしてしまう。
カイルは体のばねを使い、魔物の懐へ飛び込んだ。
『空間捻り!!』
小さな爆発が起き、体勢を崩す魔物。
その瞬間、蒼銀の影が動いた。
「〈三ノ段 轟〉!」
絶妙なタイミングのそれは、白い残像を残す。
___ドシンッ
砂埃を舞い上がらせ、絶命する魔物。
(すげぇ…)
カイルは本当に一撃で終わらせてしまったラピスを見つめていた。
当の本人は、息切れすらしていない。
「どう?」
「十分分かった、お前の実力は。…俺、このままじゃお前には勝てそうにねぇよ」
「簡単に負けたりはしない。…カイルも、ナイスサポート」
パチンッ
二人はハイタッチをして、お互いを認め合った。
=============
ギルドでは、ブランシェとロイが話していた。
「はぁ!?カイルとラピスだけでワーウルフの討伐依頼に行っただと!」
「もう、うるさいわね。大丈夫よ、あの二人なら」
「でも、なんだっていきなりAランクの依頼を…」
「二人はもっと強くなるわ。このギルドの主力になってくれるはずよ。…私の目は確かだもの」
この日から二年後、ラピスとカイルは名を上げる事となる。




