29話ーリィルの過去
「じゃあ、私の話をきいてくれる?」
しばらくしてラピスが泣き止むと、リィルはぽつり、ぽつりと話し出した。
私は昔は体が弱くて、ずっと部屋に篭りきりだったの。
生命力とも言える魔力を、私は少ししか持ってなかったから。
ああ、もちろん今は平気よ。・・・・体力はあまりないけれど、体は丈夫になってきたもの。
時々外に出ると、決まって近所の子たちにこういわれたわ。
____「気持ち悪い」って
その時の私は小さくて、痩せこけていたから、その子には異質に見えたのかもね。
性格も暗かったし、好んで人に関わろうともしなかった。
私、言われるたびに思ったの。
「なんでみんなとちがうのかな」って
いつも、いつも羨ましかった。外を走り回ったりできることが。
両親には、「大きくなったら、きっと走れるようになる」と言われたけど、私は諦めきっていたわ。
11才になっても良くはならなかったし、風邪になったらすぐに悪化する。
でもあるとき、有名なお医者様が帝都に来るって話を両親が聞いたの。
そのひとは私みたいな子供の治療の腕が有名だったの。
両親が必死に頼み込んで、お医者様は私のことを診てくれた。
でも、お医者様はこう言った。
___「この子を治療しても、治る可能性は10%にも満たないだろう。ここまで魔力が少ない子は今まで診たことがない」って
私、悲しかった。
今まで信じていたものが、崩れてくみたいだった。
でもね、ある人にいわれて気づいたの。
「可能性がないわけじゃないんだ。諦めるなよ」
たしかに“10%にも満たない”とは言われたけど、“可能性がない”とは言われてなんかない。
「可能性を勝ち取ってやる」って、そのとき決めたの。
私が治ったのは、それから4年後のことだった。
学園にいくことを決めたのは、治ってから。
私のことを治療してくれた人が亡くなったのを知ったのは、治って数ヶ月のときだった。
その人は魔の捕食者に襲われて、自らも魔物になってから殺されたの。
私は約束してたの「いつか恩返しをする」って。
・・・なのに、恩返しもできなくなった。
だから同じことが起こらないように、魔の捕食者の狩人になるって決めたの。
「これが、私のすべて」
清々しい声色でリィルは告げた。
ラピスは、迷っていた。
自分のことを言うべきか、言わざるべきか。
巻き込みたくなんてない。
けれど自分にすべて話してくれたリィルを、裏切るようなこともしたくない。
リィルは口を開いた。
「ラピスが言いたくないなら、私は待つよ。ラピスはラピスのタイミングで、教えてくれれば…私はそれでいい」
笑顔を向け、リィルは言う。
(私は、情けないな…)
ラピスは頷きながら、そう思った。




