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蒼銀の死神ーRapis Silver Jokerー  作者: 折鶴夏葵
1章 初めての学園生活
31/85

26話ー最初の喪失の記憶

7話の夢の続きです。

「な…んで、燃えてるの?」

『ラピスっ、あなたは隠れないと!!』


精霊__シュリは少女に慌てながらも声をかけた。

だが少女には、ラピスの瞳には、目の前の惨劇しか映されていなかった。

そして、気づいてしまった。

母のいる家の扉が、破壊されていることに。


ラピスは走る

シュリの言葉など耳に入らなかった

ただ、母のところへ 家へと走る

何も考えてなどいない

自分が‘どんな存在’であるかさえ、まだ知らなかった

それほどに 幼かった



「おかあさ、ま?」

「ラピ……ス」


家に駆け込んだラピスの前には、血まみれで倒れこんでいる母の姿。

母はラピスを見ると、痛みと悲しみに顔を歪め、ラピスの名を呼ぶ。


「おかっ…さま、どうして……?」


ラピスはよろよろと歩き、母の体に抱きついた。

その手は、小さく震えている。


「ごめ、ね、ラピス…。わた、し…あなたを置いて、逝かなきゃ、いけな、みたい」

「やだっ、やだよ!ひとりに、しないで……」

『ラピスっ、ヴィオレッタ!!…っ!』


シュリが叫びながらやって来た。

だがシュリはヴィオレッタの姿を目にすると、口元を押さえる。

血まみれのヴィオレッタには、右足がなく、その胸からはおびただしいほどの血が溢れている。

出血は止まるどころか、ドクドクと脈の音に合わせ、流れ出るばかり。

___もう、ヴィオレッタは助からない。

シュリは現実を目の当たりにし、立ち尽くすばかりだった。


「ラピス…あなたに、唄、を……教えた、よね」


ヴィオレッタの問いに、その顔を涙で濡らしたラピスはこくり、と頷く。


「あの、唄…の、『姫』は、あなた…なの……。私、あなたに…宿命、を……背負って、ほしくなくて…ずっと、言わなかった、の……ごめんね、ごめんね…。母なのに、もう、あなたを守れない、母様を、ゆるして」

「やだ……、わたしはおかあさまとっ、いっしょに、いるっ!」


ヴィオレッタは、シュリを見つめた。


____この子の事…お願いね


シュリは涙を拭った。

そして、決意を瞳に宿す。


『ラピス…。あいつらが来る前に、いかないと』

「いやっ!!おかあさまも、いっしょに、いくの!!」


ゆずらないラピスの頭を、ヴィオレッタがそっと撫でる。


「母様の、最後のお願いを、聞いて……?」


ラピスは目を見開き、ヴィオレッタの顔を覗き込む。

ヴィオレッタは、優しく笑った。


「あなたは…生きて」



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